2021年12月22日、20時より2時間、株式会社ネクスウェイの主催するアスヤクLIFE研修会に783名登録していただき、多くの参加者の方々から質問をいただきました。これらの質問及び回答を、司会進行していただいた株式会社バンブーの松村歩美様からご承諾いただき「平田の薬剤師塾」の画面上で回答させていただきます。

 2022年以降の「基礎から学ぶ薬剤師塾」でも、参加者の皆様からこのような質問を受け付け、参加された皆様のご意見や感想、ご要望などをお伺いしたいと思っています。

 また株式会社バンブーの松村歩美様は「薬剤師カモ―ンTV」というYoutube番組に出演されており、保険薬局の方にはとっても役立つ内容のテーマに取り組んでいます。内容も堅苦しくなく、明るく楽しい進行をしていますので、よろしかったらご覧ください。平田もさっそく登録させていただきました。


12月22日、アスヤクLIFE研修会の質問内容とその回答

Q.高齢者向けの服薬に関するガイドラインがあると伺ったことがあるのですが(お恥ずかしい話ですが、不勉強でまだ確認までできていません‥)、そういったものに、減薬の目安等は記載があるのでしょうか?

A.「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」はありますが、これは減量の目安などについては記載されていないと思います。高齢者だから減量するのではなく、腎機能が低いから減量、体重減少が著しいから減量ということを意識しましょう。日本腎臓病薬物療法学会は腎機能別薬剤投与量一覧を随時作成、じほう社がそのポケットブックを2年に1回改訂出版しています。この学会に2022年8月末までに入会すると新しいポケットブック(現在3,960円)が無料で配布されますので、会員になるとお得です。


Q.輸入細動脈を拡張するCa拮抗薬を服薬することで、改善することはあるのでしょうか?

A.講演で触れましたが、Ca拮抗薬は臓器血流を改善しますので、通常は糸球体内圧がやや上がり、蛋白尿がやや増えるのが難点です。アテレックのようなL型以外のCaチャネルを阻害するものは輸出細動脈を拡張するので素晴らしいい薬理作用のように見えますが、実はエビデンスレベルの高い論文はありません。


Q.外来の看護ステーションや調剤薬局と協働で、主治医に相談・提案し、週1~2回程度の細胞外液補充液の点滴などが実施できるようには、ならないのでしょうか…?

A.腎臓が機能して、ちゃんと食事がとれていれば、定期的な点滴をする必要はありません。腎臓が余分なものだけを排泄して必要なものはすべて再吸収してくれますから、輸液なんてしなくても、水やお茶、時にみそ汁など、水分を摂取して食事を摂ってくれていれば、腎臓が最終的な帳尻(不要なものをすべて尿中に捨て、必要なものは尿細管で再吸収する)を合わせてくれますから、全く問題ありません。腎機能が悪くなると余分な水や塩を排泄できなくなりますので、定期的な輸液はかえって害になりますね。よい高齢者施設では10時、3時など定期的にお茶を配りますが、これは脱水を防ぐよい方法だと思います。ただし脱水時の輸液は素晴らしい効果を示します。


Q.Triple warmmy における利尿剤はサイアザイド系も含めて考えて宜しいんでしたっけ?

A.通常はサイアザイド系利尿薬が主です。講演では超高齢者の心不全のことなどについて言及したので、心不全の肺水腫による呼吸困難を改善する薬としてループ利尿薬を挙げさせてもらいました。


Q.VD製剤中で最も腎機能に影響が少ないものは何でしょうか?

A.いわゆる活性型ビタミンDの作用は強力なため、高カルシウム血症を起こしやすいので、すべて危ないです。尋常性乾癬に対して全身塗布されるオキサロール軟膏などの活性型ビタミンD軟膏も全身吸収されて、のみ薬よりも血中濃度が高くなりますので、腎機能が低下している方には非常に危ない薬です。活性型でないnativeなビタミンDはあまり怖くありませんが、Ca剤との併用は気を付けるべきです。


Q.摂取した水分が尿として排出されるまでのラグはどれくらいありますか?

A.よく分かりません。腎機能によると思います。高齢者の私でも30~60分で尿意を催しますから、若年者ではもっと早いかも?


