今日の午前中の講義は心房性不整脈とその薬物療法。心電図、発症メカニズムだけでなく最近のEBMに基づいた薬物の選択など実践的な講義。このような実践的な講義は非常勤のPhDが行うが、今日のような外部講師の講義の後は必ず学生は拍手する。これは外部講師の時には拍手するように教育されているからだろう。なぜならつまらない講義のときでも外部講師の時には拍手していたから。
今日の講義は1つだけだったので、Book shopによってDrug information handbookを買う。これは50ドルくらいだが「今日の治療薬」のように米国で使われている全ての薬物にUSP-DI並みの動態情報、副作用の発現率までも収載されている優れもの。レジデントや実習中の学生たちはPDA版を利用している。日本でも「今日の治療薬」のPDA版が出ているらしいが、これに白鷺の医薬品集の動態、副作用データが入ればすごく利用しやすいものになるだろう。一度、出版社に話しかけてもいいかもしれない。
その後、毎朝バス停で出会うアフリカンアメリカンのKalとカフェテリアであったので、一緒に食事する。彼はバスのなかででもいつもみんなに笑顔で話しかける積極的な人で、OHSUではFinancial Specialistという仕事をしており、保険の問題などで患者の相談係となり大体MSWの仕事に似ていると理解したが、米国ではMSWはもっと異なる仕事をしているらしい。Kalには帰りにバス停からアパートの近くまで車で送ってもらった。車があるのになぜバスに乗ってOHSUに通っているかというと、OHSUには駐車場が非常に少ないことが原因らしい。
時間が余ったので居眠りしていたらAliのところにいた中国の広東から来た学生のJanに見つかってしまったらしい。帰りにバス停で会ったら、「眠かったんだね」とからかわれた。Janは18歳のときに米国に来たらしく漢字も読めるし、native speakerではないが英語の問題は全くなくなまりもない。彼女はすごく頑張りやさんで、免許を持っているレジデントの白人よりも実力ははるかに上だ。
午後からはJoeのところに行き、Michaelと症例の処方、病態、検査値をチェックするが、いつものように1時に行くとほとんどの症例が終わっていた。月曜日からは軽食でも持って講義が終わったら食べながら症例検討に参加しようと心に誓う。
今日はMichaelによる症例報告があり、ほぼ白鷺病院の薬剤科でやっていたのと同じように議論をする。バンコマイシンでred neck syndromeが出たので点滴速度が速かったからでは?と思ったが18mg/kg/hrだった。Joeによると白鷺のように20mg/kg/hr以下で点滴しても起こることがあり、そういう場合には4時間くらいかけて点滴すれば大丈夫らしい。これも個人差があるのだろう。バンコマイシンは抗がん剤投与時のグラム陽性菌感染症の予防に非常に多用されているため、いくら僕が日本で経験があるといってもMRSAのみ、アメリカでの使用量ははんぱじゃないからJoeの経験には勝てない。
しばらくするとAliから電話があり、薬局で働いている日本人がいるので紹介するとのこと。彼女は西ノ宮出身で僕と同じ大薬卒で、今はテクニシャンとして働いているが、最近何回目からのチャレンジで英語の口頭試問に受かったので、1年間ここで働けば薬剤師の試験が受けられるとのこと。そのあとAliの家に招待を受けた。こんなときアメリカ人はワインを持っていくのだが、Aliはイラン人なので、イスラム教だとアルコールは飲まないはず。ムナ先生もAliが飲むかどうかは知らないので「あそこの家庭は子供が多いのでクッキーでも持っていったら?」といわれ、安心。アメリカ人は人種のるつぼだから、こんな難しい問題もたまにある。Aliからはこれから共同研究をしたり本を書いたり、一緒に仕事をしようと言われ、うれしかった。彼も多くの文献、本を書いており、最近はDr.Bennetに代わって編集もやっているらしい。毎日、ランチを食べる時間もないのに、いったいいつ著作の仕事ができるのだろう?
今日習ったこと:10/13
PRN: pro re nataでas you needed: 頭痛、嘔気、便秘などに使う頓服
バンコマイシンによるred neck syndromeは20mg/kg/hrで点滴しても起こることがあり、そういう場合には4時間くらいかけて点滴すれば大丈夫。
偏頭痛に使う薬はセロトニンアゴニスト
Total bilirubinが上昇し、direct bilirubinが上昇しないときには輸血の影響によるものであり、肝障害によるものではない。
Chemotherapyではlactate, Caは必要ない。高Ca血症になりやすく、SIADHになり、低Na血症になりやすいため、生食を使うことが多い。乳酸リンゲルは外科では使うが、Chemotherapyではあまり使わない。
CisplatinはMg, Pを消費するため、低Mg血症、低P血症が起こりやすいが、それによる症状は起こりにくい。
ゾフランはカイトリルに比し頭痛が多い。
トロポニンやBNPは症状がなくても(疑いでも)保険でカバーできる。