平田のX

2026年3月28日 X投稿 閲覧者2,837人

病院薬剤師さんからの質問
 今回執筆されているフィネレノンですが、ちょうど薬剤科内でメーカーさんの勉強会がありました。従来から腎機能別用量のeGFRがmL/min/1.73m2で書かれていますが、「標準的な体格から大きく外れている場合は補正を外した方がいいですか?」と聞いてみました。MRさんはそもそも腎機能の表記に疎く、薬剤科内では「補正しないのが正解では?」という見解があがりました。どうも腑に落ちないのですが、平田先生はどのようにお考えでいらっしゃいますか?

 

回答
 標準体形でない人には補正するのが当たり前!だって標準化eGFRは血清Cr値、性別、年齢しか入ってないんですよ。女性で170cm, 63kg(男性のMサイズ )が合う人ってめったにいないですよね。だったら補正しなくちゃ危ないでしょ?

 40kgのSサイズの人に男性のMサイズは大きいし、120kgの男性にMサイズは入らないので、LLLサイズにするでしょ。 ユニクロにだってSからLLLまであるのに薬は固定用量ですから、薬剤師がうまくやらないといけません。用量依存性のない薬はほとんどありません。効きすぎたり効かなかったりするのを薬剤師が調節すべきなのです。 フィネレノンは高カリウム血症を起こしにくいけど、やっぱり小柄な人では高カリウム血症は起こりやすいといわれてますからね(PMID: 34786651)。 MRさんにも指導してあげてください。これって薬剤師の常識だよ!

 

解説
 標準化eGFR(mL/min/1.73m2)はCKDの診断指標に用いるもの。薬物投与設計には個別eGFR(mL/min)を持ちるのが鉄則!

 59mL/min/1.73m2だったら蛋白尿(-)でもCKDと診断できる。でも1.73m2は日本人では標準体型男子で身長170cm、体重63kgだから、女性ではほとんどいない。そうすると小柄な女性で個別eGFR(mL/min)を用いると健康なのにCKDと診断されやすいし、120kgの男性は実際には肥満で腎機能が悪くてもCKDが隠蔽されてしまうから標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を用いるんだ。だけど薬の量は40kgの人と、120kgの人と同じでいいはずはないから、身長・体重を加えて計算した個別eGFR(mL/min)を使う。じゃあなんで添付文書に紛らわしい記載がされているのかというと、結論から言うとFDAの失策。黒歴史なのです。

 米国では2010年12月30日までは薬物投与のための腎機能はFDAが製薬企業に対し血清Cr値ではなくCG式を用いた推算CCrを推奨→2010年12月31日より、血清Cr値の標準化(IDMS traceable)が行われた。→それ以前のCG式では薬物投与が不正確になる!ということで2011年のKDIGOの急性・慢性腎臓病患者の薬用量はCG式ではなくeGFRに変えるところを個別eGFRではなくバカなことに標準化eGFRを用いるようアップデートしようとしたんだ。標準化eGFRはCKD診断指標として医師にも患者さんにも普及していたかもしれないけど、これは間違い。欧州ではテキスト通り薬物投与には個別eGFR(mL/min)を使うとした。

 多分、いろいろ過量投与などの問題が起こったんだろうね。2020年以降、FDAは製薬企業に対して「今後は個別eGFR(mL/min)を添付文書に記載するように」というお触れを出した。だから2020年以降に治験の行われる薬に関しては個別eGFR(mL/min)が用いられるようになるはず。そしてCCrも標準化eGFRも添付文書の記載から徐々に消えていくはずだ。

 

 

 

 

 

2026年3月27日 X投稿 閲覧者4,146人

 僕はかつて、透析患者がワルファリン服用中に消化管出血で亡くなるという、痛ましい事例を経験した。ワルファリン投与中の患者にロキソプロフェンが処方されてから、わずか1週間足らずのことだった。

 「NSAIDsは抗血小板作用があるし、胃粘膜障害も起こしやすいから、ワルファリンと併用すれば出血リスクが上がるのは当たり前だ」―もし、あなたがそうした薬力学的(PD)な相互作用だけで納得しているなら、それは薬剤師として「半分」しか見えていない証拠だ。

