あまり期待していなかった松江のゲストハウスだったけど、そこで隣の部屋でマラソンに参加するインド南部出身で東京のIT企業に勤めるDeepak君と意気投合。オーナーさんも親切で会場まで僕たちを車で送ってくれました。僕のマラソンの結果は折り返し地点までは2時間18分と快調だったけど、33km地点で古傷の左膝が痛み始め、やむなくそれ以降はほとんど歩いてゴール。記録は5時間18分と散々、70歳以上の部門では98人中42位でした。 Deepak君は僕より1時間早くゴールしたのに僕を待ってくれてて、一緒に食事してお互いが東京、神戸に来た時には会うことを約束。両国での5月場所は2人で枡席で見ることになるだろうね。ちなみに彼は僕の息子たちとほぼ同じ年齢だよ。


理想の薬剤師像って何だろう?僕は100床未満の小さな病院薬剤師だったので、病床数の制限が撤廃された40歳になって初めて病棟での服薬指導ができるようになった。その時には何となく明るくて、やさしくて、いろんな話を聞いてくれて、ドクターに言えなかったことを伝えてあげて、一生懸命、真面目に接してくれる薬剤師になりたいと思っていた。でもほんとの僕は決して明るい性格ではない。病棟に行く前に表情を確認して優しく、明るく見えるような薬剤師像を演じていた。そうすると病棟に行くごとにこれが徐々に普通になってきて、無理をしなくても優しく明るい薬剤師になれたような気がする。中には気難しくて、医師やナースも嫌がっている患者の病室に行くと「帰れ!」と言われたこともあった。でも何度も足を運び、会話をしてみるとそんなに性格の悪い患者さんなんていない、病気のせいじゃないのかなと思った。そのうちその患者さんが医師に言いたかったことを聞き出して伝えることができるようになった後、その患者さんから「あの薬剤師の兄ちゃん、呼んでくれへんか」とご指名をいただくことがあった。内心、「やったぜ」とうれしくなったものだ。

今は「薬を飲みたくなるような指導をしてくれる」薬剤師ってホントに大切だなと思っている。だって薬嫌い、薬を一生飲むなんてとんでもないと思っている人は多いけど、難しい薬の作用や副作用を患者さん目線で分かりやすくかみ砕いて説明してくれる技量によって「薬を飲みたくなる」ようにするって、薬のことをしっかり勉強にした人にしかできないホントに重要なことだと思ってる。
透析導入をほぼ40%減少させる驚異的な腎保護作用、心血管病・心不全入院などをほぼ30%低下させる驚異的な心保護作用を示すSGLT2阻害薬はもともと近位尿細管のナトリウム‐グルコース共輸送体2、つまり近位尿細管のS1セグメントにあるSGLT2を阻害する薬だけど、腎機能正常者に投与してもS3セグメントにあるSGLT1(図1)が頑張ってブドウ糖を再吸収するから50g/日の非糖尿病ではブドウ糖を排泄させる薬理作用に過ぎない(図2)。だけど非糖尿病CKD患者、非糖尿病心不全患者でも糖尿病合併患者に劣らない効果を示す。その薬理作用は当然、尿糖排泄促進や糸球体過剰濾過軽減、アルブミン尿軽減だけでは説明できない。


最近は貧血改善作用や、長寿遺伝子SIRT1活性化、尿酸値低下作用などとの関係を重要視する専門家も出てきたけれど、個人的にはケトン体のβヒドロキシ酪酸の血中濃度上昇が一番、SGLT2阻害薬の多面的な作用について説明しやすいと思う(図3)。ブドウ糖の貯蔵エネルギーは骨格筋グリコーゲンが300gと血糖を維持するための肝グリコーゲンが100g、骨格筋の1200kcalって1日足らずのエネルギーに過ぎないじゃん!だけど体脂肪は男性で20%足らず、女性は妊娠したときに胎児を守るために30%足らずの体脂肪を持っている。体脂肪は水分も含むことを差し引いて10kgあるとすると9kcal×10kg=90,000kcalでほぼ60日分のエネルギーだ(図3)。我々の祖先はもともと狩猟採集生活をしており、主な食料は肉・魚と木の実などの低糖質食で秋には甘い果実を食べて脂肪を蓄え、長い冬を越していた。そして女性に皮下脂肪が多いのは食料のない冬でもグリコーゲンではなく脂肪を貯蔵エネルギーとして使い胎児を守っていたからだろう。最後の氷河期が終わって、5,000年前(イスラエルの歴史家で哲学者でもあるユヴァル・ノア・ハラリ氏による「サピエンス全史」によると12,000年前に農業革命が起こったとしている)の新石器時代になって農耕・牧畜が始まり、糖質である穀物を主食にしはじめ、ブドウ糖がエネルギー源の主役になったのではないだろうか(図4)。そして現在、それによる弊害、肥満、2型糖尿病、高血圧などの増加に苦しんでいる。脂肪を分解して得られるケトン体は生体にとって実に様々な有益な作用を持っており、それらの多面的な作用はヒトが病気をせずに健康で長生きするために必要なものばかりだという話は次回にしよう。


