なぜ腎機能に血清クレアチニン値を使わないのかというと、1つの理由として特に日本人は加齢に伴い筋肉量が減少しやすいからということがあげられる。若年者の体内水分量は60%といわれているが、高齢者では50%に低下する。これは高齢者では筋肉が脂肪に置き換わるためだといわれている。
クレアチニンは筋肉に含まれるクレアチンという筋肉内で筋肉収縮に必要なATPを産生してエネルギー供給を助けるアミノ酸類似物質から産生される老廃物である。クレアチンは筋肉内に約100g存在するが、非酵素的な反応によって不可逆的に1日約1gのクレアチニンが産生される。つまり1日に体内クレアチンの1%が不要な老廃物のクレアチニンになる。腎臓はグルコースなど必要なものはすべて再吸収し、不要なものはすべて排泄する。クレアチニンは、糸球体ろ過された後、尿細管でわずかに分泌されるが、まったく再吸収されないため、クレアチニンのクリアランスCCrは糸球体濾過量(GFR)に近似するため有用な腎機能マーカーになる。ちなみに糸球体濾過速度はイヌリンクリアランスでGFRのゴールドスタンダードになる。
しかし高齢者、特に活動度の低い要介護高齢者(典型的なのは寝たきりの高齢者)では筋肉を使わないために萎縮し、血清クレアチニン値が低くなる。これは腎機能が良好なのではなく、筋肉量が少ないことを意味することが多い。ただし、高齢者では極めてまれに、何らかの理由(糖尿病初期の高血糖やICU患者で見られる過大腎クリアランス)で腎機能が本当に良好なこともあるため、高齢者(特に活動度の低下した後期高齢者)では血清クレアチニン値が役に立たないことが多いことを理解しておこう。
例えば小柄な85歳女性で血清クレアチニン値を用いた標準化eGFRが150mL/min/1.73m2以上になったとしても腎機能が正常であるとみなしてはいけない。80歳以上の高齢者は基本的にCKD(eGFR<60mL/min/1.73m2)と考えるべきだ。このような症例では血清シスタチンCによるeGFRを腎機能マーカーとして用いる。



帯状疱疹診療ガイドライン2025の中で、特に薬剤師が知っておくべきことをまとめてみたので図を参考にしてほしい(注: 一部、私見が混じっています)。
発症は10歳代で非常に小さなピークがあり、50歳代以降、急増し70歳代に大きなピークのある2峰性を示す。
口唇ヘルペスのように繰り返すことはなく、帯状疱疹は80歳までに3人に1人が発症するが、1度罹患するとブースター効果によって細胞性免疫が賦活化されるため、通常の再発率は極めて低いが、ハイリスク患者(免疫抑制剤服用患者、がん患者など)は再発することがある。
以前から帯状疱疹は高齢者が罹患しやすい疾患であったが、近年は小児が水疱瘡ワクチンを接種しているため、周りに水疱瘡の子がいてブースター効果を得ていた時代と異なって、水疱瘡の子がいなくなったため若年者の発症が増えつつある。
抗ヘルペスウイルス薬はアシクロビル・バラシクロビルによる脳症・腎症の発症が極めて多く、同じ腎排泄性のファムシクロビルでの脳症・腎症の発症の報告はほとんどない。しかもファムシクロビルのほうがこれらに比し同等か、早期の疼痛の改善が見られるらしい。
高齢者で腎機能が気になるならアメナメビルは腎機能を考慮する必要がない。しかもアシクロビルよりも強い抗ウイルス活性を示し、脳症・腎症の発症の心配はなく1日1回の投与でよい。ただし薬剤師だったら相互作用については熟知しておかねばならない。
アシクロビル・バラシクロビルによる脳症・腎症の発症は何で起こるか?答えは「アシクロビル・バラシクロビルを処方しているから」だよ。腎機能や高齢者がどうのこうのという以前の問題じゃないんだよ。




潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がんだけでなく自己免疫疾患やうつ病、自閉症も増えているのは制御性T細胞(T-reg)の減少によるが、T-regを誘導するのが酪酸だ。しかし透析患者では尿毒素産生菌が増加し酪酸産生菌が激減している(図1)。尿毒素蓄積による酸化ストレス・全身炎症、そして腸管上皮細胞の主要なエネルギー源になっている酪酸の減少によってリーキーガット(タイトジャンクションのゆるみ:腸漏れ)が起こる(図2)。そして尿毒素の産生によって腎機能は悪化し、昨日説明したように便秘が原因で起こる腸内細菌叢の破綻もリーキーガットを助長し、「腸内細菌叢の破綻と腎機能の悪化」という腸腎連関が起こる(図3)。



