2015年、2020年と続く安全性情報、適正使用のお願いは、酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について。長期投与による血中Mg濃度の異常上昇(高マグネシウム血症)に注意を促し、呼吸抑制や意識障害、不整脈、心停止といった重篤な副作用のリスクが指摘されている。酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症は,2012年4月から2015年6月までに29例(うち死亡4例)報告され,このうち19例(うち死亡1例)は酸化マグネシウムの服用と因果関係が否定できない症例である。 症例1:40歳代の統合失調症の女性で1,980mg/日のMgOが投与(開始日不明)されている患者が意識障害で救急搬送。血清Mg濃度18.4mg/dLのため緊急透析施行。意識状態の悪化,血圧低下,腸管虚血,敗血症に伴う代謝性アシドーシスおよび下血を認め死亡。 症例2:80歳代の統合失調症の男性で1,980mg/日のMgOの投与で意識障害、血清Mg濃度13.3mg/dLのためCa剤の投与、血液透析施行し、意識レベルの回復により退院。 不思議なのは両症例とも統合失調症で併用薬のほとんどが強力な抗コリン作用を持つものだが、これに関するコメントは一切ない。抗コリン薬が薬剤性便秘を起こしているはずだがこれについては全く触れられていないのだ。ある精神科院長の話によると抗コリン作用のある向精神薬が多用されるため腸閉塞・腸管穿孔は珍しくないそうだ。これによって便通過障害を起こしている患者(腸閉塞患者)は、摘便して腸管内圧を下げてから下剤を投与すべきなのだが、腸管内圧が高い状態で酸化マグネシウムが投与されると腸管が菲薄化して、バリア機能を失うため、吸収されにくいMgが血中に直接移行したために急激な高マグネシウム血症を起こしたのではないだろうか。透析患者の腸閉塞・腸管穿孔もカリメートやレナジェルなどの催便秘薬の併用によって起こりやすい(西原 舞, 平田純生, 他:透析会誌37: 1887-1892, 2004)。他の下剤もすべて腸管内圧を上げるが、腸閉塞・腸管穿孔を起こしている状態の腸管粘膜はバリア機能を失っているため、吸収されにくいMgが吸収されて10µg/mL以上の致死性の高マグネシウム血症を結果的に起こしてしまったのではないか。偽膜性大腸炎で経口バンコマイシンが投与されたら吸収されないはずのバンコマイシンが58µg/mLの中毒濃度になったことは報告済みだ(Hirata S, et al: Jpn J Clin Pharmacol 34:87-90, 2003)。高マグネシウム血症を起こした原因は酸化マグネシウムの投与ではあるが、その原因となる腸閉塞・結腸菲薄化を起こした真犯人は統合失調症で多用される抗コリン薬だ。PMDAは「酸化マグネシウムの使用は必要最小限にとどめること」を訴える前に「抗コリン薬の併用を必要最小限にとどめること」とすべきじゃないの?




エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023の第11章「薬物療法」の11-8「疼痛のあるCKD患者への鎮痛薬選択」には、「1. 非ステロイド性抗炎症薬:併用薬剤に注意し、常用しないことが望ましい。選択的シクロオキシゲナーゼ2阻害薬、特にセレコキシブについて、腎への安全性に関する明確なエビデンスはない」と記載されている(図1)。「特にセレコキシブ」ってなんで?

痛風を伴うCKD患者には極力NSAIDsを使いたくないが、アセトアミノフェンには抗炎症作用がない。それなら、せめてNSAIDsの中で胃障害が少なく、消化管出血のリスクも極めて低く(図2)、心不全イベントが最も少なく(図3)、アスピリン喘息を起こしにくいもの(それがセレコキシブだ)を選ぼうとする医師もいるはずだ。それなのに、読者が納得できるような引用文献を付けずに、「セレコキシブには特にエビデンスがない」と書かれている。


