60歳代の透析患者が、下肢膿瘍による発熱のため、数種の抗菌薬によって治癒したが、その後、下痢、発熱を伴う重篤なClostridioides difficile(CD)感染による偽膜性大腸炎を発症した。経口バンコマイシン2.0g/日の投与がされ、下痢・発熱の症状及びCRP は低下したが、2週間後に血清バンコマイシン濃度の測定を主治医にお願いした。「経口バンコマイシンは吸収されないから測っても意味ないじゃん」と言われたが、「最大用量を2週間投与しているので念のため」と言ってを測定すると、吸収されないはずの経口バンコマイシンの血清濃度が59µg/mLと当時の偽膜性大腸炎患者の世界最高記録になったことを経験した。結腸が白くなっており、結腸の粘膜細胞が破綻し、リーキーガットの状態だっていたのだと思う。吸収されっこないはずのバンコマイシンが吸収され、透析患者なので尿中排泄率90%のバンコマイシンは排泄されないので世界記録になってしまったが、バンコマイシンによって偽膜は消失しオレンジ色の健康な結腸に戻り、治癒できた。それよりも怖いのはその後、この症例のCDは他の患者に接触感染してアウトブレイクになってしまったことだ。アウトブレイクで死亡者が出れば新聞に載るかもしれないと大いに焦った。スタッフの手洗い(エタノールが効かないのは知ってるよね)の徹底を中心として接触感染対策で、何とか1か月後に収束できたが、CD腸炎のアウトブレイクを防ぐ方法が後で分かった。その方法のヒントは
①CD腸炎感染患者はほぼ要介護で全員、抗菌薬が投与されていた、②感染者のほとんどがPPIかH2ブロッカーの服用者だった、③ビオフェルミンRなどの耐性乳酸菌製剤はバンコマイシンで容易に殺菌されるため、アウトブレイクを防ぐには芽胞形成菌のミヤBMやビオスリーを投与すべきだった。
ということで、アウトブレイクを防ぐには胃酸による殺菌が期待できないPPI服用患者に抗菌薬を投与すると腸内細菌叢が破壊され、CDが増殖する。そのような症例には芽胞を形成する酪酸菌の併用が大事ってこと!
Hirata S, et al: Jpn J Clin Pharmacol 34:87-90, 2003.




12月4日(木)に開催されました、株式会社EMシステムズ・グッドサイクルシステム主催の薬剤師力向上オンラインセミナー 「透析導入を防ぐ薬物療法~腎機能悪化を防ぐ血圧・血糖管理~」につきまして、当日は800名を超える方にご参加いただき、167名よりアンケート回答を頂戴いたしました。
以下に、いただいたアンケートの一部を原文のままご紹介いたします。なお、件数が多いため、一部についてはPDFにてご覧いただけます。
PDFは コチラ から。

SGLT2阻害薬の作用機序を詳しく教えていただき、ありがとうございました。 門前の病院は、循環器専門のDrのため、糖尿病治療薬としてより、慢性心不全での使用が多いです。 また、CKD治療薬としても使用されていることもあり、大変勉強になりました。 使用することで、透析を19年引き延ばすことができるなんて、驚きました。 患者さんとのコミュニケーションを取るよう心掛けていますが、治療することで得られる有意義な話をきちんと伝えることができるようにしたいと思います。
腎機能へのSGLT2霜害薬の機能が非常に多彩であり、その投与効果があることが示されてきており、対象患者に服用するエビデンスが確立しつつある。このお薬は有無や服用することへの意義やそのアドヒアランスをどう理解するのかをぜひ患者に伝えていきたいと感じおります。その意味からもSGLT2阻害剤への理解を深めるとともに、薬剤師の役割の意義を振り返る機会であったので研修参加が有意義であった。
とても有意義でした。今回初めてセミナーに参加したのですが、自身の知識不足が原因で、講演のスピードについていけないところがありました。また次の機会があればと期待してます。また平田先生がさし示しているポイントが少し分かり難かったので、もう少し目立つポインターを使用してくださいますよう検討お願いします。
