7月16日(木)開催の、「抗菌薬適正使用の理論と実践 実践編」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.セフトリアキソンのことで質問です。胆泥を作ることは有名ですが、胆道系の胆石閉塞機転由来の感染には使わない方が良いのでしょうか。一般的にはドレナージが第一選択かと思われますが、当院ではとりあえず抗菌薬で様子を見ようとする傾向があります。主にスルペラゾンCPZ/SBTです。
A.胆泥といういよりも胆石ではないでしょうか?おっしゃる通り、胆道閉塞由来の感染(急性胆管炎)はドレナージが根本治療であり、抗菌薬は補助的位置づけです。
抗菌薬としてのセフトリアキソンのタンパク結合率は90%と高いため、糸球体濾過されるのはわずか10%なので腎CLが低い。では非腎CLの胆汁排泄CLもかなり低いので、総CLが低いため、半減期がβラクタム系で最も長く、1日1回の投与が可能になっています。また尿中および胆汁排泄率はともに50%ですが、腎機能低下によって遊離型濃度が上昇して胆管中のCaと結合して胆石となって胆嚢炎、胆管炎、膵炎等を起こすと考えられ、低アルブミン血症ではさらに遊離型セフトリアキソン濃度が高くなるため発症しやすいとされています。
それに対してスルペラゾンは胆汁中濃度が高く、嫌気性菌カバーも有し、胆道感染症に理にかなった選択だと思います。
Q.透析施設の門前の薬局薬剤師です。初回投与量は500㎎(以降1日おきに250って)の投与推奨されているもご存じなDrなのですが、透析患者の尿路感染や下痢の症状にクラビット250mgを分1連日投与3日分の処方に対して、疑義照会をしても処方変更には至りません。血中濃度が高く維持できるため、250mg分1で十分効果あるとは思うのですが、その後連日投与することで、説明すべき点があったら、教えてください。
A.透析患者の下痢に抗菌薬の投与はいかがなものでしょう。透析患者はClostridioides difficile関連下痢症に罹患しやすいので、クラビットを投与する前に、まずはミヤBMあたりで様子を見るのがよいかと思います。透析患者に安易に広域抗菌薬を投与することによってClostridioides difficile関連下痢症を誘発するリスクの方が高いでしょう。下痢が細菌性であると明らかであれば、抗菌薬を投与しますが、原因菌によって使う抗菌薬が変るはずです。例えばサルモネラ・カンピロバクターだったらキノロンを使うでしょうが、サルモネラ感染が起こるというのは非常に特殊で新聞に載りそうですね。
透析患者は尿量が減少しますので、尿路感染に罹患しやすく、キノロンが使われルこともあると思います。でも尿中未変化体排泄率87%と高いので、腎臓および腎臓以降の尿路内濃度は極めて高い濃度になっていると思いますので初回負荷投与も必要ないでしょうし500mg投与しないと耐性化する心配も尿路感染ではありません。クラビットの半減期は透析患者ではかなり延長しますので、1回投与で十分、尿路感染には効くと思いますので、
「3日分、投与することによって副作用などが心配。1日で十分」という疑義照会はありだとは思います。
ただし250mgを連日3日投与しても深刻な中毒性副作用を起こすとは思えませんし、Fが99%と極めて高いので腸内細菌叢への影響もあまりないと思います。3日間の投与だけでクラビットが耐性化する可能性も低いでしょう。
Q.薬局薬剤師でもできる抗菌薬の薬物動態の知識の利用法は何かありますでしょうか?TDMをしなくてもある程度、薬物動態パラメーターがあれば、平均血中濃度や最高血中濃度、最低血中濃度の推定ができるようになれればいいなと考えていますが、どんな練習をすればよいでしょうか?
A.薬物動態は吸収・分布・代謝・排泄と幅広いのですが、やはり医師が習っていない薬物動態の基礎を知ることは大切です。臨床に即したわかりやすい動態に関する本を読んで勉強することは必要だと思います。書店に行って臨床を意識して書かれたわかりやすい教科書を選んで勉強してください。ちなみに僕は菅野彊先生の本がわかりやすかったので、これから始め、5冊くらい読み込みました。
Q.本日は貴重なご講演を誠にありがとうございます。いずれも水様便、湿疹の副作用歴があり、サワシリン、フロモックス、クラリス、クラビットNGの患者さん(男児:20kgまたは70才女性:40kg)、転倒して後頭部を5針縫いました。この方に投与すべき抗菌薬、抗生剤はどのような手順で決定すべきでしょうか。よろしくお願いいたします。
A. 2症例とも3種類の異なった系の抗菌薬で水様便、湿疹の副作用を起こすなんて奇跡のようですね。しかも2症例とも後頭部を5針縫ったのは偶然とは思えませんので、ほんとかなと疑ってしまいます。抗菌薬投与後の水様便はあり得ますし、抗菌薬投与後の湿疹はアレルギー性の副作用とは思いますが、どちらも重篤でなければ抗菌薬が必要であれば投与せざるを得ないでしょうし、5針縫っただけでは、予防的な抗菌薬投与をしなくても消毒してガーゼ交換するだけでもいいんじゃないかと思います。