2025年9月11日 X投稿
閲覧者2.4万人 いいね3,010人

 経口NSAIDsとして使うとしたら、腎障害の少ないものはあるのだろうか?1990年前後に言われていたプロドラッグで腎におけるプロスタグランジン(PG)阻害の程度が他のNSAIDsと比べ軽いといわれていたクリノリル(スリンダク;腎組織において再度非活性型に変換されるため、腎機能障害が少ないとされていた)COX-2選択性が高いとわれていたハイペン(エトドラク)などが、AKIを起こさないという確たるエビデンスがないのに、メーカーに騙されて使っていた医師が多かったようだが、さすがに今は状況が変わっているはずだ。COX-2選択性阻害薬のセレコックス(セレコキシブ)に関しては腎障害が少ないという報告は平田が検索しただけでも少なくとも6報ある。腎障害患者にはアセトアミノフェンと並んで推奨できる可能性のある唯一のNSAIDとなるかもしれない。ではそれらの論文を精査してほしい(図1)。ただし最もレベルの高い報告のPRECISION study(RCT)でイブプロフェン群(平均2,045mg/日で日本人用量の3倍以上)に比しセレコキシブ群(平均209mg)で有意に腎イベントが低かったのは当たり前だよね。

 

 

 そしてなんといってもNSAIDsの中では胃障害が少ないので、上部消化管出血のリスクが最も低い(図2)ことが消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂3版)に記載されている。胃障害が少ないCOX-2選択的阻害薬という触れ込みでコキシブ系の第1号のロフェコキシブは世界中で、8,000万人以上の患者に使われブロックバスターになったが、抗血小板作用がないためか、88,000~140,000例の重篤な心臓病・脳卒中が発生して市場から撤退した。しかもメーカーのメルク社はこれらのリスクに関する情報をキャッチしていながら、データを操作したり公表を差し控えるなどが明らかになり、FDAも心血管リスクを知りながら隠ぺい、NEJM誌は分かっていた誤りを訂正しなかったなど社会的問題に発展し、大問題になったのだ。

 

 

 セレコキシブも同じコキシブ系ということで、心血管リスクの疑念がかけられたが、欧州4か国8,246,403人の10年間にわたる大規模研究ですべてのNSAIDsを総合すると心不全の入院リスク入院が24%増加している中で、セレコキシブが一般的な服用量で心不全入院のリスクを上げないことが明らかになった(図3)。NSAIDsには様々なデメリットがあるので、特に高齢者へのNSAIDsの漫然投与は避けてもらいたいのだが(図4)、胃障害が明らかに少なく、腎障害も他のNSAIDsに比し少なく、心不全リスクの最も低いセレコキシブはアセトアミノフェンに次ぐ高齢者への選択肢になるかもしれない。

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

月別アーカイブ