平田のX

2026年1月12日 X投稿 閲覧者42,049人

 こういう本って多いよね。「コレステロールを下げるな」というのも多い。薬をのみたくない人はほんと多いから。「年齢+90」以下なら降圧剤はかえって危険と書いてあった。「大学の名誉教授」という肩書で信じる人も多いかもしれない。加齢に伴う高血圧は正常な生体反応だから「血圧は加齢とともに上がるのは当たり前」「原因不明の本態性高血圧は治療する必要がない」と著者は言う。本書によると高血圧ガイドラインは高血圧学会と製薬企業と医師がグルになってお金儲けのために降圧薬を処方している。製薬メーカーと降圧薬を処方する医師は「高血圧マフィア」なんだって。この著者名と「hypertension」でPubMed検索しても共著論文が2本のみしか見つからなかった。本書では人間ドック学会の「持病のない健康な人のデータの集計結果(統計的基準)」に重きを置いていて、統計学的に最も信頼されるべき高血圧に関する大規模ランダム比較試験のACCORD試験、SPRINT試験、ALLHAT試験などの結果については全く触れていないのだ。

 僕も収縮期160以上の高血圧患者を今までたくさん見てきた。Hypertensionというだけあって、僕のように血圧正常者たちと比べて朝から元気だし本人は痛くもかゆくもなく、どう見ても健康そうに見える。だけど血管が知らないうちに傷んでたんだろうね。心筋梗塞・脳卒中で突然死を何人も経験した。そして高血圧を制御しようとしない、すなわちイナーシャの医師に診てもらっていた患者さんで透析導入、心不全発症のために我々の病院に送られてきた方々をたくさん見てきた。そして血圧が管理できていない患者さんで心筋梗塞・脳卒中で要介護になった方々、脚壊疽で車いすが必要になった方を極めて多く見てきた。元々の血圧が160を超えている場合、生活習慣の改善だけで正常域(125未満)まで下げることは極めて困難だ。こんな本にどうか、だまされないでほしい。

2026年1月11日 X投稿 閲覧者29,172人

 同じ患者に降圧薬と昇圧薬が処方されたら、新人薬剤師は混乱してしまうだろうね。でも透析患者ではふつうにみられることだ。結論から言おう。透析患者の多くは血管石灰化が進行しており、脈圧の増大と強く関連しているからだ。脈圧=収縮期血圧-拡張期血圧だけど、これは心機能の低下した後期高齢者に多いが、透析患者ではこれが若年者でも起こりやすく、心血管イベントや死亡のリスクを高める重要な要因になっている。

 その原因はCKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)によることが多い。腎機能が低下すると、腎におけるリン排泄能が低下しリン利尿ホルモンのFGF-23の産生が亢進し、腎におけるビタミンDの活性化を障害して高リン血症・低Ca血症状態が持続する。そのためPTHの分泌が亢進して骨を溶かして血清Ca値を上げるから骨がスカスカになって線維性骨炎になり、血管では石灰化が亢進する。健常者でも内膜の石灰化は起こるが透析患者の血管石灰化は血管の中膜にヒドロキシアパタイト、つまり骨ができる(メンケベルク型の動脈硬化)。血管が骨のように硬くなるから高血圧は必発!これを防ぐにはPTHが上がらないようにリン・Caのコントロール、そしてPTHをオルケディアのようなCa受容体作動薬(カルシミメティクス)と活性型ビタミンD(VD受容体作動薬)によって下げるけど、これらの治療がうまくいっていない方は動脈の弾力性が全く失われる。だから心収縮によって生じた圧を動脈が吸収しきれない(血管進展性が不良になっている)から収縮期血圧は非常に高くなるが、その結果、拡張期血圧は低くなって脈圧が増大する。透析中に体外循環・除水によって循環血漿量が減少すると血管コンプライアンスが低いので、一転して著明な低血圧になる。低血圧ショックにならないよう、昇圧薬を投与せざるを得なくなるんだ。CKD-MBDの新ガイドライン2025ではPとCa管理はPTH管理より優先し、Ca 9.5未満、P 5.5mg/dL未満と厳しくなったことも知っておこう。

