平田のX

2025年12月22日 X投稿 閲覧者4,082人

 Na型レジン(SPS)のケイキサレートはCa型レジン(CPS)のカリメートに比べると便秘しにくく、カリウム吸着力が2倍強いと言われている。メーカーさんには恨みはないが、明らかにカリメートは劣るのだ。しかしなぜかCPSのほうがよく使われており、ロケルマ発売までの国内シェアの85%がCPSだ。SPSの発売された1971年は透析の黎明期でNaは心不全の原因になると嫌われていたので、1975年に発売されたCPSに取って代わられた。この当時は活性型ビタミンDがまだなかった時代だったのでCaは正義の味方だったから、ヘパリンNaだってヘパリンCaに変わろうとしてた変な時代だった。かたや悪の代表だったはずの当時の透析液Na濃度は135mEqと低すぎたので、透析中の低血圧ショックが頻繁に起こっていたが、140mEqになってから透析中のトラブルが激減した。Naはそんなに悪ものではなかったのだ。

 僕がカリメートに疑念を持ち始めたのはCPS服用透析患者で、消化管穿孔症例を経験したから。その当時の白鷺病院の透析カルテは永久保存だったから、カルテ庫で、消化管穿孔の原因になる虚血性腸炎発症によって開腹手術を受けた透析患者+虚血性腸炎疑いで入院した患者を調べ上げた。開腹手術を受けた15名中7名がCPS服用者で非発症群での処方率10%に比し有意に多く、共通点は多量の堅固な便塊(時にはカリメートの塊を含む)が手術時に見つかったことだ。そしてそれは海外での症例報告と酷似していた。

 医中誌で調べてみると透析患者の薬剤性消化管穿孔の原因薬物の7割がCPSであり、SPSの報告は皆無だった。ただし上述のようにCPSのシェアが高いから販売バイアスによってSPSの報告がなかったことも考えられる。そこで熊本大の学生の研究テーマとして便秘モデルラットにSPSとCPSを投与すると明らかにCPSで便秘の増悪が認められた。

 「たかが便秘」とよく言われるが、便秘によって腸閉塞、腸管穿孔になって開腹手術を受けた半分が死亡している。透析患者の死因の9位は腸閉塞で、年間300名以上が亡くなっており、その原因が慢性便秘なのだ。僕は薬剤師だが、医師を含めて「透析患者の便秘」「透析患者の虚血性腸炎」に関する論文数は責任著者を含めると日本で最多だから、透析患者の合併症の便秘に関する執筆依頼はいまだ絶えない。

 

 

 

 

2025年12月17日 X投稿 閲覧者11,531人

 宮崎県の帯状疱疹の調査は、1997年から続く、現在も進行中の世界で最大規模の帯状疱疹の疫学調査であり、帯状疱疹についての基本的情報のほとんどが宮崎スタディによるものだろう。この研究は宮崎県日南市で「医療法人 外山皮膚科」院長で宮崎県皮膚科医会の外山 望先生がご尽力されたとお聞きした。僕は熊本から関西に戻ってきた翌年の2021年に外山先生と一緒にオンライン講演をさせていただいたことがある。

 このような疫学的研究の多くが大学が中心となって行われることが多いが、15年以上にわたり、宮崎県皮膚科医会に属する皮膚科診療所39施設と総合病院の皮膚科7施設を受診した帯状疱疹患者の性別・年齢を月ごとにまとめられたのが宮崎スタディである。1997~2011年までの15年間で宮崎県の人口は約4万5千人(3.8%)減少しているが、帯状疱疹患者数は毎年増加しており、15年間で33.3%増加している。また発症率も38.5%増加していた(図1)。15年間の平均発症率は4.38/千人年であった。興味深いのは水痘の季節性流行ほど明確ではないが、鏡像関係にあり、帯状疱疹は冬に減少し、夏に1.22倍増加する(図2)。おそらくはウイルスが低温で乾燥した環境でより長く生存できることから冬に水疱瘡の発症率が高いため、冬には水疱瘡の子が周りにいるためウイルスによって免疫がブーストされて帯状疱疹を発症しない。そのため逆に夏に帯状疱疹が増えるってことだ。熊本大では夏にバラシクロビルによる急性腎障害が起こりやすい結果を示し、その理由は発汗が増えるため、「こまめな飲水」ができにくい高齢者の腎障害発症が多いという論文が報告されたが(図3)、実は帯状疱疹が夏に多いためにバラシクロビル服用患者が増えただけかもしれない。また外山先生からは2014年の小児の水疱瘡ワクチンの定期接種開始後、お父さん、お母さん世代の若年者の帯状疱疹患者が増えている、50歳以上の患者で急増するということも教えていただいた(図4)。これも水疱瘡の子供がいなくなってブーストされなくなったためと考えられる。宮崎県の帯状疱疹の15年にわたる大規模疫学調査によって得られたものは果てしなく大きい。これをまとめた温和な先生・外山先生と宮崎県皮膚科医会の結束力には大いなる敬意を表したい。どこかの県の薬剤師会、病院薬剤師会がこのようなことをやって論文をまとめてくれたら、薬剤師も医師から大いに評価されると思うのだが・・・・。あまり聞いたことがないのはとっても残念だ。

