【 問い合わせ内容 】20151104_2.jpg

 医師からの問い合わせが多く、よく困っているのがCHDF(continuous hemodiafiltration)持続的血液透析濾過)の患者の抗菌薬、特にバンコマイシンの投与量に関してです。メーカーに問い合わせをしたり、他にいろいろ調べたりしていますが、的確な回答が出来ていない現状があります。条件によって、大きな差がでてくるので一概に「この投与量を推奨します」というのは難しいと思いますが、CHDF患者の抗菌薬の投与量はサンフォードのCRRTの用量を用いればいいのでしょうか?あるいは無尿の患者であれば透析患者と同じで用量でよいのでしょうか? 

回 答 】

透析クリアランスはCCr5~10mL/minの患者と同等

 おっしゃる通り、CHDFの場合、施行条件によって、薬物除去率に大きな差がでてくるので一定の薬物投与量を提示することは困難です。米国など血流量100~150mL/minでやっている場合もあり(表1)、そんなデータを引用しては抗菌薬の除去率を過大評価し、過量投与の原因になります。

表1.血液透析とCHDFの施行条件の日本と海外の差

血流量(mL/min)

透析液流量(mL/min)

置換液流量(mL/min)

透析時間

ダイアライザーの膜面積

血液透析HD

日本

200

500

0

4hr×3回/週

大きい

海外

360

700

0

4hr×3回/週

大きい

持続的血液透析濾過CHDF

日本

80~120

7~10

5~8

24hr以上

小さい

海外

140~150

14~24

14~24

24hr以上

小さい

 

 血液透析(HD)は透析液流量よりも血流量が低いため、より小さい方のクリアランス以上は得られないので、血流量がHDクリアランスを決定する最も大きな要因になります。小分子量物質のHDクリアランスは血流量と相関します。通常の透析では分子量113と非常に小さいクレアチニンで200mL/minの血流量で回した場合、150mL/min程度のクリアランスになり、分子量がもっと小さい尿素(MW60)のHDクリアランスは180mL/min程度のクリアランスが得られます。ただし週に4時間×3回しか稼働しないため、尿素クリアランスは12.8mL/min、CCrは10.7mL/minと計算されますが、一般的な薬物の分子量は200dalton以上で、ある程度のタンパク結合を考慮すると、5~10mL/min程度のクリアランスしかないと考えられます。実際、透析患者の至適投与量はCCr10mL/min未満の患者と同じとされています。

CHDFクリアランスは無尿患者でサブラッド20L/日仕様の場合、CCr14mL/minの患者と同様

 CHDF時の薬物の血液浄化法による抗菌薬の除去については、さまざまな文献がありますが、それぞれ血液浄化方法が異なり、一律にまとめることができません。欧米では透析液流量+置換液流量が20~40mL/minと日本よりもかなり高い条件で24時間以上の持続的血液透析(CHD)、CHF(持続的血液濾過)、CHDF(持続的透析濾過;これらを総称してCRRT:持続的腎代替療法 continuous renal replacement therapyと言います)が行われることがあり、末期腎不全患者であっても血清Cr値が3mg/dL未満に保たれており、βラクタム系の抗菌薬などはほとんど減量の必要がないこともあります。しかし日本のCHDFは海外に比し血流量、透析液流量ともかなり低めですので(表)、海外の文献データの至適投与量を用いると過量投与になってしまいます。ただしやサンフォードガイドではバンコマイシンのCRRTの至適用量は500mgを24~48時間毎と少な目の投与量になっており、意外と日本のCHDFに適しています。ちなみに日本化学療法学会の抗菌薬TDMガイドライン2015では「CHDF患者に初回は25-30 mg/kg(実測体重)を投与し、以降の維持量は1回500 mg(7.5-10 mg/kg)を24時間毎に投与し、適宜TDMで調節する」となっており、ほぼサンフォードガイドよりも多めの投与量が推奨されています。

 またCHDFは急性膵炎など腎機能正常者に対して炎症性サイトカインを吸着除去するために行われることもあるため、常用量以上の投与量が必要なこともあります。ただし使用している置換液(サブラッドBなど商品名が違っていてもOK)の量とCHDFクリアランスはほぼ一致します。20L/日なら例えば20L/日(約14mL/min)のCCrになります。なぜならサブラッドを使って補液しているということは補液した量とほぼ同じかそれ以上の限外濾液量が出てきます。その限外濾液中Cr濃度は血清Cr濃度と等しいからです。血清中でCrは血漿タンパクと全く結合していない小分子量物質だから当然ですね。