 

 

 

 

 

2026年1月9日 X投稿 閲覧者11,787人

 腰痛診療ガイドライン2019 改訂2版ではノイロトロピンについては1977~1987年に行われた日本人の書いた5本の論文が収載されていますが、5報中、急性・慢性腰痛の疼痛を有意に改善したのは1977年の1報のみ。しかも5報で100%のうち5.4%しか寄与していないノイロトロピン使用者31名のみの論文です(図6

 

 

 図6では、有効であったという論文はTsuyama1977とありますが、引用文献を見ると日本語で、しかも基礎と臨床(検索期間外)となっております。ちなみに「基礎と臨床」という雑誌はメーカーと医師が共同して「○○の使用経験、臨床効果」など主観的判断で薬効を評価するようなレベルの低い雑誌で、毎月発行され、その1冊が400ページもあるメーカーのお抱え雑誌で、複数査読性雑誌ではないのではないでしょうか。だって「○○の使用経験」という論文ってタイトル名だけで、まずタイトルだけでまともな査読者はリジェクトするでしょ?同じ刊には「腰痛症におけるポンタールの使用経験」という論文がありました。ポンタールはロキソニンが販売される前の同じメーカーの主力NSAIDでしたが、この論文は当然ですが腰痛診療ガイドライン2019のシステマティックレビュー(SR)論文の対象にはなっていません。ノイロトロピンのエビデンスを示した図6のその他の論文もすべて和文でClinical Question2「腰痛に薬物治療は有用か」という章の中で和文論文は奇異なことに、このノイロトロピンに関する非常に古い論文5報のみで、その他はすべて英語論文でした。これらのタイトルはすべて二重盲検比較試験とされていますが、今だったら二重盲検比較試験を和文で書く研究者はいないと思います。なんで「複数査読制の英文誌に投稿しなかったの?」と思ってしまいます。このようなレベルの低い論文でシステマティックレビューをしたガイドラインって信頼できるのでしょうか?1980年前後って論文執筆者のCOIなんか調べていないのに、こんな和文論文を採用できるのでしょうか?ノイロトロピンは副作用の少ない薬であることは認めますが、トラマドールと同等でアセトアミノフェンよりもエビデンスレベルが高いことが不思議でなりません。ちなみに2018年に刊行された慢性疼痛治療ガイドラインではアセトアミノフェンは1A(使用を強く推奨する)なのですから。「このガイドラインの問題点」は山ほどありますので、まとめてみました。このガイドライン作成委員の先生方、反論をいただければ幸いです。納得できるデータを見せていただければこの意見を撤回し謝罪させていただきます。

 

 

 

2026年1月8日 X投稿 閲覧者8,646人

 腰痛診療ガイドライン2019 改訂2版で急性腰痛にはNSAIDsは1A(1は推奨度、Aはエビデンスレベル:図1, 2)で、アセトアミノフェンは2D(推奨度の合意率は100%になっています)で、これに関しては異論ありません。急性腰痛に関してはアセトアミノフェンの1つの論文では有効性は認められなかったのですから。ただし日本でのみ承認されているノイロトロピンの2C(トラマドールと同じ2C)には大きな違和感があります。有効成分はワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(天然痘ワクチンを投与して炎症を起こしたウサギの皮膚抽出液)とされていますが、単一の有効成分は同定されておらず、急性腰痛の推奨度2Cの合意率は71.4%と低いのです(CQの表)。ガイドライン作成委員の投票により投票者の7割以上の同意の集約をもって全体の意見(推奨決定)としていますが、7割以上の同意が得られなかった場合は、投票結果を示したうえで十分な討論を行ったのち、再投票を行ったとあるので、71.4%はぎりぎりセーフなのでしょうか?(