CKD診療ガイドライン作成の前には毎回、腎臓学会から公開されるドラフト版を平田は必ず精読し、パブリックコメントを提出している。今回も「セレコキシブは他のNSAIDsに比べ、腎障害が少ないという論文が6報あります(図4)」とコメントしたが、今回ほどひどく無視されたのは初めてだ。というか、ドラフト版は内容が薄かったのに、印刷された正式版には新たに膨大な文章が付け加えられ、その中に「特にセレコキシブ」という文言が追加されていた。このガイドラインの完成後、学会のシンポジウムでも問題になったし、ガイドライン作成者にはその前後に何度もメールを送ったし、同じ大学病院の知人にも連絡を依頼した。しかし、何の反応もなかった(留学中だったけどメールくらい返せるはず)。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」では、「CQ:高齢者へのNSAIDs投与は腎機能低下のリスクを高めるか?」という問いに対し、「高齢者では使用をなるべく短期間にとどめる(要約)」となっており、中止が難しい場合には、「消化管の有害事象を予防するために、選択的COX-2阻害薬(セレコキシブなど)の使用を検討する」となっている。また、「消化性潰瘍診療ガイドライン2020」では「NSAIDsによる潰瘍発症の予防にCOX-2選択的阻害薬の使用を推奨する」と記載されている。NSAIDsで最も注意すべきなのは腎障害よりも消化管出血だ。なぜなら、消化管出血は時として致命的な結果を引き起こす可能性があるためだ。

SGLT2阻害薬は非常に多面的な効果を持っていて(図1)、強力な腎保護作用・心保護作用のどれが主要なメカニズムなのかいまだにわかっていない。これらの中には貧血改善効果、尿酸低下作用などもあるけど同じ作用を持つ治療薬ではこれほどの臓器保護作用は認められないし、利尿作用もあるけど早期だけしか認められないので、これらは主作用じゃない。糸球体過剰濾過を改善することによってアルブミン尿を減らすことによって、腎機能の悪化、心血管合併症の発症を防止するのがメインの作用じゃないかなと思っていた。だけどCANVAS試験、EMPA-REG outcome試験ともに糖尿病関連腎臓病DKD患者のヘマトクリット値の上昇、尿酸値の低下が尿中アルブミン減少よりも腎アウトカムに影響を与えた潜在的媒介変数としてははるかに強力だったという2つの報告がある(図2、図3)。CANVAS試験サブ解析の考察では多変量モデルでは貧血改善と血清尿酸値低下の組み合わせがカナグリフロジン治療効果の103.0%を媒介することも示されている。初期変化は利尿作用による血液濃縮、長期的な変化は腎臓によるEPO分泌亢進を介した造血作用による。つまりDKD患者の慢性的な低酸素状態を改善する作用によると考えられるが、これらの報告ではヘマトクリット値の初期変化は主に尿中Naおよび水分喪失による血液濃縮を反映している可能性が高いが、長期的な変化、主に腎臓によるエリスロポエチン分泌亢進を介した造血作用を表している。通常は4週間くらいかな?それにしてもベースラインのヘマトクリット値が42%未満から増加するとか、尿酸値が5.7mg/dL以上から低下することくらいで腎保護効果に影響を与えるってのはどうも信じがたい(図4)。失礼だが統計上のお遊びのように見えてしまう。




