僕の旅のスタイルは旅行社のツアーではなく、自分で飛行機、ホテル、電車、レンタカー、ツアーを選んで気に入ったところにじっくり滞在するというもの。定年退職したからできることだけどね。2020年1月、パンデミック直前に訪問したニュージーランドのクライストチャーチには7泊くらいして、テカポ湖、プカキ瑚の美しさに息をのんだ。残念ながら世界一美しいといわれるプカキの星空は見れなかったし、マウントクックのハイキングも天候不良のため行けなかった。クライストチャーチはニュージーランドで2番目に大きい都市だけど人口は10万人足らずで、治安が良く、歴史を感じさせるきれいな街だった。
今回はもっと小さく自然がいっぱいの街、人口3万人足らずのクイーンズタウンに5泊し、そのほかにさらに田舎のプカキやテ・アナウに3泊して世界遺産フィヨルド:ミルフォード・サウンドもじっくり訪問する。前回行けなかったプカキの星空、マウントクックのハイキングにも再挑戦するけど、雨が降らなければいいんだけどね……。




透析ケアを出版している大阪のメディカ出版から出している本が5年経過したので、大幅書き換え、というか、いまいち納得のできる分かりやすさになっていなかったので、今回の改訂では1から書き直しました。
ナース向けに分かりやすく書くって大変です。でもすごく勉強になりました下駄。「なんて難しい解説してたんだ」と大いに反省しますね。熊本の仲間、新たな「平田の薬剤師塾」の師範代5人にも協力していただきました。これから、ゲラを作って校正作業を済ませ、6月の透析医学会では販売できそうです。
SGLT2阻害薬によって起こる有意な3大有害反応は脱水4.5%、性器感染3.8%、ケトアシドーシス0.22%と、脱水は最多だ(Qui M, 2021)。ただしSGLT2阻害薬による利尿作用は持続しない。カナグリフロジンの利尿作用は1日のみしか持続しないし、他のSGLT2阻害薬も1週間程度。ただしフロセミド併用患者では6週間後も続いている。ほかにも報告はたくさんあるが、SGLT2阻害薬による脱水は起こるが、薬剤性腎障害の発症を25%も軽減する作用があるため、脱水が起こるとすれば投与初期か、フロセミド併用患者だけかもしれない。
ただしこまめな飲水指導は脱水だけではなく性器感染、ケトアシドーシスの予防にもなるため、続けよう。
SGLT2阻害薬による糖利尿は持続する。なぜなら近位尿細管のSGLT2, SGLT1以外にブドウ糖を再吸収するところはないからだ。
ではNa利尿は持続する?近位尿細管のNHE3、ループ上行脚(フロセミドが効く部位)、遠位尿細管(サイアザイドが効く部位)、集合管(MRAが効く部位)などでNa利尿は相殺できるから必ずしもNa利尿は持続しない。
じゃあなんで糖利尿(浸透圧利尿)が持続するのに尿量が増加しないの?集合管ではADHバソプレシンの前駆体、コペプチン濃度が上昇して利尿作用が相殺されるようだ。だからSGLT2阻害薬投与2日目以降の尿量増加は起こらないと2024の論文では解説されている(PMID: 38599715)




こういう本って多いよね。「コレステロールを下げるな」というのも多い。薬をのみたくない人はほんと多いから。「年齢+90」以下なら降圧剤はかえって危険と書いてあった。「大学の名誉教授」という肩書で信じる人も多いかもしれない。加齢に伴う高血圧は正常な生体反応だから「血圧は加齢とともに上がるのは当たり前」「原因不明の本態性高血圧は治療する必要がない」と著者は言う。本書によると高血圧ガイドラインは高血圧学会と製薬企業と医師がグルになってお金儲けのために降圧薬を処方している。製薬メーカーと降圧薬を処方する医師は「高血圧マフィア」なんだって。この著者名と「hypertension」でPubMed検索しても共著論文が2本のみしか見つからなかった。本書では人間ドック学会の「持病のない健康な人のデータの集計結果(統計的基準)」に重きを置いていて、統計学的に最も信頼されるべき高血圧に関する大規模ランダム比較試験のACCORD試験、SPRINT試験、ALLHAT試験などの結果については全く触れていないのだ。

