◆第77回 8月13日(木)初級者編 お申込はこちらから
症例に基づいたCKD患者の薬物適正使用(初心者編)
◆第78回 8月20日(木)中級者編 お申込はこちらから
症例に基づいたCKD患者の薬物適正使用(中級者編)
◆第79回 9月10日(木)初級者編 お申込はこちらから
腎臓が何をやっているか?(1)糸球体編
◆第80回 9月17日(木)中級者編 お申込はこちらから
腎臓が何をやっているか?(2)尿細管編
※お申し込み期限は講演会開始直前までとなります。
お申し込みの際は 免責事項 をご確認のうえお手続きください。
2026年9月17日(木)開催の平田の薬剤師塾のお知らせです。
◆第80回「平田の薬剤師塾」初心者コースのテーマは
腎臓が何をやっているか?(2)尿細管編~腎臓の最も重要な体液の恒常性維持は尿細管の仕事~(中級者編)
「腎臓は何をやっている臓器?」とたずねると多くの方が「腎臓って尿を作る臓器でしょ?」と答えてくれる。間違いではないけど、腎臓はもっと高度で精密な仕事をしている。排泄する尿中に含まれているものはすべて不要なもの、余剰なものであって、必要なものは尿細管で再吸収してくれるから、必要な栄養素を失うことなく、いつも体液中の電解質濃度を一定に保ち、水分量やpHを一定に保ってくれている。だからいつも健やかな生活を送ろうとするのに腎臓はとても大切な働きをしている。
腎機能が低下すると何が起こる?高リン血症から低カルシウム血症、そしてPTHが過剰分泌されるので骨を溶かしてCaを上げる、いわゆるCKD-MBDだから骨まで脆くなるし血管が石のようになってしまう。腎性貧血によって疲れやすくなり、高カリウム血症によって不整脈によって突然死の危険性が高まる。尿毒素がたまり、血液が酸性に傾くと元気がなくなり食欲も失せる。
腎臓の構造は複雑だ。だけど腎臓の役割を理解しておくと、これまでに分からなかった患者さんの病態、加齢に伴う病態の変化も理解できるようになる。
腎の構造を知らないと「CKDはなぜ治らない病気なの?」とか、「糖尿病の症例って最初は腎機能がとびきりいいのに、いったん悪くなりかけるとなんで急激に悪化して透析導入になってしまうの?」とか、「なんで腎臓は高血圧に弱いの?」などについて理解できないし、薬剤師なのにサイアザイド系利尿薬とループ利尿薬の違いを説明できない、フォシーガⓇなどのSGLT2阻害薬、RAS阻害薬、ケレンディアⓇなどのMRA、ネスプⓇなどのESA、ダーブロックⓇなどのHIF-PH阻害薬などの腎に作用する薬の作用がいまいち理解できない。だから患者さんに「腎臓を守るにはどうすればいいのか」についてもわかりやすく説明できなくなる。これらをできるだけ理解して「あんたの言ってくれたことが一番分かりやすかった」といわれるような薬剤師になろうね。
お申し込みは こちら から
【申込期限:講演会開始直前まで】
【定員:300名】
お支払いが完了していれば、開始直前でもご視聴いただけます。また、受講者の方は講演終了後、数日後から1週間、オンデマンド配信にて繰り返しご聴講いただけます。あわせて、講演終了後に講演スライドをお送りいたします。
2026年9月10日(木)開催の平田の薬剤師塾のお知らせです。
◆第79回「平田の薬剤師塾」初心者コースのテーマは
腎臓が何をやっているか?(1)糸球体編~足細胞は再生できないから腎機能がよくなることはない~ (初心者編)です。
腎臓は2つ合わせて500gしかないけど、心臓から送られてくる血液の20~25%、つまり1日1500~2000Lが腎臓を通っている。その中の10%にあたる150~200Lの濾液(原尿)が作られる。でも尿量はその1%の1日1.5L程度だよね。なんて「無駄に濾過してるんだろ?」と思わないでほしい。これだけの余力があるから多くの人は腎臓病にならなくてすんでいるのだから。
