糖尿病患者が感染症や体調不良になって食事が摂れなくなった時や、下痢・嘔吐、発熱などがあることによって血糖値が乱れることを「シックデイ」(著しく体調の悪い日)と言う。血糖値が不安定になるため、薬の服用を一時やめていただき、シックデイルール、つまり血糖コントロールを調整するために安静、水分補給、保温、炭水化物摂取(食欲が落ちて低血糖になりやすい場合は、不足したカロリー分を補う)、血糖値が高いときには脱水になりやすいので、水分や電解質を十分に補給する(目安として、1日1.5Lの水分は摂る)、血糖測定などが必要。かかりつけ医に相談するときに体重、体温、血圧/脈拍、血糖値の変化などの情報があれば、医師が判断しやすくなる。 平田は糖尿病とは直接は関係ないけど、高齢者で高カルシウム血症から多尿・脱水を引き起こす活性型ビタミンDを加えたい。MRA+ACE阻害薬/ARBによって起こる高カリウム血症も突然死のリスクになるが、高カリウム血症の判別はむつかしい。

利尿薬+ レニンアンジオテンシン系阻害薬+NSAIDsの組み合わせは腎機能を悪化させる三重攻撃(Triple Whammy)処方といい、特に高齢者で起こりやすい腎前性腎障害の原因薬物になる。高齢女性では閉経後骨粗鬆症を予防するために活性型ビタミンDが投与されることが多いが、これによって起こる高カルシウム血症は尿濃縮障害から多尿・脱水をきたし急性腎障害、腎細動脈の石灰化の原因、つまり腎機能の悪化につながる。
2020年10月にはPMDAから「エルデカルシトールによる高カルシウム血症と血液検査の遵守について」という医薬品適正使用のお願いが発行された。エルデカルシトールの添付文書には定期的に血清Ca濃度を測定するよう注意喚起されているものの、高カルシウム血症の副作用報告では定期的な血清Ca濃度のモニタリングがされていない事例が多く報告されている。この文書には①血清カルシウム値を定期的(3~6カ月に1回程度)に測定すること(整形外科・皮膚科ではほとんど実施されてない)、②高カルシウム血症の症状(多尿・多飲・口渇感・便秘、倦怠感、いらいら感、意識レベルの低下等)が出たらすぐに受診するよう、 患者やその家族へ指導することが記載されている。血清Ca濃度を上げるCa剤、サイアザイド利尿薬(ループ利尿薬はCaを下げる)やビタミンAなどが併用されていないかを確認することも薬剤師の極めて重要な任務だ。図の黄色の文字は薬剤師として特に重要なポイント!

活性型ビタミンDの添付文書には「血清カルシウム上昇を伴った急性腎障害があらわれることがあるので、血清カルシウム値及び腎機能を定期的に観察すること」と書かれているが、整形外科医はほとんど採血検査をしてくれないことが非常に悩ましい。活性型ビタミンDを服用中の高齢女性には「こまめな飲水」の服薬指導は必須だ。また閉経後骨粗鬆症の多くの患者さんが「Caが足りない」と信じ込んでいるのではないだろうか。活性型ビタミンDを投与されている方が、Ca剤を服用したら当然、重篤な高カルシウム血症になるのは当たり前。むしろ服薬指導で「主治医の許可なくCa剤やCaサプリメントを一緒に服用してはいけません」という指導をすることが重要だと思う。整形外科医(皮膚科もですが)はほとんど採血しないので、血清Ca濃度をモニターしていないため、高カルシウム血症に気づかない。そして多尿から脱水、そして腎機能が悪化して内科を受診、そして腎臓内科に紹介入院になることが多々ある。「平田先生、整形外科向けの講演会ではNSAIDsだけじゃなくエディロールⓇのことも言ってくださいよ」と腎臓内科医の先生方によく言われる。そしていつも思う。やせた超高齢女性にエディロールⓇ0.75、アルファロールⓇ1.0µgって多すぎるんじゃないの?