「SGLT2阻害薬は利尿作用があるのに急性腎障害を増さなないどころか25%も減らしているのはなぜ?」の1つの回答はSGLTのフル稼働による腎虚血を腎性貧血改善作用によって防ぐ可能性はあって、それが投与初期の利尿作用による血液濃縮が関わっていた可能性はあるかもしれない。フロセミドの利尿は結構、強力で無理やりっぽいけど、SGLT2阻害薬による利尿は溢水を改善したら、抗利尿ホルモン分泌が増加して、過度な利尿を抑えることなどによってうまく調整されているのではないだろうか?
SGLT2阻害薬のアルブミン尿抑制作用は確かに重要だけど、アルブミン尿抑制作用だけだったらMRAのほうが同等かそれ以上強力なのに、腎保護作用は明らかにSGLT2阻害薬のほうが強力なのは、いまだよくわかっていないその他の多面的な作用によるのだろう。だからヘマトクリットや尿酸という結果は単なる統計上の結果に過ぎなくって、まだまだほかにもあると思うんだよね。
糖質入り飲料が健康に良くないことはよく知られるようになったが、特に高齢者の中には「100%果汁は健康にいい」という神話のようなものがあるようだ。果物は抗酸化作用のあるファイトケミカル、食物繊維、ビタミンやミネラルなどの有効な栄養成分も含んでいるので摂った方がいいけど、摂りすぎには要注意!というイメージを持っている方が多いんじゃないかな?確かにブドウの皮にはアントシアニンという抗酸化物質が入っているが、ブドウ糖がたくさん入っているとグルコーススパイク(血糖値の乱高下:下がりすぎるのもよくない)によって血管を損傷しやすいし、果糖は血糖値をあげないが、満腹感を得られず食べ過ぎてしまう。しかも果糖は中性脂肪に変わりやすく脂肪肝になりやすい。太りやすさでは果糖は砂糖やコメより危険と言われているのでこれもよくない。果物の中でブドウはブドウ糖と果糖の両方の含有量が特に高い。だからブドウジュースの一気飲みはグルコーススパイクの原因になって、動脈硬化を進行させるので良くない!デビット・シンクレア教授の名著「ライフスパン」でも教授が栄養士さんから「ブドウって本当に危ないの」と教えてもらった逸話が挿入されている。山梨県などのブドウ農家の方には申し訳ないが、ブドウはとってもおいしいのだけれど、ブドウ糖・果糖含量が高いので、食べ過ぎにはくれぐれも気を付けていただきたいのだ。このほかにもブドウ糖を多く含む果物にはいちじく、プルーン、柿があるそうだ。
果物を摂るにはイチゴ、モモがブドウ糖、果糖の含量が低く、ブルーベリーも食べる量が少ないのでよさそうだ。レモンやグレープフルーツはあまり甘くないから糖質が少ないのは分かりやすいよね。これらの情報は医療者でもあまり知らない人が多いみたい。


尿素は腎機能低下によって上昇するが、血清クレアチニン(Cr)値と異なり、脱水や発汗過多、心不全、ショックなどによる腎血流低下時には尿細管で水とともに再吸収されて上昇することがあるため、腎機能マーカーとしては尿細管で全く再吸収されない血清Cr値に劣る。BUNは筋肉の崩壊などの蛋白異化や高たんぱく食など様々な要因によっても上昇するからだ。また肝による尿素合成低下によって低下するなど様々な要因によっても変化する。BUN/Cr値は通常、10程度であるが、20を超えると脱水を疑うことのできる腎前性腎障害の簡便なマーカーにもなる。
脱水の時には腎臓が、水や塩を尿細管で再吸収して尿量を減らすことによって、脱水にならないようにしているが、この時尿素は尿細管から再吸収されてしまうが、Crは再吸収されないので正確な腎機能マーカーになるとともに、Crは上がらずにBUNだけが上がるからBUN/Cr値が上昇する。高齢者で利尿薬の投与、夏季の発汗量増加、など脱水でBUN/Crが20を超えることはよくあるが、僕が経験したBUN/Cr値の上昇は下記に示すものが多い。
①プロテインを摂取しているボディビルダー、②消化管出血(血液成分は多くのプロテインを含んでいる)、③重症感染症(多分、発熱による不感蒸泄の亢進と炎症による体蛋白の崩壊?輸液をするとBUNだけでなく血清Cr値も低下することが多い)、④ステロイド投与(たんぱく質を摂取しても糖質に変える異化亢進ホルモンだから)、⑤飢餓による体蛋白崩壊


