11月20日(木)開催の、シリーズ④「心不全の臨床データから疑義照会・服薬指導 にどう生かす?」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。
検査値の解釈などを具体的な症例を通じて勉強できたので、明日から検査値のどこを注目すればいいかの参考になった
腎不全になると腎性貧血になることはあるのは知ってましたが、心不全でも貧血になることはあるんですね。
調剤薬局の薬剤師です、今日も大変勉強になりました。 心不全とは直接関係ない質問にも丁寧に説明いただき感謝申し上げます。病院勤務ではないので、日常的に多岐の採血検査項目や尿検査項目、菌培養検査(抗菌薬感受性検査)、またTDMの数値をみる機会はほとんどありません、是非とも今後の講演内容で基本的な検査値の見方を取り上げていただきたいです。
症例検討の学習会はあまりないので、今後もあると嬉しいです。
いつも大変勉強になります。
症例を元にすると、色んな事を考え、とても勉強になりました。
本日もありがとうございました。4回全て受けさせていただきました。普段、調剤薬局勤務なので、医師に提案は中々厳しい状況にはありますが投薬に活かしていきたいと思います。
今までのまとめになり、有難うございました。 患者さんへ暗いイメージを持たせない服薬指導をするのには…何回もどんな時も考えて行いたいと思いました。ストーリーが描けるように薬剤、検査値、背景、病態など勉強します。
今回のような具体的な検査値、症例があると、より理解しやすく助かります。毎回YouTubeは、3~4回見直して復習させてもらっています。ありがとうございます。
貴重なご講演ありがとうございました。 先生のおっしゃっていた「明るい服薬指導をする、くすりをのませるように指導するのが薬剤師の力」という言葉が身に沁みました。おっしゃるとおりだと思います。薬剤師の使命は、患者さんのアドヒアランスをよくすることだと思います。副作用の話もしないといけないが、しすぎるとかえって薬をこわがってアドヒアランス不良にしてしまう恐れもあります。私も明るい服薬指導を心掛けたいです。
初めて参加させていただきま、沢山の学びをいただきました。
過剰ろ過の状態の患者に対して、イナーシャにならないよう、 説明していくことは大変参考になりました
症例での講義、今まで理屈で理解していたことが現場感覚で頭に入ってくるのが楽しかったです。文字になっていない薬のイメージが先生の身振り手振りでさらにわかりやすくしてくれてました。
フィネレノンはエサキセレノンとともに非ステロイドMRA(nsMRA)に分類されるが、果たしでどう違うのだろう?フィネレノンはまずステロイド骨格を持っていないので、構造はもちろん違うが、驚くことにニフェジピンと同じジヒドロピリジン骨格を有する(図1:さすがバイエル薬品!)。MRAのスピロノラクトンのアルブミン尿低下作用はRAS阻害薬よりも強力だが、高カリウム血症が怖い(図2)。おそらく糖尿病関連腎臓病DKDではアルドステロンがサンギウム細胞の増殖を促し足突起の剥離を促進してアルブミン尿を増やすからだと考えられている(図3)。だからMRAのアルブミン尿を下げる作用はSGLT2阻害薬に勝るかもしれないし、併用すると相乗作用を示す。



そしてnsMRAのフィネレノンの利尿降圧作用は非常に弱い。ステロイド骨格のスピロノラクトンには女性化乳房などの性ホルモン作用があり、エプレレノンは性ホルモン作用がないだけでなくこれらの利尿作用・降圧作用ともにフィネレノンよりも強力だから、フロセミドを使いたくないときやRAS阻害薬だけでは血圧が十分下がらないときにステロイド骨格を持ったMRAは頼りになるが、何といってもやばいのは高カリウム血症を起こしやすいってことだ(図4)。腎機能の低下したDKDにフィネレノンが優先されるのは細胞増殖・リモデリングを抑え、高カリウム血症を起こしにくいからだ。フィネレノンは心不全の適応がないから、使いたくても使えないので、ロケルマを併用しながらスピロノラクトンやエプレレノンを使う循環器医も多い。高カリウム血症の原因薬にはMRA以外にもST合剤、RAS阻害薬、ARNIがあるので併用時には高カリウム血症に気を付けよう(図5)。