大変貴重な講義ありがとうございます。 最近、当局でもSGLT2阻害薬の使用量が増えています。 主に、心不全で使用される方が多いのですが、透析導入の期間を有意義に延長できることを知り、 より患者様に薬の必要性をお伝えできることができます。 今回の講義内容を、患者様に丁寧に説明していこうと思います。
今ちょうど心不全で糖尿、白血病を合併している患者様の処方提案を考え中でした。 イナーシャ避けていくのは私たちの医療者としての使命であり、それをスルーせずに患者との関わりを実行していきたいと思います。 常々思っていることがイナーシャという言葉で表現できて、ストンと腑に落ちました。
平田先生のご講演はいつもわかりやすく、とても勉強になります。今日の講義内容は薬剤師としてできることがもっとあるのでは?と感じさせられる内容でした。日常の業務に活かせるよう頑張ります。本当にありがとうございました。ぜひ、続編もよろしくお願いします。
恥ずかしながら「イナーシャ」を初めて知りました。 治療目標に達していなくても、以前の値より改善したことで満足している患者様がよくいらっしゃるので、今後は治療目標達成に向けて効果の評価や食事療法・運動療法についての指導など行っていきたいと思います。
すばらしいご講演でした。理解できたところ、できなったところがありますので、また視聴させていただきたいです。患者に飲ませる指導、透析に移行させない指導、トリプルワーミーをくいとめる、薬剤師としての使命を再確認できました。ありがとうございました
あっという間の90分でした。 まだまだ専門用語の理解が乏しくてついていけない状態でしたが、先生の力強いメッセージはしっかり届きました。 なんとなくDO処方を継続しがちでしたが、イナーシャにならないように取り組んでいきます。
貴重なご講演ありがとうございました。 とても参考になりました。 改めて透析導入前の対応の大切さ また多岐に渡りのポイントについて再度勉強し直しが必要と反省もしている所です。 今後の仕事に生かしていこうと思います。
腎機能の悪化してる患者さんの処方を見るときの参考になりました。 また、投薬時に薬の効果だけでなく、患者さんとコミュニケーションを取り、患者さんに有益な情報を提供し状態改善できるように勉強していきたいと思います。
大変興味深く聞かせていただきました。 ありがとうございました。あらためてSGLT2阻害薬の凄さを学ぶことができました。タンパク尿やアルブミン尿の重要性も認識できました。明日からの服薬指導に役立たせてもらいます
蛋白尿の有無により、RAS阻害薬を使用するべきか否か等・・患者様との会話を重視して処方を監査して、これから望みたいと思いました。平田先生のご講演をこれからも多く拝聴したいです。本日は有難うございました。
いつも大変勉強になる講演をありがとうございます。 蛋白尿の重要性を忘れずに、しっかりチェックしていきたいと思います。 SGLT2阻害薬の薬理作用がよく分かりました。 引き続きよろしくお願いいたします。
イナーシャや高血圧のガイドラインは理解していたので今回の話は興味深く聞くことができました 薬剤師として患者さんが1人でも透析にならないように服薬時の理解を得てもらう努力が必要と感じました
現在、透析患者が増えるなどで医療費が高騰しており、問題となっている。 その対策について、とても勉強になった。 今後の服薬業務に活かしていきたい所存です。 ありがとうございました。
メーカーの勉強会によく参加させていただきますが、今回のような内容の勉強会は初めてです。とてもわかりやすかったです。全般的にとても役にたちました。患者さんのお役にたちたいです。
非常に内容の濃いセミナーで勉強になりました。 どのような患者さんにどの薬を使用した方がいいのかの根拠が分かりました。 また平田先生のセミナーを開催していただけると嬉しいです。
内容が盛りだくさんで、思わず時間を超過してしまいました。 長い時間ご講義いただき、ありがとうございました。 透析に至らないように予防する事は、色んな意味で大切だと思います。
SGLT2阻害薬が糸球体内圧を低下させ、腎保護に寄与するメカニズムが明確に整理されており非常に印象に残りました。 これまで以上にCKD管理における重要性を感じました。