〇年8月5日、85歳女性、身長155cm、体重41kg。65歳の時に2型糖尿病と診断され、いつもeGFR50~60mL/min/1.73m2で推移していた。猛暑のため食欲不振が続いて昨夜は眠れず、倦怠感があり、軽度熱中症と診断され、採血(検査値は表を参照)。その後、ラクテックⓇ注を1L輸液した後、元気になって来局。
Rx: 下記処方が1年継続
オルメテックⓇ OD錠20mg1錠
メトグルコⓇ 250mg3錠
ジャディアンスⓇ 10mg1錠
皆さん、疑義紹介しますか?服薬指導、どうしますか?
僕の考えた回答を図の黄色で示します。BUN/Cr比>30で脱水が強く疑われますが、SGLT2阻害薬による利尿作用は数日以内で持続しません。脱水の主原因は猛暑による発汗だと思われます。eGFR30mL/min/1.73m2未満なら「メトホルミンを中止して」と自動的に疑義紹介する「デジタル薬剤師」にならないようにしましょう。医師に怒られても仕方ありません。


9月18日(木)開催の 中級者コース「NSAIDsの腎障害」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.ワーファリン服用者に他院でNSAIDsが出る際、腎機能の低下がなければ経過観察、腎機能低下があれば、疑義ということでよいでしょうか?
A.平田塾では主としてCYP2C9によってワルファリンが代謝されるため、それと腎機能が低下するとCYP2C9の活性が低下することなどからワルファリンはさらに高濃度になってしまうこともお話ししました。でもワルファリンとNSAIDsとの相互作用は薬物動力学的な相互作用も考えられます。NSAIDsによる胃障害と抗血小板作用による出血助長がありますので、ワルファリンとの併用はとても怖いと思います。
だから腎機能低下がなくてもワルファリン服用者はNSAIDsの併用はやめていただきたいと思います。トラムセットのほうがまだ安全だと思います。
ただし低用量アスピリンの併用は治療上、やむを得ないこともあると思います。
9月18日(木)開催の 中級者コース「NSAIDsの腎障害」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。
とても勉強になります。NSAIDsをはじめとする鎮痛剤はとても身近なものなので、これからも常に意識していきたいと思います。ありがとうございました。
今回も熱意あふれる講義をありがとうございました。とても勉強になりました。患者さんが薬をのみたくなる服薬指導を考えたいと思います。
前回参加できなかったこともあるのですが、勉強不足でついていけない部分もありました。オンデマンドで再度確認しながら復習します。
整形外科処方にてノイロトロピン錠が処方されています。患者様からセレコキシブやロキソニンなどとの違いや効果があるのかと聞かれますが、ノイロトロピンはプラセボ効果で説明していますが。帯状疱疹の痛みにも処方されていました。いずれも効果を疑問されています。いっそ、製造中止になれば良いのにと思うこともあります。
何度か同じ内容も繰り返し教えていただいているのに違う角度からも聞き直すことができてとても勉強になっています。ありがとうございました。これからも継続お願いします。楽しみにしています。
有料でも続けていただきたいです
大変勉強になりました。ありがとうございます。
ご講演、ありがとうございました。オンデマンド配信で、しっかり復習したいと思います。
勉強不足を実感しました。
腎機能低下患者へのセレコキシブの投与について、どう考えれば良いのかが分からなかったが、この講義でクリアになりました。ありがとうございました。
薬物動態や理論にもとづいた説明がわかりやすかったです。ありがとうございました。
アセトアミノフェンの有効用量について様々ご意見がありましたが、小児用量からのアプローチも一考かと。10~15mg/kgから目安量に迫っていくのも良いのかなと。平田先生お示しの有効域だけでなく、Tmax、半減期、現実的な調剤可能性、嚥下能力もモノサシとして挙げられます。月並みですが一概にして規定することはできない問題で、患者背景を総合的に捉えて用量検討することに尽きる、と感じます。
高齢者への鎮痛剤の処方に対して、より注意していきたいと思います。医師にも処方提案等できれば。
今日もとても勉強になりました。また次回の薬剤師塾楽しみにしています。
毎回わかりやすい講演をありがとうございます。リウマチと腎障害について講演して欲しいです
毎回楽しみにしています。出来たら資料等を、ダウンロードできるようにしていただけるとありがたいです。
今回初めて参加させていただき、前回の公演も聴きたくなりました。出来れば機会を作っていただきたいです。
頻用薬剤であるNSAIDsについての講義、とても興味深く勉強になりました。
とても勉強になりました。
シタグリプチン(ジャヌビアⓇ、グラクティブⓇ)、アログリプチン(ネシーナⓇ)は腎排泄型で、腎機能の程度に応じて用量調節が必要となるため、腎機能が低下すれば使いにくいので腎機能に関わらず用量調節が不要なDPP4阻害薬に変更すべき、あるいは「○○は腎不全患者でも減量不要なDPP4阻害薬」と書かれたものをよく見ます。でも本当でしょうか?僕はDPP4阻害薬は血中濃度に応じて用量依存的に低血糖が起こるような危険な薬ではないので、「投与すべきではない」とも「使いにくい」とも思っていません。私見ですが、薬剤師がAUCの上昇率に合せて減量を提案すれば、シタグリプチン、アログリプチンは腎機能低下患者では低用量で効いてくれる安価な薬とも考えられます。これは腎機能が安定している患者さんであればかえって利点だと思うのですが…。