「これを寝る前に飲むだけでクレアチニン1.5→0.8」とか「クレアチニン1.5→0.8にガンガン落ちる食べ物」「eGFRが50代から70台に上げる方法」なんてタイトルのYouTubeがあるけど、全部ウソだよ。中には医師がこんなウソを言っている。急性腎障害で一時的に悪化した腎機能は元に戻ることはよくあることだし、セマグルチドなどで激やせするとクレアチニンが下がることがあるけど、これは脂肪が主に少なくなるけど筋肉もやや少なくなるから、筋肉由来のクレアチニンが減少して腎機能がよくなったように見えるだけのこと。こんな時の腎機能はシスタチンCによるeGFRでないと判断できないんだ。慢性心不全は薬物療法の恩恵でリバースリモデリングが起こって駆出率やBNPやNYHA分類が改善することはよくことだけど、なんで腎機能はよくなることがないのか?
腎の糸球体はそれを取り巻く糸球体上皮細胞の足突起が脱落すると、足細胞は再生できないため、慢性腎臓病の腎機能がよくなることはありえない(図1)。足突起の脱落は高血糖や高血圧に起因する糸球体過剰ろ過で起こる(図2の下)。つまりタンパク尿やアルブミン尿が高いのを放っておくと、特に糖尿病関連腎臓病DKDでは腎機能は急激に悪化するので怖い(図3)。こうなる前に血圧・血糖管理を改善し、RAS阻害薬やSGLT2阻害薬を投与してもらうために受診していただこう。



高齢者のちょっとしたむくみの訴えに対して、開業医は何とかしなくちゃということで、ラシックスを使うけど、それによって高齢者が脱水や腎機能の一時悪化で食欲不振・倦怠感を訴えて入院ということがよくある。そのたびごとに僕は親友の医師から愚痴を聞く羽目になる。「開業医の連中、何とかならんかなぁ。高齢者のちょっとしたむくみにラシックスを使って、結局脱水になったら入院するんや。うちのような病院が面倒見なあかんのや。ほんま何とかしてほしいわ」と。
ある薬剤師からの訴え「循環器医がラシックスを投与すると、腎臓内科医が中止する。すると循環器医はラシックスをまた投与する。間に入った薬剤師の私はどうすればいいの?」と。循環器医は心不全によるうっ血を取って自覚症状を改善したいから利尿薬を使いドライにしたい。でも腎臓内科医は脱水による腎障害を起こしたくないから利尿薬で脱水にならないようウェットにしたい。いつまで続くのやら、この静かな戦い……。
そこでグッドニュース。ラシックスはほぼ強制的な利尿作用だけど(とはいえ脱水になるとレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は活性化されるけど)、SGLT2阻害薬は体液が過剰な時には利尿作用を発揮するが、脱水時には無理な利尿を起こさないのは多分、抗利尿ホルモンが体液量を精密に感知して尿量を制御してくれているからじゃないかといわれている(図1)。だからSGLT2阻害薬には利尿作用があって脱水を起こすのに急性腎作障害を起こさないのかも(図2)。そしてなんといっても慢性心不全にもCKDにも有効性が非常に高い。高カリウム血症も(低カリウム血症も)起こさない(図3、4)。SGLT2阻害薬は失われた腎機能を復活させる薬なのかもしれない。心腎連関によって心臓も守ってくれるのかも?




グラム陽性菌は脂質二重相の外膜を持たないので、グラム染色で濃紺に染まった後もアルコールで脱色されないので濃紺のままだが(バイキンマン)、グラム陰性菌は紺に染まった脂質二重相の外膜がアルコールで溶けちゃうので、その後の赤色色素で赤く染まるんだよね(ドキンちゃん)。グラム陽性菌のペプチドグリカン(細胞壁)が分厚いから細胞内圧が20気圧と高いので、増殖スピードは速いけど、細胞壁合成阻害薬によって溶菌しやすい。代表的なものには黄色ブドウ球菌(耐性化するとMRSA)、肺炎球菌、溶連菌などメジャーなものはすべて球菌だ。かたやグラム陰性菌の代表的な細菌は緑膿菌、大腸菌、インフルエンザ菌、肺炎桿菌などメジャーなものはすべて桿菌だ。だから臨床的に重要な細菌はグラム陽性球菌とグラム陰性桿菌なんだ!つまり青丸の菌と赤長の菌をマークしよう!