 それからサブラッドの一部は透析液としても使いますが、日本のHDの透析液流量は500mL/minですが、CHDFの透析液流量ははるかに少ない量(7~10mL/min)なので、透析液廃液中Cr濃度と血清Cr濃度は等しくなります。ということは透析液と補液(併せて総廃液量)として1日20L使っていればクレアチニンに関しては1日当たり血清20Lを完全に浄化しているということになりますので20L/日(14mL/min)がCCrになります。ということはHDよりもCHDFのほうがクリアランスが高いため、薬物除去率も高く、抗菌薬もHD患者よりも多めの投与量が必要になります。ただし輸液スペースを確保し、溢水を防ぐため総廃液量が22LになるようなCHDFを施行すると22L/日(15.3mL/min)がCHDFクリアランスになります。つまりCHDFをやっている患者さんが無尿で腎機能が全くなかったとしてもCHDFがCCr14~15mL/minの保存期腎不全患者さんの腎機能と同じ腎機能を肩代わりしてくれているということになります。

投与設計ではCHDF患者の腎機能も考慮する

 ということはCHDFによるCCrは14~15mL/minになり、その人が無尿であればCCrが14~15mL/minの人と同じ投与量をすればよいことになります。しかし患者の腎機能が無尿ではなく20mL/minであれば、34~35mL/minの保存期CKD患者と同じ投与量にすればよいということになります。つまりシミュレーションは非常に簡単で、無尿の患者さんで除水をしなければシミュレーションソフトの患者の腎機能にCCr14mL/minを代入すればよいわけです。ただし患者に残腎機能が残っておればそれを足せばよいのです。患者の腎機能が16mL/minであればこの人の腎機能はCHDFをやっている間は14+16mL/minで30mL/minにクリランスがアップしていると考えればよいのですからCCrが30mL/minの人と同じ投与量をすればよいことになります。

 このようにCHDFのクリアランスを予測することはサブラッドの使用量が分かれば簡単です。もしもCHDF患者がずっと同じメニューのCHDFをやっていて、患者の腎機能が安定しており、4~5日経過していれば患者の血清クレアチニン値は定常状態になっているためeGFRを算出して、あるいはCockcroft-Gault式からCCrを算出して、その値をシミュレーションソフトの意腎機能に入力してみても大過ないと思われます。

患者の腎機能の変動には要注意

 ただしCHDFをやっている人の腎機能は容易に変動するからそう簡単にはいかないというのは確かです。その場合は最初の腎機能に応じた投与量にして予測血中抗菌薬濃度よりも高くなっていれば減量し、予測血中抗菌薬濃度よりも低くなっていれば増量するなどで試行錯誤するしかありませんが、腎機能が安定すれば、その時の至適投与量に当てはまる腎機能からCHDFクリアランス14mL/minを差し引いたものがこの患者の腎機能と予測されます。

 CHDF施行時の薬物投与量については腎臓病薬物療法専門薬剤師テキストに古久保先生1)が書いていますし、山本武人先生2)がより詳しい総説を書いており、私も総説を最近書きました3)ので参考にしてください。

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 1.CHDFの方法

 CHDFクリアランスは に規定されます。透析液流量は非常に小さいため、透析液の廃液中薬物濃度は血中遊離型薬物濃度と近似し、限外濾液濾液中薬物濃度も血中遊離型薬物濃度と近似するためです。

まとめ

①CHDFのクリアランスはHDクリアランスより小さいがHDは週に12時間しか施行しないためトータルで見るとCHDFクリアランス(サブラッドBを20L/minを使用した場合には14mL/min)はHDクリアランス(通常5~10mL/min)よりも高いため、透析患者の至適投与量では投与量不足になります。

②海外のCHDF(厳密にいうと国によって持続的血液浄化法CRRTのやり方は異なる)は日本に比べクリアランスが大きいため、海外文献やサンフォードガイドを参考にすると日本のCHDF患者では過量投与になります。

③通常、日本では1日20Lの補液が使われているということは患者が無尿で除水も行っていなければ20L/日、つまり14mL/minのCCrの保存期腎不全患者への至適投与量と同じ投与量にすればよいのです。残腎機能があればその腎機能に14mL/minを加えたものがCHDF施行中の患者の腎機能としてシミュレーションソフトに代入してもよいです。

④抗菌薬のタンパク結合率が90%以上と高い、あるいは分布容積が2L/kg以上と大きければ血液透析HDでは除去できません。しかしCHDFでは組織に分布した薬物がゆっくりと除去される可能性があるため、分布容積が2L/kg前後の薬物でも除去される可能性があるかもしれませんが、タンパク結合率が90%以上と高い薬物はやはり除去できません。

参考文献

1)山本武人, 他: CRRT中の薬物投与量 抗菌薬の投与設計を中心として. INTNSIVIST 2: 329-345, 2010

2)古久保 拓: 透析患者の薬物投与設計⑤透析方法による薬物除去の違い. 腎臓病薬物療法専門・認定薬剤師テキストP219-225, じほう, 東京, 2013

3)平田純生: 急性血液浄化施行中の投薬管理. 急性血液浄化法徹底ガイド第3版, 救急・集中治療 26(3, 4): 471-479, 2014

 


プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)