平田の考える薬剤師の定義は
有効かつ安全で
目の前の患者さんに配慮した最高の薬物療法を
責任もって提供する人
その前にすべての医療人に必須なものは患者さんに対する「やさしさ」だと思う。
神様は万人に試練を与えるが、必ずチャンスも与えてくれる。
時には試練がチャンスになることだってある。
またチャンスを与えられているにもかかわらず、その時に頑張らなかったら、神様は必ず後でもっとつらい試練を与えてくれる。
僕は特定の宗教にこだわりはないけど、
僕の心の中には神様はいると思っている。
これを知るもの
これを好むものに如(し)かず
これを好むもの
これを楽しむものに如かず
と孔子が言っています。
何かに上達したければ、好きになり、楽しんでやるのが一番!ということです。
みなさん、仕事の中で自分の好きなこと、夢中になれそうなものを見つけてください。
でも、どうしても見つからないなら、
少し旅にでも出て
気分転換するのもいいかもしれない。
自分を変えようとしたら、一歩踏み出すこと、そして継続すること。
止まっていれば変わることはなく、みんなに追い抜かれるだけだ。
誰かの役に立てること、そして正しいと思ったことを情熱をもって続けられたら幸せだよね。
患者さんを診る力と薬を見る力の両方に
情熱を注ぎ続けることができれば、
誰でも力のある薬剤師になれると思う。
6月にイタリアのミラノで開催されるEDTA-ERA(European Renal Association – European Dialysis and Transplant Association欧州腎臓・透析移植学会)に参加してみませんか?参加費は330ユーロで5万円足らず必要ですから、高めですが、国際学会の参加費はこんなものです。英語がうまく話せなくてもいいですが、少なくとも日頃から英語論文を読んでいる方なら、スライドやポスターを見れば内容は理解できます。僕は2019年6月にブダペストで開催されたEDTA-ERAに参加しましたが、この学会は日本でいえば日本腎臓学会の臨床分野+日本透析医学会+日本腎臓病薬物療法学会に一度に参加したような内容で、透析医学会のようなお祭り気分も味わえる魅力的な学会でした。最新の話題満載で、しかも演者は世界でトップクラスですので、日本での学会以上に僕のテンションは上がりました。この時に得られたSGLT2阻害薬の腎保護作用・心保護作用の最新情報だけでなく、腸内細菌叢などのマイナーな情報まで幅広いテーマを拝聴できて、ずいぶん勉強になりました。このときから、EDTA-ERAには毎年参加しようと心に決めました。
実はブダペストの翌年の2020年にはミラノでの開催が決まっていたので、エクスペディアやトラベルコといった最安値チケット、ホテルを探すサイトを駆使して航空機を手配し、そこそこのホテルを選んでミラノーフィレンツェーローマの旅程を組みましたが、コロナ禍のためイタリアは非常に悲惨な状態になったため、残念ながら中止。でもこのミラノ大会が今年の6月15日~18日の予定で開催されるのです。なんといっても魅力のあるイタリアですから、ミラノだけでなくぜひ、これを機会にローマなども観光してみてはいかがでしょう?
英語力、英会話に自信のない方はこれを機会にNHKラジオ英会話やDMM英会話などを始めて、翌年の2024年5月23~26日のストックホルム大会に参加(ぜひとも演題を出してください)してもいいかもしれません。6月のミラノ大会に参加される方がいれば、連絡ください(このブログの右側にある「カテゴリ」→「はじめに」→「ごあいさつ」に平田の連絡先があります)。ミラノで合流し、一緒にイタリア料理を楽しみながら情報交換しましょう。
最近の若い人たちは物事をメリットかデメリットだけで判断しがちな人が増えつつあるように思える。 いいか悪いか、デジタル(0か1)でしか考えられない。CKDか非CKDかだけ?いつもCCrが50以上の人が1度だけ、それも明らかな脱水によってCCr<30未満で、即、添付文書通りに疑義照会をやって、ドクターに怒られる。僕はこんな人をデジタル薬剤師と呼ぶ。善か悪かだけ?
若者よ、昔のレコードよりも、生で見るライブよりも、
デジタルのMP3がいいに決まってると思っていない?