「蛋白結合」の嘘と「CYP2C9」の真実
 ピロキシカムなどの添付文書には、併用による有害反応の理由として「蛋白結合率が高いため、ワルファリンの活性型が増加する」と記載されている。しかし、これは明確な間違いだ。蛋白競合による一時的な遊離型濃度の変化はあっても、定常状態では遊離型濃度は不変であり、有害反応の主因にはならない。

 真の犯人は、CYP2C9を介した薬物動態学的(PK)相互作用である。 セレコキシブ、ジクロフェナク、ロキソプロフェンといった多くのNSAIDsは、ワルファリンと同じCYP2C9の基質だ。これらを併用すれば、ワルファリンの代謝が阻害され、INRは跳ね上がり重篤な出血とつながる。

 特に「COX-2選択的阻害薬なら胃障害が少ないから安全だ」と考える医師は多いが、これは動態を知らないがゆえの「罠」だ。日本の研究(鈴木信也他、2016)でも、セレコキシブ併用によりPT-INRが1.53から2.18へと有意に上昇することが証明されているし、メタアナリシスでもCOX2選択的阻害薬の併用でも消化管出血リスクが有意に高いことが示されている。

透析患者という「ハイリスク患者」
 なぜ透析患者でこれほどまでにリスクが高まるのか。そこには複数の要素が絡み合っている。ワルファリンで重要なのはビタミンK含有食品だけではないのだ。

①加齢と腎不全の影響: 加齢および腎機能低下により、CYP2C9の発現量自体が低下する。
②遺伝的素因: アジア人はVKORC1の遺伝子多型が多く、もともとワルファリンの必要量が少ない。さらにCYP2C9等の遺伝子多型により、大出血を起こしやすい「Poor Metabolizer」も一定数存在する。
③目標値の狭さ: 日本の透析患者のPT-INR目標値は2.0未満、高齢者は1.6〜2.6という極めてタイトな管理が求められる。

これらが関与しないアピキサバンでは透析患者に1日5mgの投与でも出血リスクは概して低い。

日本の薬剤師に突きつけられた課題
 米国では「Anticoagulation Clinic」において、薬剤師がワルファリンの投与設計を担うのが一般的だ。PK/PDの複雑な要素を考慮した処方設計こそ、薬剤師の専門性が最も発揮される分野である。

 臨床業務の遅れが指摘される日本において、我々ができることは何か。リスクの高いワルファリンを使わざるを得ない現状を直視しつつ、アピキサバンのようなDOACが透析患者にも安全に使えるよう、エビデンスを収集し働きかけていく必要がある。目の前の処方箋に潜む「1週間後の悲劇」を止められるのは、薬の動きを熟知した薬剤師、あなたしかいないのだから。

 

 

 

 

 

2026年3月26日 X投稿 閲覧者6,095人

 米国では、薬剤有害事象による高齢者の緊急入院が年間約10万件に上る。その原因の多くは、糖尿病薬と抗凝固薬・抗血小板薬という「4大製剤」に集約されるが、中でもワルファリンは群を抜いてトップである。血栓治療に不可欠な一方で、緊急入院の33%に関与するという、まさに「諸刃の剣」なのだ。

 特に深刻なのは、重篤な腎障害を持つ透析患者への対応である。現在、日本において透析患者にDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)は原則「禁忌」であり、抗凝固療法が必要な場合はワルファリンを選択せざるを得ない。しかし、ここに大きな国際的な乖離(ギャップ)が存在する。

 米国では、アピキサバン(エリキュース)が「透析(ESRD)患者に使用可能」としてFDAに認められており、実臨床でもワルファリンに代わる処方が主流になりつつあり、現在ではアピキサバンの処方率が高いかもしれない。2015年までのコホート研究においても、アピキサバン群はワルファリン群に比べ、重篤な出血リスクが有意に低いことが報告されているのだ。

 では、なぜ日本ではDOACが使えないのか。 主な理由は、腎排泄型であるDOACの体内蓄積による出血リスクへの懸念だ。かつてダビガトラン(プラザキサ)の登場初期、半年間で24名もの死亡例が出たという歴史的な背景(トラウマ)も影響しているだろう。

 しかし、ここで見逃せない「パラドックス」がある。実はワルファリンも、日本の添付文書上では「重篤な腎障害のある患者」には禁忌と明記されているのだ。かつて私が実施した調査では、実に4分の3の医師がこの事実を知らなかった。