Q.RAS阻害薬には用量依存的にCREをあげてしまうなどのデメリットもあると思いますが腎保護作用もありCKDに低用量で処方されている印象があります。どのような症状・検査値があれば減量・中止の提案をするとよいでしょうか。

A.今までは「eGFRが30%低下したら、あるいは血清カリウム値が5.5mEq/L以上になれば減薬か中止」と言われていました。しかしRAS阻害薬服用後の血清Cr値の上昇はガイドラインが治療の中止を推奨していた30%未満の場合も、累進的に心・腎疾患発症リスクを上昇させることが2017年のSchdmitらの報告()により明らかになりました。特に末期腎不全(透析導入)・全死亡リスクで顕著でした。これ以降は基準を示していません。安全な基準を示されないくらい要注意な薬になったということです。蛋白尿陽性患者以外の高齢者には腎機能悪化の恐れがありますので、CCBの方が無難です。用量依存性はあまりないような気がします。


Q.疑義照会しても医師が個別eGFRを計算しない、個別eGFRを知らないケースが多々あります。医師のなかの個別eGFRの知名度はどのようになっていますか?

A.血清Cr値ではわかりにくいからeGFRを使おうということが書かれてあった「CKD診療ガイド2012」は開業医も含めて、ほぼすべての医師に配布されたと聞いております。ですから医師はすべてeGFRを知っていなくちゃいけないと思います。でも勉強していない人は医師だけじゃなくてどの世界にもいますよね。


Q.腎機能低下時の夜間頻尿に関して、腎機能低下に気が付かずに対症療法で頻尿改善薬が出されているのではないかと思います。水分摂取を積極的にすることで薬剤追加は回避可能なのでしょうか?

A.頻尿改善薬を腎機能低下時の夜間頻尿に投与する是非については、よくわかりません。ごめんなさい。
夜間頻尿があれば基本的には水分励行はすべきではありません。夏季の脱水が著明な場合でtriple whammyの一部の薬物が投与されていれば、飲水励行すべきですが、飲水してもらえない理由として、高齢者の腎機能低下に伴う夜間頻尿があることを理解していただきたいと思ってお話ししました。


Q.triple whammy初めて聞いたのでとても勉強になります。RAS-i、NSAIDs、利尿剤心不全+IHD患者の内服薬を思い浮かべました。

①アスピリンもNSAIDsに含まれると言う認識でいいでしょうか?

A.いいです。ただし低用量アスピリンは抗血小板薬として心血管病変に有効なところが通常のNSAIDsとは異なります。他のNSAIDsは血圧を上げ、心不全リスクを高め、心血管病変を悪化させる要因になります。

②水分摂取の推奨をされていましたが、心不全患者に水分摂取の推奨は怖いように思いました。その辺りはどのようにお考えですか?

A.これは講演で説明しました。ループ利尿薬を服用している心不全患者には基本的に飲水励行をしてはいけません。ただしループ利尿薬による脱水でたとえば「体重が1日で1kg減っていれば水を飲んでもよい」「2kg減っていれば、利尿薬をやめて水を飲んでもよい」などと説明してくれる、あるいは夏場はループ利尿薬を減量してくれる優れた循環器医はいらっしゃいます。このような指導を薬剤師にもさせていただけるよう処方医との話し合いの場を持てるといいと思います。


Q.このデータはCBDCAカルボプラチンの投与量で、顕著にリスクになると思いました。(長期臥床患者の腎機能は過大評価されているスライドより)

A.カルボプラチンは腎排泄型のハイリスク薬だから確かにその通りです。悪液質(カヘキシア)でやつれたがん患者さんは筋肉量が減っているため、eGFRが過剰値に推算されますので、血清Cr値に0.2を加えてJaffe法で測定した血清Cr値に読み替えて推算CCr値を算出し、その値をカルバート式のGFRの代わりに代入する方法をとると腎機能の予測精度が高くなります。不明な方は「平田の薬剤師塾」◆連載◆腎機能評価の10の鉄則 4日目を参照するか、FAQ 副作用を防ぐために知っておきたい腎機能の正しい把握法(平田純生) | 2017年 | 記事一覧 | 医学界新聞 | 医学書院 (igaku-shoin.co.jp)を参照ください。


Q.特にこの高齢社会で、シスタチンCが腎機能評価のゴールドスタンダードにならないのは何故でしょう?