ご講演ありがとうございました。薬剤の処方意図について理解が深まりました。また、患者様への服薬意義の説明が不十分であったと気付かされ、今後改善していきたいと思います。
SGLT2阻害薬は、糖尿病でない方にも飲食が出来ないと休薬と思っていました。大変勉強になりました。もう一度講義が聴ければ良いのにと思います。有難うございました
平田先生、本日は貴重な講演をありがとうございました。 CKDと薬についてなど 詳しく学ぶ機会をいただけました。 明日からの仕事に役立てたいと思います。
腎保護の為SGLT2 阻害薬を服用すると 初期にeGFRが下がることを初めて知りました。いつも不思議に思っていました。 ありがとうございました。
スーグラから始まった国内でのSGLT 2阻害薬の上市が当初に比べてエビデンスがここまで豊富になり、売り上げが大きくなった機序を改めて学べました。
調剤薬局勤務なので、日常的に薬を服用している患者さんと関わっており、そこで生かせる服薬指導の知識や考え方を学べました。 ありがとうございました。
本日はありがとうございました。とても分かりやすかったです。薬剤師へのアドバイスもありがとうございました。明日からしっかり投薬させていただきます
腎臓内科の患者さんも多く来局されるので、投薬量について本で調べています。 今回のセミナーももう一度復習して、少しでも理解できればと思います。
透析にならないようにするにはどうしたらいいか、もっと多くの人に知ってもらう機会を作った方がいい、と思うようなわかりやすく役立つ内容でした
血圧、糖尿の方への投薬時、確認の必要性を再確認しました。 糖尿病性腎症の方と、正常な方の糸球体の違いの図がわかりやすかったです。
まだまだ未熟で、内容を理解するのが難しいところもありましたが、復習して理解に努め、患者さんのために力になれる薬剤師を目指します。
CKDに対してフォシーガがこれほど効果的だと知らなかった。 患者の健康や医療経済を守るためにも、透析導入を少しでも減らしたい。
とてもわかりやすくためになりました。 薬理作用の説明もあったのでかなり理解が深まりました。 また平田先生のセミナー希望します。
ふんわりとしか分かっていなかった透析について、とても分かりやすく勉強出来ました。患者さんに大いに生かしていきたいと思います。
透析患者の多さと、それにかかる健康保険料にびっくりした。SGLT2阻害薬がすごくそれを防ぐことができることにも驚かされた。
大変勉強になりました。アルブミン尿などの検査の重要性がよく分かった。透析導入回避の手段が様々あることがよく理解できました。
「血圧の薬です」だけでなく最近の血圧や目標血圧についても触れるなど、投薬の際に参考にしたいと思える内容もあり良かったです。
とても判りやすいご説明有難うございました 知識不足を感じ、改めて勉強しようと思いました 時間の経つのがとても早かったです
糖尿病の患者様の処方せんが沢山くる薬局なので、明日からSGLT阻害剤の話しなどを服薬指導に加えて話を早速したいと思う。
平田先生のセミナーは豊富な図表とデータに基づく説明が大変わかりやすいです。シフトとの都合が付けば毎回参加したいです。
透析につながる色々なリスク・情報を教えていただきありがとうございます。図での説明もとても分かりやすく良かったです。
明日からの服薬指導で2月糖尿病の患者さんに血圧、HbA1cを両方とも確認し、尿中アルブミンも必ず聞くようにします。
腎臓の話は難しいですが、平田先生のお話はわかりやすく、何がどうよいのか、悪いのかという視点で大変勉強になりました。
腎機能低下による危険性など改めて学ぶことができた。 また、それぞれの薬の作用、有効性に関してべんきょうになった。
全編勉強になり、メモをとるのが大変なほど、多くを得ました。早速明日から活用できます。ありがとうございました!!
マンジャロが効果的なことや、SGLT2がいかに腎保護作用があるのかなども知ることができ大変勉強になりました。
今まで全く分からないまま処方箋通りに患者へお渡ししていた薬の使い分け、分類を学べて大変勉強になりました。
内容の濃いセミナーでしたが、説明が上手で話すスピードもちょうど良く受けてよかったと思えるセミナーでした!