 最新の『2024年 JCS/JHRS ガイドライン』では、「維持透析患者に対してワルファリンを用いることは推奨されない」として、推奨クラスIII(No benefit)、エビデンスレベルBと明記された。 「No benefit」という表現は一見分かりにくいが、要するに「メリットがない(=原則禁忌に等しい)」という厳しい評価だ。しかし、代わりとなるDOACが使えない以上、臨床現場の悩みは深まるばかりである。

 「禁忌だが使わざるを得ない」ワルファリンと、「エビデンスはあるが禁忌とされる」DOAC。このねじれ現象の中で、我々薬剤師は患者のリスクをどう評価すべきなのだろうか。

 

 

 

 

 

2026年3月22日 X投稿 閲覧者4,901人

 SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンの衝撃的な試験、EMPA-REG OUTCOME試験では腎保護作用に関しては用量依存性がない。つまり10mg/日でも25mg/日でも同じ。CANVAS試験でも100mgと300mgで主要評価項目に差がなかった。じゃあ低用量でいいよねということになったんだけれども、なんで?

 エンパグリフロジンの尿糖排泄作用に関しては用量依存性がないわけではない。10 mgで約64 g/日、25 mgで約78 g/日と尿糖排泄が増えるとはいえ、2.5倍の用量なのに尿糖は22%しか増えず、SGLT2というトランスポータの飽和が示唆される。腎保護の主要機序は遠位尿細管のCl濃度上昇をマクラデンサが感知して糸球体内圧低下による糸球体過剰濾過の是正をすると考えると、この糸球体過剰濾過を抑制する血行動態の変化は、SGLT2がある程度(約80%以上)阻害された時点で最大に近い効果を発揮するので、比較的低用量からプラトー化しやすいのだろう。10mgで尿細管糸球体フィードバックが十分に作動していれば、30mgに増やしても「それ以上に輸入細動脈を収縮させる」力はほとんど働かないのだ。

 この尿糖排泄作用は糖尿病患者では血糖値に依存して変化するため個人差が大きいはずだ。そこで非DMのCKD患者で考えてみると、原尿量150L/日×血糖値100mg/dLで150gのブドウ糖/日が含まれるとして、SGLT2阻害薬が投与されていないときにはSGLT2が90%程度のブドウ糖を再吸収し、残りの20g程度が少し下流にあるSGLT1が完璧に再吸収するため、尿糖は全く出ない。SGLT2阻害薬投与によりブドウ糖の再吸収はゼロになるが、その分SGLT1がかなり頑張って100g程度再吸収するので、非DM患者の尿糖排泄量はわずか50g/日程度、カロリーとして200kcal、ご飯を茶碗に軽く1杯に過ぎない。

 ただしこれに糖質制限をするとケトン体はかなり増加してそれによる恩恵を受けるだろう。でもSGLT2阻害薬を10mg投与して50gの尿糖が、25mg投与して仮に20%増えたとして、どれだけのケトン体の産生が増えるのだろう。おそらく食事内容の影響の方が大きくて、SGLT2阻害薬の投与量が2~3倍増えてもほとんど意味ないことが分かるよね。

 これって用量を増やしても、糸球体内圧低下や尿糖排泄が頭打ちになるってことは、利尿薬でみられる天井効果(ceiling effect)に近いかもしれない。ただしSGLT2阻害薬の利尿は数日間だけで、その後は腎の適応によって平衡に戻るのが少し違う。腎保護に関しては低用量で主要機序が飽和しやすい「機能的プラトー」を示す薬と考えるのが妥当かもしれない。

 

 

 

2026年3月14日 X投稿 閲覧者22,491人

 鳥居薬品の「ケイキサレート散」「ケイキサレートドライシロップ76%」は、諸般の事情により、2027年3月の在庫消尽をもって販売中止となる予定と聞いて驚いた。2026年1月時点で販売中止が公式発表されており、今後は代替薬への切り替えが進む見込み。 メーカーの案内では「諸般の事情」なんだって。代替薬としては同効薬として「カリメート」「アーガメイト」(ポリスチレンスルホン酸カルシウム製剤)があげられている。新しいタイプの「ロケルマ」(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)は書かれていない。

 ロケルマが登場するまでの陽イオン交換樹脂はケイキサレートとカリメート(ゼリー製剤を含む)だけだった。その中でケイキサレートの市場は15%のみだったから、結局売れなかったからだろうか?