A.ゴールドスタンダードはイヌリンクリアランス!これは鉄則です。イヌリンは糸球体で100%濾過され、尿細管で再吸収も分泌もされないので正確無比で、何にも変えようがありません。シスタチンCは簡便で筋肉量に依存しないだけで問題はいろいろとあります。


Q.病院勤務時代、高齢者でScr低値の患者では0.6補正をしてCcr計算をしておりました。この補正はどれくらい有効な指標になるでしょうか。

A.0.6補正は安全性のために行うもの。「効かなくなっても仕方ない」ということを覚悟してからやってください。僕はeGFRでは過大評価するから、ハイリスク薬投与時にはやったことはありますが、推算CCrでは患者さんの病態も考え合わせて、少し考えます。特に抗菌薬の過小投与によって亡くなったりしたら、後悔してもしきれませんので。


Q.知識不足のため教えていただきたいのですが、元々若い時からARBを飲んでいた場合、高齢になったらCa拮抗に変えた方がよいのでしょうか?
若い頃は腎機能下がってきていたらCCBは要注意と言われていたので・・・

A.「75歳以上ではCCBを推奨する」とCKD診療ガイドライン2018に書いています。だからと言って75歳まではARBを投与して、「75歳の誕生日になったらCCBにしましょう」というデジタル薬剤師にならないでください。患者さんは1人1人が違います、患者さんの病態に合わせた最高の薬物療法を提供できる優れた薬剤師を目指してください。


Q.結局CCBとRASの使い分けはどう判断するかもう一度教えて下さい。

A.CCBは臓器充血をもたらす血管拡張薬(初回投与時に顔面紅潮や頭痛があります。エベレストの登山隊は凍傷を防ぐためにアダラートを飲んだという話もあります)、RAS阻害薬は腎虚血をきたす血管拡張薬と考えると分かりやすいかも。


Q.膠原病があり、5年蛋白尿があります。低血圧です。先生からヒドロキンクロロキンをすすめられますが、どう思われますか?

A.ごめんなさい。蛋白尿の抑制だったら分かりますが、膠原病にヒドロキンクロロキンを投与すべきかどうかについては僕の専門外ですのでわかりません。


Q.透析患者は高度腎機能障害と捉えるべきでしょうか? 透析によって薬がクリアされるので腎機能は考慮不要とする考えもあるようですが…。

A.eGFR<30未満を高度腎障害、eGFR<15mL/min/1.73m2未満を末期腎不全と言います。透析患者は末期腎不全に含まれますが、透析自体が虚血操作なので5年後には全員が無尿になり腎機能がゼロになります。透析によって全く抜けない薬はすべての薬のうち6~7割以上を占めます。蛋白結合率が90%以上の薬、分布容積が2L/kg以上の薬、分子量が数万の薬などです。だから透析でクリアされる薬の方がうんと少ないですし、そのクリアされる程度は末期腎不全患者の腎臓の機能と同レベルであり、健常者とは全く異なります。透析患者は腎排泄性薬物が最も蓄積して中毒性副作用が非常に起こりやすい状態にあると思ってください。


Q.水を飲み過ぎて腎うっ血を悪化させることはありませんか?

A.その通りです。講演でも述べましたがループ利尿薬が投与されているような心不全に伴う腎うっ血などで飲水励行はしてはいけません。


Q.利尿剤服用中の高齢者の癌性疼痛で使用するNSAIDsは可能な限りアセトアミノフェンにするか、オピオイドだけでコントロールしていくべきでしょうか?

A.患者さんによって異なります。米国ではアセトアミノフェンとオピオイドのみで疼痛管理していました。僕を指導してくれた指導薬剤師はアセトアミノフェン625mg錠を頓服で1日6回分まで服用可という処方をして、がん患者が0~2錠しか服用していなかったら疼痛コントロールできていると考え、4~6錠まで増えれば、疼痛緩和不十分として麻薬の増量を進言していました。日本ではトラマドール、トラムセットなども含んでいいと思います。


Q.CKD患者でリスク低下の理由は何でしょうか?