 

 

 

 

 

2025年12月13日 X投稿 閲覧者9,959人

 SGLT2阻害薬は糖尿病だけでなく心保護作用・腎保護作用において最強の薬剤として認められつつある(図1)。糖質を尿中に捨てるSGLT2阻害薬を服用すると、低糖質食を摂取したのと同様の生体内環境になって、インスリン分泌が低下して、ブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなるため、脂肪を分解してケトン体をエネルギー産生源の主役にする。断食、カロリー制限、16時間絶食などは長寿遺伝子を活性化する、細胞が古くなった細胞成分やミトコンドリアをオートファジー亢進によって分解・再利用して体の機能を活性化させると言われている。しかし絶食などで惹起される血中ケトン体濃度上昇(これをケトーシスと言う)では重篤なアシドーシスはならないが、糖尿病ではもともとインスリン分泌能が低下しているため、脂肪分解が亢進してケトン体が増えすぎてアシドーシスになって毒性を示す危険な状態(糖尿病性ケトアシドーシス)に至ることがあるのでケトン体は糖尿病ではマイナスイメージがある。しかしインスリンの働きが正常であれば(糖尿病でなければ)、ブドウ糖の利用が適切である限り、ある一定濃度のケトン体は極めて安全なエネルギー源になる。最近の研究ではケトン体、特にβ-ヒドロキシ酪酸にはエネルギー源としての作用以外にする作用などによって心機能を改善させ腎臓や脳を保護し、血管内皮機能改善作用、酸化ストレス軽減、炎症抑制、脂質異常改善あるいは抗老化作用などの生理活性があるなど、様々な有益性が明らかにされつつある(図2と図3の左下)。

 

 

 

 

 もともとSGLT2阻害薬は尿糖排泄を促進させる血糖降下薬と思われていたが(図3左上)、尿細管糸球体フィードバック改善によってアルブミン尿(+)の糖尿病関連腎臓病DKD、蛋白尿(+)のCKD患者の腎保護の進行を抑制し(図3右上)、さらにSGLT2阻害薬治療は近位尿細管による酸素消費量を抑制し、尿細管間質の

 低酸素症を改善することによって、エリスロポエチン産生細胞が活性化して血中ヘモグロビン値を上げて、腎虚血を防ぐ(図4)。おそらくこれは図3右下貧血改善作用によって、近位尿細管の低酸素状態を改善して腎虚血によって起こる急性腎障害を抑制する作用を表すのではないだろうか。ただし図3のグリーンで示す有益な作用だけではなく、赤字で示すSGLT2阻害薬に特徴的な副作用をもたらすことも気を付けよう。

 

2025年12月7日 X投稿 閲覧者3,042人

 あまり期待していなかった松江のゲストハウスだったけど、そこで隣の部屋でマラソンに参加するインド南部出身で東京のIT企業に勤めるDeepak君と意気投合。オーナーさんも親切で会場まで僕たちを車で送ってくれました。僕のマラソンの結果は折り返し地点までは2時間18分と快調だったけど、33km地点で古傷の左膝が痛み始め、やむなくそれ以降はほとんど歩いてゴール。記録は5時間18分と散々、70歳以上の部門では98人中42位でした。 Deepak君は僕より1時間早くゴールしたのに僕を待ってくれてて、一緒に食事してお互いが東京、神戸に来た時には会うことを約束。両国での5月場所は2人で枡席で見ることになるだろうね。ちなみに彼は僕の息子たちとほぼ同じ年齢だよ。

 