11月13日(木)開催の、シリーズ③「慢性心不全治療のFantastic Four ってどんなもの?」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.サルコペニアフレイルには避けるということでしたが、
A.SGLT2阻害薬は非糖尿病ではブドウ糖200kcal分が尿中に喪失するだけですが、糖尿病では血糖値に依存してもっと尿糖排泄量が増加しますし、それによってケトン体産生が増えるということは体脂肪・筋肉が消費され、尿中にケトン体が喪失するのでエネルギー喪失はもっと強力だと思います。今回紹介した論文のほとんどが米国のもので、高齢者なのに平均BMIが30前後なので「痩せると楽になる患者さんたち」だと思いますが、日本人高齢者は加齢とともに痩せが顕著になってきますので、やはりSGLT2阻害薬は投与しにくいです。
SGLT2阻害薬は瘦せるからサルコペニアやフレイルには投与しない方がよいだけではなく、この方たちは活動度が低く、要介護度の高い患者さんだということですね。ということは女性では性器感染のリスクも高くなりますし、食欲も低いと思いますので、糖尿病患者ではケトアシドーシスを発症するリスクも高くなると思われます。非糖尿病CKD患者であっても心不全ステージAですから、ガイドライン上では投与できると思いますが、サルコペニアやフレイルを合併した患者ではやはり投与しにくいですが、最終的には主治医の判断になると思います。サルコペニアやフレイルが悪化するリスクよりも腎機能悪化を防ぐベネフィットが高いと判断すれば投与してもよいと思いますが、その後のケア(体重、活動度、性器感染、尿路感染など)は大変になると思います。
Q.SGLT2阻害薬が腎臓の負担を減らすということは、透析患者にも効果(貧血改善効果など)が期待できるのでしょうか?
A.SGLT2阻害薬がどうやって効いているかについてはさまざまな説があります。僕はケトン体産生による恩恵を受けているという説が、一番説明しやすいので、この説をメインに解説しましたが、貧血改善、長寿遺伝子SIRT1の活性化、尿酸低下作用など様々な説も唱えられていますし、動物を使った基礎研究ではもっともっと様々な説があります。長期透析患者では尿細管が線維化していてほぼ機能していないので、SGLT2阻害薬は無効だと思いますし、貧血改善作用はSGLT2阻害薬よりもESAやHIF-PH阻害薬のほうが強力です。透析患者で使える可能性があるとすれば、透析導入して1~2年、あるいは残腎機能のあるCAPD患者さんだけではないでしょうか。
11月13日(木)開催の、シリーズ③「慢性心不全治療のFantastic Four ってどんなもの?」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。
ファンタスティックフォーについての研修会、とても楽しみにしていました。先生の教えを自分のものとして、患者様が思わず飲みたくなるような服薬指導をしていきたいです
SGLT2阻害薬により、ケトン体亢進作用が、心筋や血管 にいい効果をもたらすこと、貧血改善と腎臓に大変良い影響があることがわかり、早期に開始できるように医師とコミュニケーションをとっていきたいと思います。
いつもありがとうございます。 聞きそびれとところなどがあるのでYouTubeの配信でもう一度聞きたいと思います。ケトン体の働きについてこの間からどうしてだろうと考えていたので非常に参考になりました。 ありがとうございました。
SGLT2阻害薬をもっと使ってもらいたいなとは思っていました が、具体的な推奨する患者さんが考えられるようになったので、先生に少し相談してみたいと思います。
腎臓薬物療法学会の平田先生のご講演で今回から参加 しました。◯◯医院薬剤部の◯◯と申します。平田先生、本日は貴重なご講演ありがとうございました。新卒で今年入職した上に不勉強なため知識がかなりない状態でしたが大変わかりやすかったです。入職して半年間参加できる勉強会はほとんど参加してきたのですがあまり理解できず身になっていないので平田先生のご講演で学んだことは忘れないようにアウトプットしたいです。
SGL-2阻害薬服用患者には常に1.5Lの水分摂取を 勧めています。先生がおっしゃた様に1.5Lをこまめに摂取するようにと。間違っていなくてよかったと思います。
何回か拝聴させて頂き、ようやくパズルがはまったように なってきました。Fantastic fourの各薬剤、組合せによる相性や腎保護作用、ケトン体など引き込まれるように勉強させて頂きました。有難うございました。
分かり易く説明いただくので、頭の中が整理されます。 開業医への薬の進言に関しては大変気を使いますが、ファンタスティック4の導入に加え、既に処方されている患者への服薬指導を、早速明日からの学会資料を利用させて頂きます。
私は◯◯市で在宅医療、外来、施設の調剤、OTC販売の日常を過ごしていますが、限界集落で超高齢地域なので、心不全の患者が多くの時間を食事の指導に費やしてきた気がします。MRAでケレンディアの使用経験がありません。DM患者に使え、高圧作用が少ないのは魅力です。引き続き本薬剤について新たな知見があればご指導ください。
SGLT2阻害薬の可能性の高さには驚きます。 貧血についてはもう少し詳しく知りたいところです。
いつも大変勉強になります。
いつもありがとうございます。 とても勉強になるのと、もっと勉強しなければという気にさせていただけるので、これからも仕事と自分の勉強を頑張ろうと思います。 ありがとうございました。
前回の内容も振り返りながら進めていただき、ありがとうござ いました。ケレンディアが心不全でも使えるように願います。
本日はありがとうございました。
今年の9月から本公演会に参加しております。本年度の4月からの公演も是非視聴したいので、配信頂ければと思います。
わかりやすい講義をありがとうございました。
脂溶性の高い薬物でないと細胞膜の脂質二重相を通過できない。ということは極めて親水性の高いβラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬がクラミジアやレジオネラなどの細胞内に寄生して増殖する細胞内寄生菌を殺菌できるわけがない!脂溶性の高いマクロライド、テトラサイクリン、クロラムフェニコール(チフスには今でも使ってるらしい)が細胞内寄生菌に効果がある。キノロンはクラビットⓇが尿中排泄されるので親水性と思っている人は多いけど、モキシフロキサシンなど脂溶性が高く組織透過性も高い(Vdは2.0~3.0L/kg)ので細胞内寄生菌にも効く。結核菌にまで効いてくれるのは困ったものだけどね。だけどキノロンを除く脂溶性抗菌薬は殺菌性ではなく静菌性抗菌薬なので、重症感染症にはあまり頼りにならない。逆に殺菌力が強くてスペクトルが広すぎるキノロンは「原爆みたいな薬」なので、軽微な感染症に気やすく投与すべきじゃないと平田は思う!
細胞壁にペプチドグリカンがないため、細胞壁合成阻害によって殺菌するβラクタム系抗菌薬・グリコペプチド系は細胞壁のない細胞内寄生菌やマイコプラズマには無効であり、マクロライド系・テトラサイクリン系・キノロン系といった抗菌剤が治療には用いられるというのも理解しやすいね。