腎機能は糸球体濾過速度(GFR)で表す。CKDの定義はGFR<60mL/min/1.73m2ということは常識だよね。正常値は100mL/min/1.73m2だけど、じゃあ中年男性で150mL/min/1.73m2の人は腎機能が高いから、素晴らしい?もしもその方が糖尿病になっていたら血糖値が高すぎるために、尿細管で多すぎるブドウ糖を再吸収しきれずに尿糖が排泄されて、多尿になる。高血糖のため血清浸透圧も上がるから無性に喉が渇き多飲になり、さらに多尿になる。GFRが150mL/min/1.73m2ということは糸球体過剰濾過を表す。糸球体内圧が高いため、放っておくとアルブミンが尿中に漏れ出てくる。「口渇・多尿・多飲」以外の症状は何にもなく、元気だからって放っておくと次第に糸球体の濾過膜が破綻するし、血管も動脈硬化が進行する。そのうち心臓も血管も悲鳴を上げるようになる。「尿中アルブミンは全身の血管が傷つき、傷み始めているシグナル」なんだ。だからCKDの診断基準にアルブミン尿・タンパク尿も極めて重要な指標なのだ。
正常の1.5倍の腎機能は腎臓の機能が素晴らしく良いからではなく、腎臓がむち打たれて疲弊していることを表している。放っておくと顕性アルブミン尿から糸球体濾過膜が壊れて、通常の大きなタンパク質も漏れ出て、一気に腎機能が悪化して透析導入になる。これが典型的な糖尿病性腎症だ。
そして腎臓に病気があるなんて全く思っていなかったけど、血圧が高いのを放っておくと70~80歳代になって腎硬化症で透析導入になる方が多い。あるYouTuberが「降圧薬って製薬メーカーと医師がグルになってもうけるために投与してるんだよ。血圧は年齢+90くらいでちょうどいい」とか言うのを信じていると、腎臓だけじゃなく心血管系にも障害が及んでくる。「○○をのむだけでみるみる腎機能がよくなる」とか「eGFR40が70mL/min/1.73m2に改善した」なんて嘘だよ。一度失われた足細胞は再生できないから、CKD患者の腎機能がよくなることはないんだ。
今回、「放っておくと」という言葉を何回使っただろう。放っておく(これを医師・薬剤師のイナーシャと呼びたい)とあれだけ余力のあるはずだった腎機能、そして腎臓を守るための様々な仕組みがあっという間に崩壊してしまうのだ。でもその悪化速度をかなり緩やかにできる薬物療法が確立しつつあるということは知ってるよね。あとはアナタの薬剤師力によって血糖管理、血圧管理をわかりやすく指導し、腎臓を守る素晴らしい薬を副作用の心配することなく、患者さんが確実に「飲みたくなるような服薬指導する」、そして「危ないサインがあるのに放っておく」のをやめさせるのが薬剤師の極めて重要な役目だ。皆さん、ちゃんとできてる?
お申し込みは こちら から
【申込期限:講演会開始直前まで】
【定員:300名】
お支払いが完了していれば、開始直前でもご視聴いただけます。また、受講者の方は講演終了後、数日後から1週間、オンデマンド配信にて繰り返しご聴講いただけます。あわせて、講演終了後に講演スライドをお送りいたします。
SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンの衝撃的な試験、EMPA-REG OUTCOME試験では腎保護作用に関しては用量依存性がない。つまり10mg/日でも25mg/日でも同じ。CANVAS試験でも100mgと300mgで主要評価項目に差がなかった。じゃあ低用量でいいよねということになったんだけれども、なんで?