 実は平田は有効性でも安全性でもケイキサレートのほうがカリメートに比べ数段優れていると思っている。透析の黎明期にすでにケイキサレートはあったが、このころの透析患者の死亡原因は心不全がトップでその原因になるNaは嫌われていた。カリメートの登場した1975年は活性型ビタミンDがなく、Naは悪玉。Caは正義の味方だったから、カリメートは飛ぶように売れ、ケイキサレートは売れなくなった。その後、抗凝固薬のヘパリンNaまでもがヘパリンCaに変わろうとしていたというくらいのCaブームは異常だったよね。

 医学中央雑誌から透析患者、消化管穿孔で検索し非薬剤性のものを除外した「薬剤性消化管穿孔」の原因薬の約70%がCPS(カリメート・アーガメイトなど)で占められ、その他は不溶性薬剤、あるいは腸管内圧を上げるグリセリン浣腸ばかりで、ケイキサレートは全く報告されていない。

 販売バイアスによるかもしれないので、我々はロペラミドを使った便秘モデルラットを作成してCPS(カリメート)とSPS(ケイキサレート)を比較するとCPSで総糞数・糞中水分量が減少し、CPS群がSPS群に比し硬結便及び便秘の増悪が認められたのだ。

 「樹脂に対する陽イオンの親和性」の図を見てもらいたい。選択係数が高いほど吸着力が高いため、Na型レジンはカリウム・アンモニアを吸着しやすく、Ca型レジンはカリウムを吸着しにくいのでNa型レジンの半分しか効果がないのだ。Ca型レジンの方が大量投与を必要とし、余計、カリメートのほうが重篤な便秘、イレウス、腸管穿孔になりやすいのだろう。米国ではケイキサレートが使われていて、カリメートは承認されていないんだよ。

 添付文書でもカリメートには「便秘発症率9.2%」と記載され、「重大な副作用で腸管穿孔、腸閉塞、大腸壊死が現れることがある」と記載されているがケイキサレートは下痢3.2%、便秘1.9%と下痢のほうが多い。カリメートの使用率が増えて、便秘→イレウス→腸内細菌叢の異常→リーキーガット→尿毒素の蓄積→心血管病変の悪化・腎機能の悪化にならないよう気を付けてほしい。透析患者の便秘は「たかが便秘」じゃすまされないのだ。イレウスによる2024年の透析患者死亡数は329名で、透析患者死亡原因の9位とされているが、その後、腹膜炎・敗血症で死亡すると感染症に分類する医師もいるため、真の死亡者数はもっともっと多いはずだと平田は考えている。

 

 

 

 

 

2026年3月12日 X投稿 閲覧者13,722人

 僕が小学生のころの1960年代に喘息、アトピー、花粉症の子供を見たことも聞いたこともなかった。そして20年後、1980年代に恵まれた僕の2人の子供の同級生の半数近くがこのようなアレルギーマーチになっていた。このたった20年間に何が起こったのであろうか?<

 早めに登場した経口抗生剤のアモキシシリン、セファレキシン、セファクロルなどの吸収率は極めて高い。もともとβラクタム系抗菌薬は親水性が高いため、消化管の脂質二重層を通過できないはずだが、立体構造がジペプチド構造に似ていれば小腸上皮細胞に存在するペプチドトランスポータPEPT1の基質としてたまたま認識されて吸収されるからだ。

 しかし第3世代セフェムはピボキシル基などの脂溶性エステル置換基をくっつけて脂溶性を高めて無理やり吸収率を上げさせたものばかりだ。外来などの軽症例であればグラム陽性菌に効果のある第1世代抗菌薬が最も使う頻度が高いはずなのに、なぜこんなにたくさんの第3世代セフェムが必要なのかも理解できない。これらの第3世代経口セフェム系抗菌薬は吸収率が低いことが大問題で、セフジトレンの吸収率14%ということは300mg/日を経口投与しても42mgの注射薬を投与したに過ぎないことになる。あの強力なピペラシリンは12g/日投与することを考えると1/300の投与量なので効果が期待できないだけでなく、吸収されなかった86%が腸内細菌を殺菌して腸内細菌叢が激変する可能性がある。