話題を変えるがCRA症候群(Cardia-Renal Anemia syndrome)で最も治療しやすいのは貧血だ。だから貧血を治療すれば貧血→CKD→心不全の悪循環を断ち切れることはよく知られている。腸内細菌叢を改善したり、尿毒素を減らして腸腎連関を断ち切ることは本当に難儀なことだが、便秘は下剤(便軟化剤)によって改善できる。これによって透析患者の様々な悪循環によって発症する致死性の腸閉塞や腸管穿孔を防げるはずだ。ラグノスゼリー、グーフィス、アミティーザ、リンゼス、モビコールなど新しい下剤(便軟化剤)が次々と販売されている。リン吸収阻害薬フォゼベルやの鉄含有リン吸着薬のピートルは下痢しやすい薬なのでこれらもうまく活用して、腸腎連関を断ち切れればいいのだが、「透析患者の便秘に対する薬物療法」について興味を持たない医師・薬剤師が多すぎるのではないだろうか。「たかが便秘じゃないか」と言われることはよくあるが、透析患者の便秘は死亡原因9位(実はもっと高いはず)の腸閉塞の原因になっているだけでなく様々な健康障害を引き起こしている。「たかが」で済まされるような簡単なものではないことを知っていただきたい。

僕の旅のスタイルは旅行社のツアーではなく、自分で飛行機、ホテル、電車、レンタカー、ツアーを選んで気に入ったところにじっくり滞在するというもの。定年退職したからできることだけどね。2020年1月、パンデミック直前に訪問したニュージーランドのクライストチャーチには7泊くらいして、テカポ湖、プカキ瑚の美しさに息をのんだ。残念ながら世界一美しいといわれるプカキの星空は見れなかったし、マウントクックのハイキングも天候不良のため行けなかった。クライストチャーチはニュージーランドで2番目に大きい都市だけど人口は10万人足らずで、治安が良く、歴史を感じさせるきれいな街だった。
今回はもっと小さく自然がいっぱいの街、人口3万人足らずのクイーンズタウンに5泊し、そのほかにさらに田舎のプカキやテ・アナウに3泊して世界遺産フィヨルド:ミルフォード・サウンドもじっくり訪問する。前回行けなかったプカキの星空、マウントクックのハイキングにも再挑戦するけど、雨が降らなければいいんだけどね……。




透析ケアを出版している大阪のメディカ出版から出している本が5年経過したので、大幅書き換え、というか、いまいち納得のできる分かりやすさになっていなかったので、今回の改訂では1から書き直しました。
ナース向けに分かりやすく書くって大変です。でもすごく勉強になりました下駄。「なんて難しい解説してたんだ」と大いに反省しますね。熊本の仲間、新たな「平田の薬剤師塾」の師範代5人にも協力していただきました。これから、ゲラを作って校正作業を済ませ、6月の透析医学会では販売できそうです。
SGLT2阻害薬によって起こる有意な3大有害反応は脱水4.5%、性器感染3.8%、ケトアシドーシス0.22%と、脱水は最多だ(Qui M, 2021)。ただしSGLT2阻害薬による利尿作用は持続しない。カナグリフロジンの利尿作用は1日のみしか持続しないし、他のSGLT2阻害薬も1週間程度。ただしフロセミド併用患者では6週間後も続いている。ほかにも報告はたくさんあるが、SGLT2阻害薬による脱水は起こるが、薬剤性腎障害の発症を25%も軽減する作用があるため、脱水が起こるとすれば投与初期か、フロセミド併用患者だけかもしれない。
ただしこまめな飲水指導は脱水だけではなく性器感染、ケトアシドーシスの予防にもなるため、続けよう。
SGLT2阻害薬による糖利尿は持続する。なぜなら近位尿細管のSGLT2, SGLT1以外にブドウ糖を再吸収するところはないからだ。
ではNa利尿は持続する?近位尿細管のNHE3、ループ上行脚(フロセミドが効く部位)、遠位尿細管(サイアザイドが効く部位)、集合管(MRAが効く部位)などでNa利尿は相殺できるから必ずしもNa利尿は持続しない。
じゃあなんで糖利尿(浸透圧利尿)が持続するのに尿量が増加しないの?集合管ではADHバソプレシンの前駆体、コペプチン濃度が上昇して利尿作用が相殺されるようだ。だからSGLT2阻害薬投与2日目以降の尿量増加は起こらないと2024の論文では解説されている(PMID: 38599715)




