【10位】キクタンメディカル 6 薬剤編

高橋 玲著 単行本 ¥3,080 

 コルヒチンって英語ではコルチシンって発音しないと通じないって知っていました?だってつづりはcolchicineですから。コルヒチンってドイツ語読みだったんだってということが自然にわかります。これがあると国際学会の英語、日本の学会での外人講師の講演も分かりやすくなる。そして海外の専門家とディスカッションできます。

 キクタンメディカルはこのほかにも1.人体の構造編、2.症候と疾患編、3.診療と臨床検査編、4.保険医療編、5.看護とケア編があり、すべて音声DL付きなので通勤時間にスマホで聞くことができます。そして医学用語、薬学用語、医薬品名などが身に着いたら、海外で実際に薬局に行って薬剤師に会うと様々な情報を得ることができます。タイではトラマドールや抗菌薬、グラニセトロンなど、ほとんどなんでも薬局で入手できるので、薬剤師のレベルが驚くほど高いです。ただしオンライン英会話の講師陣が口をそろえて「タイ人の英語の発音はひどい」と言っていましたが、僕が実際に出会ったタイの薬剤師はみんな素晴らしい発音をしていましたし、薬についても日本人薬剤師と比べても非常にレベルの高い情報を持っていました。

 ただしこんな本は実際には要らないかもしれません。英語版のYoutubeで最新の医学情報を聞けば、発音は身に着きますし、日本でのWeb講演会よりも素晴らしい内容のものに出会えますから。これは日本語文献にもえいることで、英語文献を読みこなすことができれなければ、単純に考えても2%足らず(日本の人口/世界の人口=1.2億/79億)の情報しか入ってこないことになります。だから英語論文を読みましょう。そして海外の医療従事者と、積極的に会話できるようになりましょう。


 

【9位】夢をかなえるゾウ1

水野敬也 著 単行本 ¥1,595

 インドの神様ガネーシャが「夢をなくした平凡な会社員」に成功に導く人生の秘訣を教えるというもので、内容的には他のビジネス書と大差がないのですが、なぜかガネーシャという、関西弁で見た目はゾウの「いい加減なおっさん」が「何より大事なのは、『実行すること』。実行に移した人は必ず成功出来る。理想の自分になれる。」と言うと、妙に説得力があります。自分を変えようとしたら、自分に興味があって誰かの役に立つための、そして正しいと思っていることのために一歩踏み出すこと、そして継続することだ。止まっていれば変わることなく追い抜かれるだけだから。

 講演会や学会の時に医師は分からないことは「恥ずかしい」と考えずに積極的に質問してきます。薬剤師ってなんで講演後のディスカッションに参加しようとしないのでしょうか、講演が終わってから列を作って個人的に質問しに来るんでしょうか?そしてWeb講演会でもライブ感のあるディスカッションが見どころなのに、チャットでしか質問しないのでしょうか?これらは一例ですが、今の薬剤師には覇気がないです!だから、この本を「引っ込み思案な薬剤師」にこそ読んでもらいたいと思っています!

 

 

 

 1月4日の講演『透析患者の薬①~基礎編 病態と薬物療法~』はひどい出来でした。大変申し訳ありませんでした。1回目の「薬剤師とは?」もかなり時間が押して、ひどい内容でしたが、今回も準備不足がたたり、詰め込みすぎて無駄な話題も多かったため論点が絞れなかったと反省しています。

 アンケートで「18時開始が早すぎる」という意見が多くみられました。次回は日時が決まっておりますので、変更できませんが、次々回からは18:30開始または土曜日の13時開始というオプションを提案したいと思います。皆様のご意見によって3月から開始日時の変更を考えてみたいと思います。

 また、スライド資料を配布してほしいという方が多いのですが、これは勘弁してください。1つの理由は以前、皆さんの理解向上のため、講演会で事前にPDFを配布していたのですが、平田オリジナルの図表を無断盗用する方が少なからずいます。学会で明らかに平田が作ったスライドのPDFから切り取ってそのまま盗用する人、雑誌社などから依頼された総説論文で、そのまま盗用する人、少しだけ修飾して盗用する人が後を絶ちません。このブログで公開した図を改変して使用する場合も、せめて引用論文くらいには入れてほしいと思います。とはいえ、私自身は薬剤師塾で使っている写真や図表はできるだけ、iStockなどから購入しているのですが、NETで拾ってきた写真や図表やイラストを薬剤師塾で使わざるを得ないこともあるのですから、文句は言えたものではないのですが、引用先は記載するようにしています。近年、このようなNETで拾ってきた写真や図表を配布することも問題になってきておりますことをご理解していただければと思います。


透析患者の薬①~基礎編 病態と薬物療法~に関するQ&A

Q.今回の内容とはかけ離れていますが、リコモジュリンは重篤な腎機能障害で減量との記載があります。目安にする投与量をご教授いただければ幸いです。

A.リコモジュリンの添付文書によると常用量は「1日1回380U/kgを約30分かけて点滴静注する。重篤な腎機能障害のある患者には、患者の症状に応じ、適宜130U/kgに減量して投与すること」となっています。