 これに関しては英国ブリストル大学の報告で2歳までに抗菌薬を投与されていた小児は7.5歳になるまでに喘息(OR1.75: 95%CI 1.40-2.17)を発症する率が有意に高く、2歳までに4回以上投与された場合には、喘息(OR2.82: 95%CI 2.19-3.63)だけでなく湿疹(OR1.41: 95%CI 1.14-1.74)、花粉症(1.60 95%CI 1.21-2.10)などのアレルギー性疾患を発症するオッズ比が有意に高かったことが明らかにされている。

 日本の生育医療研究センターからの報告もほぼ同じだ。2歳までの抗菌薬の使用と5歳におけるアレルギー疾患(喘息、アトピー、鼻炎)の有症率との間には有意な関連があることが報告されている。厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課が発行している「抗微生物薬適正使用の手引き」の以前の版には感冒の時に抗菌薬を欲しがる患者への対応が記載されていたが、今年改訂された第4版では抗菌薬投与を避けたために起こるリスクを考慮してか、このような記載は消えているが参考にしてほしい。

 2歳までの乳幼児期の感冒に対する抗菌薬投与は母親が医師に投与を強く希望し、医師も断り切れなくなって処方されることが多いそうだ。重症な細菌感染が強く疑われない限り、今回提示した図などを利用して母親に指導できないものだろうか?本当に必要なら点滴静注の抗菌薬を投与すればよいし、経口投与するにしても吸収率が90%以上と広いアモキシシリンやセファレキシンなどで留めてほしい。第3世代経口セフェムなんて、要らないと個人的には思っている。

 

 

 

 

 

2026年2月28日 X投稿 閲覧者7,269人

 2月15日に「SGLT2阻害薬の副作用対策~安易な中止は避ける!~」とツイートしましたが、この時に引用した図が「26日目で有意な心不全の臨床的利益が現れる」という論文によるものでしたが、実はSGLT2阻害薬はもっと速やかに効果を示すという報告が数多くありました。

 最速は心不全イベント抑制(全死亡、心不全誘因、心不全悪化による緊急受診)は投与開始後12日でプラセボ群と有意差(EMPEROR-Reduced試験のサブ解析)じゃないかな?ほかにもフィネレノンとの併用での効果発現は14日目から有意に、あるいは18日で心不全入院や心不全イベント軽減という報告もありました。

 さらにエンパグリフロジンの投与を中止すると30日で心血管死や心不全入院が有意に増加するという報告もありましたので図を示します。ということは日本でちょっとした副作用でSGLT2阻害薬の外来投与を1か月間中止するだけで心血管死や心不全入院リスクが1.75倍になるってこと。SGLT2阻害薬は一度投与するとやめられない薬だなと思いました。これは「この薬から逃れなくなる」という悪い意味ではなく、続けたほうが、はるかに得られる利益(より健康により長寿に)が大きいという意味なのです。

 尿路感染症も抗菌薬を投与しながらSGLT2阻害薬を継続するのが原則。性器感染症(真菌感染症)は通常は1回のアゾール系抗菌薬で通常治癒するらしいので、重症な Fournier壊疽などの重症例以外ではSGLT2阻害薬は継続するのが原則。eGFRの低下(initial dip)も30%以上のeGFRの低下が認められた場合でも、SGLT2阻害薬の中止を考える前に脱水・利尿薬過量・RAS阻害薬、MRAなど可逆要因を評価し是正するのが原則。

 ただし、糖尿病性ケトアシドーシスはかなり重症なので、必ず中止して改善するまで再開しない。再開するときには「悪心・嘔吐・腹痛・倦怠、呼吸促進が起これば速やかに来院すること(シックデイ対策)、SGLT2阻害薬服用時には厳格な糖質制限はしない、こまめな飲水を心掛けること」を指導しましょう。

 今回、多くの論文を読んで気づいたことは、SGLT2阻害薬やフィネレノンに関しては一時的に薬代が高くなるよりも将来の重症化による入院治療費が安くなり、止めるよりも得られるベネフィットのほうがはるかに大きい。すなわち「SGLT2阻害薬の心腎保護、さらに様々な細胞内での代謝改善作用の利益も大きい。だから中止することによる不利益を避けるためには安易な中止は避ける!」ってことだ。

 

 

 

 

 