SGLT2阻害薬はもともと尿糖排泄を促すことによる血糖降下薬であった。血糖降下作用はそれほど強力ではないし、脱水(4.5%)、性器感染(高齢女性で多く3.8%)、糖尿病性ケトアシドーシス(糖尿病患者のみで起こり0.22%)も起こしやすい(図1)のでDPP4阻害薬などと比べて決して、使いやすい薬ではない。

しかし様々な大規模研究によって透析導入をほぼ40%回避でき、心不全入院・心血管合併症発症をほぼ30%低下させ、全死亡も有意に改善した、今まで予後を改善する治療薬のなかったHFpEF(左室肥大による拡張不全が原因の患者が多いと言われている)も有意に改善した。駆出率に関らず効果を示す薬物がこれまでにあったであろうか?しかも投与初期には利尿作用が認められ、脱水から急性腎障害が増えるという従来薬の常識を覆し、逆に急性腎障害を25%も発症を抑制してくれ(図1)、RAS阻害薬やMRAとの併用による高カリウム血症も防いでくれる。ただし日本の高齢者は痩せがちであるため、投与したくてもできない患者が一定数いることは確かだ(図2)。

でもそれら以外の投与可能な患者さんには投与してほしい。ようやく糖尿病での処方率が上がってきたと聞くが、CKD/DKD、心不全の適応がありながら投与を躊躇している医療者が多いのは残念、というよりこれだけエビデンスのそろった薬を投与しないのはイナーシャ(怠惰)というべきではないだろうか(図2)。日本腎臓病薬物療法学会ではSGLT2阻害薬の効果、副作用とその防止法、シックデイ対策などを若手薬剤師によるワーキンググループが作成した(図3、図4)。これらの内容は秀逸で極めて使いやすいので患者さんの理解度だけでなく、医療者の理解度もアップするはず。学会会員でなくても無料でダウンロード可能だ。平田もアドバイザーとして参加さえていただき、日本腎臓学会の先生方にも査読していただいたのでぜひ活用してほしい。
SGLT2阻害薬患者指導箋(JSNP版) | 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会


高血圧管理・治療ガイドライン2025では診断の基準値は140/90mmHgでこれまでと変わっていないが、降圧目標がすべての患者で130/80と厳しくなった(図1)。高血圧ガイドライン2019までは「75歳以上の人は少し緩めに」「たんぱく尿(-)のCKD患者の降圧目標は140/90mmHgで過降圧は腎機能を悪化させる可能性がある」と言われていたが、今回の改訂では75歳以上も「蛋白尿陰性のCKD患者も「130/80mmHg未満」の目標値を一律に当てはめたのはなぜなんだろう。

日本腎臓学会編: エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023ではCKDステージG1, G2でDM非合併CKDで蛋白尿(-)では140/90未満を推奨する(IA)、G3-G5で蛋白尿(-)では140/90未満を提案する(2C:図2)になっている。だけど高血圧ガイドラインでは腎機能に関係なくCKD合併高血圧の降圧目標は130/80mmHgでこれも1Aだが(図3上)、蛋白尿陰性CKD患者に関しての考察、フォレストプロットはなく、「蛋白尿の有無での層別化は蛋白尿陰性のデータがないため行えなかった」となっている。この1Aというのは推奨度、エビデンスレベルも最高レベルということなのに、異なる内容で1Aになっていることが悩ましい。
またCKD診療ガイドラインでは75歳以上の高齢者には150/90mmHg未満を推奨(2C)、忍容性があれば140/90mmHgを推奨(2C)だけど(図2)、高血圧ガイドラインでは収縮期130mmHg未満(1A:図3)で医師・薬剤師はどちらのガイドラインを参考にすべきなのだろうと迷ってしまいますます悩ましい。


