今日も7時半からMichaelと一緒に処方内容のチェック、このデータを下に午後から検査データ、患者の臨床症状を見ながら薬物の投与量を体表面積から電卓を使用して計算し、薬物投与の是非について3人でディスカッションし、問題ある処方は投薬内容変更の旨をドクターに電話で伝え、カルテに新処方を記入するのがJoeのやり方。Oncologyは略語が多い。ステッドマン医学辞書の入ったセイコーの電子辞書が大いに役立つ。8時から血液内科医と骨髄移植症例のミーティング。ここでもJoeは積極的に発言し、ドクターも投薬についてはアドバイスをしてくれるJoeを大変ありがたがっているようだ。やはりスペシャリストの薬剤師は必要である。薬剤師も含めた症例ミーティングは以前にも白鷺病院であったが、金院長退職とともになくなってしまったが、これは非常におろかな決定だったと今でも思う。9時からPharm Dによる急性心筋梗塞とSandyの「薬物動態蛋白結合と分布」。これは得意だから問題なし。でも蛋白置換の相互作用を教えていた。起こりえないわけではないが臨床的意義は非常に低いから日本でも最近は教えなくなりつつあるのに。そういえばSandyの部屋と僕の部屋は隣で僕がポートランドに来たときにgreeting cardとチョコレートと花を机に置いていてくれた。ポートランドには本当に優しい人が多い。

午後からJoeのところに行き、いつものように症例検討。なぜか今日はJoeは生の人参をかじりながらMichaelに助言する。TDM対象薬はほとんどTDMを実施している。日本の大学ようにTDMのスペシャリストがいるわけではなく、病棟薬剤師自身がスペシャリストなのだ。日本と異なり解析ソフトを使わないが、動態パラメータから計算するので、こちらのほうが動態理論が身に付きやすい。日本の薬剤師には「TDMをやるにはどの解析ソフトを使えばいいんですか?」とよく聞かれる。解析ソフトがないとシミュレーションによる血中濃度曲線は書けないが、それに頼りきって動態の解っていない薬剤師が多すぎる。

末期がんの症例が今日退院するという。Joeは僕に「スミオ、日本ではがん患者は病院で亡くなることが多いのか?」と聞いてきたので、「そうです。でも患者自身はそれを望んでいるとは思いません」と答えたら、「アメリカでは10年前くらいから家に帰って最後を迎える患者が増えつつある」と言われた。

Oncologyでは輸液にほとんど生食を用いhydration目的にたまに5%ブドウ糖が使われる。「乳酸リンゲルや1号輸液や4号輸液などは使わないのか?」と聞いたら、「癌では高Ca血症やSIADHになることが多いからカルシウムが入っていないほうがいいし、アシドーシスを伴わない場合が多いので乳酸は必要ない。」といわれ、納得。そういえば昨日の症例ではSIADHによってNaが105mEq/Lにまで低下している症例があった。中枢障害を起こしており、この症例はアルコール大量摂取者なので、Joeは「ビールは水分が多いのでNa濃度がよけい低くなるので、のむならウイスキーやブランデーを飲むように」と言っていた。

3時からムナ先生と糖尿病の内科クリックのDr.Bultmeiyerと面会。来年から午後、糖尿病の患者指導に参加してもらうようにお願いしに行く。いろいろな話をしたが、アメリカではインスリンの持続注入機が汎用されつつあるそうだ。ランタスが日本では話題になっているがNPHインスリンと臨床的差異はまだ不明だそうだ。ここでは患者にPDAを持たせ何を食べたかを入力してもらい、インスリン投与量を決めるようなプログラムがあるらしい。

このような研修内容になったのは僕が前もって書面で出した希望が臨床ないろいろな現場で薬剤師が活躍できる部分、そしてPh.Dコースで学生と一緒に学びたいという希望からだ。おかでで僕の指導係りのムナ先生は非常に忙しくなり、申し訳なく思う。

帰りにBook shopでDrug Information Handbookを買う。動態に関してもUSPDIより詳しく書いてあり、かなり分厚いが一応ポケット版で安い。これで明日からさっぱりわからなかった薬も理解できるようになるだろう。

 

今日習ったこと:10/12

AAGには4種の遺伝子多形があり薬物との親和性はアルブミンよりも高い。置換はアルブミンによってbufferされる。

リポ蛋白は塩基性から中性の薬物と結合し、プロブコール、シクロスポリン、ジギ、TCN(テトラサイクリン)と結合する。そのため腎高脂血症は移植後のシクロスポリン投与のときの拒絶の原因になる。

新生児のアルブミン、AAGとの結合性率は低下する。

高齢者ではアルブミンとの結合性は弱いが、AAGとの結合率は上昇する。

妊娠の3期にはアルブミン、AAGとの結合性率は低下する。

AAGは喫煙、肥満、手術でも上昇する。

DMではアルブミンとの結合性は低下するが利尿期にはアルブミン、AAGとの結合性率は上昇する。

甲状腺機能亢進症ではアルブミン、AAGとの結合性率は低下する。

Golden standardは間違いでgold standardが正しい。蛋白結合率のgold standardは平衡透析法であり、限外濾過法ではない。限外濾過法は温度や限外濾過時間の影響を受けやすい。

蛋白結合率をin vivoで調べる方法として唾液中濃度/血清濃度でも算出できる。

メトトレキサートには炭酸水素ナトリウムを併用する。

イホスファミドの膀胱からの出血(血尿)の副作用を防ぐためにはメスナを併用する。

BIDは1日2回のことだが、必ずしも12時間おきではない。この場合、5oomg/12hrと具体的に12時間おきに投与することを明記する。

高用量のchemotherapyによる肝障害を防ぐためにはウルソUrsodiolを用いる。

Consolidation: 硬化(特に膀胱でみられる)

Parainfluenza: 春から夏にかけて多い。子供でアウトブレイクするとも多い。リバビリンがこれに有効という報告もある。

Cockcroftの式で高齢女性の場合、血清クレアチニンが0.4mg/dLと異常に低いことがある。この場合0.8を代入する。このようにCockcroftの式は女性と「やせ」が最も重要な問題となるがMDRD法ではこれらが解決されている(http://nephron.com/mdrd/default.htmlを参照)。

血小板輸血は10単位輸血する場合10人分だとアレルギーの発症率が高いが1人で成分輸血したものだとアレルギーの発症率が1/10に低減できる。

5HT4antagonistは痛み止めになる。

Mantol cell lymphoma(外套細胞リンパ腫)ではメトトレキサート200mg/m2+NaHCO3250mLをローディングし、その後800mg/m2/1000mL生食/24hr+シタラビン3g/m2+500m2生食×2時間を12時間おきに4回投与する。ハイドレーションとして5%ブドウ糖液+75mEq NaHCO3 250mL×4時間その後150mLを持続する。

抗がん剤投与での検査値は腎機能のチェックが一番大切なこと。

抗ウイルス薬を投与するときにはHSV, CMVに状態を調べておくこと。

骨髄移植の後には血小板が低下し、白血球数が上昇する。G-CSF投与後は好中球が90%以上になることもある。

バンコマイシンによる腎障害は低く5%以下。トラフ値は敗血病には10μg/mL以下でいいが、臓器の感染の時には15~20、肺炎の場合は20以上に設定する。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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