こういう本って多いよね。「コレステロールを下げるな」というのも多い。薬をのみたくない人はほんと多いから。「年齢+90」以下なら降圧剤はかえって危険と書いてあった。「大学の名誉教授」という肩書で信じる人も多いかもしれない。加齢に伴う高血圧は正常な生体反応だから「血圧は加齢とともに上がるのは当たり前」「原因不明の本態性高血圧は治療する必要がない」と著者は言う。本書によると高血圧ガイドラインは高血圧学会と製薬企業と医師がグルになってお金儲けのために降圧薬を処方している。製薬メーカーと降圧薬を処方する医師は「高血圧マフィア」なんだって。この著者名と「hypertension」でPubMed検索しても共著論文が2本のみしか見つからなかった。本書では人間ドック学会の「持病のない健康な人のデータの集計結果(統計的基準)」に重きを置いていて、統計学的に最も信頼されるべき高血圧に関する大規模ランダム比較試験のACCORD試験、SPRINT試験、ALLHAT試験などの結果については全く触れていないのだ。

僕も収縮期160以上の高血圧患者を今までたくさん見てきた。Hypertensionというだけあって、僕のように血圧正常者たちと比べて朝から元気だし本人は痛くもかゆくもなく、どう見ても健康そうに見える。だけど血管が知らないうちに傷んでたんだろうね。心筋梗塞・脳卒中で突然死を何人も経験した。そして高血圧を制御しようとしない、すなわちイナーシャの医師に診てもらっていた患者さんで透析導入、心不全発症のために我々の病院に送られてきた方々をたくさん見てきた。そして血圧が管理できていない患者さんで心筋梗塞・脳卒中で要介護になった方々、脚壊疽で車いすが必要になった方を極めて多く見てきた。元々の血圧が160を超えている場合、生活習慣の改善だけで正常域(125未満)まで下げることは極めて困難だ。こんな本にどうか、だまされないでほしい。
同じ患者に降圧薬と昇圧薬が処方されたら、新人薬剤師は混乱してしまうだろうね。でも透析患者ではふつうにみられることだ。結論から言おう。透析患者の多くは血管石灰化が進行しており、脈圧の増大と強く関連しているからだ。脈圧=収縮期血圧-拡張期血圧だけど、これは心機能の低下した後期高齢者に多いが、透析患者ではこれが若年者でも起こりやすく、心血管イベントや死亡のリスクを高める重要な要因になっている。
その原因はCKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)によることが多い。腎機能が低下すると、腎におけるリン排泄能が低下しリン利尿ホルモンのFGF-23の産生が亢進し、腎におけるビタミンDの活性化を障害して高リン血症・低Ca血症状態が持続する。そのためPTHの分泌が亢進して骨を溶かして血清Ca値を上げるから骨がスカスカになって線維性骨炎になり、血管では石灰化が亢進する。健常者でも内膜の石灰化は起こるが透析患者の血管石灰化は血管の中膜にヒドロキシアパタイト、つまり骨ができる(メンケベルク型の動脈硬化)。血管が骨のように硬くなるから高血圧は必発!これを防ぐにはPTHが上がらないようにリン・Caのコントロール、そしてPTHをオルケディアⓇのようなCa受容体作動薬(カルシミメティクス)と活性型ビタミンD(VD受容体作動薬)によって下げるけど、これらの治療がうまくいっていない方は動脈の弾力性が全く失われる。だから心収縮によって生じた圧を動脈が吸収しきれない(血管進展性が不良になっている)から収縮期血圧は非常に高くなるが、その結果、拡張期血圧は低くなって脈圧が増大する。透析中に体外循環・除水によって循環血漿量が減少すると血管コンプライアンスが低いので、一転して著明な低血圧になる。低血圧ショックにならないよう、昇圧薬を投与せざるを得なくなるんだ。CKD-MBDの新ガイドライン2025ではPとCa管理はPTH管理より優先し、Ca 9.5未満、P 5.5mg/dL未満と厳しくなったことも知っておこう。