僕はこれまでにも関西腎薬や熊本腎薬を結成してきました。そしてそれらの講演会では必ず講師の先生には若手の薬剤師に質問してもらっていました。僕が若かったときには講演会を聞いたときに誰からも質問がなければ、たとえ知っていることでも知らないふりをしてでも必ず質問をしていました。だって何の質問のない講演会なんて、全然面白くないし、講師に失礼だからと思っていましたから。
今回の薬剤師塾では、久しぶりに女性の先生(名前は出しませんが、覚えていますよ)が薬剤師塾で勇気を振り絞って(たぶん)、質問してくれました。本当にありがとうございます。すごく感謝しています。顔を見せて、質問するって恥ずかしいかもしれないし、誰も何も言わない中で1人だけ、声を出すって、本当にやりにくいですよね。だって日本人ってみんなと違うことをやるっていうことを容認しづらいヘンな国だから。
でも誰もが黙って、みんな何を考えているのかわからないっていうのはおかしいとは思わないですか?聞きたいことがあったら、「チャットやアンケート欄に書いたらいつでも答えてくれるんだから、声に出さなくてもいいじゃん」という考えは、いいかげんもうやめにしないですか?チャットやアンケートの短い質問内容じゃ症例の全体像がつかめないから、クリアカットな答えが出せないこともよくあります。症例の薬物療法について聞かれることがよくありますが、もしもその症例が90歳以上だったら?飲んでる薬が10種類以上あったら?血圧が異常に低かったら?心拍数が120/分以上だったら?BMIが18以下の痩せた症例だったら?によって答えは大きく変わるかかもしれないのです。でもディスカッションして言葉のキャッチボールをすればそのような情報があるかないかくらい、分かるじゃないですか。
「薬剤師塾」っていう名前を付けたのは一方向性の講演・講義とは違って、講師が身近にいて、何でも聞きたいことが聞ける、講師がおかしなことを言っていたら「それは間違ってる!」と言い返せるような熱いやり取りができる場、つまり単なるレクチャーではなくインタラクティブなものにしたいからです。そうすれば若い人、初心者の人もいつかその熱いディスカッションの輪の中に入ってみたいと思ってくれて、そのために勉強しようと思うようになればいいなと思っています。そして、いずれは若い人たちが僕に代わって薬剤師塾の講師を務めてくれるようになるように育ってくれたら、なおさらいいなと思っているからです。
これからも皆さん、お願いですから黙ってないで、気軽に声に出して質問をしてくれませんか。「薬剤師塾」を盛り上げるためにも。一方向性のレクチャーでは教科書を読むのと一緒で、面白みがありません。「本当にわからないこと」を本当に知りたい人たちのために、「薬剤師塾」はあるんだと思ってください。お願いします。
でもこんなことを言うと、チャットすらできない雰囲気の講演会になってしまうのは最悪です。いずれ声を出して聞きたいけれど、今はやっぱり声を出す勇気が今はないので、という方はチャットでもアンケートでもいいですから、質問してください。何にも出てこない薬剤師塾はやっても意味ありませんから。意味のない薬剤師塾であればやめた方がいいですから。
努力って辛いよね、頑張るって辛いよね。でも頑張らなくては一流な薬剤師にはなれない。 その以前に薬剤師の仕事を面白くないと思っていては一生懸命にはなれない。
面白いからこそ頑張れるんだ。
興味を持つからこそ一生懸命になれるんだ。
でも患者さんや他の医療者を好きになれない人はどうやっても、 薬剤師の仕事を面白いと思うことはできないだろうね。仕事が面白くなるための努力、 いや努力じゃなくてちょっとした工夫、呼び水のようなものかな?これはちょっとだけ必要だと思う。
【1位】日本腎臓病薬物療法学会誌グリーンブック(特別号改訂4版, 2022)
日本腎臓病薬物療法学会一覧表委員会編集 500ページ以上 学会員には無料で送付されます 。
2022年8月までに日本腎臓病薬物療法学会に入会するとこのグリーンブックだけではなく、腎機能別薬剤投与量POCETBOOK(3版は¥3,960ですが今年改訂される4版はもっと高価になるかも?)が送付されます!