大変分かりやすく、勉強になりました。 今後の服薬指導に活かしたいと思います。 ありがとうございました。
高齢で透析拒否されている腎不全末期の患者さんの治療薬を主治医が適正に選ばれているのが確認でき良かった
とてもわかりやすく説明していただき参考になりました さすが平田先生です ありがとうございました
腎機能はどうしても苦手意識がでてしまうので、わかりやすく説明していただきありがとうございました
フィネレノン SGLT2阻害薬 等 腎臓に対する作用を詳しく解説頂き非常に勉強になりました。
先生のわかりやすい説明と話し方で、楽しく勉強させていただきました。 ありがとうございました。
沢山の情報をありがとうございます。 これからの服薬指導の参考 指針とさせていただきます。
わかりやすい講演でとても勉強になりました。これからの服薬指導に生かしていきたいと思います。
論文も引用して多く内容が濃かった。これを説明された患者さんは、納得して薬を服用できますね。
しっかりと復習して、今後の服薬指導にいかしたいと思います。 本日はありがとうございました。
大変勉強になりました! 日常業務を振り返り、もっと患者様に+αの事を聞こうと思いました。
透析未満の患者さんが多くいるので、とても参考になりました。業務にも生かしたいと思います。
日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2024」は実に分かりやすくていい本だよね。だけど、見つけちゃった。「十分な鎮痛効果を得るために、アセトアミノフェンは1回投与量は400mgを目安に適宜増減する。アセトアミノフェンの最大投与量は4g/日であるが、鎮痛効果が得られれば、できるだけ少ない量で投与する」ってどーゆーことなんだよ。400mg/回は解熱用量だよ。こんな低用量を提示すると整形外科医から「腎臓学会の言うとおりに処方したのにやっぱりアセトアミノフェンは効かなかった。」って言われちゃうよ。ほんでもって脆弱な高齢者にNSAIDsの漫然投与が始まり、ある患者は消化管出血、ある患者はやらなくてもいい透析導入、あるいは腎機能悪化による入院が増えるんだよ。

じゃあアセトアミノフェンの鎮痛効果を狙った適正投与量はどれくらいなのだろう?アセトアミノフェン500mgを空腹時単回投与しても鎮痛作用を表す血中濃度5µg/mL以上になるのは1時間程度に過ぎない。これが食後服用だったらTmaxが延長しCmaxが低下するので、ほぼ鎮痛効果は期待できないから1回400mgって全然ダメじゃん。1回1000mgの単回投与では十分効果はあるが(図2)、1日4000mg/日は体格が小さな日本人ではAST, ALTの上昇が危惧される(必ずしも肝障害を起こすわけではない)。論文上では、600mg×4/日でロキソニン3錠/日に劣らない、または750mg×3回/日が適切とされている。


「アセトアミノフェンの有効濃度ってどこに載ってるの?」これはこのブログ「平田の薬剤師塾」の「TDM対象薬一覧表」に載ってるから参考にしてね。

頻回の嘔吐・下痢および発熱の精査目的で入院した透析導入直前の末期腎不全患者に次のような処方がなされた。なおこの患者には絶食の指示が出されている。あなたはこの処方を見て、どのような検査値をチェックし、主治医にどのようなアドバイスをしますか?
点滴:5%ブドウ糖500mL+ビタメジン®(VB1+VB6+VB12)1V+VC500mg+50%ブドウ糖20mL×2A
内服:ビオフェルミン®3g分3発熱時ロキソニン®1錠頓用
