慢性腎臓病(CKD)患者に腎排泄型薬物を投与して中毒性副作用が発現した症例、あるいは腎機能悪化要因を持っている患者にアミノグリコシド系抗菌薬・造影剤などの腎毒性薬物、あるいは漫然としたNSAIDsの投与・不適切な利尿薬投与などによる腎虚血によって腎機能が悪化した症例は、今、現在に至っても枚挙にいとまがない。6年制薬剤師の誕生によって、これからの薬剤師は薬物動態・薬理作用・相互作用・副作用だけでなく病態にも精通した薬物療法のエキスパートになることが期待される。そのため腎臓病の薬物療法に関しては、アシクロビル、ジゴキシンなどの腎排泄型薬物を腎機能に応じて適切に減量することを怠ったために起こる中毒性副作用や、ベザフィブラートなどの腎機能を悪化させる薬物を不適切に投与したため起こる腎機能低下を未然に防止できる薬剤師が必要となる。さらにクラリスロマイシンとコルヒチンの併用など、CKD患者では特にマークしておくべき相互作用を予測することによって、未然にこれらの薬物不適切使用を回避できる実力のある薬剤師を養成することが急務と考えられる。
日本透析医学会の「二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン」に沿ったリン吸着薬の投与量・投与薬物の変更という日病薬の提言にとどまらず、「腎性貧血患者のガイドライン」に沿った検査データによるESA療法、鉄剤投与の適正化の医師への提案、腎排泄性薬物の腎機能に応じた至適投与設計の推進、さらにCKD患者に対して腎毒性薬物の投与忌避および代替薬の提案、相互作用により横紋筋融解症による腎機能悪化が懸念される場合の代替薬の提案なども積極的に行うべきある。これから薬剤師は「薬の処方は医師の仕事だから」と考えるよりも「患者様の薬物療法をよりよくする」ために、より主体的に行動する必要性があるのではないだろうか?
明日『これからの薬剤師のなすべきこと』に続く