2025年の高血圧管理・治療ガイドラインは序文で「日本人の血圧管理状況は先進国で最低レベルであるため、最新のエビデンスの説明だけでなく、国民、患者、医療者の血圧を下げる行動につながるようなガイドラインにする作成方針で作られた」ということから、血圧を下げることは重要ということを分かりやすく伝えるため、そして基準値の「140/90未満ならいいや」と積極的な治療をやめてしまう医療者・患者が多いことから、わかりやすく130/80mmHgに統一したのかもしれない。その分、このガイドラインには「ただし」という注釈(言い訳?)が多くなっている。だけど厳格降圧群(SBP<120mmHg)ではCKDインシデンスが3.53倍も増えることだけが問題だったSPRINT Study(図4)のことも考えてほしい。腎機能低下した高齢者に厳格降圧を強く推奨すると問題ありと思うのは僕だけだろうか?

RAS阻害薬だけでなくSGLT2阻害薬、MRAなど多くの腎保護薬には一過性の腎機能悪化initial dipを伴うが、CKD診療ガイド2024では「CKD患者にRA系阻害薬を投与すると、血清Cr値が上昇することがある。しかし、前値から30%未満の上昇なら、そのまま継続してよい。」記載されており、この内容はCKD診療ガイドライン2009の時代から変わらない。でもこれってどうなんだろう。2017年のSchmidtの大規模コホート研究ではRAS阻害薬を投与して血清Cr値の上昇が10%未満の人を対象にして10-19%上昇群では1.73倍、20-29%上昇群では2.58倍、30%以上上昇群では3.8倍以上末期腎不全(透析導入)になってしまう。死亡率もかなり上昇しているしRAS阻害薬は心不全治療薬なのに心不全罹患率も上昇してる。ただしCrが30%以上上昇した群はNSAIDs、利尿薬の併用が多かった。
Cr上昇はeGFR低下に置き換えてもほぼ同じことだ。「30%未満」の由来はCKD診療ガイドライン2009によると2000年のBakrisらのRCT12件のシステミックレビュー(Arch Intern Med 2000; 160; 685-693 )によるのだろうが、このレビューおそらくは蛋白尿(+)の患者を対象にした報告による。蛋白尿(+)あるいは糖尿病関連腎臓病であれば糸球体過剰濾過≒GFRの上昇を示しやすいため、GFRが30%以内の低下であれば継続してもよいという説明は納得できるが、腎機能の低下したフレイル気味の痩せた日本人高齢者で蛋白尿(-)、つまり多くは高血圧が原因の腎硬化症患者や両側腎動脈狭窄ではGFRの低下は急性腎障害発祥のリスクになるはずだ。RAS阻害薬も同様のはずなのに、蛋白尿有無にかかわらず「血清Crが30%未満の上昇は継続してよい」で本当にいいのだろうか?高齢CKD患者、特に腎硬化症の多い日本ではRAS阻害薬は血清Crを定期的に測定しないようなクリニックなどではRAS阻害薬を無理して使わず、急性腎障害を起こさないCCBのほうが無難なように思うのだが・・・・。




これは使い方次第というのが答えかも? 1993年のLewisらの報告以前はCKDの進行を阻止する手段は血糖管理・血圧管理以外になかった。ACE阻害薬のカプトプリルが腎機能の悪化を防ぐ初めての報告だった。DKDの進行を5~7mL/min/年遅らせた。すごい結果に見えるが、対象は血糖管理ができていない時代の1型糖尿病で腎保護作用を示す薬が全くなかった時代のことだ。2001年のIDNT trialでイルベサルタンはアルブミン尿を33%低下させ、プラセボ群・アムロジピン群に比し有意に複合エンドポイント(血清Cr値の2倍化、ESRDへの進行、全死亡)を抑制した。2002年のRENAAL試験ではロサルタンがアルブミン尿を30-40%減少させ、透析導入リスクを28%低下できた。これらのエビデンスレベルの高い臨床試験の対象者はすべてアルブミン尿、または蛋白尿(+)の患者であるということ、蛋白尿のない患者でのRAS阻害薬の腎保護作用は示されていないのだ。
RAS阻害薬投与によって輸入細動脈が拡張するため糸球体内圧が低下し、糸球体過剰濾過が軽減し蛋白尿は改善するがGFRは低下するので糸球体の負担は軽減するが、休ませすぎると腎機能が悪化することは知っておこう。だってRAS阻害薬は特に高齢者で起こりやすいTriple Whammyの1つだから、腎機能悪化には気をつけなきゃいけないよね。CKD診療ガイドラインでも75歳以上の後期高齢者でeGFR30mL/min/1.73m2未満の患者にはCa拮抗薬を勧めているように、個人的には腎機能を測定しない医師は蛋白尿のない高齢者(多くは腎硬化症?)にはRAS阻害薬よりもCa拮抗薬を使うほうが無難だよと思ってる。




