10月16日(木)開催の、シリーズ②「慢性心不全治療の薬物療法の基本」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.平田先生、いつもわかりやすい講演ありがとうございます。
A.高齢者は患者さんによって腎機能の見方が変わります。
Q.透析導入後、フロセミドに、トルバブタン7.5㎎(または15㎎)を透析クリニックで継続する際、トルバブタンはどこまで継続すべきか、何かガイドラインとなるものがあるのでしょうか。
A.フロセミド+トルバプタンは心不全ではどうしようもない溢水、呼吸困難、ひどい低ナトリウム血症などで緊急的に併用する薬物療法だと思います。僕自身は高価なトルバプタンを透析患者に併用するのはどうだろうと思います。その理由として透析患者であれば、溢水がひどければ透析で除水すればいいし(水の引き残しがあれば、透析終了後に透析液を流さず限外濾過(ECUM)をやるのもいい)、電解質異常は透析で是正できるからトルバブタンを併用するのは水分管理がよほどひどいときだけだと思います。肝硬変による腹水や腎嚢胞などで溢水があるからフロセミドを必要とするケースなのだと思いますが、透析をやっていれば徐々に腎機能が低下して3~5年で無尿になって、フロセミドの中止はやむを得ないと思います。トルバプタンの併用はよほどの時に一時的にとどめるべきではないでしょうか。ということで、透析患者を対象にフロセミド+トルバプタンの有効性を見る試験は誰もやらないと思いますので、ガイドラインには記載されていないはずです。
カルタンⓇは唯一のCa含有リン吸着薬。2007年にCa含有リン吸着薬群はセベラマー(レナジェル)群に比し、有意に死亡率が高いといわれ(図1)、同様な報告が続いた。カルタンⓇは一番使い方が難しい、一番怖いリン吸着薬と思われている。だけどカルタンⓇは高リン血症かつ低カルシウム血症になりがちな保存期には一番使いやすい薬で価格も安く、上手な使い方をマスターしなければならない薬だ。でも使い方の基本をマスターしていない医療者が多すぎる!
食事をしないときにカルタンⓇを飲むとリンを下げず、血清Ca値が上昇することによって起こる高カルシウム血症は透析患者の血管の中膜の石灰化(血管が骨に変わる!: 図2)を助長するためとても危険なので、「食事をしないときには飲んじゃダメ!」の服薬指導はとっても重要なのだ。リンが高くなく、低カルシウム血症を是正する時には血清Ca濃度を上げるために透析医は意図的に空腹時に投与することもあることも知っておいてほしい。
「カルタンⓇは異所性石灰化の原因になり、Ca非含有リン吸着薬に比べて予後が有意に不良」という常識は、唯一、セベラマーと比較して有意差がついただけで、2015年以降のメタアナリシスでは「これらの報告は異質性が高く、Ca含有剤が本当に有害で、セベラマーが有益という結論には至っていない。ましてや非Ca含有が優れているとは言えない」とされている。「カルタンⓇの死亡率が高い」という研究が行われたときに薬剤師が、「ご飯を食べないときには飲んじゃダメですよ」と服薬指導していたら、カルタンⓇによって予後が悪化する結果にはならなかったかもと思うんだけどね。以上、私論(ぼやきかな?)でした。



熊本大学教授だったころの話、同僚の近藤悠希先生と「病名が分かれば医師の患者指導と齟齬がなくなり、より踏み込んだ服薬指導ができるはず。そして検査値、特に血清クレアチニン値やBUNが分かれば、腎機能低下患者の薬物用量を適正化でき、高齢者などの脱水の兆候を見抜き、腎機能の悪化を防止できる。薬剤師らしい仕事ができる。でもM3.comのアンケート結果では『病名と検査値の記載を原則義務化』すべきという割合は医師45.0%、薬剤師12.1%だった。『どちらかでも記載したほうがいい』を含めば医師71.4%、薬剤師28.2%でともに医師のほうが処方箋に検査値・病名を記載した方がいいと考える方が薬剤師よりもはるかに多かった。薬剤師の皆さん、なんで病名を知りたくないの?検査値も知りたくないのは責任が増えるから?」と、ある学会の保険薬局薬剤師さん向けのシンポジウムでこんな話をした。その時、会場からベテランの薬剤師さんが手を挙げて「私くらいに保険薬局薬剤師を長くやっていれば、患者さんとの会話をしているうちに患者さんの病態は検査値を見なくても手に取るように分かるようになるんですよ、だから検査値や病名は必要ない」とおっしゃった。後で聞くと、○○県の薬剤師会会長らしい。すごいね。県の薬剤師会会長クラスになると話をするだけで病態を把握できるんだ。未熟な僕(70歳だけど)には無理です。検査値も病名もわからないと僕には病態を理解できません。完全に脱帽です。