透析導入が必要な患者さんはこれから透析が必要と聞くとかなり落ち込む。ある患者さんから聞いたんだけど、医師Aから「週3回1回4時間、実質的には週3回何もできなくなる、穿刺、透析中の低血圧、不均衡症候群、貧血、シャント感染、骨がもろくなる、心不全、カリウム制限、リン制限、水分制限」と言われて死にたくなったそうだ。でもB先生からは「現在ある尿毒症症状、つまり全身倦怠感や食欲不振がなくなって、食事制限・水分制限も楽になるんだ。果物だって食べ過ぎは良くないけど少量ずつなら食べていいんだよ。しかも透析をやっている同じ境遇の友人がたくさんできる。透析って悪くないぞ!」と言われて随分気持ちが楽になったそうだ。確かに導入前と比べて透析すると尿毒素が抜けて、尿毒症症状が軽減し、食欲不振、全身倦怠感もなくなり、食事制限も水分制限も導入前と比べると随分楽になるのは本当のことだ。ただし実感としては腎炎や高血圧の方は透析をすると元気になるけど、その当時は糖尿病の方はすでに合併症が多くてなかなか思い通りにならないことも多かった。だけど僕もB先生の話し方を服薬指導に生かしていた。そうすると本当に透析導入後、「平田さん、あんたの言うように透析して本当に活気が出てきたよ」という患者さんがいるんだ。すべてじゃないけどね。患者さんを落ち込ませるだけの暗い服薬指導はやめよう!
2019年の日本の高血圧ガイドラインは高血圧の定義は140/90mmHg未満(診察室血圧で収縮期140mmHg未満かつ拡張期90mmHg未満で、それよりも重要な家庭血圧は135/85mmHg未満)だが、実質上ほとんどの降圧目標血圧は130/80未満になったのだ。この中で例外的に140/90でよかったのが脳血管障害患者(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価)、CKD患者(蛋白尿陰性)、後期高齢者だけに過ぎなかった。しかしこれらは今回の高血圧管理・治療ガイドライン2025では診断の基準値は140/90mmHgでこれまでと変わっていないが、治療の降圧目標がすべての患者で130/80と厳しくなった(図1)。すべての高血圧患者(75歳以上であっても)に対し一律の降圧目標「130/80mmHg未満」としたが、高血圧の基準値は「診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上」で据え置きとなった。基準値と降圧目標が違うので、ややこしいが、基準値は高血圧と診断される値(140/90mmHg以上)のことで、降圧目標は血圧値をどこまで下げるかという目指すべき値(今回のガイドラインでは患者背景を問わず一律130/80mmHg未満になった)のことだ。降圧目標が一律130/80mmHg未満になったのはわかりやすくするためかもしれない。

また新ガイドラインでは新たに降圧薬が、使い方や特徴によってG1~3の3つに分類された(表1)。G1は降圧治療開始時から使用する主要降圧薬で、長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、RAS阻害薬、少量のサイアザイド系利尿薬、β遮断薬の4種。JSH2014からβ遮断薬は心血管イベント発症抑制効果が他の第1選択に比べると弱かった、低血糖症状を隠蔽するなどのため外されたが(図2)、2025では特に心不全での有用性が期待できる病態で、あまり使用されていない実態があるので復活したらしい。そして降圧利用の3ステップの2ステップ目、つまりG2降圧薬にARNIとMRAが加わった。


要約すると診断基準は140/90で変わらないが、
(1)患者背景を問わず、降圧目標は一律「130/80mmHg未満」
(2)薬物療法の早期開始、早期ステップアップを推奨(今回新たにSTEP 1から2、2から3へは「できるだけ早期にステップアップ」するよう示された(図3)。)

(3)生活習慣改善の重要性をより強調
ということで2019年までは2019年までは「75歳以上の人は少し緩めに」「たんぱく尿(-)のCKD患者の降圧目標は140/90mmHgで過降圧は腎機能を悪化させる可能性がある」と言われていたが、今回の改訂では75歳以上も「蛋白尿(-)のCKD患者も「130/80mmHg未満」の目標値を一律に当てはめたのはなぜなんだろう。この間にエビデンスレベルの高い論文が出てきたわけではない。逆になんで2019年に分かっていた75歳以上のSPRINT試験におけるフレイル患者のCVDアウトカム(JAMA. 2016; 315: 2673-2682:図4)を2019年には採用せずに、今回になって重要視したんだろう?蛋白尿なしの新ガイドラインの解説を読んでみると(原則個別対応)と書いてあり、蛋白尿なしのCKD患者では低血圧やめまいなどの過降圧の兆候に注意して・・・・、など、その解説の言い訳が長いのなんの。多分、疾患によって降圧目標を変えるとわかりにくいし、「140/90でいいや」と積極的な治療をやめてしまう医師・患者がいることから統一されたのかも。