エンパグリフロジンの尿糖排泄作用に関しては用量依存性がないわけではない。10 mgで約64 g/日、25 mgで約78 g/日と尿糖排泄が増えるとはいえ、2.5倍の用量なのに尿糖は22%しか増えず、SGLT2というトランスポータの飽和が示唆される。腎保護の主要機序は遠位尿細管のCl濃度上昇をマクラデンサが感知して糸球体内圧低下による糸球体過剰濾過の是正をすると考えると、この糸球体過剰濾過を抑制する血行動態の変化は、SGLT2がある程度(約80%以上)阻害された時点で最大に近い効果を発揮するので、比較的低用量からプラトー化しやすいのだろう。10mgで尿細管糸球体フィードバックが十分に作動していれば、30mgに増やしても「それ以上に輸入細動脈を収縮させる」力はほとんど働かないのだ。
この尿糖排泄作用は糖尿病患者では血糖値に依存して変化するため個人差が大きいはずだ。そこで非DMのCKD患者で考えてみると、原尿量150L/日×血糖値100mg/dLで150gのブドウ糖/日が含まれるとして、SGLT2阻害薬が投与されていないときにはSGLT2が90%程度のブドウ糖を再吸収し、残りの20g程度が少し下流にあるSGLT1が完璧に再吸収するため、尿糖は全く出ない。SGLT2阻害薬投与によりブドウ糖の再吸収はゼロになるが、その分SGLT1がかなり頑張って100g程度再吸収するので、非DM患者の尿糖排泄量はわずか50g/日程度、カロリーとして200kcal、ご飯を茶碗に軽く1杯に過ぎない。
ただしこれに糖質制限をするとケトン体はかなり増加してそれによる恩恵を受けるだろう。でもSGLT2阻害薬を10mg投与して50gの尿糖が、25mg投与して仮に20%増えたとして、どれだけのケトン体の産生が増えるのだろう。おそらく食事内容の影響の方が大きくて、SGLT2阻害薬の投与量が2~3倍増えてもほとんど意味ないことが分かるよね。
これって用量を増やしても、糸球体内圧低下や尿糖排泄が頭打ちになるってことは、利尿薬でみられる天井効果(ceiling effect)に近いかもしれない。ただしSGLT2阻害薬の利尿は数日間だけで、その後は腎の適応によって平衡に戻るのが少し違う。腎保護に関しては低用量で主要機序が飽和しやすい「機能的プラトー」を示す薬と考えるのが妥当かもしれない。



鳥居薬品の「ケイキサレート散」「ケイキサレートドライシロップ76%」は、諸般の事情により、2027年3月の在庫消尽をもって販売中止となる予定と聞いて驚いた。2026年1月時点で販売中止が公式発表されており、今後は代替薬への切り替えが進む見込み。 メーカーの案内では「諸般の事情」なんだって。代替薬としては同効薬として「カリメート」「アーガメイト」(ポリスチレンスルホン酸カルシウム製剤)があげられている。新しいタイプの「ロケルマ」(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)は書かれていない。
ロケルマが登場するまでの陽イオン交換樹脂はケイキサレートとカリメート(ゼリー製剤を含む)だけだった。その中でケイキサレートの市場は15%のみだったから、結局売れなかったからだろうか?
実は平田は有効性でも安全性でもケイキサレートのほうがカリメートに比べ数段優れていると思っている。透析の黎明期にすでにケイキサレートはあったが、このころの透析患者の死亡原因は心不全がトップでその原因になるNaは嫌われていた。カリメートの登場した1975年は活性型ビタミンDがなく、Naは悪玉。Caは正義の味方だったから、カリメートは飛ぶように売れ、ケイキサレートは売れなくなった。その後、抗凝固薬のヘパリンNaまでもがヘパリンCaに変わろうとしていたというくらいのCaブームは異常だったよね。
医学中央雑誌から透析患者、消化管穿孔で検索し非薬剤性のものを除外した「薬剤性消化管穿孔」の原因薬の約70%がCPS(カリメートⓇ・アーガメイトⓇなど)で占められ、その他は不溶性薬剤、あるいは腸管内圧を上げるグリセリン浣腸ばかりで、ケイキサレートは全く報告されていない。