 ノイロトロピン注は1950年、錠剤は1988年に発売されていますが、僕が薬剤師をやっていたころ、「副作用は全くないけど、プラセボ効果以外で著効したことがない鎮痛薬」だと思っていました。みなさん、本当にこの薬は効いてますか?過去にもクレスチン、レンチナン、アバン、カラン、ノイキノンなど爆発的に売れたけれども消えていった薬って、たくさんありましたよね。共通点は副作用はないけど、まったく効かない薬。ノイロトロピンは「副作用がきついけど、NSAIDsを欲しがる」患者さんにはプラセボ効果を狙えていい薬かもしれないと思いますが、本当に効くの?本当に利用価値があるの?少なくとも僕の知っている医療者はみんな効かないといっています。

 

 

 

2026年1月6日 X投稿 閲覧者15,207人

 ケレンディア(フィネレノン)は非ステロイドミネラロコルチコイド受容体拮抗薬(nsMRA: Non-steroidal Mineralocorticoid Receptor Antagonistだから、これからはミネラルじゃなくってミネラロと呼びましょ)が昨年12月22日慢性心不全への適応が追加。ただし本剤投与開始時に重度の腎機能障害(eGFR25mL/min/1.73m2未満)のある患者には禁忌になっている(開始時に25だよ)。心不全領域でRAS阻害薬+MRAで心配だった高カリウム血症がMRAをフィネレノンに変更すればあまり気にしなくても済むようになったのは朗報に違いない。

 フィネレノンはDKDのアルブミン尿を30~40%低下させるので、RAS阻害薬+ SGLT2阻害薬を使ってでもアルブミン尿(+)ならフィネレノンを併用が推奨されるが、非DMのCKDではまだ適応がないのは残念だ。いまだにスピロノラクトンやエプレレノンを高カリウム血症に気を付けながら、使わなくてはならない。というかRAS阻害薬と併用することが多いので、カリウム抑制薬なしでタンパク尿陽性CKD患者には怖くて使えないのが現実かもしれない。

 ここでフィネレノンの特徴についておさらいしておこう。①nsMRAだからステロイド骨格がないのは当然だが、さすがニフェジピンを作ったバイエル。なんとジヒドロピリジン骨格を持っている。②他のMRAは弱いながらも降圧作用・利尿作用があるが、フィネレノンには利尿降圧作用は期待できない。でもこれは心不全で併用されるARNIによる過降圧の懸念を考えると利点かもしれない。③尿中アルブミン尿の低下作用は目を見張るものがあり、SGLT2阻害薬との併用は相加的(CONFIDENCE試験)で、しかも心不全入院、心血管死を有意に低下してくれる(FIDELIO-DKD試験) そして最大の特徴は④高カリウム血症を起こしにくいこと。心エンドポイントのFIGARO試験で血清カリウム値は0.16mEq/Lのみの上昇のみ、腎エンドポイントのFIDERIOで血清カリウム値は0.25~0.3mEq/Lのみの上昇のみだったので、高カリウム血症の心配がほぼなくなった。SGLT2阻害薬の併用はさらに高カリウム血症になりにくいというのも心強い!

 

 

 

 

2026年1月1日 X投稿 閲覧者15,484人

 日本透析医学会の慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(2025年改訂版)はいったいいつ出るのだろうと思ってた。依頼原稿の締め切りが近づいているが、新しいリン、Ca、intact PTHの管理目標値が不明のままじゃ書けないので大いに困ってたが、透析医学会誌に掲載されないまま、2026年になる直前、12月26日に公開された。2012年以来の改訂、つまり13年ぶりの改訂?通常は5~6年おきにガイドラインは改訂されるはずなんだけど、この学会は遅い。腎性貧血ガイドラインも2016年以来改訂されていない。