僕も収縮期160以上の高血圧患者を今までたくさん見てきた。Hypertensionというだけあって、僕のように血圧正常者たちと比べて朝から元気だし本人は痛くもかゆくもなく、どう見ても健康そうに見える。だけど血管が知らないうちに傷んでたんだろうね。心筋梗塞・脳卒中で突然死を何人も経験した。そして高血圧を制御しようとしない、すなわちイナーシャの医師に診てもらっていた患者さんで透析導入、心不全発症のために我々の病院に送られてきた方々をたくさん見てきた。そして血圧が管理できていない患者さんで心筋梗塞・脳卒中で要介護になった方々、脚壊疽で車いすが必要になった方を極めて多く見てきた。元々の血圧が160を超えている場合、生活習慣の改善だけで正常域(125未満)まで下げることは極めて困難だ。こんな本にどうか、だまされないでほしい。
同じ患者に降圧薬と昇圧薬が処方されたら、新人薬剤師は混乱してしまうだろうね。でも透析患者ではふつうにみられることだ。結論から言おう。透析患者の多くは血管石灰化が進行しており、脈圧の増大と強く関連しているからだ。脈圧=収縮期血圧-拡張期血圧だけど、これは心機能の低下した後期高齢者に多いが、透析患者ではこれが若年者でも起こりやすく、心血管イベントや死亡のリスクを高める重要な要因になっている。
その原因はCKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)によることが多い。腎機能が低下すると、腎におけるリン排泄能が低下しリン利尿ホルモンのFGF-23の産生が亢進し、腎におけるビタミンDの活性化を障害して高リン血症・低Ca血症状態が持続する。そのためPTHの分泌が亢進して骨を溶かして血清Ca値を上げるから骨がスカスカになって線維性骨炎になり、血管では石灰化が亢進する。健常者でも内膜の石灰化は起こるが透析患者の血管石灰化は血管の中膜にヒドロキシアパタイト、つまり骨ができる(メンケベルク型の動脈硬化)。血管が骨のように硬くなるから高血圧は必発!これを防ぐにはPTHが上がらないようにリン・Caのコントロール、そしてPTHをオルケディアⓇのようなCa受容体作動薬(カルシミメティクス)と活性型ビタミンD(VD受容体作動薬)によって下げるけど、これらの治療がうまくいっていない方は動脈の弾力性が全く失われる。だから心収縮によって生じた圧を動脈が吸収しきれない(血管進展性が不良になっている)から収縮期血圧は非常に高くなるが、その結果、拡張期血圧は低くなって脈圧が増大する。透析中に体外循環・除水によって循環血漿量が減少すると血管コンプライアンスが低いので、一転して著明な低血圧になる。低血圧ショックにならないよう、昇圧薬を投与せざるを得なくなるんだ。CKD-MBDの新ガイドライン2025ではPとCa管理はPTH管理より優先し、Ca 9.5未満、P 5.5mg/dL未満と厳しくなったことも知っておこう。




腰痛診療ガイドライン2019 改訂2版ではノイロトロピンⓇについては1977~1987年に行われた日本人の書いた5本の論文が収載されていますが、5報中、急性・慢性腰痛の疼痛を有意に改善したのは1977年の1報のみ。しかも5報で100%のうち5.4%しか寄与していないノイロトロピンⓇ使用者31名のみの論文です(図6)

図6では、有効であったという論文はTsuyama1977とありますが、引用文献を見ると日本語で、しかも基礎と臨床(検索期間外)となっております。ちなみに「基礎と臨床」という雑誌はメーカーと医師が共同して「○○の使用経験、臨床効果」など主観的判断で薬効を評価するようなレベルの低い雑誌で、毎月発行され、その1冊が400ページもあるメーカーのお抱え雑誌で、複数査読性雑誌ではないのではないでしょうか。だって「○○の使用経験」という論文ってタイトル名だけで、まずタイトルだけでまともな査読者はリジェクトするでしょ?同じ刊には「腰痛症におけるポンタールⓇの使用経験」という論文がありました。ポンタールⓇはロキソニンⓇが販売される前の同じメーカーの主力NSAIDでしたが、この論文は当然ですが腰痛診療ガイドライン2019のシステマティックレビュー(SR)論文の対象にはなっていません。ノイロトロピンⓇのエビデンスを示した図6のその他の論文もすべて和文でClinical Question2「腰痛に薬物治療は有用か」という章の中で和文論文は奇異なことに、このノイロトロピンⓇに関する非常に古い論文5報のみで、その他はすべて英語論文でした。これらのタイトルはすべて二重盲検比較試験とされていますが、今だったら二重盲検比較試験を和文で書く研究者はいないと思います。なんで「複数査読制の英文誌に投稿しなかったの?」と思ってしまいます。このようなレベルの低い論文でシステマティックレビューをしたガイドラインって信頼できるのでしょうか?1980年前後って論文執筆者のCOIなんか調べていないのに、こんな和文論文を採用できるのでしょうか?ノイロトロピンⓇは副作用の少ない薬であることは認めますが、トラマドールと同等でアセトアミノフェンよりもエビデンスレベルが高いことが不思議でなりません。ちなみに2018年に刊行された慢性疼痛治療ガイドラインではアセトアミノフェンは1A(使用を強く推奨する)なのですから。「このガイドラインの問題点」は山ほどありますので、まとめてみました。このガイドライン作成委員の先生方、反論をいただければ幸いです。納得できるデータを見せていただければこの意見を撤回し謝罪させていただきます。