2015年、2020年と続く安全性情報、適正使用のお願いは、酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について。長期投与による血中Mg濃度の異常上昇(高マグネシウム血症)に注意を促し、呼吸抑制や意識障害、不整脈、心停止といった重篤な副作用のリスクが指摘されている。酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症は,2012年4月から2015年6月までに29例(うち死亡4例)報告され,このうち19例(うち死亡1例)は酸化マグネシウムの服用と因果関係が否定できない症例である。 症例1:40歳代の統合失調症の女性で1,980mg/日のMgOが投与(開始日不明)されている患者が意識障害で救急搬送。血清Mg濃度18.4mg/dLのため緊急透析施行。意識状態の悪化,血圧低下,腸管虚血,敗血症に伴う代謝性アシドーシスおよび下血を認め死亡。 症例2:80歳代の統合失調症の男性で1,980mg/日のMgOの投与で意識障害、血清Mg濃度13.3mg/dLのためCa剤の投与、血液透析施行し、意識レベルの回復により退院。 不思議なのは両症例とも統合失調症で併用薬のほとんどが強力な抗コリン作用を持つものだが、これに関するコメントは一切ない。抗コリン薬が薬剤性便秘を起こしているはずだがこれについては全く触れられていないのだ。ある精神科院長の話によると抗コリン作用のある向精神薬が多用されるため腸閉塞・腸管穿孔は珍しくないそうだ。これによって便通過障害を起こしている患者(腸閉塞患者)は、摘便して腸管内圧を下げてから下剤を投与すべきなのだが、腸管内圧が高い状態で酸化マグネシウムが投与されると腸管が菲薄化して、バリア機能を失うため、吸収されにくいMgが血中に直接移行したために急激な高マグネシウム血症を起こしたのではないだろうか。透析患者の腸閉塞・腸管穿孔もカリメートやレナジェルなどの催便秘薬の併用によって起こりやすい(西原 舞, 平田純生, 他:透析会誌37: 1887-1892, 2004)。他の下剤もすべて腸管内圧を上げるが、腸閉塞・腸管穿孔を起こしている状態の腸管粘膜はバリア機能を失っているため、吸収されにくいMgが吸収されて10µg/mL以上の致死性の高マグネシウム血症を結果的に起こしてしまったのではないか。偽膜性大腸炎で経口バンコマイシンが投与されたら吸収されないはずのバンコマイシンが58µg/mLの中毒濃度になったことは報告済みだ(Hirata S, et al: Jpn J Clin Pharmacol 34:87-90, 2003)。高マグネシウム血症を起こした原因は酸化マグネシウムの投与ではあるが、その原因となる腸閉塞・結腸菲薄化を起こした真犯人は統合失調症で多用される抗コリン薬だ。PMDAは「酸化マグネシウムの使用は必要最小限にとどめること」を訴える前に「抗コリン薬の併用を必要最小限にとどめること」とすべきじゃないの?




エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023の第11章「薬物療法」の11-8「疼痛のあるCKD患者への鎮痛薬選択」には、「1. 非ステロイド性抗炎症薬:併用薬剤に注意し、常用しないことが望ましい。選択的シクロオキシゲナーゼ2阻害薬、特にセレコキシブについて、腎への安全性に関する明確なエビデンスはない」と記載されている(図1)。「特にセレコキシブ」ってなんで?