2025年版の変更点を要約すると

①血清リン値(0未満から5.5mg/dL未満に)、血清補正Ca値(10.0mg/dL未満から9.5mg/dL未満に)は以前より管理目標が厳しくなった。

②前ガイドラインではP>Ca>PTH の順で管理の優先順位を示したが,今回はPとCaの間に優劣をつけないがP, Ca管理はPTH管理より優先されることになった。

③横山啓太郎先生作成の9分割図はとても使いやすいので、変更点を赤字にしている。低カルシウム血症気味になれば「炭酸カルシウムの食間投与」から他のCa剤の使用も可能になった。ガイドラインの図ではシナカルセトからカルシミメティクスに変更されているが、僕はCa受容体作動薬を用いた。活性型ビタミンDからVDRAに変更されたが僕はそのまま活性型ビタミンDにしている。これらは青地で書いている。

これからじっくり読み込んで、細部まで理解したい。

 昨年、出版される予定の2冊が遅くなり、今年はそれらを含めて4~5冊出版されそうです。平田の薬剤師塾No2(じほう)、透析患者の薬剤ポケットブック(メディカ出版)、高齢者の薬ワースト30/ベスト10(中外医学社)、学び直し 薬物動態学(仮: 金芳堂)などです。

 

 

 

 

2025年12月24日 X投稿 閲覧者7,881人

 帯状疱疹の痛み、つまり皮疹による痛み(ヒリヒリ,チクチク,ピリピリ)と帯状疱疹後神経痛PHN(ピリピリ,ジンジン,ズキズキ,チカチカ,キリキリとうずくような痛み、焼けつくような痛み、締め付けられる痛み、電気が走るような痛み、肌に何かが貼り付いたような違和感)は重複することもあるが、ちょっと違う。帯状疱疹そのものの痛みでは炎症や痛みを一時的に和らげるためにNSAIDsやアセトアミノフェンを使うことが推奨されているようだ(帯状疱疹診療ガイドライン2025)。これが長引いて発症するPHNには通常の痛み止めのNSAIDsやアセトアミノフェンは効かないので、リリカ、タリージェや神経ブロックによって治療する。

 帯状疱疹は近年、若年者にも増えつつあるものの、いまだに圧倒的に免疫能の低下した高齢者の病気だ。小柄な高齢女性(腎機能が低下し過量投与になりやすい)が罹患しやすく、この時に用いられるバラシクロビルによる腎症(脳症も併発しやすい)は腎排泄性でありながら水への溶解度の低い活性代謝物アシクロビルが腎尿細管の遠位部~集合管で約100倍に濃縮されるために、結晶が析出して無尿になり水腎症を発症する。これが典型的な腎後性腎障害なのだ。このとき何が腎症発症のリスク因子になるかというと、腎血流の低下や脱水だから、NSAIDs、RAS阻害薬、利尿薬のトリプルワーミー処方を一時中止し、夏季は特にバラシクロビル腎症を発症しやすいので、飲水励行の服薬指導が重要だと思う。ただしRAS阻害薬、利尿薬の中止は高血圧や心血管合併症の悪化の原因になるかもしれない。そのため、バラシクロビル投与期間の1週間だけでいいから、帯状疱疹の痛み止めとして腎前性腎障害の原因薬物でバラシクロビル腎症の発症を助長するNSAIDsの投与はやめていただきたい。薬剤師も疑義紹介してほしい。その代替薬としてアセトアミノフェン(500mg 3錠/日では効かないので)750mg 3錠/日を提案するか、この1週間だけであれば、トラマドールやトラムセットなどの弱オピオイドの投与もありだ。

 その前に腎症・脳症の発症原因になるバラシクロビルを腎機能の掴みにくい高齢者に無理して投与せず、これらの副作用の起こりにくいファムシクロビル、腎障害・脳症を起こさないアメナメビルを投与するのが一番いいのだが、なぜなのだろう、バラシクロビルを好む医師は多い。若年者だったらいけど、高齢者にはどーなんだろと思ってしまう。

 

 

 

 

 

 