腰痛診療ガイドライン2019 改訂2版で急性腰痛にはNSAIDsは1A(1は推奨度、Aはエビデンスレベル:図1, 2)で、アセトアミノフェンは2D(推奨度の合意率は100%になっています)で、これに関しては異論ありません。急性腰痛に関してはアセトアミノフェンの1つの論文では有効性は認められなかったのですから。ただし日本でのみ承認されているノイロトロピンⓇの2C(トラマドールと同じ2C)には大きな違和感があります。有効成分はワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(天然痘ワクチンを投与して炎症を起こしたウサギの皮膚抽出液)とされていますが、単一の有効成分は同定されておらず、急性腰痛の推奨度2Cの合意率は71.4%と低いのです(CQの表)。ガイドライン作成委員の投票により投票者の7割以上の同意の集約をもって全体の意見(推奨決定)としていますが、7割以上の同意が得られなかった場合は、投票結果を示したうえで十分な討論を行ったのち、再投票を行ったとあるので、71.4%はぎりぎりセーフなのでしょうか?(表)
ノイロトロピンⓇ注は1950年、錠剤は1988年に発売されていますが、僕が薬剤師をやっていたころ、「副作用は全くないけど、プラセボ効果以外で著効したことがない鎮痛薬」だと思っていました。みなさん、本当にこの薬は効いてますか?過去にもクレスチン、レンチナン、アバン、カラン、ノイキノンなど爆発的に売れたけれども消えていった薬って、たくさんありましたよね。共通点は副作用はないけど、まったく効かない薬。ノイロトロピンⓇは「副作用がきついけど、NSAIDsを欲しがる」患者さんにはプラセボ効果を狙えていい薬かもしれないと思いますが、本当に効くの?本当に利用価値があるの?少なくとも僕の知っている医療者はみんな効かないといっています。




ケレンディアⓇ(フィネレノン)は非ステロイドミネラロコルチコイド受容体拮抗薬(nsMRA: Non-steroidal Mineralocorticoid Receptor Antagonistだから、これからはミネラルじゃなくってミネラロと呼びましょ)が昨年12月22日に慢性心不全への適応が追加。ただし本剤投与開始時に重度の腎機能障害(eGFR25mL/min/1.73m2未満)のある患者には禁忌になっている(開始時に25だよ)。心不全領域でRAS阻害薬+MRAで心配だった高カリウム血症がMRAをフィネレノンに変更すればあまり気にしなくても済むようになったのは朗報に違いない。
フィネレノンはDKDのアルブミン尿を30~40%低下させるので、RAS阻害薬+ SGLT2阻害薬を使ってでもアルブミン尿(+)ならフィネレノンを併用が推奨されるが、非DMのCKDではまだ適応がないのは残念だ。いまだにスピロノラクトンやエプレレノンを高カリウム血症に気を付けながら、使わなくてはならない。というかRAS阻害薬と併用することが多いので、カリウム抑制薬なしでタンパク尿陽性CKD患者には怖くて使えないのが現実かもしれない。
ここでフィネレノンの特徴についておさらいしておこう。①nsMRAだからステロイド骨格がないのは当然だが、さすがニフェジピンを作ったバイエル。なんとジヒドロピリジン骨格を持っている。②他のMRAは弱いながらも降圧作用・利尿作用があるが、フィネレノンには利尿降圧作用は期待できない。でもこれは心不全で併用されるARNIによる過降圧の懸念を考えると利点かもしれない。③尿中アルブミン尿の低下作用は目を見張るものがあり、SGLT2阻害薬との併用は相加的(CONFIDENCE試験)で、しかも心不全入院、心血管死を有意に低下してくれる(FIDELIO-DKD試験) そして最大の特徴は④高カリウム血症を起こしにくいこと。心エンドポイントのFIGARO試験で血清カリウム値は0.16mEq/Lのみの上昇のみ、腎エンドポイントのFIDERIOで血清カリウム値は0.25~0.3mEq/Lのみの上昇のみだったので、高カリウム血症の心配がほぼなくなった。SGLT2阻害薬の併用はさらに高カリウム血症になりにくいというのも心強い!