SGLT2阻害薬は尿糖を排泄させる糖尿病治療薬として発売されたが、強力な腎保護作用・心保護作用が認められ、今では糖尿病関連腎症、CKD、慢性心不全治療薬の最も頼りになる、つまり有効性の高い幅広い治療薬になった。統計的に有意な副作用は脱水、性器感染、糖尿病性ケトアシドーシスの3つだけ。だけど、基本的に尿糖排泄によって痩せるので、①やせ過ぎのフレイル、サルコペニア(活動度の低い人はみんな)では筋肉量がさらに減って栄養状態が悪化するので、やめておいた方がよい。寝たきりの人は性器を清浄に保つことができないので性器感染のリスクが高まるためなおさら投与すべきではない。
②食事を摂れない患者:絶食の必要な患者・周術期・重症感染症・重篤な外傷・アルコール依存症、それと新しい薬が投与されたので一念発起して「今後、血糖管理、頑張ります。だから糖質は一切摂りません」などという糖尿病患者さんがいたら、身を挺してでも「それはいけません。1日3回少量でもいいからご飯(糖質)は摂らないといけません」と指導しよう。でないと糖尿病性ケトアシドーシスになっちゃうからね。
③透析患者など腎機能の廃絶した患者では腎に作用する薬なので効かないとはずだ(いつか透析患者に投与する日が来るかもしれないが・・・・)脱水、性器感染、糖尿病性ケトアシドーシスはすべて服薬指導で「こまめな飲水」が必須なのは常識だよね。




NSAIDs、利尿薬、RAS阻害薬、活性型ビタミンD3、SGLT2阻害薬、バラシクロビル服用者には薬剤師は、猛暑の続く夏には特に「こまめな飲水」を指導しなければならない。ただし一定数の患者はこれに従ってくれない。
①高齢者は口渇感を感じなくなることが多い。口渇中枢に異常があるために、のどが乾かないのだ。②高齢男性は前立腺肥大による夜間頻尿があるため飲水したくない、特に夕方以降の水分摂取を嫌がる。そしてよく知られていないけど多いのが、③加齢あるいは明らかな腎機能低下があると夜間の抗利尿ホルモンの分泌低下によって起こる尿濃縮障害により、夜間多尿になるため、夕方以降の水分摂取を嫌がる人たちだ。夜間多尿は腎機能が低下している、つまりCKDの典型的な症状なのだ。夜間頻尿はつらいもの。だけど、飲水不足によっておこる脱水から急性腎障害は入院を要するくらい大変な病態であることを分かっていただき「こまめな飲水」を実行していただき、濃い褐色尿から左側の無色透明に近い尿になるまで(冬の尿はたいていこんな尿だよね)飲水していただこう。


慢性心不全は延々と緩やかに続く坂道のような病態で、重い荷物を引いている老馬が慢性心不全の心臓にたとえると患者さんには理解しやすくなる。心臓を鞭打つ薬、つまり強心薬を使い続けると、最初は快調に走ってくれても老馬は疲弊して早死にしてしまう。「逆に馬の速度を緩めてあげる役割がβ遮断薬、馬の荷物を軽くして負担を軽減する役割がRAS阻害薬、MRAはさらに荷物を軽くしてくれる薬なので、老馬はより長い距離を歩くことができる。つまり生命予後を延長できる慢性心不全治療薬になるのです(図1)」と説明するとわかっていただけるかも?強心薬は生命の危機を脱するために急性心不全だけでなく慢性心不全の増悪期にも一時的に使うことがある(図2)。心拍出量を上げるにはドブタミン、尿量が減ってきたらドパミン、血圧が下がってきていよいよ危なくなってきたらノルアドレナリンのように使い分ける。じゃあ利尿薬の立ち位置は?
慢性心不全入院理由の多くを占める体液貯留によるうっ血症状を改善してくれるのが利尿薬だ。症状を目覚ましく改善してくれるのでガイドラインでの推奨度はⅠだが生命予後改善効果はない。じゃあSGLT2阻害薬は?