2026年2月27日 X投稿 閲覧者11,672人

 腎機能評価に何を使ってる?標準化eGFR(mL/min/1.73m2)はCKDの診断指標(重症度分類)に用いる。個別化eGFR(mL/min)は薬物投与設計に用いる。この「個別化」は海外では非指数化eGFRと呼ばれ、日本でも正式には体表面積未補正eGFRと言われているが、短く分かりやすくするため僕が勝手につけた名称が広がっただけのこと。じゃあなんでこのような使い分けがされるのかについて解説しよう。

 ミラノ冬季オリンピックで日本が金メダルを獲得したフィギュアスケートのペアは男女の体格差が大きいほど、ダイナミックな演技ができるので有利なため、女子選手は小柄な選手が多いよね。これは女子体操選手にも共通していて小柄な選手のほうがジャンプしたり回転するのに有利らしい。小柄な人の生理機能は当然小さいので、腎機能も低い。例えば120kgのレスラーや相撲力士に比べて40kgの女性は、腎機能だけでなく心機能も呼吸機能も低くても健康でいられるし、薬の用量も体重が3倍も違うので少なくしないといけない。だから身長も体重も考慮された個別化eGFR(mL/min)は薬物投与設計に用いる。ではなぜ腎機能の診断指標には身長・体重を含まない標準化(体表面積補正)eGFR(mL/min/1.73m2)を用いる理由は、素のままの腎機能だと小柄な人は健康であってもCKDという病気にみなされやすくなり、大柄な人は実は体格に見合った腎機能よりも低くなっていてもCKDという病気に診断されにくいから標準化したものを使うんだ。

 ところが、薬の腎機能別投与量を決めるのに、添付文書に記載されている腎機能表記は薬によって違うよね。米国では1998年以降、CG式のみが推奨されていたため、添付文書の腎異能表記はCCrのみだったが、Jaffe法によるクレアチニン測定法のため、正確ではないがGFRに近似しており都合がよかった。薬用量を決める臨床治験は主に米国で実施されていたため人種差も考慮した国際的なブリッジング試験を行うためには血清クレアチニン値の国際間での測定法の違いが問題になった。そのため2011年以降に従来のクレアチニン測定法をJaffe法から採用されたIDMSトレーサブルに変更した。それと同時にCG式による推算CCrの使用を推奨しないことにし、従来のCCrは標準化eGFR(mL/min/1.73m2)に読み替えることを推奨した。

 一方、欧州EMAは薬用量決定には個別eGFR(mL/min)を提案したのに、米国での添付文書の腎機能表記に標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を提案したのは米国FDAの大きなミスだと平田は思っている。これによってその後の添付文書の腎機能表記が多様化されて日本の薬剤師・医師もどうやって腎機能を評価するのか混乱してしまった。もう1つの問題はIDMSトレーサブルになった2011年以降、米国ではFDAが肥満や浮腫の影響を受けるCG式の使用を推奨しなかったにも関わらず、米国薬剤師は臨床現場で薬物投与設計に用いる腎機能判定にCG 式による推算CCrを主に使用していたことだ。CG式は体重入力(米国は肥満大国)や測定法(Jaffe法など)の影響で系統誤差が大きく、IDMSトレーサブルと整合性が低いからこれからの新薬の添付文書からは消えてゆくはずだ。

 ようやく2020年に米国FDAと全米腎臓財団(NKF)ワークグループで新指針が合意し、推算CCrの撤廃、人種差なしへのCKD-EPI2021式への移行と、診断指標に用いられる標準化eGFR(mL/min/1.73m2)ではなく、薬物投与設計には個別化eGFR(mL/min)を使うことを明確化した。これによって今後の新規添付文書では標準化eGFR(mL/min/1.73m2)は消え、個別化eGFR(mL/min)の採用が加速する見込みだ。

 FDAの決断によって今後、添付文書表記が統一化され、腎機能評価誤りによる中毒性副作用が少なくなればいいのだが…。

 

 

 

 

 

2026年2月23日 X投稿 閲覧者5,377人

 IT関係の用語が分からない。PCもスマホも十分使いこなせない。だって71歳だもの。ヘビーユーザーになっていたのは翻訳ソフトのDeepLPro Starter(1150円/月)くらいかな。