日本透析医学会の慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(2025年改訂版)はいったいいつ出るのだろうと思ってた。依頼原稿の締め切りが近づいているが、新しいリン、Ca、intact PTHの管理目標値が不明のままじゃ書けないので大いに困ってたが、透析医学会誌に掲載されないまま、2026年になる直前、12月26日に公開された。2012年以来の改訂、つまり13年ぶりの改訂?通常は5~6年おきにガイドラインは改訂されるはずなんだけど、この学会は遅い。腎性貧血ガイドラインも2016年以来改訂されていない。
2025年版の変更点を要約すると
①血清リン値(0未満から5.5mg/dL未満に)、血清補正Ca値(10.0mg/dL未満から9.5mg/dL未満に)は以前より管理目標が厳しくなった。
②前ガイドラインではP>Ca>PTH の順で管理の優先順位を示したが,今回はPとCaの間に優劣をつけないがP, Ca管理はPTH管理より優先されることになった。
③横山啓太郎先生作成の9分割図はとても使いやすいので、変更点を赤字にしている。低カルシウム血症気味になれば「炭酸カルシウムの食間投与」から他のCa剤の使用も可能になった。ガイドラインの図ではシナカルセトからカルシミメティクスに変更されているが、僕はCa受容体作動薬を用いた。活性型ビタミンDからVDRAに変更されたが僕はそのまま活性型ビタミンDにしている。これらは青地で書いている。
これからじっくり読み込んで、細部まで理解したい。
昨年、出版される予定の2冊が遅くなり、今年はそれらを含めて4~5冊出版されそうです。平田の薬剤師塾No2(じほう)、透析患者の薬剤ポケットブック(メディカ出版)、高齢者の薬ワースト30/ベスト10(中外医学社)、学び直し 薬物動態学(仮: 金芳堂)などです。



帯状疱疹の痛み、つまり皮疹による痛み(ヒリヒリ,チクチク,ピリピリ)と帯状疱疹後神経痛PHN(ピリピリ,ジンジン,ズキズキ,チカチカ,キリキリとうずくような痛み、焼けつくような痛み、締め付けられる痛み、電気が走るような痛み、肌に何かが貼り付いたような違和感)は重複することもあるが、ちょっと違う。帯状疱疹そのものの痛みでは炎症や痛みを一時的に和らげるためにNSAIDsやアセトアミノフェンを使うことが推奨されているようだ(帯状疱疹診療ガイドライン2025)。これが長引いて発症するPHNには通常の痛み止めのNSAIDsやアセトアミノフェンは効かないので、リリカ、タリージェや神経ブロックによって治療する。
帯状疱疹は近年、若年者にも増えつつあるものの、いまだに圧倒的に免疫能の低下した高齢者の病気だ。小柄な高齢女性(腎機能が低下し過量投与になりやすい)が罹患しやすく、この時に用いられるバラシクロビルによる腎症(脳症も併発しやすい)は腎排泄性でありながら水への溶解度の低い活性代謝物アシクロビルが腎尿細管の遠位部~集合管で約100倍に濃縮されるために、結晶が析出して無尿になり水腎症を発症する。これが典型的な腎後性腎障害なのだ。このとき何が腎症発症のリスク因子になるかというと、腎血流の低下や脱水だから、NSAIDs、RAS阻害薬、利尿薬のトリプルワーミー処方を一時中止し、夏季は特にバラシクロビル腎症を発症しやすいので、飲水励行の服薬指導が重要だと思う。ただしRAS阻害薬、利尿薬の中止は高血圧や心血管合併症の悪化の原因になるかもしれない。そのため、バラシクロビル投与期間の1週間だけでいいから、帯状疱疹の痛み止めとして腎前性腎障害の原因薬物でバラシクロビル腎症の発症を助長するNSAIDsの投与はやめていただきたい。薬剤師も疑義紹介してほしい。その代替薬としてアセトアミノフェン(500mg 3錠/日では効かないので)750mg 3錠/日を提案するか、この1週間だけであれば、トラマドールやトラムセットなどの弱オピオイドの投与もありだ。
その前に腎症・脳症の発症原因になるバラシクロビルを腎機能の掴みにくい高齢者に無理して投与せず、これらの副作用の起こりにくいファムシクロビル、腎障害・脳症を起こさないアメナメビルを投与するのが一番いいのだが、なぜなのだろう、バラシクロビルを好む医師は多い。若年者だったらいけど、高齢者にはどーなんだろと思ってしまう。




