6月25日(木)開催の、「透析患者の薬物適正使用(中級者編)」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q.腎性貧血はCKD stageでいうとどのあたりから顕在化してきますか?

A.CKDに伴う腎性貧血は、CKD stage 3(eGFR<60mL/min/1.73m2)あたりから徐々に顕在化し始め、stage 4(eGFR<45mL/min/1.73m2)以降で急増する傾向があります。具体的にはStage3で17.4%、Stage3で50.3%、 Stage5で53.4%が貧血と診断されます(PMID: 24392162)。総じて、eGFR<45(stage 3b)あたりから臨床的に注意が必要となり、stage 4(eGFR<30)以降で半数以上が貧血を呈するという理解が現在のエビデンスと整合しています。


Q.静注鉄剤の臓器障害は血清鉄やフェリチン値に相関しますか?

A.静注鉄剤による臓器障害は血清鉄とは直接相関しません。血清鉄(トランスフェリン結合鉄)は今、血中を走っている輸送トラックとその積み荷(鉄)ですから、これから骨髄に運ばれて赤血球の元になる原料ですから。血清鉄は悪者ではありません。

一方、フェリチンは貯蔵鉄ですから肝臓や網内系などで過剰になると非常に性質の悪いヒドロキシラジカルを産生する触媒になりますので、静注鉄剤は、腸のブロックを無視して直接血液内に大量の鉄を投入できるので、臓器障害の原因になります。フェリチンを極めて警戒しているのは日本のこれまでの腎性貧血ガイドライン2015ですね。「TSAT<20%かつフェリチン≧100ng / mL」で鉄はあるのにうまく利用できていないので鉄剤投与よりも炎症治療が優先する機能的鉄欠乏と判断し、「フェリチン≧300ng / mL」で鉄過剰のため鉄剤投与中止になりますから。海外でもフェリチン高値は良くないことは共通していますが、KDIGO腎性貧血ガイドライン2026ではPIVOTAL試験の結果を受けて、フェリチン濃度が700 ng/Lを超えない限り靜注鉄を積極的投与を容認しています。

ということで「フェリチンと臓器障害と相関する部分もありますが、かなり不完全」というのが現在のエビデンスの結論です。フェリチン≥600 ng/mLの患者は冠動脈狭窄のオッズ比(OR)が6.93(95%CI: 2.41〜19.94)と約7倍高い(PMID: 27329123)という報告も確かにありますし、肝臓や脾臓のヘモジデローシスとは相関するという報告もありますが、フェリチンは炎症によって上昇しますし、靜注鉄投与直後も上昇します。

フェリチンは心血管リスクの「マーカー」としての有用性はある程度あるものの、実際の臓器内鉄沈着の直接指標としては不十分であり、MRIによる臓器鉄定量が最も正確だといわれています 。

 

 

 


Q.今回の高カリウム血症とは逆の質問になり申し訳ありませんが、eGFRがG4、G5の在宅患者さんでの低カリウム血症をどうしたら良いでしょうか?カリウムが2程度の方にカリウム製剤の補充をするにも、添付文書上禁忌に該当してしまい、院外処方がしにくいです。実際にどのように対応しているのか、例があれば教えていただけると助かります。

A.在宅患者さんでは高齢、フレイルで食事が十分摂れていない患者さんでeGFRがG4、G5であれば、「腎機能が低下すると高カリウム血症」と直感する人がいますが、腎機能が低下すると腎臓のカリウムを保持する能力が低下するため、低カリウム血症も起こりやすくなります。腎臓は尿を作る臓器というよりも「不要なもの、余剰なものを排泄し、必要なものは再吸収して体液の正常化をする臓器」ですからね。

例えば薬剤ではループ利尿薬、チアジド系利尿薬、甘草含有漢方薬、そのほかにも厳格すぎるカリウム制限の食事や下痢・嘔吐、低マグネシウム血症、大量発汗、腹膜透析患者(透析液にカリウムが入っていない)など低カリウム血症の原因は様々です。


Q.慢性腎不全の方が入院されると、前医のdo処方となります。担当医は(内科以外の場合も多く)腎臓に詳しいわけではありませんので当然かと思います。ここには気をつけた方がいい、ここは最低限見た方がいいなど、アドバイス頂けるとありがたいです。

A.多科受診の場合、様々な診療科の医師が処方されると、「他科の医師の処方を変更しない」といういわゆる医師同士の仁義があり、薬の種類が増える方向になりますよね。聞くところによるとビタミンB12などのビタミン剤の好きな医師、胃粘膜保護剤の投与の好きな医師、ベンゾジアゼピンや抗コリン作用のある薬(この副作用で下剤が投与される)などあまり必要性の高くない薬やNSAIDsやPPIの長期投与など、高齢者やCKD患者にとって好ましくない薬が投与されることがあります。

すべてのお薬手帳を1冊にまとめ、どの病院に行く際も必ず提示することを奨励し、担当になった薬剤師が主治医との相談の機会を持って適正化することが大切だと思います。僕は電話ではなく、直接主治医と面談するのがこれからの薬物療法適正化にとってよいことだと思っています。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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