痛風を伴うCKD患者には極力NSAIDsを使いたくないが、アセトアミノフェンには抗炎症作用がない。それなら、せめてNSAIDsの中で胃障害が少なく、消化管出血のリスクも極めて低く(図2)、心不全イベントが最も少なく(図3)、アスピリン喘息を起こしにくいもの(それがセレコキシブだ)を選ぼうとする医師もいるはずだ。それなのに、読者が納得できるような引用文献を付けずに、「セレコキシブには特にエビデンスがない」と書かれている。


CKD診療ガイドライン作成の前には毎回、腎臓学会から公開されるドラフト版を平田は必ず精読し、パブリックコメントを提出している。今回も「セレコキシブは他のNSAIDsに比べ、腎障害が少ないという論文が6報あります(図4)」とコメントしたが、今回ほどひどく無視されたのは初めてだ。というか、ドラフト版は内容が薄かったのに、印刷された正式版には新たに膨大な文章が付け加えられ、その中に「特にセレコキシブ」という文言が追加されていた。このガイドラインの完成後、学会のシンポジウムでも問題になったし、ガイドライン作成者にはその前後に何度もメールを送ったし、同じ大学病院の知人にも連絡を依頼した。しかし、何の反応もなかった(留学中だったけどメールくらい返せるはず)。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」では、「CQ:高齢者へのNSAIDs投与は腎機能低下のリスクを高めるか?」という問いに対し、「高齢者では使用をなるべく短期間にとどめる(要約)」となっており、中止が難しい場合には、「消化管の有害事象を予防するために、選択的COX-2阻害薬(セレコキシブなど)の使用を検討する」となっている。また、「消化性潰瘍診療ガイドライン2020」では「NSAIDsによる潰瘍発症の予防にCOX-2選択的阻害薬の使用を推奨する」と記載されている。NSAIDsで最も注意すべきなのは腎障害よりも消化管出血だ。なぜなら、消化管出血は時として致命的な結果を引き起こす可能性があるためだ。

SGLT2阻害薬は非常に多面的な効果を持っていて(図1)、強力な腎保護作用・心保護作用のどれが主要なメカニズムなのかいまだにわかっていない。これらの中には貧血改善効果、尿酸低下作用などもあるけど同じ作用を持つ治療薬ではこれほどの臓器保護作用は認められないし、利尿作用もあるけど早期だけしか認められないので、これらは主作用じゃない。糸球体過剰濾過を改善することによってアルブミン尿を減らすことによって、腎機能の悪化、心血管合併症の発症を防止するのがメインの作用じゃないかなと思っていた。だけどCANVAS試験、EMPA-REG outcome試験ともに糖尿病関連腎臓病DKD患者のヘマトクリット値の上昇、尿酸値の低下が尿中アルブミン減少よりも腎アウトカムに影響を与えた潜在的媒介変数としてははるかに強力だったという2つの報告がある(図2、図3)。CANVAS試験サブ解析の考察では多変量モデルでは貧血改善と血清尿酸値低下の組み合わせがカナグリフロジン治療効果の103.0%を媒介することも示されている。初期変化は利尿作用による血液濃縮、長期的な変化は腎臓によるEPO分泌亢進を介した造血作用による。つまりDKD患者の慢性的な低酸素状態を改善する作用によると考えられるが、これらの報告ではヘマトクリット値の初期変化は主に尿中Naおよび水分喪失による血液濃縮を反映している可能性が高いが、長期的な変化、主に腎臓によるエリスロポエチン分泌亢進を介した造血作用を表している。通常は4週間くらいかな?それにしてもベースラインのヘマトクリット値が42%未満から増加するとか、尿酸値が5.7mg/dL以上から低下することくらいで腎保護効果に影響を与えるってのはどうも信じがたい(図4)。失礼だが統計上のお遊びのように見えてしまう。




「SGLT2阻害薬は利尿作用があるのに急性腎障害を増さなないどころか25%も減らしているのはなぜ?」の1つの回答はSGLTのフル稼働による腎虚血を腎性貧血改善作用によって防ぐ可能性はあって、それが投与初期の利尿作用による血液濃縮が関わっていた可能性はあるかもしれない。フロセミドの利尿は結構、強力で無理やりっぽいけど、SGLT2阻害薬による利尿は溢水を改善したら、抗利尿ホルモン分泌が増加して、過度な利尿を抑えることなどによってうまく調整されているのではないだろうか?
SGLT2阻害薬のアルブミン尿抑制作用は確かに重要だけど、アルブミン尿抑制作用だけだったらMRAのほうが同等かそれ以上強力なのに、腎保護作用は明らかにSGLT2阻害薬のほうが強力なのは、いまだよくわかっていないその他の多面的な作用によるのだろう。だからヘマトクリットや尿酸という結果は単なる統計上の結果に過ぎなくって、まだまだほかにもあると思うんだよね。