「いっぱいあって説明しにくい」けど、ケトン体によってエネルギー効率がよくなることだと考えると「老馬にこまめにえさと水を与えること」に似ているかも?でもこれは平田の勝手な持論です。


10月16日(木)開催の、シリーズ②「慢性心不全治療の薬物療法の基本」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。
大切なことを何度も繰り返し、色々な角度から教えて頂き、本当にわかりやすかったです。何度も繰り返し勉強したいので、テキストが欲しいです。ありがとうございました。
わかりやすく話して頂いてよかったです。
拝聴して、わかることが増えていくにつれてわからないことも出来てくるといった感じもあります。 ありがとうございました。
服薬指導と処方医への提案にも大いに役立つと思います。
作用機序、試験結果までわかりやすいご講演ありがとうございました。
先生のお話は解りやすくて心不全に対する知識があいまいだった 部分が少しずつ固まってきました。まだまだ??な部分はありますがここを埋めていけば、みたいな感触であとは症例で勉強して役に立てるようにしていきたいです
ガイドラインを見直すきっかけになりました。新しい考え方を学べました。
前回の分も振り返りながら、基礎から分かりやすく説明いただいて ありがとうございました。
23くらい前、調剤薬局に勤務の頃、ARBが頻繁に処方されていました。カリウムの上昇が気になり、野菜、野菜ジュース、果物など摂取をどうしたら良いのか、他の薬剤師と話し合ったことがありました。患者の食生活など聞き取り、可能であれば採血結果など。。平田先生の講義は貴重です。このような機会を頂くことが出来てとても嬉しく、分かるまで何度でも見直して勉強します。有難うございました。
心不全の薬を整理することができて、参加してよかったです
拙い質問にもお答えいただきありがとうございました。 肥大型、拡張型ではなくHFrEFかHFpEFかで判断する事が分かりました。今度、患者様にもう少しお話を伺ってみたいと思います。
なかなか心不全について、自分なりに本などで、勉強してても、 ぼやっとした理解でした。先生の講義で理解が前に進みました。
アルドステロンによって、心筋の肥大・繊維化、および腎臓の メサンギウム細胞・およびたこ足のポトサイトの障害、間質繊維化、糸球体硬化などをいかに早期に抑えるべくACEiを使用すべきということがわかりました。ありがとうございました。
ありがとうございました。 いつも べんきょうに なります
とても勉強になりました。 ありがとうございます!
コルヒチンの添付文書には「 肝臓又は腎臓に障害のある患者で、肝代謝酵素CYP3A4を強く阻害する薬剤又はP糖蛋白を阻害する薬剤を服用中の患者には禁忌」とややこしいことが書かれている。わかりやすく説明しよう。
実際にあった香港での有害反応の報告によると1)、「CYP3A4阻害薬剤又はP糖蛋白阻害薬」の正体は、マクロライド系抗菌薬のクラリスロマイシンだ。クラリスロマイシンとコルヒチンの2薬物が同時投与された88名中9名(10.2%)が死亡し、2薬物が時間差投与された28名中1名(3.6%)も死亡した。コルヒチンの尿中排泄率は20%と言われており、腎不全患者で減量する必要はない。しかしコルヒチンはクラリスロマイシンと同様にCYP3A4、P糖蛋白の基質でもあり、阻害薬でもあるから、アトルバスタチンとの併用によって横紋筋融解症が起こったという報告もあるが2)、クラリスロマイシンに比べると非常に低用量なので、コルヒチンの代謝が阻害されて毒性の強いコルヒチン中毒が起こり、下痢や脱毛、そして致命的な汎血球減少によって死亡したと考えられる。コルヒチンには抗がん薬並みの怖い副作用があるので気を付けよう。おそらく腎機能が低下すると、相互作用により肝代謝がほぼ完全に阻害された場合には、わずか20%に過ぎない腎クリアランスがほぼゼロになることによって腎障害がコルヒチンの定常状態濃度の急上昇による致死性中毒の原因になったのではないかと平田は推測する。コルヒチンの尿中未変化体排泄率は実は40~65%という説もある。コルヒチンは痛風発作を予兆したときに効果的なので気軽に投与されるが、耳鼻科などでマクロライドが併用されてたら・・・・・。気を付けましょう!