モーラスⓇテープなどのいわゆるNSAIDsの貼付薬では副作用はどうなのか?これについてはよく質問を受けるので考察してみよう(図1)。胃障害についてはケトプロフェン経皮製剤大量使用(20 mg×8枚/日)による小腸出血が中止後に回復した報告があるし、NSAIDs小腸障害に関してはPPIなどの酸分泌抑制薬の併用は無効だ。2年にわたり治癒が遷延した胃潰瘍が,ケトプロフェン経皮製剤(40 mg×4~6枚/日)の使用中止により2か月後に治癒したという症例があった。モーラステープの経皮吸収率はインタビューフォームによると69.7 %という、経口投与以上ではと思わせる高さだ。テープを何枚も貼付すると内服薬カプセルの常用量である50mg連続投与時のAUCよりも高くなり、胃への直接刺激がないだけでもましではなく、胃潰瘍の原因になるということだ。ロコアⓇテープでも出血性胃潰瘍の学会報告はあった。

ではロコアⓇテープなどの経皮吸収型NSAIDsで腎障害は起こりうるのか?ロコアⓇテープによるAKIの報告は地方学会レベルの発表が1報、地域の医学雑誌に1報のみあった。またPubMed検索では「Esflurbiprofen patch×AKI」、「Ketoprofen patch AKI」では全くヒットしないが、「Loxoprofen patch×AKI」で76歳の女性でロルノキシカム投与によりネフローゼレベルの蛋白尿を伴う微小変化型の腎炎・間質性腎炎を発症した日本の報告がある。ロルノキシカムの投与によってネフローゼを発症したが、中止により改善傾向だったところ、ロキソプロフェンパッチを投与すると、アルブミン尿が再燃し腎機能が悪化したという報告だ。ただしステロイドなどの治療なしで投与中止のみによって回復している(図2)。さらに同じく日本でNSAIDの経皮パッチ製剤により、急性間質性腎炎および急性尿細管障害が生じたという報告があるが、活性型ビタミンD製剤と市販のCaサプリメントの服用を受けていたというのが気にはなるが、生研で証明された初の急性間質性腎炎の報告らしい(図3)。


ロキソニンⓇパップ2枚を反復投与した時の活性体AUCは内服の37.6%、Cmaxは約20ng/mLとロキソニン錠活性体trans-OH体のCmax850ng/mLのわずか、2.3%しかない。しかし特にアレルギー性の間質性腎炎、免疫系を介した蛋白尿など用量依存的ではないAKIは無視できないように感じた。
結論として高齢者にNSAIDsを使用するともっとも起こりやすい腎前性腎障害はほとんど起こっていない。腎障害が起こったとすればアレルギー性の間質性腎炎か、免疫系を介した糸球体障害だけみたいだ。濃度依存性の腎前性腎障害が起こらない理由はよくわかっていないが、最高血中濃度Cmaxが貼付薬では極めて低いことではないかと勝手に推測している(図4)。もしこれが正しいとすれば、パップ剤のCmaxはテープ剤の3.7%、錠剤の0.68%に過ぎないのだ。ただし貼付薬でもAUCが高くなるものは前述の症例のように消化管障害は起きている。テープ剤に比べパップ剤のほうが吸収率はより高いので、濃度依存性の副作用を起こさないようにするにはパップ剤のほうがより安全だろう。

腎機能が低下してくるとトリプルワーミーの1つであるRAS阻害薬を投与し続けてよいのだろうか?一応、アルブミン尿(+)の糖尿病関連腎臓病、蛋白尿(+)のCKD患者には後期高齢者でない限りは投与すべきだと思うが、蛋白尿(-)の高血圧患者には米国の調査では末期腎不全ではRAS阻害薬の処方率が低下している。これはRAS阻害薬を高度・末期腎不全患者に投与しても効かないんじゃないの?あるいは腎機能悪化が怖い、透析導入を早めてしまうかもしれない、という危惧からだと思う。RAS阻害薬の代わりに腎保護作用や蛋白尿抑制作用もないけど急性腎障害を起こさないCa拮抗薬の処方率が増えている(図1)。

