Aさんのその後
 

 Aさんの病状は改善し、疑問も解決した。しかし投与方法を変更しただけで副作用も不整脈も起こらなかったのは、奇跡としか言いようがない。危惧していた通り、約半年後にAさんは再び調子が悪くなり、50mgを1日2回投与ではコントロールできなくなって徐脈・頻脈が再発した。主治医は仕方なく50mgを1日3回投与に増量した。徐脈・頻脈は完全に消失したが、やはり視覚異常・食欲不振が再発した。再び文献検索した。何とか抗コリン作用を抑えられないものか?動物実験ではあったがジソピラミドの抗コリン作用はコリン剤で相殺できると書いてある文献を見つけた。しかしナパジシル酸アクラトニウムというマイルドな抗コリン剤を医師に勧めたが、ほとんど効果がなかった。結局、劇薬指定の強力なコリン剤である塩酸ベタネコールを1回15mg、1日3回ジソピラミドと一緒に投与するよう医師に勧めた。これは効きすぎた。下痢、腹痛、寝汗という強力な抗コリン作用が現れた。塩酸ベタネコールの最大作用発現時間は服用後1時間で作用持続時間は2時間と短い。これに対しジソピラミドはtmaxも遅く、透析患者では半減期が延長しているため、僕の投与設計ミスであった。結局1回7.5mgを1日6回という頻回投与することによってAさんの不整脈は副作用を全く起こすことなくコントロールできた。そのうちAさんは少量のベタネコールをジソピラミドのピーク濃度の直前に頓用すると副作用を防げるということを学んだ。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)