この根拠として添付文書では尿中未変化体排泄率73.6%と高いための減量基準だと思いますが、Hayakawaら1)は組換えヒト可溶性トロンボモジュリン(ART-123)を腎機能正常者から末期腎不全まで腎機能の異なる患者に380U/kgを投与しても血清ART-123濃度は末期腎不全でも腎機能正常者でも差がなく(右図)、忍容性も高かったことを報告しています。

その結果の表(下の表)から腎機能正常者に常用量を投与した際の24時間の尿中未変化体排泄率は13.7%となっています。ただし半減期が16.2時間なので、この値はやや過小評価になりますが、添付文書の尿中未変化体排泄率73.6%は明らかに高すぎます。MW52,124Daと高いので、糸球体基底膜を70%以上もすり抜けられないのでは?という疑問も生じます。おそらくART-123だけではなく、そのフラグメントのペプチドも一緒に測定していたためではないかと考えられます。悩ましいのはこのような報告が出ても、日本の添付文書は変わらないことです。長くなりましたが、答えは「リコモジュリンは腎機能低下患者でも減量する必要なく1日1回380IU/kg, 30分点滴で構わない」です。

日本腎臓病薬物療法学会の出版している日腎薬誌の特別号、いわゆるグリーンブックはこれらのことがすでに記載されています。このグリーンブックは2年に1回の改訂で、今年の春に発行されますが、学会会員はこれとポケットブック(現行版3,960円)が無料で郵送されますので、学会の会計年度の9月1日以前、つまり8月までに入会されれば、大変お得です。

1)Hayaawa M, et al: Thromb Haemoast 117: 851-859, 2017


Q.CRRTの用量について質問に答えていただき、ありがとうございました。各国のCRRTによるクリアランスと薬用量で比例計算などで参考量を求められればと思い、質問させていただいたのですが難しいのですね。また、改めて勉強していこうと思います。勉強不足で見当違いな質問をしてしまったかもしれませんが、少しずつでも成長していければと思います。これからも、よろしくお願いします。

A.CRRTとは持続的腎代替療法、日本ではCHDFのことですね。皆さんも悩んでいる問題だと思いますが、ただ1人、質問していただき、心より感謝申し上げます。僕が目指している薬剤師塾は一方向性の講演会ではなく、「塾」ですから、本当にわからないことをぶつけてほしいし、それをみんなで話し合うような熱い討論ができれば理想的だと思っています。前々回の薬剤師塾「初めての学会発表から博士号取得までの道」で、言わせていただきましたように(スライド)、講演会を視聴するとき「1受講者であっても講演会は演者との戦いの場と思え」、僕は40歳以降、臨床薬剤師としてはとても遅いスタートでしたが、こんな心がけで講演会に臨むことによって速やかに実力をつけることができました。「薬剤師塾」も学会も、勉強会も講師だけじゃない、皆さんと一緒に創るもの、「講師がつまらなかったら、ディスカッションで盛り上げてやる」くらいの気持ちをもっていただきたいと思っています。


Q.糖尿病患者さんへの服薬指導に悩みます。自覚症状はないし、薬飲んでいるからと、食改善しない。透析になると、辛いんですよとつい言ってしまいたくなります。どのように指導したら良いでしょうか?透析前の方が食事制限がキツいとは、驚きでした。

A.透析導入前には様々な電解質異常、尿毒素の蓄積による尿毒症症状が現れやすくなるため、食事制限は非常に厳しいです。透析導入すると電解質異常、尿毒症症状は透析によって是正されて、軽減しますので、食事制限ははるかに楽になります。リン制限はたんぱく制限につながりますので、栄養状態の悪不良な高齢透析患者に強いるのは栄養不良で予後を悪化させるだけでなく「生きる楽しみも奪う」ことになります。

保存期に「疲れやすくて何もしたくない、食欲もない」という方が透析導入後に「頭がしゃきっとして倦怠感がなくなって、すごく元気になった。こんなことなら早く透析していたらよかった」という声を何度も聞いたことがあります。若年の慢性腎炎の方ではこのような方がほとんどですが、糖尿病で高齢者の方ではこのような目覚ましい改善が得られるとは限らないのが現実です。でも患者様の希望を失わせるような服薬指導をしていると「透析なんてしたくない、透析するくらいなら死んだ方がましだ」という辛い患者様を増やしてしまいます。

透析導入だけではありません。早期のCKD患者様には「CKDが進行すると心筋梗塞や脳卒中で突然死する危険性が高いです。低下した腎機能は元にもどらず、低下すれば早死にします。厳しい塩分・蛋白制限をしなくては・・・

腎機能が悪くなると一生、透析を続けなければなりません。」なんて間違いではありませんが、患者様を暗くして生きる喜びを奪ってしまう服薬指導です。

僕は「軽度の蛋白尿が早期発見できてよかったですね。これからの治療、頑張りましょう!」とかARBなど(今だったらSGLT2阻害薬も)が投与されたら「この錠剤を1日1錠飲のむだけで蛋白尿を少なくして、腎臓が悪くなるのを防げます。しかも心筋梗塞や脳卒中になるのも防いでくれます。月に1回必ず受診すれば一病息災でかえって長生きできるかもしれませんね」という明るい服薬指導を心がけていました。


Q.CHDFの場合、濾液流量が日本の速度より早い場合、それに合わせて腎機能を考え、尿量を足して考えれば良いんでしょうか?

