ゼロから1にすることが非常に大変だけど、それを超えれば一流の研究者
①まずは学会発表。
やったこと、経験したことは学会で発表しましょう。これは大学での卒業研究の経験もあるでしょうし、職場の先輩のアドバイスもいただけるでしょう。学会発表は緊張しますが、その夜の飲み会で苦労は吹き飛びます。ただし実績としてはほとんどないに等しい。だって仕事の内容が数百字の抄録だけだから、評価できるものにはなりません。
②その次のレベルは原著論文の投稿。
これは実績として残ります。原著論文の筆頭著者になっていれば、認定薬剤師を飛び越して専門薬剤師になれます。実際、原著論文を書くことは、慣れれば大変なことではありません。ただし慣れていないために学会発表と比べて、初めて文献にまとめることは大きなストレスになりますし、書き始めて「あれをやっていなかった」「症例数が少なかった」「このデータがそろっていなかった」などの理由で論文にならないこともありますので、臨床研究は計画的に行うこと、症例報告はできるだけ検査値など漏れのないよう、しかも経時的に検査値の推移が見れるよう、医師にはきっちりと検査依頼をしておきましょう。論文の書き方がわからないときは論文のテーマによく似た論文を探して手本としてみましょう。ただし、コピペはいけません。論文の中の数行コピペするだけで盗用となりますので自分の言葉で書きましょう。これらのことは「言うは易し、行うは難し」です。分からないことがあった時にすぐに聞くことのできるメンター(師、あるいは師匠)を見つけましょう。大学を卒業したら、教師はいません。自分で尊敬できる人、それは先輩薬剤師でも、医師でも構いませんし、同じ職場にいなければ学会で見つけて仲良くなることも大事です。「中小病院の薬剤師だから、開局薬剤師だから」というのは言い訳に過ぎません。施設外の勉強会や学会に行けば様々な出会いがあるはずですから。若い薬剤師さん、名刺を作ってますか?名刺は仕事道具ですので、職場で作ってくれなければ自分で作りましょう。安いところでは100枚が1000円程で作れます。
※僕のメンターは薬物動態では上野和行先生(写真右下)、論文の書き方についてのメンターは田中一彦先生(写真左)です
③日本語論文の1本目が大変なだけであって徐々に楽になります。
どれくらい楽かというと私の経験では1本目に要する努力が100だとしたら、2本目は50の力で、3本目は25の力で、4本目は12.5の力で、ということは半減期と同じようにどんどん楽になって3本目以降はほとんどストレスを感じなくなります。すなわち原著論文を3本書けば、あなたはもう一人前といっていいでしょう。とにかく論文ゼロから1本目を書くことが非常に大変ですがそれを乗り切れば、あなたのレベルアップの道は自然に開けてきます。その1本目を書くときに一番ストレスのない方法は、学会発表する前に論文投稿しておくことです。前述のように何度も同じことを繰り返すことは非常につらい作業ですが、未知のことを知ることはドキドキワクワクします。引用論文をすべて読んで夢中になって論文を書いて、学会発表に臨めば全く怖いものなしです。座長にどんなに難しいことを聞かれても「それに関しては全く検討されていません。つまり誰もそれについて検討していませんので私も知りません。ただし私が推測するに・・・・」などと言えるようなくらい文献をチェックしておけば何を聞かれても怖くありません。
④英語論文に挑戦しましょう。
結果云々よりもしっかりしたプロトコルが大切になりますが、日本語論文を数本書いた経験のある方ならもうお分かりですね。方法に関しては綿密に検討しましょう。お金がないけれど時間は十分ある人は、日本語を完璧にして(直しようのないくらい推敲しましょう)、それを英語に素直に直訳して、その英文を医学・薬学関係に長けたNative speakerにチェックしてもらうと安上がりです。私も数年前まではそうしていました。夜、職場を出る前に米国在住の元教授にFAXすると翌朝には訂正文が帰ってきていて費用は8000円程度の安さです。英語が苦手でお金持ちの方は英文作成会社に丸投げします。10万円くらいとられるかもしれませんが、こちらの方が自分で書くよりは専門家の英語なので、英文の出来は良いように思います。医学部の先生は多くの方がこのようにやっていました(きっとお金持ちだからでしょうね)。英語論文も論文ゼロから1本目を書くことが非常に大変ですがそれを乗り切れば、あなたのレベルアップの道は自然に開けてきます。英語論文3本も書けば博士号取得だって夢ではなくなります。僕も実はそのようにして基礎研究なしで博士号を取得しました。