2025年12月2日 X投稿 閲覧者3,902人

 理想の薬剤師像って何だろう?僕は100床未満の小さな病院薬剤師だったので、病床数の制限が撤廃された40歳になって初めて病棟での服薬指導ができるようになった。その時には何となく明るくて、やさしくて、いろんな話を聞いてくれて、ドクターに言えなかったことを伝えてあげて、一生懸命、真面目に接してくれる薬剤師になりたいと思っていた。でもほんとの僕は決して明るい性格ではない。病棟に行く前に表情を確認して優しく、明るく見えるような薬剤師像を演じていた。そうすると病棟に行くごとにこれが徐々に普通になってきて、無理をしなくても優しく明るい薬剤師になれたような気がする。中には気難しくて、医師やナースも嫌がっている患者の病室に行くと「帰れ!」と言われたこともあった。でも何度も足を運び、会話をしてみるとそんなに性格の悪い患者さんなんていない、病気のせいじゃないのかなと思った。そのうちその患者さんが医師に言いたかったことを聞き出して伝えることができるようになった後、その患者さんから「あの薬剤師の兄ちゃん、呼んでくれへんか」とご指名をいただくことがあった。内心、「やったぜ」とうれしくなったものだ。

 

 

 今は「薬を飲みたくなるような指導をしてくれる」薬剤師ってホントに大切だなと思っている。だって薬嫌い、薬を一生飲むなんてとんでもないと思っている人は多いけど、難しい薬の作用や副作用を患者さん目線で分かりやすくかみ砕いて説明してくれる技量によって「薬を飲みたくなる」ようにするって、薬のことをしっかり勉強にした人にしかできないホントに重要なことだと思ってる。

2025年11月30日 X投稿 閲覧者8,993人

 透析導入をほぼ40%減少させる驚異的な腎保護作用、心血管病・心不全入院などをほぼ30%低下させる驚異的な心保護作用を示すSGLT2阻害薬はもともと近位尿細管のナトリウム‐グルコース共輸送体2、つまり近位尿細管のS1セグメントにあるSGLT2を阻害する薬だけど、腎機能正常者に投与してもS3セグメントにあるSGLT1(図1)が頑張ってブドウ糖を再吸収するから50g/日の非糖尿病ではブドウ糖を排泄させる薬理作用に過ぎない(図2)。だけど非糖尿病CKD患者、非糖尿病心不全患者でも糖尿病合併患者に劣らない効果を示す。その薬理作用は当然、尿糖排泄促進や糸球体過剰濾過軽減、アルブミン尿軽減だけでは説明できない。

 

 

 

 最近は貧血改善作用や、長寿遺伝子SIRT1活性化、尿酸値低下作用などとの関係を重要視する専門家も出てきたけれど、個人的にはケトン体のβヒドロキシ酪酸の血中濃度上昇が一番、SGLT2阻害薬の多面的な作用について説明しやすいと思う(図3)。ブドウ糖の貯蔵エネルギーは骨格筋グリコーゲンが300gと血糖を維持するための肝グリコーゲンが100g、骨格筋の1200kcalって1日足らずのエネルギーに過ぎないじゃん!だけど体脂肪は男性で20%足らず、女性は妊娠したときに胎児を守るために30%足らずの体脂肪を持っている。体脂肪は水分も含むことを差し引いて10kgあるとすると9kcal×10kg=90,000kcalでほぼ60日分のエネルギーだ(図3)。我々の祖先はもともと狩猟採集生活をしており、主な食料は肉・魚と木の実などの低糖質食で秋には甘い果実を食べて脂肪を蓄え、長い冬を越していた。そして女性に皮下脂肪が多いのは食料のない冬でもグリコーゲンではなく脂肪を貯蔵エネルギーとして使い胎児を守っていたからだろう。最後の氷河期が終わって、5,000年前(イスラエルの歴史家で哲学者でもあるユヴァル・ノア・ハラリ氏による「サピエンス全史」によると12,000年前に農業革命が起こったとしている)の新石器時代になって農耕・牧畜が始まり、糖質である穀物を主食にしはじめ、ブドウ糖がエネルギー源の主役になったのではないだろうか(図4)。そして現在、それによる弊害、肥満、2型糖尿病、高血圧などの増加に苦しんでいる。脂肪を分解して得られるケトン体は生体にとって実に様々な有益な作用を持っており、それらの多面的な作用はヒトが病気をせずに健康で長生きするために必要なものばかりだという話は次回にしよう。

 

 