腎排泄性薬物は全体の2~3割を占めるに過ぎないが、抗菌薬の多くは腎排泄性である。抗菌薬以外でもアシクロビルやガンシクロビルなどの抗ウイルス薬は腎排泄性で用量調節を間違えると容易に中毒性副作用をきたしてしまう。殺菌性の抗菌薬は免疫能の低下したCKD患者にはなくてはならないが、これらのほとんどが腎排泄性である。用量依存性の副作用がほとんどないβラクタム系やホスホマイシン、殺菌力の強いアミノグリコシド系、グラム陽性菌にはめっぽう強いグリコペプチド系、濃度依存性の殺菌作用を持つ抗MRSA薬のダプトマイシン、多剤耐性緑膿菌の切り札であるコリスチンなどはすべて水溶性で腎排泄性の殺菌性抗菌薬なのだ(表)。多くが経口薬で抗菌スペクトルが広く殺菌力の強いキノロン系はレボフロキサシンの尿中排泄率が90%と高いことから、腎排泄性のイメージが強いが、基本的には腎嚢胞感染症にも効果的で細胞内寄生菌にも有効な組織移行性の高い脂溶性薬物であり、ノルフロキサシンやレスピラトリーキノロンとして効果の高いモキシフロキサシンのように尿中に排泄されないものもある。一方、オキサゾリジノン系、マクロライド系、リンコマイシン系、テトラサイクリン系、チゲサイクリン、クロラムフェニコールなどの静菌性抗菌薬は脂溶性であり、腎排泄性で静菌性のものはST合剤中のトリメトプリムくらいしか思い当たらない。
詳しくは 第3回:殺菌性の抗菌薬はなぜか腎排泄 を参照してください。

11月1日、2日(土日)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催される
入場無料、登録する必要はありません。
大学での講義や教科書には難解な式が並んでいて、「薬物動態学」
単に薬に関する知識を身に着けた薬剤師が素晴らしいのではない。
僕が小学生のころの1960年代に喘息、アトピー、花粉症の子供を見たことも聞いたこともなかった。そして20年後、1980年代に恵まれた僕の2人の子供の同級生の子供たちの約半数がこのようなアレルギーマーチになっていた。このたった20年間に何が変わったのであろうか?
早めに登場した経口抗生剤のアモキシシリン、セファレキシン、セファクロルなどの吸収率は極めて高い。もともとβラクタム系抗菌薬は親水性が高いため、消化管の脂質二重層を通過できないはずだが、立体構造がジペプチド構造に似ていれば小腸上皮細胞に存在するペプチドトランスポータPEPT1の基質としてたまたま認識されて吸収されるからだ。
しかし第3世代セフェムはピボキシル基などをくっつけて脂溶性を高めて無理やり吸収率を上げさせたものばかりだ(図)。外来などの軽症例であればグラム陽性菌に効果のある第1世代抗菌薬が最も使う頻度が高いはずなのに、なぜこんなにたくさんの第3世代セフェムが必要なのかも理解できない。これらの第3世代セフェム系抗菌薬は吸収率が低いことが大問題で、腸内細菌叢が激変することによって今までは起こることのなかったアレルギー性疾患が増えてしまったのではないだろうか。これに関しては英国ブリストル大学の報告で2歳までに抗菌薬を投与されていた小児は7.5歳になるまでに喘息(OR1.75: 95%CI 1.40-2.17)を発症する率が有意に高く、2歳までに4回以上投与された場合には、喘息(OR2.82: 95%CI 2.19-3.63)だけでなく湿疹(OR1.41: 95%CI 1.14-1.74)、花粉症(1.60 95%CI 1.21-2.10)などのアレルギー性疾患を発症するオッズ比が有意に高かったことが明らかにされている(表)。
詳しくは ★◆連載◆吸収率の低い第3世代経口セフェムってこんなに必要? 第8回 を参照してください。

