バラシクロビルによる薬剤性腎障害を発症しやすい人は①70歳以上、②体重40kg以下、③女性、つまり小柄な女性高齢者だ。症状は①尿量減少、②呂律が回らず会話が成立しない意識障害、③異常行動・言動となっており(図1)、②③はアシクロビル脳症だ!しかも発生時期は夏が多い(図2)。バラシクロビルによる薬剤性腎障害は溶解度の低いアシクロビルが尿細管で結晶を析出して、尿量が減少あるいは無尿になることによって起こる。小柄な人で飲水量の少ない人、あるいは発汗量が多い人で起こりやすい。それに追い打ちをかけるのがNSAIDsやRAS阻害薬、利尿薬の併用だ(図3)。帯状疱疹による痛みはせいぜい1週間程度だからNSAIDsを投与するくらいならトラマドールのほうが安全じゃないかな?腎障害を防ぐには薬剤師による飲水励行の服薬指導が極めて重要になる。バラシクロビルの服用期間は1週間程度だから、夏季は1回200mLをこまめに飲んでいただこう(図4)。汗をかいて褐色尿ではなく、無色に近い尿にしていただくために500mLのペットボトル×3本/日を目標(水を飲んでくださいだけじゃわかんないでしょ)にしていただこう。栄養状態不良で小柄な高齢者が帯状疱疹に罹患しやすいので腎機能の把握が重要なのに、皮膚科医のほとんどが採血すらしなのはとても悩ましい。腎機能が読み取れない痩せた高齢者では、バラシクロビルの投与量に悩むくらいなら、腎排泄ではないアメナメビルへの処方変更の提案をした方が無難じゃないかな。