2025年12月22日 X投稿 閲覧者4,082人

 Na型レジン(SPS)のケイキサレートはCa型レジン(CPS)のカリメートに比べると便秘しにくく、カリウム吸着力が2倍強いと言われている。メーカーさんには恨みはないが、明らかにカリメートは劣るのだ。しかしなぜかCPSのほうがよく使われており、ロケルマ発売までの国内シェアの85%がCPSだ。SPSの発売された1971年は透析の黎明期でNaは心不全の原因になると嫌われていたので、1975年に発売されたCPSに取って代わられた。この当時は活性型ビタミンDがまだなかった時代だったのでCaは正義の味方だったから、ヘパリンNaだってヘパリンCaに変わろうとしてた変な時代だった。かたや悪の代表だったはずの当時の透析液Na濃度は135mEqと低すぎたので、透析中の低血圧ショックが頻繁に起こっていたが、140mEqになってから透析中のトラブルが激減した。Naはそんなに悪ものではなかったのだ。

 僕がカリメートに疑念を持ち始めたのはCPS服用透析患者で、消化管穿孔症例を経験したから。その当時の白鷺病院の透析カルテは永久保存だったから、カルテ庫で、消化管穿孔の原因になる虚血性腸炎発症によって開腹手術を受けた透析患者+虚血性腸炎疑いで入院した患者を調べ上げた。開腹手術を受けた15名中7名がCPS服用者で非発症群での処方率10%に比し有意に多く、共通点は多量の堅固な便塊(時にはカリメートの塊を含む)が手術時に見つかったことだ。そしてそれは海外での症例報告と酷似していた。

 医中誌で調べてみると透析患者の薬剤性消化管穿孔の原因薬物の7割がCPSであり、SPSの報告は皆無だった。ただし上述のようにCPSのシェアが高いから販売バイアスによってSPSの報告がなかったことも考えられる。そこで熊本大の学生の研究テーマとして便秘モデルラットにSPSとCPSを投与すると明らかにCPSで便秘の増悪が認められた。

 「たかが便秘」とよく言われるが、便秘によって腸閉塞、腸管穿孔になって開腹手術を受けた半分が死亡している。透析患者の死因の9位は腸閉塞で、年間300名以上が亡くなっており、その原因が慢性便秘なのだ。僕は薬剤師だが、医師を含めて「透析患者の便秘」「透析患者の虚血性腸炎」に関する論文数は責任著者を含めると日本で最多だから、透析患者の合併症の便秘に関する執筆依頼はいまだ絶えない。

 

 

 

 

2025年12月17日 X投稿 閲覧者11,531人

 宮崎県の帯状疱疹の調査は、1997年から続く、現在も進行中の世界で最大規模の帯状疱疹の疫学調査であり、帯状疱疹についての基本的情報のほとんどが宮崎スタディによるものだろう。この研究は宮崎県日南市で「医療法人 外山皮膚科」院長で宮崎県皮膚科医会の外山 望先生がご尽力されたとお聞きした。僕は熊本から関西に戻ってきた翌年の2021年に外山先生と一緒にオンライン講演をさせていただいたことがある。

