8月13日(木)開催の、「症例に基づいたCKD患者の薬物適正使用(初心者編)」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q.透析患者のピロリ菌除菌の減量について、ボノサップ400を例に教えてください。また、消化器の医師は除菌が成功すればH2に変えて継続するほうが、P-CAB継続による胃酸分泌抑制の影響や良性腫瘍のリスクを考えて変更することを勧めていますが、透析医側は、PCAB(またはPPI)を長期使用のまま変更することがありません。どんな考え方がいいのでしょうか。

A.透析患者ではアモキシシリンを 1日量500 mg(250 mg 1日2回)などの低用量レジメンが有効性・安全性の面で妥当と報告されています。アモキシシリンは透析で除去されるため、透析日は透析後に投与するとよいでしょう。

 P-CAB(カリウム競合型アシッドブロッカー)やPPI(プロトンポンプ阻害薬)の長期投与は、逆流性食道炎の再発防止や、アスピリン・NSAIDs(消炎鎮痛薬)による胃潰瘍・出血の予防に不可欠な一方、胃酸を長期間強力に抑え続けること特有の副作用やリスクも伴います。長期投与によるデメリットは胃酸分泌が強力に低下することによるCa、Fe、Mg、ビタミンB12などの吸収が悪くなるといわれています。特に低マグネシウム血症による重症不整脈発症(トルサード・ド・ポアンツになることも)、ビタミンB12欠乏、カルタン、ホスレノールなどのリン吸着薬の効果低下などの報告が多く、しかも深刻な副作用が多いです。ほかにもクロストリジオイデス・ディフィシル感染症(重症になると偽膜性大腸炎を発症します)、などの原因になりますので、PPIについてよくご存知の消化器の医師は、長期投与を避けたいのだと予想されます。P-CABやPPIの長期投与により、良性腫瘍である「胃底腺ポリープ」などの数が増えたり大きくなったりすることが知られています。これらは基本的に良性であり、薬をやめると小さくなることも多いですが、長期間の服用には注意が必要だそうです。

 日本の透析患者は高齢化が顕著なこともあり、胃が脆弱な方が多く、また心血管疾患予防のための低用量アスピリンや抗血栓薬の服用に伴う消化性潰瘍の再発抑制などのため半数近くの方がPPIの長期投与されている透析施設もあります。重度の逆流性食道炎(びらんや潰瘍)でやめられない患者も多いのです。

 どちらの考え方がよいのかは患者さんの病態、そして医師の判断によると思いますが、P-CAB(またはPPI)は本来ならば4~8週間までの投与となっていますが、長期投与は様々な問題があります。消化器の医師が言うように除菌が成功すれば、H2遮断薬を投与すると、これはPPIと異なり血中濃度依存性のため、即効性がありP-CABやPPIのように常時、胃酸の分泌を強力には抑えないので、これで消化器症状を抑えることができれば様々な有害事象が防げる可能性があります。

 これは私見ですが、私自身が胃潰瘍になったことがあり、PPIを十数年続けていました。何度もやめようと思いましたが、やめると胃がむかつき、口臭がするのでやめられなかったのです。でも消化器内科で腸内細菌叢を調べると、酪酸菌などのプロバイオティクスを常用し、努めて食物繊維を摂っているはずの私の腸内細菌叢は判定「C」で「ビタミン産生菌が極めて少ない、ビタミンB12産生菌が欠乏状態、ロブゼリアなどの酪酸菌が少ない、有害菌が多い」という結果でした。熟慮した結果、PPIをやめてファモチジン20mgを胃症状のあるときだけ頓服し、症状があまりにきついときにはP-CABを頓用しており、月に数回、ファモチジンを頓用することでなんとか収まっています。

 私のように食事や酪酸菌、ビフィズス菌、ヨーグルトや野菜の摂取で腸内環境に気をつけていても、こんな腸内細菌叢になってしまうので、高カリウムのために野菜・果物を摂れない、溢水のため水分を摂れない、免疫力が低下しているため抗菌薬がよく投与される、催便秘薬のためにひどい便秘になってしまう透析患者の腸内細菌叢は細菌数自体が極めて少ない、腸粘膜を守る酪酸産生菌や短鎖脂肪酸産生菌が極めて少ないのです。それによって尿毒素産生菌が増えて、心血管病変が進行し死亡率も高くなっていることを指摘する専門家もいます。

 PPIは消化器症状をめざましく改善してくれる素晴らしい薬ですが、長期投与によって細菌・ウイルスの侵入を許し、カチオンの吸収悪化などによる全身への弊害を十分考慮して処方すべきと思っています。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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