これって実際に僕が経験した症例で、主治医は研修医を卒業したての若い医師。まず検査室に電話してこの症例の最新データをもらうと血清Na濃度120mEq/L、K濃度2.0mEq/Lで明らかな低ナトリウム血症、低カリウム血症があり、患者さんは「脱力感、嘔気」を訴えていたので、すぐ医師のもとに行き、「この処方、ぜんぶ間違ってます」と言った。輸液は腎機能が正常であれば、どんな輸液をしても腎臓が不足分だけを保持し不要なものは排泄してくれるので、不足分が補えて体調はたいていよくなるが、末期腎不全となるこの能力は期待できない。下痢ってことは水、Na、Kが喪失するので、それらを補わなければならないが、電解質の入っていないブドウ糖で血漿を希釈してどうすんのよ。おそらく腎不全患者が鳴りやすい高カリウム血症、高ナトリウム血症にならないようにと思っていたんだろうけど、僕はこの症例を見たのは処方開始後2日後で、絶食の指示が出ているので、乳酸リンゲルに変えてもらい、ビオフェルミンは胃酸で死滅するので、ミヤBMの変更していただき、ロキソニンを空腹時に飲んだら消化管出血が怖いので、アセトアミノフェン500mgの頓服に変えてもらった。その後は先輩の先生が何とか指導してくれたみたい。通常、透析患者は高カリウム、高リン血症を起こしやすいとみんな思っているが、食事摂取できない栄養不良の高齢透析患者では低カリウム、低リン血症になることはふつうにあることなんだ。


2026年1月開催の平田の薬剤師塾のお知らせです。
第62回平田の薬剤師塾 初級編は「活性型ビタミンDは第4の脅威 Quadruple Whammy」です。(薬剤性腎障害シリーズ3回目)
ビタミンDには様々な利益がありますが、
◆2026年1月8(木)開催「活性型ビタミンDは第4の脅威 Quadruple Whammy」
お申し込みは こちら から
【申込期限:講演会開始直前まで】
【定員:300名】
第63回平田の薬剤師塾 中級者編「高齢者薬物療法と薬物動態の変化」です。
薬剤性腎障害シリーズ最終回の4回目(実は9月に薬剤性腎障害、NSAIDs)をやっているので実は第6回です。
高齢者は容易に急性腎障害を起こしやすいし、それによる腎機能悪化、透析導入のリスクが高まります。なんで高齢者はそのように脆いのでしょうか?高齢者の腎機能の正確な評価をしていない、若年者の薬物動態パラメータ(インタビューフォームの動態パラメータは健常成年男子のもの)を高齢者用に翻訳できていない。すなわち高齢者薬物動態を薬剤師が把握しきっていないことが原因かもしれません。
◆2026年1月22(木)開催「高齢者薬物療法と薬物動態の変化」
お申し込みは こちら から
【申込期限:講演会開始直前まで】
【定員:300名】
異物や不要な老廃物などはすべて腎臓から排泄される。薬物も生体にとって異物だから薬物の95%は腎臓から排泄される。よくドクターの論文で「肝排泄性薬物」っていう人がいるけど、正しくは「胆汁排泄」だろうね。吸収されないために糞便中に排泄されるものもあるので、実際に胆汁排泄によって糞便中に排泄されるような原始的な薬は5%以下だろう。
脂溶性薬物のほとんどが肝代謝を受け、CYPによって親水性がやや高い代謝物になる。肝代謝≒極性化反応だから、腎排泄されやすくなるが、それでも脂溶性が高いものは第二次反応として抱合化される。抱合体は極めて極性が高いので尿中に容易に排泄され、活性をもつ物はほとんどない。薬物の中で腎機能が低下したら減量すべき薬物は活性体のまま尿中に排泄される薬。だから腎排泄性薬物の多くが尿中未変化体排泄率が高い薬物と活性体の尿中排泄率が高いものだ。腎の排泄能力が低下して活性体が蓄積すると中毒性副作用を起こすからだ。腎排泄性のものはすべての薬のうち20~30%に過ぎない。ということは70%以上を占める肝代謝型薬物がどれかと憶えるよりも、腎排泄性薬物を記憶するほうが楽だ。例えば抗菌薬は腎排泄性薬物が多いのが特徴だ。βラクタム系抗菌薬はすべて腎排泄性なんだけど、中にはセフォペラゾンやセフトリアキソンなどのようにたまたま蛋白結合率が高いため、糸球体ろ過されにくいため、相対的に非腎クリアランスが高くなっているだけのことだ。そして腎排泄性抗菌薬はなぜか殺菌性の抗菌薬なのだ。
向精神薬は血液脳関門を通って効果を示す薬だから脂っぽい構造のものが多いよね。向精神薬はガバペンチンやリチウムなど例外的に腎排泄される薬(8%足らずしかない!)を記憶するほうが楽だ。でもすべてを覚えることは酷なので、日病薬の発行している腎機能別薬剤投与量POCKET BOOKは必携だよ。
