6月12日(木)開催の 初級者コース「糖尿病と高血圧」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.腎炎と糖尿病性腎症で、尿検査に違い(蛋白尿かアルブミン尿)があるのはなぜですか?
A.理想的にはアルブミン尿を測定できた方が早期腎障害をキャッチしやすいので望ましいのですが、高価なため、糖尿病患者にのみ保険点数が認められています。非糖尿病CKD患者では蛋白尿を測定しますが、アルブミン尿を測定する必要がある場合には自費で測定してもらうことになると思います。
Q.腎保護の観点から、スタチンはいつまで(CGA分類など)に導入し、いつまで続ければ良い(もはや続けてもアウトカムの改善は期待できない状態の目安≒役目を終えた)のでしょうか。
A.スタチンの腎保護作用については僕自身、あまり経験がないのでよく知らないのですが、スタチンにはLDLを下げるだけではなく抗酸化・抗炎症作用・血管内皮機能改善作用も期待できること、2つのエビデンスレベルの高いメタ解析1)2)によってGFRの低下を緩徐にすることが明らかになっていますので、GFRが60を切った段階のCKDとなった時点で一次予防として米国ではスタチン投与が推奨されているようです。日本のCKD診療ガイドライン2023では2Bの推奨なのでちょっと微妙です。おそらく透析導入後は推奨されていないようです。
1) Tonelli M, et al: Circulation 2005: 112: 171-178.
2) Fried LF, et al: Kidney Int 2001: 59: 260-269
Q.グループホームに入所している高齢の患者さんに、メトグルコ3錠朝食後、併用薬としてARB、利尿薬がありました。メトグルコの処方意図を先生に聞いたところ、前医がそうしていて患者さんの容態が安定しているための維持的な処方と言われました。この処方は平田先生ならどうお考えでしょうか。なお、この患者さんは3食食事の摂れる、寝たきりの方だと聞いています。よろしくお願いします。
A.糖尿病患者さんですね。年齢・腎機能・体格なども知りたいところですが、「3錠朝食後」というのが気にはなりますが、メトグルコは重度腎障害には禁忌なので、皆さん、怖い薬のイメージをお持ちかもしれませんが、僕自身は安価でいい薬だと思っています。ずっと欧米で糖尿病患者には第1選択薬です。ただしARB、利尿薬が併用されているので急性腎障害になった時にはメトグルコをやめなければならないので、乳酸アシドーシスの症状を教え、シックデイ対策をとることは薬剤師として腕の見せ所だと思います。