SGLT2阻害薬は糖尿病だけでなく心保護作用・腎保護作用において最強の薬剤として認められつつある(図1)。糖質を尿中に捨てるSGLT2阻害薬を服用すると、低糖質食を摂取したのと同様の生体内環境になって、インスリン分泌が低下して、ブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなるため、脂肪を分解してケトン体をエネルギー産生源の主役にする。断食、カロリー制限、16時間絶食などは長寿遺伝子を活性化する、細胞が古くなった細胞成分やミトコンドリアをオートファジー亢進によって分解・再利用して体の機能を活性化させると言われている。しかし絶食などで惹起される血中ケトン体濃度上昇(これをケトーシスと言う)では重篤なアシドーシスはならないが、糖尿病ではもともとインスリン分泌能が低下しているため、脂肪分解が亢進してケトン体が増えすぎてアシドーシスになって毒性を示す危険な状態(糖尿病性ケトアシドーシス)に至ることがあるのでケトン体は糖尿病ではマイナスイメージがある。しかしインスリンの働きが正常であれば(糖尿病でなければ)、ブドウ糖の利用が適切である限り、ある一定濃度のケトン体は極めて安全なエネルギー源になる。最近の研究ではケトン体、特にβ-ヒドロキシ酪酸にはエネルギー源としての作用以外にする作用などによって心機能を改善させ腎臓や脳を保護し、血管内皮機能改善作用、酸化ストレス軽減、炎症抑制、脂質異常改善あるいは抗老化作用などの生理活性があるなど、様々な有益性が明らかにされつつある(図2と図3の左下)。



もともとSGLT2阻害薬は尿糖排泄を促進させる血糖降下薬と思われていたが(図3左上)、尿細管糸球体フィードバック改善によってアルブミン尿(+)の糖尿病関連腎臓病DKD、蛋白尿(+)のCKD患者の腎保護の進行を抑制し(図3右上)、さらにSGLT2阻害薬治療は近位尿細管による酸素消費量を抑制し、尿細管間質の
低酸素症を改善することによって、エリスロポエチン産生細胞が活性化して血中ヘモグロビン値を上げて、腎虚血を防ぐ(図4)。おそらくこれは図3右下の貧血改善作用によって、近位尿細管の低酸素状態を改善して腎虚血によって起こる急性腎障害を抑制する作用を表すのではないだろうか。ただし図3のグリーンで示す有益な作用だけではなく、赤字で示すSGLT2阻害薬に特徴的な副作用をもたらすことも気を付けよう。