僕が一番重宝している本がこれ1冊。この1冊が手元にあれば「薬についての論文」を安心して書けます。腎機能別用量に関して掲載されている薬物数は本号では2,145品目でおそらく世界最大級です。読書というよりあればとても便利な辞書のような存在と言えるでしょう。
一覧表委員会委員長がいい加減な平田から、まじめで律儀な浦田元樹先生に変り、そして白鷺病院で独自の「透析患者の投薬ガイドライン」を作成している古久保拓先生、そしてわが学会理事長の竹内裕紀先生と平田の4人のメンバーで定期的に「あーでもない、こーでもない」と審議して改定し、会員の皆様からのパブリックコメントをいただくことによって進化を続けている「一覧表」です。2012年1月に日本腎臓病薬物療法学会が設立されて以来、その学会誌 (抄録集以外) には毎号、「腎機能別薬剤投与方法一覧」を薬効群ごとに順番に掲載し、2年間かけて全薬効群の医薬品を掲載しています。そしてそれが2年に1回発刊される腎機能別薬剤投与量POCETBOOK (じほう) に反映されます。
ただしこのグリーンブックの真骨頂は左側ページの「腎機能別薬剤投与方法一覧」ではなく右側ページにあると平田は信じています(図)。右側ページには各薬物のクリアランス、分布容積、尿中未変化体排泄率、バイオアベイラビリティ、蛋白結合率、消失半減期などの薬物動態パラメータに加え、代謝経路、CYPの分子種、CYP阻害・誘導作用、トランスポータの基質および阻害・誘導などの情報、さらには「特記事項」として有効性・安全性に関する情報を濃縮して記載しています。これらの内容は添付文書、インタビューフォームだけではなく様々な論文を参考にして、内容が精査されており、年々、内容が濃くしかも正確になっています。ということはこれ1冊あれば患者様の腎機能や体格を考慮しつつ様々な薬物の個別投与設計が可能になります。TDMにも欠かせませんが、より詳細な情報に関しては古久保拓先生が作成している白鷺病院の「透析患者の投薬ガイドライン」がおすすめです。
僕は「薬物動態」について講演することがよくありますが、実際のところ薬物動態学は得意ではありません。理論的な説明が不得手なのです。でもこれだけの薬物の動態パラメータをインプットしていくうちに、自然とNSAIDsのPBRはほぼ99%に近いので、Vdはアルブミンにトラップされてそんなには大きくならない。だからVdは小さいけれども透析では抜けっこない。ベンゾジアゼピンもPBRに関してはほぼ同じようなもの。だけど投与量が少ないからアルブミンの競合阻害は考えなくていいよね。向精神薬はBBBを通るから脂溶性の高いものが多いので尿中排泄率は一般的には低いよね。でも中にはプラミペキソールのように尿細管のOCTによって尿細管分泌されると、例外的に尿中未変化体排泄率が高いものがあるよね。ということがナチュラルに理解できるようになりました。英文法について教えることはできないけれど英語は話せるような感じです。皆さん、グリーンブックは持っているけど、使っているのはPOCETBOOKだけでは情けないです。右側ページを活用してこそ、薬剤師の真の力をあらわすことができるのですから。またグリーンブックがあれば前述のように論文を書くとき、速やかに薬のコアな情報が得られるのでこれほど重宝するものはありません。重宝さから比較すると僕の場合、①グリーンブック、②PubMed、③医中誌、④UpToDate、⑤グーグル検索の順ではないかと思っています。というか、この一覧表は記憶力の極めて悪い自分自身のために、僕が作り始めたものですから、使いやすいのは当たり前ですけどね。薬剤性腎障害の分類も6ページ以上にわたり載っていますのでこれもお得です。
【2位】腎臓のはなし 130グラムの臓器の大きな役割
坂井建雄 新書 ¥902
解剖学の日本の大家、坂井建雄(たつお)先生の著した腎臓の本です。なぜ2つ合わせて250gくらいしかない小さな臓器に1日で1500Lもの大量の血液が流れ、片側100万個ずつある糸球体で1日150Lの原尿を作り、最終的に1.5Lの尿を作っているのでしょうか?それはとりもなおさず糸球体が濾過し、尿細管が再吸収することによって体液の恒常性を保つためということは皆さん理解していると思います。