販売バイアスによるかもしれないので、我々はロペラミドを使った便秘モデルラットを作成してCPS(カリメート)とSPS(ケイキサレート)を比較するとCPSで総糞数・糞中水分量が減少し、CPS群がSPS群に比し硬結便及び便秘の増悪が認められたのだ。
「樹脂に対する陽イオンの親和性」の図を見てもらいたい。選択係数が高いほど吸着力が高いため、Na型レジンはカリウム・アンモニアを吸着しやすく、Ca型レジンはカリウムを吸着しにくいのでNa型レジンの半分しか効果がないのだ。Ca型レジンの方が大量投与を必要とし、余計、カリメートのほうが重篤な便秘、イレウス、腸管穿孔になりやすいのだろう。米国ではケイキサレートが使われていて、カリメートは承認されていないんだよ。
添付文書でもカリメートには「便秘発症率9.2%」と記載され、「重大な副作用で腸管穿孔、腸閉塞、大腸壊死が現れることがある」と記載されているがケイキサレートは下痢3.2%、便秘1.9%と下痢のほうが多い。カリメートの使用率が増えて、便秘→イレウス→腸内細菌叢の異常→リーキーガット→尿毒素の蓄積→心血管病変の悪化・腎機能の悪化にならないよう気を付けてほしい。透析患者の便秘は「たかが便秘」じゃすまされないのだ。イレウスによる2024年の透析患者死亡数は329名で、透析患者死亡原因の9位とされているが、その後、腹膜炎・敗血症で死亡すると感染症に分類する医師もいるため、真の死亡者数はもっともっと多いはずだと平田は考えている。




僕が小学生のころの1960年代に喘息、アトピー、花粉症の子供を見たことも聞いたこともなかった。そして20年後、1980年代に恵まれた僕の2人の子供の同級生の半数近くがこのようなアレルギーマーチになっていた。このたった20年間に何が起こったのであろうか?<
早めに登場した経口抗生剤のアモキシシリン、セファレキシン、セファクロルなどの吸収率は極めて高い。もともとβラクタム系抗菌薬は親水性が高いため、消化管の脂質二重層を通過できないはずだが、立体構造がジペプチド構造に似ていれば小腸上皮細胞に存在するペプチドトランスポータPEPT1の基質としてたまたま認識されて吸収されるからだ。
しかし第3世代セフェムはピボキシル基などの脂溶性エステル置換基をくっつけて脂溶性を高めて無理やり吸収率を上げさせたものばかりだ。外来などの軽症例であればグラム陽性菌に効果のある第1世代抗菌薬が最も使う頻度が高いはずなのに、なぜこんなにたくさんの第3世代セフェムが必要なのかも理解できない。これらの第3世代経口セフェム系抗菌薬は吸収率が低いことが大問題で、セフジトレンの吸収率14%ということは300mg/日を経口投与しても42mgの注射薬を投与したに過ぎないことになる。あの強力なピペラシリンは12g/日投与することを考えると1/300の投与量なので効果が期待できないだけでなく、吸収されなかった86%が腸内細菌を殺菌して腸内細菌叢が激変する可能性がある。
これに関しては英国ブリストル大学の報告で2歳までに抗菌薬を投与されていた小児は7.5歳になるまでに喘息(OR1.75: 95%CI 1.40-2.17)を発症する率が有意に高く、2歳までに4回以上投与された場合には、喘息(OR2.82: 95%CI 2.19-3.63)だけでなく湿疹(OR1.41: 95%CI 1.14-1.74)、花粉症(1.60 95%CI 1.21-2.10)などのアレルギー性疾患を発症するオッズ比が有意に高かったことが明らかにされている。
日本の生育医療研究センターからの報告もほぼ同じだ。2歳までの抗菌薬の使用と5歳におけるアレルギー疾患(喘息、アトピー、鼻炎)の有症率との間には有意な関連があることが報告されている。厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課が発行している「抗微生物薬適正使用の手引き」の以前の版には感冒の時に抗菌薬を欲しがる患者への対応が記載されていたが、今年改訂された第4版では抗菌薬投与を避けたために起こるリスクを考慮してか、このような記載は消えているが参考にしてほしい。