1)Hung IF, et al: Clin Infec Dis 41: 291-300, 2005
2)Tufan A, et al: Ann Pharmacother 40;1466-1469, 2006



10月9日(木)開催の、シリーズ①「これだけは知っておこう。慢性心不全の病態の基礎」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.心不全のタイプは駆出率のみで判定するのでしょうか。
A.薬剤師塾でもお話ししたように、駆出率によってガイドラインに基づいて治療薬が選択されることがあります。例えば、ヘフレフの場合はRAS阻害薬やARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬が選択され、ヘフペフの場合はSGLT2阻害薬がまず選択されます。ARNIやMRAはエビデンスレベルが弱いものの、使用されることがあります。
ただし、薬剤の選択には駆出率だけでなく、急性増悪期には強心薬を使ったり、β遮断薬を中止したりすることもあります。また、右心不全と左心不全ではフロセミドの使い方が異なりますし、血圧やカリウムの数値によって使いやすい薬と使いにくい薬があります。
したがって、駆出率は薬剤選択に重要ですが、病態によって総合的に判断します。
処方されている薬の内容から、患者さんがヘフレフかヘフペフかは判断できません。次回は薬の使い方についてお話しします。
Q.次回は薬についての説明があると思いますが、
A.非結合型分率の低い薬物とは、つまり蛋白結合率が高い薬ということですよね。
一般的に、脂溶性の高い薬物は組織に移行しやすく分布容積が大きいのですが、アルブミンとの親和性も高いため、蛋白結合率も高くなります。しかし、蛋白結合率が極めて高い薬物(例えばワルファリン)は、PBRが99%以上(非結合型分率の極めて低い薬物)になり、アルブミンにトラップされて血中にとどまります。そのため、間質液や細胞内、脂肪組織や他の臓器に移行できなくなり、分布容積は0.15L/kgと、水溶性薬物と間違えそうなくらい小さなVdになります。蛋白結合率の高い薬物同士の併用では、用量の少ない薬物(ワルファリン)やアルブミンとの親和性が低い薬物がアルブミンと結合できなくなり、薬効を示す遊離型分率が増して遊離型濃度の上昇が起こります。このため、中毒性副作用やワルファリンによる大出血が起こる可能性があると考える方もいるかもしれません。しかし、私は分布における相互作用はほとんどないと考えます。つまり、遊離型ワルファリン濃度が上昇しても、代謝クリアランスと分布容積が同時に増大するため、血中遊離型濃度は上昇せず、併用前の平衡状態の遊離型濃度と変わらないので、何も起こらないと考えます。
ご質問の「分布容積の大きな薬物同士であれば、組織移行して平衡に達するため、非結合型薬物濃度が上がる」ということは考えたことがありません。おそらく、分布容積の大きい薬物の併用では、何の問題も起こらないはずです。患者さんが服用している薬の7割は肝代謝型薬物であり、その多くは分布容積が大きいですが、これらを併用して何かが起こったという話は聞いたことがありません。分布容積が大きいといっても、アミオダロンは脂肪組織に高濃度で分布しますが、ジゴキシンは心筋や骨格筋に高濃度で分布するので、相互作用は起こりえないですよね。肝障害や腎障害時にも、分布容積の大きい薬物の併用は問題ないと思います。
10月9日(木)開催の、シリーズ①「これだけは知っておこう。慢性心不全の病態の基礎」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。
復習プラスアップデートにとてもよい講義でした。次回も楽しみにしています。
心臓の解剖生理学がとても良くわかりました。
肺循環・体循環から心不全の病態まで本当に大学で講義を受けているようでした。いつも先生の言葉ひとつひとつ聞き逃さないように引き込まれてしまいます。 今までヘフレフ・ヘフぺフの違いやイメージが掴めませんでしたが、おかげ様で理解できました。これからも引き続き、勉強させてください。
分かりやすく話していただいて勉強になりました。
心臓の基礎が理解できました
心臓の構造から心臓に関わる検査値で抑えておかないといかないものなどを 分かりやすく解説いただき、ありがとうございました。シリーズの残り3回も楽しみにしております。
本当に目からウロコ わかりやすすぎました。資料が欲しいです。
LVEFの細かい説明をありがとうございます!アーカイブでまた復習します!
今まで見た中で一番わかりやすい資料でした。次はスクショします。
大変勉強になりました。
基礎からご講演していただけるのは大変ありがたいです。