2025年11月29日 X投稿 閲覧者26,643人

 SGLT2阻害薬はもともと尿糖排泄を促すことによる血糖降下薬であった。血糖降下作用はそれほど強力ではないし、脱水(4.5%)、性器感染(高齢女性で多く3.8%)、糖尿病性ケトアシドーシス(糖尿病患者のみで起こり0.22%)も起こしやすい(図1)のでDPP4阻害薬などと比べて決して、使いやすい薬ではない。

 

 

しかし様々な大規模研究によって透析導入をほぼ40%回避でき、心不全入院・心血管合併症発症をほぼ30%低下させ、全死亡も有意に改善した、今まで予後を改善する治療薬のなかったHFpEF(左室肥大による拡張不全が原因の患者が多いと言われている)も有意に改善した。駆出率に関らず効果を示す薬物がこれまでにあったであろうか?しかも投与初期には利尿作用が認められ、脱水から急性腎障害が増えるという従来薬の常識を覆し、逆に急性腎障害を25%も発症を抑制してくれ(図1)、RAS阻害薬やMRAとの併用による高カリウム血症も防いでくれる。ただし日本の高齢者は痩せがちであるため、投与したくてもできない患者が一定数いることは確かだ(図2)。

 

 

でもそれら以外の投与可能な患者さんには投与してほしい。ようやく糖尿病での処方率が上がってきたと聞くが、CKD/DKD、心不全の適応がありながら投与を躊躇している医療者が多いのは残念、というよりこれだけエビデンスのそろった薬を投与しないのはイナーシャ(怠惰)というべきではないだろうか(図2)。日本腎臓病薬物療法学会ではSGLT2阻害薬の効果、副作用とその防止法、シックデイ対策などを若手薬剤師によるワーキンググループが作成した(図3、図4)。これらの内容は秀逸で極めて使いやすいので患者さんの理解度だけでなく、医療者の理解度もアップするはず。学会会員でなくても無料でダウンロード可能だ。平田もアドバイザーとして参加さえていただき、日本腎臓学会の先生方にも査読していただいたのでぜひ活用してほしい。

SGLT2阻害薬患者指導箋(JSNP版) | 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会

 

 

 

2025年11月25日 X投稿
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 高血圧管理・治療ガイドライン2025では診断の基準値は140/90mmHgでこれまでと変わっていないが、降圧目標がすべての患者で130/80と厳しくなった(図1)。高血圧ガイドライン2019までは「75歳以上の人は少し緩めに」「たんぱく尿(-)のCKD患者の降圧目標は140/90mmHgで過降圧は腎機能を悪化させる可能性がある」と言われていたが、今回の改訂では75歳以上も「蛋白尿陰性のCKD患者も「130/80mmHg未満」の目標値を一律に当てはめたのはなぜなんだろう。

 

 

 日本腎臓学会編: エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023ではCKDステージG1, G2でDM非合併CKDで蛋白尿(-)では140/90未満を推奨する(IA)、G3-G5で蛋白尿(-)では140/90未満を提案する(2C:図2)になっている。だけど高血圧ガイドラインでは腎機能に関係なくCKD合併高血圧の降圧目標は130/80mmHgでこれも1Aだが(図3上)、蛋白尿陰性CKD患者に関しての考察、フォレストプロットはなく、「蛋白尿の有無での層別化は蛋白尿陰性のデータがないため行えなかった」となっている。この1Aというのは推奨度、エビデンスレベルも最高レベルということなのに、異なる内容で1Aになっていることが悩ましい。

 またCKD診療ガイドラインでは75歳以上の高齢者には150/90mmHg未満を推奨(2C)、忍容性があれば140/90mmHgを推奨(2C)だけど(図2)、高血圧ガイドラインでは収縮期130mmHg未満(1A:図3)で医師・薬剤師はどちらのガイドラインを参考にすべきなのだろうと迷ってしまいますます悩ましい。

 

 

 

 2025年の高血圧管理・治療ガイドラインは序文で「日本人の血圧管理状況は先進国で最低レベルであるため、最新のエビデンスの説明だけでなく、国民、患者、医療者の血圧を下げる行動につながるようなガイドラインにする作成方針で作られた」ということから、血圧を下げることは重要ということを分かりやすく伝えるため、そして基準値の「140/90未満ならいいや」と積極的な治療をやめてしまう医療者・患者が多いことから、わかりやすく130/80mmHgに統一したのかもしれない。その分、このガイドラインには「ただし」という注釈(言い訳?)が多くなっている。だけど厳格降圧群(SBP<120mmHg)ではCKDインシデンスが3.53倍も増えることだけが問題だったSPRINT Study(図4)のことも考えてほしい。腎機能低下した高齢者に厳格降圧を強く推奨すると問題ありと思うのは僕だけだろうか?