2歳までの乳幼児期の感冒に対する抗菌薬投与は母親が医師に投与を強く希望し、医師も断り切れなくなって処方されることが多いそうだ。重症な細菌感染が強く疑われない限り、今回提示した図などを利用して母親に指導できないものだろうか?本当に必要なら点滴静注の抗菌薬を投与すればよいし、経口投与するにしても吸収率が90%以上と広いアモキシシリンやセファレキシンなどで留めてほしい。第3世代経口セフェムなんて、要らないと個人的には思っている。




2月15日に「SGLT2阻害薬の副作用対策~安易な中止は避ける!~」とツイートしましたが、この時に引用した図が「26日目で有意な心不全の臨床的利益が現れる」という論文によるものでしたが、実はSGLT2阻害薬はもっと速やかに効果を示すという報告が数多くありました。
最速は心不全イベント抑制(全死亡、心不全誘因、心不全悪化による緊急受診)は投与開始後12日でプラセボ群と有意差(EMPEROR-Reduced試験のサブ解析)じゃないかな?ほかにもフィネレノンとの併用での効果発現は14日目から有意に、あるいは18日で心不全入院や心不全イベント軽減という報告もありました。
さらにエンパグリフロジンの投与を中止すると30日で心血管死や心不全入院が有意に増加するという報告もありましたので図を示します。ということは日本でちょっとした副作用でSGLT2阻害薬の外来投与を1か月間中止するだけで心血管死や心不全入院リスクが1.75倍になるってこと。SGLT2阻害薬は一度投与するとやめられない薬だなと思いました。これは「この薬から逃れなくなる」という悪い意味ではなく、続けたほうが、はるかに得られる利益(より健康により長寿に)が大きいという意味なのです。
尿路感染症も抗菌薬を投与しながらSGLT2阻害薬を継続するのが原則。性器感染症(真菌感染症)は通常は1回のアゾール系抗菌薬で通常治癒するらしいので、重症な Fournier壊疽などの重症例以外ではSGLT2阻害薬は継続するのが原則。eGFRの低下(initial dip)も30%以上のeGFRの低下が認められた場合でも、SGLT2阻害薬の中止を考える前に脱水・利尿薬過量・RAS阻害薬、MRAなど可逆要因を評価し是正するのが原則。
ただし、糖尿病性ケトアシドーシスはかなり重症なので、必ず中止して改善するまで再開しない。再開するときには「悪心・嘔吐・腹痛・倦怠、呼吸促進が起これば速やかに来院すること(シックデイ対策)、SGLT2阻害薬服用時には厳格な糖質制限はしない、こまめな飲水を心掛けること」を指導しましょう。
今回、多くの論文を読んで気づいたことは、SGLT2阻害薬やフィネレノンに関しては一時的に薬代が高くなるよりも将来の重症化による入院治療費が安くなり、止めるよりも得られるベネフィットのほうがはるかに大きい。すなわち「SGLT2阻害薬の心腎保護、さらに様々な細胞内での代謝改善作用の利益も大きい。だから中止することによる不利益を避けるためには安易な中止は避ける!」ってことだ。




7月16日(木)開催の、「抗菌薬適正使用の理論と実践 実践編」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.セフトリアキソンのことで質問です。
7月16日(木)開催の、「抗菌薬適正使用の理論と実践 実践編」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。
%T> MICを考えるうえで、投与回数だけでなくて投与時間も関係している事は全然気がつけていなかったのでとても助かりました。今後とても活かせそうです。
よく理解できない点も毎回繰り返し説明をお聞きすることで、実践にも活用できるようにと、参加させていただいております。
抗菌薬の使い方を理論に基づき教えて頂き、理解が深まりました。今まで疑問に思っていた事が腑に落ちました。ありがとうございました。
いつも勉強させて頂いております。今回も現場で役立つ内容だと思っておりますが、途中からの参加となったため、オンデマンドでしっかり学習させて頂きます。
抗菌薬の使い方を初歩から勉強中なので、とても勉強になりました。培養結果からの考え方をもっと学びたいです。
少し難しく感じました。ありがとうございます。