腰痛診療ガイドライン2019 改訂2版ではノイロトロピンⓇについては1977~1987年に行われた日本人の書いた5本の論文が収載されていますが、5報中、急性・慢性腰痛の疼痛を有意に改善したのは1977年の1報のみ。しかも5報で100%のうち5.4%しか寄与していないノイロトロピンⓇ使用者31名のみの論文です(図6)

図6では、有効であったという論文はTsuyama1977とありますが、引用文献を見ると日本語で、しかも基礎と臨床(検索期間外)となっております。ちなみに「基礎と臨床」という雑誌はメーカーと医師が共同して「○○の使用経験、臨床効果」など主観的判断で薬効を評価するようなレベルの低い雑誌で、毎月発行され、その1冊が400ページもあるメーカーのお抱え雑誌で、複数査読性雑誌ではないのではないでしょうか。だって「○○の使用経験」という論文ってタイトル名だけで、まずタイトルだけでまともな査読者はリジェクトするでしょ?同じ刊には「腰痛症におけるポンタールⓇの使用経験」という論文がありました。ポンタールⓇはロキソニンⓇが販売される前の同じメーカーの主力NSAIDでしたが、この論文は当然ですが腰痛診療ガイドライン2019のシステマティックレビュー(SR)論文の対象にはなっていません。ノイロトロピンⓇのエビデンスを示した図6のその他の論文もすべて和文でClinical Question2「腰痛に薬物治療は有用か」という章の中で和文論文は奇異なことに、このノイロトロピンⓇに関する非常に古い論文5報のみで、その他はすべて英語論文でした。これらのタイトルはすべて二重盲検比較試験とされていますが、今だったら二重盲検比較試験を和文で書く研究者はいないと思います。なんで「複数査読制の英文誌に投稿しなかったの?」と思ってしまいます。このようなレベルの低い論文でシステマティックレビューをしたガイドラインって信頼できるのでしょうか?1980年前後って論文執筆者のCOIなんか調べていないのに、こんな和文論文を採用できるのでしょうか?ノイロトロピンⓇは副作用の少ない薬であることは認めますが、トラマドールと同等でアセトアミノフェンよりもエビデンスレベルが高いことが不思議でなりません。ちなみに2018年に刊行された慢性疼痛治療ガイドラインではアセトアミノフェンは1A(使用を強く推奨する)なのですから。「このガイドラインの問題点」は山ほどありますので、まとめてみました。このガイドライン作成委員の先生方、反論をいただければ幸いです。納得できるデータを見せていただければこの意見を撤回し謝罪させていただきます。


腰痛診療ガイドライン2019 改訂2版で急性腰痛にはNSAIDsは1A(1は推奨度、Aはエビデンスレベル:図1, 2)で、アセトアミノフェンは2D(推奨度の合意率は100%になっています)で、これに関しては異論ありません。急性腰痛に関してはアセトアミノフェンの1つの論文では有効性は認められなかったのですから。ただし日本でのみ承認されているノイロトロピンⓇの2C(トラマドールと同じ2C)には大きな違和感があります。有効成分はワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(天然痘ワクチンを投与して炎症を起こしたウサギの皮膚抽出液)とされていますが、単一の有効成分は同定されておらず、急性腰痛の推奨度2Cの合意率は71.4%と低いのです(CQの表)。ガイドライン作成委員の投票により投票者の7割以上の同意の集約をもって全体の意見(推奨決定)としていますが、7割以上の同意が得られなかった場合は、投票結果を示したうえで十分な討論を行ったのち、再投票を行ったとあるので、71.4%はぎりぎりセーフなのでしょうか?(表)
ノイロトロピンⓇ注は1950年、錠剤は1988年に発売されていますが、僕が薬剤師をやっていたころ、「副作用は全くないけど、プラセボ効果以外で著効したことがない鎮痛薬」だと思っていました。みなさん、本当にこの薬は効いてますか?過去にもクレスチン、レンチナン、アバン、カラン、ノイキノンなど爆発的に売れたけれども消えていった薬って、たくさんありましたよね。共通点は副作用はないけど、まったく効かない薬。ノイロトロピンⓇは「副作用がきついけど、NSAIDsを欲しがる」患者さんにはプラセボ効果を狙えていい薬かもしれないと思いますが、本当に効くの?本当に利用価値があるの?少なくとも僕の知っている医療者はみんな効かないといっています。



