服薬指導をはじめたきっかけ

 1994年の4月になり100床以下の病院でもやっと薬剤管理指導業務の算定ができるようになった。病院の大小によって薬剤師の質が決まるものではない。小さな病院という理由だけで「病棟における服薬指導業務」ができないというのは理不尽な決まりであったが、そんなことを恨んでいても何も始まらない。僕たちは「100床以下」という枠が取り去られてから、すぐさま「病棟服薬指導業務」を開始した。そんな時に出会ったのが透析歴20年以上で腹膜透析施行中の40歳台の主婦Aさん。洞不全症候群といって、洞結節やその周辺の障害が元で、心拍数が40に落ちたり180まであがったりを繰り返す、いわゆる徐脈・頻脈症候群を呈していた。主治医はペースメーカーの植え込みを勧めたが、ある宗教上の理由から手術をかたくなに拒むため、内科療法として抗不整脈薬を投与せざるを得なかった。循環器内科医の診断によりVaughan Williams分類Ⅰa族のジソピラミド(リスモダン®)が有効であろうということで投与された。ジソピラミドはAさんに実によく効いたが、同時に副作用も強力に現れた。ジソピラミドの主な副作用は抗コリン作用に基づくもの。口渇や、便秘などは耐えられる副作用であるが、Aさんに発現する抗コリン作用は強力で、ジソピラミドの投与量を増やすと視調節障害が現れ、目を開けているとピントが合わないため、食欲不振になり、やがてほとんど食事が摂れなくなった。副作用がきついので、他剤に変更すると効果がない。仕方なく減量してジソピラミドを投与すると徐脈・頻脈が現れる。そして増量すると視覚異常・食欲不振が現れる。こんなことの繰り返しで抗不整脈薬療法がうまくいかないため、この1年間Aさんは入退院を繰り返してきた。筆者が服薬指導をはじめたのはAさんが再入院した94年の5月のことである。 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)