 

 

2025年11月24日 X投稿
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 RAS阻害薬だけでなくSGLT2阻害薬、MRAなど多くの腎保護薬には一過性の腎機能悪化initial dipを伴うが、CKD診療ガイド2024では「CKD患者にRA系阻害薬を投与すると、血清Cr値が上昇することがある。しかし、前値から30%未満の上昇なら、そのまま継続してよい。」記載されており、この内容はCKD診療ガイドライン2009の時代から変わらない。でもこれってどうなんだろう。2017年のSchmidtの大規模コホート研究ではRAS阻害薬を投与して血清Cr値の上昇が10%未満の人を対象にして10-19%上昇群では1.73倍、20-29%上昇群では2.58倍、30%以上上昇群では3.8倍以上末期腎不全(透析導入)になってしまう。死亡率もかなり上昇しているしRAS阻害薬は心不全治療薬なのに心不全罹患率も上昇してる。ただしCrが30%以上上昇した群はNSAIDs、利尿薬の併用が多かった。

 Cr上昇はeGFR低下に置き換えてもほぼ同じことだ。「30%未満」の由来はCKD診療ガイドライン2009によると2000年のBakrisらのRCT12件のシステミックレビュー(Arch Intern Med 2000; 160; 685-693 )によるのだろうが、このレビューおそらくは蛋白尿(+)の患者を対象にした報告による。蛋白尿(+)あるいは糖尿病関連腎臓病であれば糸球体過剰濾過≒GFRの上昇を示しやすいため、GFRが30%以内の低下であれば継続してもよいという説明は納得できるが、腎機能の低下したフレイル気味の痩せた日本人高齢者で蛋白尿(-)、つまり多くは高血圧が原因の腎硬化症患者や両側腎動脈狭窄ではGFRの低下は急性腎障害発祥のリスクになるはずだ。RAS阻害薬も同様のはずなのに、蛋白尿有無にかかわらず「血清Crが30%未満の上昇は継続してよい」で本当にいいのだろうか?高齢CKD患者、特に腎硬化症の多い日本ではRAS阻害薬は血清Crを定期的に測定しないようなクリニックなどではRAS阻害薬を無理して使わず、急性腎障害を起こさないCCBのほうが無難なように思うのだが・・・・。

 

 

 

 

 

2025年11月17日 X投稿
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 これは使い方次第というのが答えかも? 1993年のLewisらの報告以前はCKDの進行を阻止する手段は血糖管理・血圧管理以外になかった。ACE阻害薬のカプトプリルが腎機能の悪化を防ぐ初めての報告だった。DKDの進行を5~7mL/min/年遅らせた。すごい結果に見えるが、対象は血糖管理ができていない時代の1型糖尿病で腎保護作用を示す薬が全くなかった時代のことだ。2001年のIDNT trialでイルベサルタンはアルブミン尿を33%低下させ、プラセボ群・アムロジピン群に比し有意に複合エンドポイント(血清Cr値の2倍化、ESRDへの進行、全死亡)を抑制した。2002年のRENAAL試験ではロサルタンがアルブミン尿を30-40%減少させ、透析導入リスクを28%低下できた。これらのエビデンスレベルの高い臨床試験の対象者はすべてアルブミン尿、または蛋白尿(+)の患者であるということ、蛋白尿のない患者でのRAS阻害薬の腎保護作用は示されていないのだ。

 RAS阻害薬投与によって輸入細動脈が拡張するため糸球体内圧が低下し、糸球体過剰濾過が軽減し蛋白尿は改善するがGFRは低下するので糸球体の負担は軽減するが、休ませすぎると腎機能が悪化することは知っておこう。だってRAS阻害薬は特に高齢者で起こりやすいTriple Whammyの1つだから、腎機能悪化には気をつけなきゃいけないよね。CKD診療ガイドラインでも75歳以上の後期高齢者でeGFR30mL/min/1.73m2未満の患者にはCa拮抗薬を勧めているように、個人的には腎機能を測定しない医師は蛋白尿のない高齢者(多くは腎硬化症?)にはRAS阻害薬よりもCa拮抗薬を使うほうが無難だよと思ってる。

 

 

 

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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