何度かやめようとしたが、むかつき、何とも言いようのない胃部不快感でやめられず。もう15年以上、欠かさず飲んできたPPI。平田は健康には気を使っており、結構食物繊維もビオスリーも摂っているので、腸内細菌叢に関しては自信を持っていた。でも5月に行った腸内細菌検査の結結果は図のごとく、「判定C」!なんとビタミンを作る力は5点満点の最低点1(ナイアシン、B12欠乏症?)、有害菌の少なさ2点と惨憺たるものだった。この理由はPPIの長期連用のためと分かってる。熊大教授に赴任したとき、新たな教授職に加え、学会理事を複数務め、論文や講演の依頼はすべて「チャンスなんだ」と前向きにとらえ、断らなかった。好きな仕事なのでストレスにはならなかったけど、論文数が1年50本以上になった時には土日も大学に出てきて仕事していたけど、締め切り地獄で寝る時間がない!結局、コーヒーの飲み過ぎによる胃障害でのたうち回り、胃カメラで「胃潰瘍」と分かりPPIを常用するようになった。PPIの長期使用は良くないことは知っているので、何度もやめようとしたけど、胃症状や口臭(これってホントいやだね)が再燃するためPPIをやめられない身体になってしまった。そして主治医と相談し、PPIをやめることを決意。作戦は「①胃症状がきつくなったら、効果発現の速いタケキャブを頓服で飲む。そして②効力の弱いH2ブロッカーのガスターにレベルを下げる。③H2ブロッカーも効果発現は早いので、基本的には常用せずに、調子の悪い時だけのむ。④胃に良くないカフェイン含有飲料のコーヒー、お茶はすべてやめる。」というもの。そうすれば胃酸分泌が再開し、有害菌を殺菌してくれて、腸内細菌叢が改善するだろうということ。昨日まで20日くらいやめていたけど、この2~3日、むかつき、胃部不快感が再発。幸い、口臭はないみたいだけど、今朝、初めての頓服でタケキャブを飲んだ。素晴らしいもので2時間後には、曇天の空が快晴になるような爽快な気分になった。
PPIってホントいい薬なんだよね。短期的には安全だし、極めてよく効くし。でも長期にわたって胃酸が全く分泌されなくなると、①胃酸分泌の抑制による腸内細菌叢の変化によってクロストリジオイデス・ディフィシル(CD)腸炎などの多剤耐性菌のコロニー形成のリスクになる(図1)、②Mgの吸収障害による重度の低マグネシウム血症により、QT延長、心停止を起こす可能性がある。TdP (Torsades de pointes)発症患者の半数以上が低マグネシウム血症でTdP発症群の血清Mg濃度は低く、PPI服用中にTdP発症群の血清Mg濃度はさらに低いことが報告されている(図2)③胃酸分泌抑制によって吸収されにくくなる薬物がある(アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール、HIV抗レトロウイルス薬のリルビビビン、アザタナビル、チロシンキナーゼ阻害薬のダサチニブなど)④PPI長期投与によってビタミンB12の吸収障害(PPIを常用している平田も欠乏レベルに近かった)。


そのほかにも様々な報告がある。Ca吸収障害による骨折のリスク増加、種々のがんリスク上昇、肺炎のリスク上昇、認知症悪化リスク上昇など様々だが、これらは矛盾するデータも多く、交絡因子の影響を受けているものが多いので確立されていない。本当にPPIの必要な患者さんに対して、再生回数を増やすために、明確になっていない副作用、薬の怖さだけ強調して患者さんの不安を煽る医療系SNSはほんと、何とかしてほしい。


重度腎障害(CCr<30mL/min)はDOACの大規模RCTにおいて除外対象となり、リアルワールドデータも乏しい。透析患者にはDOACの使用経験がないからという理由で、いまだにワルファリンを使わざるを得ない医師はまだ多いようだ。米国ではアピキサバンが透析患者に使われているのにね。
以前に僕が調査したアンケートで医師はワルファリンが透析患者(重篤な腎障害)に禁忌になっていることを知っていたのは26%のみ。そして重篤な腎障害患者で血栓を起こしやすい症例に対してワルファリンを処方することがある医師は85.3%(平田,2009)。薬剤師も透析患者にはワルファリンが普通に投与されているから「重篤な腎障害には禁忌」って寝耳に水だったのかも?
