7月24日(木)に開催されたアスヤクLIFE研修「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう」の講演後にいただいた質問に回答いたします。遅くなって申し訳ありません。
Q.ロキソニンで腎機能低下になった患者さんがいます。やはり今後はカロナールが安心でしょうか
A.ロキソニンⓇを含めNSAIDsはすべて、急性腎障害の原因になるため腎機能の低下した患者さん(CKD)や高齢者に投与することは推奨されていません。代替薬としてはカロナールⓇ(アセトアミノフェン)を使うことが推奨されています。痛みの種類によってはサインバルタ、トラマドールも急性腎障害を起こさないので使ってもよいと思います。
Q.以前、先生の質問でセレコキシブは腎に障らないという話だったと思うのですが、実際はいかがでしょうか?
A.アセトアミノフェンは他の鎮痛薬との合剤として長期連用すると、非常にまれですが腎乳頭壊死を起こし慢性腎不全が起こり透析導入になることがありますが、急性腎障害を起こしません。痛風発作などで「アセトアミノフェンは抗炎症作用を持たないのでNSAIDsでないと困る」と言われた場合には、ロキソニンⓇに比し胃障害が少ない、消化管出血リスクが低い、他のNSAIDsと比較して腎障害が少ない、心血管合併症を起こしにくい薬としてセレコキシブが選択肢になると思います。CKD診療ガイドライン2023で「セレコキシブは特によくない」というような表現がされていますが、そのようなエビデンスもなく、この記載自体が間違っています。
Q.ST合剤投与時の血清クレアチニン上昇はどのように腎機能評価すれば良いでしょうか
A.ST合剤のうち、トリメトプリムが投与時の血清クレアチニン上昇は尿細管上皮細胞のトランスポーターを阻害し、血清クレアチニン 値を約20%程度上昇させることが知られています。クレアチニンの排泄が阻害されているため、血清クレアチニン値が見かけ上、上昇するだけで、本当に腎機能(GFR)が悪化しているわけではありませんので、ST合剤投与前の腎機能で腎機能を評価すればよいと考えられます。
Q.トリプルワーミー回避のためにARNIはよいのでしょうか?
A.ARNIにはNa利尿作用がありますので、脱水をきたしやすいはずなのですが、あまり脱水が深刻な問題になったという話は聞いていません。またARNIにはARBのバルサルタンが入っているにもかかわらず、腎障害もあまり聞きませんし、高カリウム血症も起こさないようです。このへんはSGLT2阻害薬と同様、よくわかっていないといってよいでしょう。
Q.CHDFの場合のバンコマイシンの投与計算はHDとは異なりますか
A.CHDFのクリアランス>通常のHDのクリアランスです。すなわちバンコマイシンはHDよりもCHDFのほうがよく抜けます。ただし患者さんの腎機能がどれくらいかによりますので、無尿の患者さんで腎機能が完全に廃絶しているとすれば、日本の通常用量20L/日(=13.9mL/min)の補液・透析液を用いたCHDFの腎機能は13.9mL/minの患者さんの投与量と同じと考えます。HDのクリアランスはバンコマイシンの分子量が大きいので10mL/min以下だと思いますので用量もCHDFよりも少なくすべきです。
Q.体格が小さい場合、腎臓も体格並みの腎機能で十分機能は保てるような説明の方法をされたように思えますが、ネフロンの数とは関係がなく、一つのネフロンが通常のネフロンより、強力に力を発揮すると考えていいのでしょうか?
A.体格の小さい方は、個別eGFR(mL/min)は小さいですが、すべての生理機能が小さくても体格の小さな方には十分なのです。小柄な人のネフロン数は減っていないと思います。1個のネフロンの大きさが小さいだけだと思います。したがって1個当たりのネフロンが強力に力を発揮している(無理をしている)わけではありません。
例えば母親が腎不全になった娘さんに腎臓を1個あげて腎移植手術がされた場合、母親のネフロン数は半分以下になるはずですが、実際にはeGFRは60mL/min/1.73m2以上になっていることが多いです。同様にネフロン数が10%に減ったとしても1つ当たりのネフロンに負荷がかかり(糸球体過剰ろ過が起こり)、eGFRは20~30mL/min/1.73m2になっていると思いますが、このようなネフロンへの過剰な負担が、より腎機能を悪化するため、RAS阻害薬やSGLT2阻害薬などの腎保護薬を併用する必要はあると思います。
ネフロン数は教科書的には片方の腎臓に100万個ずつと言われていましたが、欧米白人の約90万個に比し日本人は約64万個と少ないという報告が2017年に報告されました。
Kanzaki G, Puelles VG, Cullen-McEwen LA, et al. : New insights on glomerular hyperfiltration : a Japanese autopsy study. JCI Insight 2017; (2 19): e94334.