2025年9月4日 X投稿
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 60歳代の透析患者が、下肢膿瘍による発熱のため、数種の抗菌薬によって治癒したが、その後、下痢、発熱を伴う重篤なClostridioides difficile(CD)感染による偽膜性大腸炎を発症した。経口バンコマイシン2.0g/日の投与がされ、下痢・発熱の症状及びCRP は低下したが、2週間後に血清バンコマイシン濃度の測定を主治医にお願いした。「経口バンコマイシンは吸収されないから測っても意味ないじゃん」と言われたが、「最大用量を2週間投与しているので念のため」と言ってを測定すると、吸収されないはずの経口バンコマイシンの血清濃度が59µg/mLと当時の偽膜性大腸炎患者の世界最高記録になったことを経験した。結腸が白くなっており、結腸の粘膜細胞が破綻し、リーキーガットの状態だっていたのだと思う。吸収されっこないはずのバンコマイシンが吸収され、透析患者なので尿中排泄率90%のバンコマイシンは排泄されないので世界記録になってしまったが、バンコマイシンによって偽膜は消失しオレンジ色の健康な結腸に戻り、治癒できた。それよりも怖いのはその後、この症例のCDは他の患者に接触感染してアウトブレイクになってしまったことだ。アウトブレイクで死亡者が出れば新聞に載るかもしれないと大いに焦った。スタッフの手洗い(エタノールが効かないのは知ってるよね)の徹底を中心として接触感染対策で、何とか1か月後に収束できたが、CD腸炎のアウトブレイクを防ぐ方法が後で分かった。その方法のヒントは

 ①CD腸炎感染患者はほぼ要介護で全員、抗菌薬が投与されていた、②感染者のほとんどがPPIかH2ブロッカーの服用者だった、③ビオフェルミンRなどの耐性乳酸菌製剤はバンコマイシンで容易に殺菌されるため、アウトブレイクを防ぐには芽胞形成菌のミヤBMやビオスリーを投与すべきだった。

 ということで、アウトブレイクを防ぐには胃酸による殺菌が期待できないPPI服用患者に抗菌薬を投与すると腸内細菌叢が破壊され、CDが増殖する。そのような症例には芽胞を形成する酪酸菌の併用が大事ってこと!

Hirata S, et al: Jpn J Clin Pharmacol 34:87-90, 2003.

 

 

 

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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