 このような疫学的研究の多くが大学が中心となって行われることが多いが、15年以上にわたり、宮崎県皮膚科医会に属する皮膚科診療所39施設と総合病院の皮膚科7施設を受診した帯状疱疹患者の性別・年齢を月ごとにまとめられたのが宮崎スタディである。1997~2011年までの15年間で宮崎県の人口は約4万5千人(3.8%)減少しているが、帯状疱疹患者数は毎年増加しており、15年間で33.3%増加している。また発症率も38.5%増加していた(図1)。15年間の平均発症率は4.38/千人年であった。興味深いのは水痘の季節性流行ほど明確ではないが、鏡像関係にあり、帯状疱疹は冬に減少し、夏に1.22倍増加する(図2)。おそらくはウイルスが低温で乾燥した環境でより長く生存できることから冬に水疱瘡の発症率が高いため、冬には水疱瘡の子が周りにいるためウイルスによって免疫がブーストされて帯状疱疹を発症しない。そのため逆に夏に帯状疱疹が増えるってことだ。熊本大では夏にバラシクロビルによる急性腎障害が起こりやすい結果を示し、その理由は発汗が増えるため、「こまめな飲水」ができにくい高齢者の腎障害発症が多いという論文が報告されたが(図3)、実は帯状疱疹が夏に多いためにバラシクロビル服用患者が増えただけかもしれない。また外山先生からは2014年の小児の水疱瘡ワクチンの定期接種開始後、お父さん、お母さん世代の若年者の帯状疱疹患者が増えている、50歳以上の患者で急増するということも教えていただいた(図4)。これも水疱瘡の子供がいなくなってブーストされなくなったためと考えられる。宮崎県の帯状疱疹の15年にわたる大規模疫学調査によって得られたものは果てしなく大きい。これをまとめた温和な先生・外山先生と宮崎県皮膚科医会の結束力には大いなる敬意を表したい。どこかの県の薬剤師会、病院薬剤師会がこのようなことをやって論文をまとめてくれたら、薬剤師も医師から大いに評価されると思うのだが・・・・。あまり聞いたことがないのはとっても残念だ。

 

 

 

 

 

2025年12月13日 X投稿 閲覧者9,959人

 SGLT2阻害薬は糖尿病だけでなく心保護作用・腎保護作用において最強の薬剤として認められつつある(図1)。糖質を尿中に捨てるSGLT2阻害薬を服用すると、低糖質食を摂取したのと同様の生体内環境になって、インスリン分泌が低下して、ブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなるため、脂肪を分解してケトン体をエネルギー産生源の主役にする。断食、カロリー制限、16時間絶食などは長寿遺伝子を活性化する、細胞が古くなった細胞成分やミトコンドリアをオートファジー亢進によって分解・再利用して体の機能を活性化させると言われている。しかし絶食などで惹起される血中ケトン体濃度上昇(これをケトーシスと言う)では重篤なアシドーシスはならないが、糖尿病ではもともとインスリン分泌能が低下しているため、脂肪分解が亢進してケトン体が増えすぎてアシドーシスになって毒性を示す危険な状態(糖尿病性ケトアシドーシス)に至ることがあるのでケトン体は糖尿病ではマイナスイメージがある。しかしインスリンの働きが正常であれば(糖尿病でなければ)、ブドウ糖の利用が適切である限り、ある一定濃度のケトン体は極めて安全なエネルギー源になる。最近の研究ではケトン体、特にβ-ヒドロキシ酪酸にはエネルギー源としての作用以外にする作用などによって心機能を改善させ腎臓や脳を保護し、血管内皮機能改善作用、酸化ストレス軽減、炎症抑制、脂質異常改善あるいは抗老化作用などの生理活性があるなど、様々な有益性が明らかにされつつある(図2と図3の左下)。

 

 

 

 

 もともとSGLT2阻害薬は尿糖排泄を促進させる血糖降下薬と思われていたが(図3左上)、尿細管糸球体フィードバック改善によってアルブミン尿(+)の糖尿病関連腎臓病DKD、蛋白尿(+)のCKD患者の腎保護の進行を抑制し(図3右上)、さらにSGLT2阻害薬治療は近位尿細管による酸素消費量を抑制し、尿細管間質の

 低酸素症を改善することによって、エリスロポエチン産生細胞が活性化して血中ヘモグロビン値を上げて、腎虚血を防ぐ(図4)。おそらくこれは図3右下貧血改善作用によって、近位尿細管の低酸素状態を改善して腎虚血によって起こる急性腎障害を抑制する作用を表すのではないだろうか。ただし図3のグリーンで示す有益な作用だけではなく、赤字で示すSGLT2阻害薬に特徴的な副作用をもたらすことも気を付けよう。

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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