尿中の成分は食べた内容によって、住んでいる環境によって、時によって全く変わります。なぜなら大量にろ過された原尿の中から必要なものを完璧に尿細管で再吸収し、不要なもの(余剰な電解質・酸・水・不要な薬物・不要な老廃物など)はすべて腎臓が排泄しているのですから。水を多く飲めば尿量が増える。塩をたくさん摂れば喉が乾いて大量の水を飲み、大量の尿中に溶かすことによって余分な塩を排泄する。でもこんなスーパーマンのような仕事をこなしている腎臓にも限界があります。①塩を1日50g以上摂取すれば血清Na濃度を140mEq/Lに保つのがむつかしくなるし、②1日30L以上の水を飲むと血清Na濃度を140mEq/Lに保てなくなる。③水を飲めなければ、極力尿量を少なくして脱水になるのを防いでくれますが、尿量を1日500mL未満にすることはむつかしい。このように腎は脆いため、原尿産生能が150L/日、つまりGFRが100mL/minと極めて大きな予備能を持っているのだということが理解できます。
この腎臓のできる仕事の限界はどのようなもので規定されているのでしょうか。どうやって必要なものを再吸収し、不要なものだけを尿中に排泄しているのか、そしてその能力と限界について理解するはやはり腎臓の解剖学的な特徴を知る必要があるのです。近位尿細管の管腔側の表面は草原のごとく繊細な微絨毛で埋まっています。ブドウ糖もアミノ酸もペプチドもアルブミンも必要な栄養素をみじんたりとも逃がさないためです。でもどうやってブドウ糖やアミノ酸は再吸収されるの?じゃあ糖尿病になって高血糖になると尿糖が出るのはなぜ?腎炎になってアルブミンが漏れ出るのはなぜ?糸球体内圧が通常の50mmHgを超えてしまうと大量のアルブミンが漏れ出し、尿細管がその大量のアルブミンを再吸収すると疲弊しますが、じゃあアルブミンはどういうときに漏れ出るの?どうして尿細管がたくさんのアルブミンの再吸収をするときに疲弊して障害を起こすの?
皆さんは尿細管が必要なものを再吸収するためにあるということは知っていると思いますが、それぞれ、近位尿細管の役割は?ヘンレループの役割は?遠位尿細管の役割は?集合管の役割は?について説明できますでしょうか?マクラデンサ(緻密班)はどこにあって何をしている?腎髄質の浸透圧が高くて皮質の浸透圧は低いのはなぜ?じゃあその浸透圧はどれ程度までコントロール可能なの?尿量や尿中のNaやK, Caなどの濃度を調節しているのはどこ?海水魚が高ナトリウム血症にならず、淡水魚が低ナトリウム血症にならないのはなぜ?渡り鳥は数千kmも飛ぶこともあるけど、その間、尿はどうやって排泄するの?これらはクイズではありませんが、この本1冊を読むことで難なく回答することができるようになると思います。
さらに腎臓はこのような重労働をしているためか、脆いですし、一度悪くなると基本的に治りません。この脆い臓器の腎臓を虚血や腎毒性薬物から守っていただくためにも、腎臓のことをより深く理解していただきたいのです。僕自身が解剖学なんて薬剤師には必要ないと思っていましたが、完全に間違っていました。この本はまさに「目からうろこ」です。よく理解している坂井先生が書いたから、素人にも分かりやすく解説されていますし、医学部・薬学部の学生だけではなく、すでに腎臓の専門医になっている先生方にも勉強になる本だと思います。だって、日本腎臓学会誌にも坂井先生は「腎臓の構造と機能」について何度も寄稿されていますし、日本腎臓学会学術大会でも数年連続で講演をなさっていますから。これを読むことによって理解できていなかったことが理解でき、読み終えた後には巨大なジグソーパズルが完成したかのような爽快感と軽い疲労感を感じさせてくれました。これが1,000円足らずで購入できます。僕はこれを読んで以降、熊本大学薬学部臨床薬理学分野に配属された学生の教科書に指定しました。これを読み終えた方はアドバンス版としてカラー図解 人体の正常構造と機能〈5〉腎・泌尿器【改訂第4版】(6,600円)をお勧めします。豊富なカラーイラストや写真が満載されていますので、さらに腎臓の機能についての理解力が高まります。