じゃあRAS阻害薬は腎機能が悪化すると中止すべきなの?投与し続けていいの?ということに関しては報告がある。まずは観察研究だが、「RAS阻害薬中止で死亡率、CVDは増えるが透析は減る」ということで、わかりやすく言うとRAS阻害薬を続けると死亡率は下がって〇、心血管合併症も下がって〇だけど、透析導入患者は増えちゃったって、つまり×ってことだ。でも観察研究だとエビデンスレベルとしては弱い(図2)。そこで行われたのがSTOP-ACEi TrialというRCTだ。結果は図ではわかりにくいけど腎機能悪化に関してはeGFRは続けたほうがよいように見えるが有意差なし、透析導入にも続けたほうが透析導入が少ないように見えるので両方、続けたほうが〇だが、統計的には有意差なし。N数が少ないため検出力が弱かったのかもしれない(図3)。ということで、CKD診療ガイドライン2023では「高度腎障害・末期腎不全になってもRAS阻害薬を一律には中止しないことを提案する」という結論に至った。ただしRAS阻害薬を投与している患者で血清Cr値が上昇するほど透析導入、死亡リスクが高くなるということは複数の大規模コホート研究で一致しているので(図4、図5)RAS阻害薬はトリプルワーミーの1つであるということを意識し、急性腎障害が起これば速やかに一時中止すべきだ。




加齢とともに腎機能は低下する。じゃあ、加齢とともにeGFRは低下するかといわれると、じつは加齢に伴って腎機能eGFR値が信頼できなくなるんだ。eGFRは血清クレアチニン値を基に以下の式で算出される。
eGFR: 194 × Age -0.287 × Cr -1.094 × 0.739(女性)
例えば寝たきりの高齢者は筋肉を使わないため、みんなサルコペニアだから、骨格筋由来の血清クレアチニンは0.2~0.4mg/dLの世界で、なんとeGFRが100を超える、200mL/min/1.73m2を超えるということが普通にあるが決して腎機能が素晴らしくいいのではなくて、筋肉量が少ないだけなのだ。活動度の低い要介護度の高い人も同じことだ。このような患者にバラシクロビル3000mg/日を投与したら、当たり前にアシクロビル腎症・脳症をきたし、2~3日の連続透析が必要となる。こんな時に頼りになるのが筋肉量に依らない腎機能マーカーのシスタチンCだ。腎機能は加齢とともに最も低下する生体機能だ(図1)。でも加齢とともに骨格筋量が減少し80歳代の男女ともに50%以上がサルコペニア。ということは80歳代の患者さんの血清クレアチニン値を基にしたeGFRは過大評価され、ほとんど信用できないってことだ(図2)、血清シスタチンCは上がって腎機能は確かに低下しているのに、血清クレアチニン値は上がってくれないのだ(図3)。僕たちの検討でも赤丸で示す寝たきり患者はみんな実測腎機能よりも腎機能が高く見積もられていた(図4)が、その他のリハビリに励んでいる高齢者のeGFRは実測腎機能との相関性は非常に高かった。




80歳代の高齢女性で体重40kg以下になっているような患者さんは日本にはとても多い。前述のように活動緯度の低い高齢者の腎機能は血清クレアチニン値を基にしたeGFRでは測っても意味がない。腎排泄性のハイリスク薬を投与しなきゃいけないときには血清シスタチンCを基にしたeGFRを用いてほしい。だけど薬剤師が測定依頼をしないから医師も「シスタチンCって何?」と言って測ってくれない。だからいつまでたっても3か月に1回しか測定できない、測定費用は1回1000円以上かかるという状態が続くんだ。測定回数が増えて、当たり前になれば、検査費も安くなり検査感覚も短くできるはずだ。「シスタチンCって何?」っていう医師をなくそうよ、薬剤師の力で。