2026年3月12日 X投稿 閲覧者13,722人

 僕が小学生のころの1960年代に喘息、アトピー、花粉症の子供を見たことも聞いたこともなかった。そして20年後、1980年代に恵まれた僕の2人の子供の同級生の半数近くがこのようなアレルギーマーチになっていた。このたった20年間に何が起こったのであろうか?<

 早めに登場した経口抗生剤のアモキシシリン、セファレキシン、セファクロルなどの吸収率は極めて高い。もともとβラクタム系抗菌薬は親水性が高いため、消化管の脂質二重層を通過できないはずだが、立体構造がジペプチド構造に似ていれば小腸上皮細胞に存在するペプチドトランスポータPEPT1の基質としてたまたま認識されて吸収されるからだ。

 しかし第3世代セフェムはピボキシル基などの脂溶性エステル置換基をくっつけて脂溶性を高めて無理やり吸収率を上げさせたものばかりだ。外来などの軽症例であればグラム陽性菌に効果のある第1世代抗菌薬が最も使う頻度が高いはずなのに、なぜこんなにたくさんの第3世代セフェムが必要なのかも理解できない。これらの第3世代経口セフェム系抗菌薬は吸収率が低いことが大問題で、セフジトレンの吸収率14%ということは300mg/日を経口投与しても42mgの注射薬を投与したに過ぎないことになる。あの強力なピペラシリンは12g/日投与することを考えると1/300の投与量なので効果が期待できないだけでなく、吸収されなかった86%が腸内細菌を殺菌して腸内細菌叢が激変する可能性がある。

 これに関しては英国ブリストル大学の報告で2歳までに抗菌薬を投与されていた小児は7.5歳になるまでに喘息(OR1.75: 95%CI 1.40-2.17)を発症する率が有意に高く、2歳までに4回以上投与された場合には、喘息(OR2.82: 95%CI 2.19-3.63)だけでなく湿疹(OR1.41: 95%CI 1.14-1.74)、花粉症(1.60 95%CI 1.21-2.10)などのアレルギー性疾患を発症するオッズ比が有意に高かったことが明らかにされている。

 日本の生育医療研究センターからの報告もほぼ同じだ。2歳までの抗菌薬の使用と5歳におけるアレルギー疾患(喘息、アトピー、鼻炎)の有症率との間には有意な関連があることが報告されている。厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課が発行している「抗微生物薬適正使用の手引き」の以前の版には感冒の時に抗菌薬を欲しがる患者への対応が記載されていたが、今年改訂された第4版では抗菌薬投与を避けたために起こるリスクを考慮してか、このような記載は消えているが参考にしてほしい。

 2歳までの乳幼児期の感冒に対する抗菌薬投与は母親が医師に投与を強く希望し、医師も断り切れなくなって処方されることが多いそうだ。重症な細菌感染が強く疑われない限り、今回提示した図などを利用して母親に指導できないものだろうか?本当に必要なら点滴静注の抗菌薬を投与すればよいし、経口投与するにしても吸収率が90%以上と広いアモキシシリンやセファレキシンなどで留めてほしい。第3世代経口セフェムなんて、要らないと個人的には思っている。

 

 

 

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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