PK-PD理論の活用術の例や、症例での抗生剤選択例、投与量設計のお話をもっと聞きたかったです。AUC、MICのところは日々の業務考えることがないので今回の講義でグラフをみたりするのが新鮮でした。
腎機能評価に何を使ってる?標準化eGFR(mL/min/1.73m2)はCKDの診断指標(重症度分類)に用いる。個別化eGFR(mL/min)は薬物投与設計に用いる。この「個別化」は海外では非指数化eGFRと呼ばれ、日本でも正式には体表面積未補正eGFRと言われているが、短く分かりやすくするため僕が勝手につけた名称が広がっただけのこと。じゃあなんでこのような使い分けがされるのかについて解説しよう。
ミラノ冬季オリンピックで日本が金メダルを獲得したフィギュアスケートのペアは男女の体格差が大きいほど、ダイナミックな演技ができるので有利なため、女子選手は小柄な選手が多いよね。これは女子体操選手にも共通していて小柄な選手のほうがジャンプしたり回転するのに有利らしい。小柄な人の生理機能は当然小さいので、腎機能も低い。例えば120kgのレスラーや相撲力士に比べて40kgの女性は、腎機能だけでなく心機能も呼吸機能も低くても健康でいられるし、薬の用量も体重が3倍も違うので少なくしないといけない。だから身長も体重も考慮された個別化eGFR(mL/min)は薬物投与設計に用いる。ではなぜ腎機能の診断指標には身長・体重を含まない標準化(体表面積補正)eGFR(mL/min/1.73m2)を用いる理由は、素のままの腎機能だと小柄な人は健康であってもCKDという病気にみなされやすくなり、大柄な人は実は体格に見合った腎機能よりも低くなっていてもCKDという病気に診断されにくいから標準化したものを使うんだ。
ところが、薬の腎機能別投与量を決めるのに、添付文書に記載されている腎機能表記は薬によって違うよね。米国では1998年以降、CG式のみが推奨されていたため、添付文書の腎異能表記はCCrのみだったが、Jaffe法によるクレアチニン測定法のため、正確ではないがGFRに近似しており都合がよかった。薬用量を決める臨床治験は主に米国で実施されていたため人種差も考慮した国際的なブリッジング試験を行うためには血清クレアチニン値の国際間での測定法の違いが問題になった。そのため2011年以降に従来のクレアチニン測定法をJaffe法から採用されたIDMSトレーサブルに変更した。それと同時にCG式による推算CCrの使用を推奨しないことにし、従来のCCrは標準化eGFR(mL/min/1.73m2)に読み替えることを推奨した。
一方、欧州EMAは薬用量決定には個別eGFR(mL/min)を提案したのに、米国での添付文書の腎機能表記に標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を提案したのは米国FDAの大きなミスだと平田は思っている。これによってその後の添付文書の腎機能表記が多様化されて日本の薬剤師・医師もどうやって腎機能を評価するのか混乱してしまった。もう1つの問題はIDMSトレーサブルになった2011年以降、米国ではFDAが肥満や浮腫の影響を受けるCG式の使用を推奨しなかったにも関わらず、米国薬剤師は臨床現場で薬物投与設計に用いる腎機能判定にCG 式による推算CCrを主に使用していたことだ。CG式は体重入力(米国は肥満大国)や測定法(Jaffe法など)の影響で系統誤差が大きく、IDMSトレーサブルと整合性が低いからこれからの新薬の添付文書からは消えてゆくはずだ。
ようやく2020年に米国FDAと全米腎臓財団(NKF)ワークグループで新指針が合意し、推算CCrの撤廃、人種差なしへのCKD-EPI2021式への移行と、診断指標に用いられる標準化eGFR(mL/min/1.73m2)ではなく、薬物投与設計には個別化eGFR(mL/min)を使うことを明確化した。これによって今後の新規添付文書では標準化eGFR(mL/min/1.73m2)は消え、個別化eGFR(mL/min)の採用が加速する見込みだ。
FDAの決断によって今後、添付文書表記が統一化され、腎機能評価誤りによる中毒性副作用が少なくなればいいのだが…。



