2026年2月27日 X投稿 閲覧者11,672人

 腎機能評価に何を使ってる?標準化eGFR(mL/min/1.73m2)はCKDの診断指標(重症度分類)に用いる。個別化eGFR(mL/min)は薬物投与設計に用いる。この「個別化」は海外では非指数化eGFRと呼ばれ、日本でも正式には体表面積未補正eGFRと言われているが、短く分かりやすくするため僕が勝手につけた名称が広がっただけのこと。じゃあなんでこのような使い分けがされるのかについて解説しよう。

 ミラノ冬季オリンピックで日本が金メダルを獲得したフィギュアスケートのペアは男女の体格差が大きいほど、ダイナミックな演技ができるので有利なため、女子選手は小柄な選手が多いよね。これは女子体操選手にも共通していて小柄な選手のほうがジャンプしたり回転するのに有利らしい。小柄な人の生理機能は当然小さいので、腎機能も低い。例えば120kgのレスラーや相撲力士に比べて40kgの女性は、腎機能だけでなく心機能も呼吸機能も低くても健康でいられるし、薬の用量も体重が3倍も違うので少なくしないといけない。だから身長も体重も考慮された個別化eGFR(mL/min)は薬物投与設計に用いる。ではなぜ腎機能の診断指標には身長・体重を含まない標準化(体表面積補正)eGFR(mL/min/1.73m2)を用いる理由は、素のままの腎機能だと小柄な人は健康であってもCKDという病気にみなされやすくなり、大柄な人は実は体格に見合った腎機能よりも低くなっていてもCKDという病気に診断されにくいから標準化したものを使うんだ。

 ところが、薬の腎機能別投与量を決めるのに、添付文書に記載されている腎機能表記は薬によって違うよね。米国では1998年以降、CG式のみが推奨されていたため、添付文書の腎異能表記はCCrのみだったが、Jaffe法によるクレアチニン測定法のため、正確ではないがGFRに近似しており都合がよかった。薬用量を決める臨床治験は主に米国で実施されていたため人種差も考慮した国際的なブリッジング試験を行うためには血清クレアチニン値の国際間での測定法の違いが問題になった。そのため2011年以降に従来のクレアチニン測定法をJaffe法から採用されたIDMSトレーサブルに変更した。それと同時にCG式による推算CCrの使用を推奨しないことにし、従来のCCrは標準化eGFR(mL/min/1.73m2)に読み替えることを推奨した。

 一方、欧州EMAは薬用量決定には個別eGFR(mL/min)を提案したのに、米国での添付文書の腎機能表記に標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を提案したのは米国FDAの大きなミスだと平田は思っている。これによってその後の添付文書の腎機能表記が多様化されて日本の薬剤師・医師もどうやって腎機能を評価するのか混乱してしまった。もう1つの問題はIDMSトレーサブルになった2011年以降、米国ではFDAが肥満や浮腫の影響を受けるCG式の使用を推奨しなかったにも関わらず、米国薬剤師は臨床現場で薬物投与設計に用いる腎機能判定にCG 式による推算CCrを主に使用していたことだ。CG式は体重入力(米国は肥満大国)や測定法(Jaffe法など)の影響で系統誤差が大きく、IDMSトレーサブルと整合性が低いからこれからの新薬の添付文書からは消えてゆくはずだ。

 ようやく2020年に米国FDAと全米腎臓財団(NKF)ワークグループで新指針が合意し、推算CCrの撤廃、人種差なしへのCKD-EPI2021式への移行と、診断指標に用いられる標準化eGFR(mL/min/1.73m2)ではなく、薬物投与設計には個別化eGFR(mL/min)を使うことを明確化した。これによって今後の新規添付文書では標準化eGFR(mL/min/1.73m2)は消え、個別化eGFR(mL/min)の採用が加速する見込みだ。

 FDAの決断によって今後、添付文書表記が統一化され、腎機能評価誤りによる中毒性副作用が少なくなればいいのだが…。

 

 

 

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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