多剤耐性菌では難儀な緑膿菌などのグラム陰性菌は脂質外膜(ヒトの細胞膜と同じ脂質二重相)をもっているため抗菌薬の透過性はよくないが、外膜にはポーリン孔があり、脂溶性薬剤は透過しにくい。そのためアミノ配糖体のような水溶性薬物の効果が高い。カルバペネムもポーリン孔を透過しやすいため陰性菌に効果が高い。さらにポーリン孔は分子量600以上のものが透過できない。これで分子量が1500Da足らずのバンコマイシンや1500~1900Daのテイコプラニンは分子量が大きいため、全くグラム陰性菌には全く効かなくて、巨大な環状構造を持ったマクロライド系抗菌薬(分子量約800Da)がグラム陰性菌には強くないってことが理解しやすくなる。この理論、合ってるかどうかは知らないけど、これで抗菌スペクトラムが理解しやすくなるのは確か。




薬剤師の皆さん、一般内科医の先生方、以下の質問に答えられますか?
①CKD患者の降圧薬の第1選択薬は何?
②糖尿病患者の降圧薬の第1選択薬は何?
③糖尿病患者の降圧目標は?
④CKD患者の降圧目標は?
⑤RAS阻害薬の投与開始時にはeGFRをモニターするが、投与3か月後までの時点で前後の30%未満の減少は、薬理効果としてそのまま投与を継続してもよい?
では回答は図をご覧ください。



これら①~⑤の回答の赤字部分はCKD診療ガイド2012(ガイドラインではないが、CKDを知っていただくために多くの製薬メーカーの協力を得て、日本全国の開業医に配布された)に記載されていた事項を正した回答だ。腎臓専門医であればその後のCKD診療ガイドラインの記載事項変更によってアップデートできているが、一般内科医には配布されて13年も経っているアップデートされていないCKD診療ガイド2012の情報を今でも信じている人が多いはずだ。だから薬剤師の皆さん、RAS阻害薬はトリプルワーミー処方の1つ、薬剤性腎障害の原因薬としてはトップクラスなんだ。腎機能が悪化すれば透析患者になってしまうことだってあるんだよ!