 でも大学の教え子からGeminiがすごいと聞いてこの2月から始めると、なんでも答えてくれる。ニュージーランドの田舎に行くバスチケットはどうやって入手する?ベジタリアンの外国人と両国での夕食は?など膨大な情報を持っているためハルシネーション(ときどきうそをつく)は避けられないけど、なんでも答えてくれるので、今ではPCやスマホの操作方法などはGeminiに聞く。瞬く間にヘビーユーザになり、すぐにGoogle AI plus(1200円/月)を払ってGemini Pro3にグレードアップした。

 次に導入したMedisearchAI、これがまたものすごい。どんな難儀な医学・薬学の質問に対しても、複数の論文を横断的に読み取り、医療専門家向けの回答文を提示してくれる。でも無料版だと引用文献のすべてが見れないとわかったので、仕方なく年額$149.99のMedisearch Proを導入。

 今さらだけどChatGPTは無料版でも音声認識制度が高いので、英会話学習には最適なことが分かった。次に導入したのがNotebookLMでGoogle AI plusに入っているので、グレードアップに費用はかからないが、これがまたものすごい。自分の読んだ大量の論文を取り込ませると分析し、横断的にまとめて自分用のテキストを作ってくれる。だけじゃない!スライド、ポッドキャスト(論文内容について語り合うラジオ番組みたいなもの)、解説付きアニメ(YouTubeが自作できるようなもの)までできちゃう。その内容が本当のYouTubeやポッドキャストよりAIのトークのほうが面白いしや説得力が優れている。これを使ってYouTuberになる人は多いんじゃないかな?僕はならないけどね。

 だけどNew Engl J MedやNatureなどのトップジャーナルと、レベルの低い論文をほぼ同じレベルで語っていることは気になった(これは僕の論文の選択がまずかっただけ?)。それと最後のスライドの下の漢字はたぶん抗線維化・抗炎症なんだろうけど日本語じゃないよね?すぐに修正されると思うけど。

 AIの導入のおかげでこの2週間、寝不足が続く。次は何だろうね?長澤 将先生が勧めていた音声による文字起こしMottaがすごく気になるけど、慣れるにはちょっと時間がかかりそう…。

 

 

 

 

 

2026年2月21日 X投稿 閲覧者3,177人

 透析患者のCKD-MBDって透析患者の薬物療法のほぼ主役と言ってもいいんじゃないかな。リン吸着薬、活性型ビタミンD、カルシミメティクス(Ca受容体作動薬)、Ca剤など多種類の薬を血清リン値、補正Ca値、インタクトPTHのコントロールをするために多くの透析患者に投与されている。

 ところで、アダラートCRやアムロジピンなどの強力なCa拮抗薬を非透析日には投与し、透析日にはリズミックなどの昇圧薬が投与されている患者っているよね。「同じ患者に降圧薬と昇圧薬が投与されるなんて」と思う方がいるかもしれないが、このような患者では血管の石灰化が顕著で、血管の中膜にヒドロキシアパタイト(骨の成分)が形成、つまり血管そのものが骨のようにコチコチに硬くなってしまうため、水のたまる非透析日には血管が拡張できないから血圧が150~200mmHgと著明に上昇するが、透析で体外循環・除水をすると血管が収縮できないから収縮期血圧が100mmHg以下に低下することもある。だから昇圧薬で血圧を上げないと透析を持続できなくなるからだ。

 だから透析患者の動脈硬化は通常のアテローム性動脈硬化とは異なり、非常に厄介。そしてこのような症例では著明な動脈硬化から左室肥大になるため予後は当然良くない。副甲状腺摘出術(PTx)ではハングリーボーン状態になって既存の石灰化結晶は速やかに溶かし出すことができる。皮下の石灰化によって猛烈な皮膚掻痒がPTx翌日には完全に消失したのは何度も見たことがある。ただしカルシミメティクスなどを使ってPTHを下げれば石灰化の進行を抑えることはできるけど、血管中膜に一度しっかりと形成されたヒドロキシアパタイト、つまりメンケベルク型の石灰化は簡単には消失してくれないし、PTxでも無理なのだ。カルシミメティクスはPTxを激減してくれたとってもいい薬ではあるけど、石灰化の予防はかなり厳しいけどできるかもしれないが、形成されたヒドロキシアパタイトを消失させることはできない。

 

 

 

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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