A.CKDでリスク低下は喜ばしいことですが、リスク低下があっても腎機能は加齢とともに悪化する一方ですので、悪化速度を緩める治療法しかありません。その中で最も注目されているのがSGLT2阻害薬です。糖尿病ではGLP-1作動薬も期待されていますが、食欲不振によって体重減少するのが悩ましいです。


Q.平田先生、今回も素晴らしい講演をありがとうございます。SCrの検査値、海外ではJaffe法、日本では酵素法で検査してるので、添付文書のCCrによる投与量を確認するのに0.2を加えて補正するって考え方があったと思いますが、現在もこの考え方は有効でしょうか?

A.ありがとうございます。有効ですが、手間のかかる方法ですのですべての薬に適応するのではなく、カルボプラチンなどのハイリスク薬だけで十分だと思います。


Q.術後疼痛に短期使用されるNSAIDsはどの程度の腎機能まで許容されると考えていいのでしょうか?

A.わかりません。患者さんの病態によると思います。個人的には若くて腎臓病のない人ではあまり気にする必要はないと思いますが、弱った高齢者ではあまり使ってほしくないです。


Q.実際に医師へSGLT2への変更などを処方提案していくにあたって、どのような患者さんに優先順位をつけていくべきなのかなと気になります(先ほどの結果ではnon-DMの人や腎機能が良い人の方が改善効果がありそうですが、病態考えるとそうでないですよね)

A.栄養状態の悪い人は避けてもらわねば栄養状態悪化で予後不良になります。
non-DMのほうがよかったという言い方は実はよくありません。だってnon-DMの方がDMと比較して有意に効いたというデータじゃないですから。これは僕の言いすぎですが、ハザード比がより小さかったからそのような表現をしてしまいます。腎機能の良い人の方が効くのはこの薬は尿細管に作用するのだから当然です。CKDの適応を取得したダパグリフロジンではCKDの診断指標のヒートマップでオレンジまたは赤の方で末期腎不全(おそらく効かない)を除いた方が投与対象になります()。


Q.ケトアシドーシスに近づく印象ですが、ケトーシスは総合して予後改善と理解して良いのでしょうか?

A.それはYurista先生の意見()を引用しただけです。僕自身は非糖尿病のケトーシスはデメリットではないと思いますが糖尿病で、厳格な糖質制限をやったり食事がとれなくなるとケトアシドーシスが起こる可能性がありますので、糖尿病患者にSGLT2阻害薬が投与されたときには「厳格な糖質制限をやらないよう」指導する必要があると思います。ケトアシドーシスは死亡することもよくある非常に怖い副作用です。


Q.SGLT2阻害薬を導入時にeGFRが少し下がる現象は、eGFRがどのくらいの数値まで許容されますか?eGFRが20なら導入は怖いと思います。

A.ダパグリフロジンに関してはeGFRが20mL/min/1.73m2でSGLT2阻害薬を導入してはいけません。尿細管に作用する薬ですから末期腎不全には使えませんが25mL/min/1.73m2以上あれば開始することができ、末期の15mL/min/1.73m2未満になれば使えなくなると理解してください。この場合もくれぐれも医師に「15mL/min/1.73m2未満になりましたので中止してください」というようなデジタル薬剤師(ワンポイントの値だけで判断する人のことを僕はデジタル薬剤師といって未熟だと思っています。患者様の病態の変化は1ポイントではなく線でとらえる必要があります)にならないでください。Sugiyamaら1)の報告によるとSGLT2阻害薬を投与後、eGFRが20%以上低下しても、その後の腎保護作用が認められたとされていますが、このような症例は十分、注意を払う必要があると思います。

1)Sugiyama S, et al: J Clin Med Res 12: 724-733, 2020


Q.SGLT2阻害薬を服用されている患者さんで、尿路感染症や膀胱炎と診断されて抗生剤を処方されている患者さんが、結構な数いらっしゃるのですが、患者さんは排尿に違和感を感じて診断を受けているものの、実際は性器感染という方もいらっしゃるのではと感じました。

A.症状だけ聞いて抗生剤を処方してもカンジダ膣炎や陰茎カンジダ症には無効ですから、性器感染症または膀胱炎が疑われた場合には早期に婦人科、泌尿器科医に診ていただき、抗真菌薬(細菌性の場合は抗菌薬)を適正に投与していただく必要があります。

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)