だけど実際には腎機能が悪くなればなるほどワルファリンは大出血を起こしやすいんだよね。PT-INRの目標値は通常2.0~3.0だけど日本の透析患者は2.0未満にしなくちゃいけないし、日本の高齢者では1.6~2.6にしなきゃいけない。腎障害血清を加えるとではワルファリン代謝酵素CYP2C9の活性がCYP2C9基質ロサルタンへの血清添加量が多くなるほど代謝が阻害されることは京都薬大の辻本先生の検討で分かっていた(辻本, 2010)し、GFR<30mL/minではCYP2C9代謝が阻害されCYP2C9代謝が阻害されS-ワルファリン濃度が27%上昇し半減期が20%延長する(Albrecht D, 2017)ことも明らかになっている。しかもワルファリン服用者の大出血発生率は腎機能が悪化するほど高い(Jun , 2015)。じゃあ日本人高齢者で特にワルファリンが使いにくいことはワルファリンの効果部位のVKORC1の遺伝子多型がアジア人で多いので、ワルファリン用量を減らすべきことと、腎機能が悪くなればなるほどさらに減量すべきことで説明できるかも(Ichihara, 2015)。ということで日本人の腎機能低下患者にワルファリンを使うと出血しやすいということは十分に分かっているのに、透析患者には使わざるを得ないようだ。2024 年 JCS/JHRS ガイドラインフォーカスアップデート版不整脈治療で「維持透析患者に対してワルファリンを用いることは推奨されない 」が推奨クラスⅢ(No benefit)デビデンスレベルBになった。No benefitって、わかりにくい説明だね。よく読むと「透析患者には原則禁忌」のようだ。でも臨床現場では透析患者の血栓症予防のためには投与せざるを得ない。ああ、悩ましい。
さらに悩ましいのは相互作用。CYP2C9阻害作用を持つNSAIDsはロルノキシカム、イブプロフェン、インドメタシン、メフェナム酸、ピロキシカム、テノキシカム、セレコキシブなどがあり、これらのNSAIDsはワルファリンの代謝を阻害することによってワルファリンの出血リスクを増大する。薬剤師こそ知っておくべき薬物動態学的相互作用なのだ。




医師:大変だ!腎機能は透析間近の末期腎不全患者で小柄な高齢者なんだけど、心房細動のリズムコントロールでシベノールⓇを間違って常用量投与しちゃったんだ。低血糖は起こすし、過量投与によるQT延長は心配だし、どうしたらいい?
薬剤師:シベノールⓇの分布容積Vdは5~8L/kg程度と大きいから、どんな血液浄化法も無理です。Vdが2L/kg以上の薬はいかなる血液浄化法によっても除去できないんですよ(図1)1)。だって組織に分布しやすい薬の血中濃度は低いでしょ。低い血中濃度を血液浄化法で下げても体内には組織に移行した薬物が残っていますから。対症療法するしかないかもです。
医師:でも透析やCHDFで除去できた、「血液浄化法で救命できた」っている報告がいっぱいあるじゃないか?
薬剤師:医学論文って書いたのが医師で医師が査読しますよね。医師はたいてい薬物動態知らないですから、全部間違ってます。だからそんな論文が出るたび、僕は編集部あてにLetter to editorを書いてました2)3)。これが届くと著者が回答しなくちゃいけないんですよ。「救命できた」っていうのは血液浄化法をやらなくても放っておいても薬物が消失したために死ななかっただけのことです。あれだけ言っておいたでしょ、腎機能低下患者に薬を投与するときには日腎薬の「腎機能別薬剤投与量POCKET BOOK」を見てから投与してくださいって。
さて、このように血液浄化法では、どうしようもない薬物もたくさんあるが、一番問題なのが、腎排泄性なのに、なぜか、Vdがほぼ5.0L/kgと大きなシベンゾリン、ジゴキシン、アマンタジンなのだ。この3つだけは初回投与設計を間違えないようにしよう。





1)平田純生, 金 昌雄, 上野和行, 他: 薬物の透析性. TDM研究 14: 277-287, 1997
2)平田純生: Letter to Editor. 早川和良, 他: 透析患者のamantadine hydrochloride中毒における血液浄化療法の経験.に対して. 透析会誌36(5)363-364, 2003.
3)平田純生: Letter to Editor 黒川陽子,他: Cibenzoline中毒に対して血液吸着・血液濾過透析が有効であった1例』に対して. 透析会誌36(9):1457-1459,2003
11月20日(木)開催の、シリーズシリーズ④「心不全の臨床データから疑義照会・服薬指導 にどう生かす?」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.アゾセミドやフロセミドは患者さんに使っている場面を見て使
A.僕もトラセミドは低カリウムを起こしにくい以外のメリットを