A.サブラッドを置換液+透析液として使用したCHDFの場合、ほぼ血清濃度と同じ廃液が得られます。だからCHDF自体のクレアチニンのクリアランス(CCr)は濾液量(廃液量)と等しくなります。20L/日の廃液が得られたとするなら、CCr 20L/日=13.9mL/minになります。患者様の腎機能が実測CCrで30mL/minであれば(若干血清Cr値がCHDFで低めになりますが、そこは大目に見ても問題ありません)、この患者さんに腎排泄性の薬物を投与する場合、30mL/min+13.9mL/minで43.9mL/minの患者様の投与量を投与すればよいことになります。

海外のCRRTはサブラッドの代わりに透析液を浄化して大量置換をしていますので、これらの報告は参考にしない方がいいです(スライド)。


Q.HDFはHDに比べ、実際どのくらい行われてるのでしょうか?質問意図がずれたら申し訳ありません。

A.いえいえ、非常に良い質問です!HDFは2016年のオンラインHDFの保険適応とともに患者数が伸びています。2020年末の調査によると全透析患者34.8万人に対し、16万人近くがHDF患者です(2015年は44,527人なので5年間で3倍以上です!)。そのうち11.1万人がオンラインHDFをやっています。オンラインHDFではサブラッドを使わず、浄化した透析液を大量に使って大量の濾過を行いますので、大きい分子量のものが除去されやすく、痒みやイライラが、不眠など様々な尿毒症症状が消失し、様々な合併症が改善しやすいといわれていますので、患者数が増えているのはうなづけます。


Q.透析導入前は必ずクレメジンを使用されているのでしょうか

A.必ずしも処方されていません。クレメジンについてはCAP-KD試験というRAS阻害薬服用のSCr<5mg/dLの460人を対象に56週間のRCTの結果が2009年に報告されました。エンドポイントは透析導入、腎移植、死亡、SCrの2倍化またはSCr6mg/dL到達としましたが、1次エンドポイントで差が認められませんでした1)。この結果からクレメジンの処方率は上がっていないと思われます。クレメジンカプセルというのみにくい製剤を使用したため、アドヒアランス不良があったのかもしれませんが、クレメジン群はeGFRの低下率を有意に遅延したという結果も得られています。

1)Akizawa T, et al: Am J Kidney Dis 54: 459-467, 2009


Q.透析患者でカルニチンが欠乏した場合に、食物からの摂取には限界があり、カルニチン補充療法になるかと思いますが、カルニチンの投与期間の目安はあるでしょうか?ご教授いただくと幸いです。

A.カルニチンは羊肉、乳製品などの動物性食品に多く含まれます。確かにわが国の透析患者さんは平均年齢約70歳と高齢化は著明で肉をたくさん食べられないでしょうから、欠乏すれば補充する必要があると思います。カルニチンは長鎖脂肪アシル補酵素A(CoA)エステルを筋細胞のミトコンドリアに輸送するために必要で、欠乏すると低血糖、筋壊死・ミオグロビン尿・脂質蓄積性ミオパチー、筋肉痛、脂肪肝、心筋症を伴う高アンモニア血症を引き起こすことがあり、透析患者ではESA抵抗性貧血などの原因になるとされています。投与期間の目安については分かりかねますが上記の症状がないのに、漫然と投与を継続すべきではありません。アシルカルニチン/遊離カルニチン比(AC/FC)が正常では≦0.25ですが、>0.4 の場合は二次性カルニチン欠乏症として投与継続の判断としてもよいかもしれません。

薬剤のエルカルチンFF錠の吸収率は11.2-16.3%ですが、食物として摂取すると75%と高いです。ということはエルカルチン錠の80%以上は腸を通って糞便中に排泄されるか、心血管病変を悪化させる尿毒素のトリメチルアミンN-オキサイドの原料になる可能性がありますので(◆連載◆腸腎連関gut-kidney axis~腎機能を悪化させる尿毒素Ureic toxinの蓄積には腸内細菌が関わっている~ 第11回図12参照)、できれば食物から摂取することが望ましいのですが、十分な摂取ができない場合には「1回300mg錠を1日2回などの低用量から投与を開始する」よりも「エルカルチンFF静注を週3回HD後に1回10~20mg/kgを静脈側透析回路に注入する」方法の方が尿毒素を増やさないためにはよいのではないかと思っています。


Q.今日の講演でCHDF患者さんのCCrは13.9+その患者さん自身のCCr。寝たきりの場合は蓄尿した尿バッグから測れますが、寝たきりでない人も蓄尿して測ったほうがいいですか?

A.CHDFは1日中ベッドで施行されますので、寝たきりになります。寝たきりでないCHDF患者はいません。寝たきりになると個人差があり1日1-4%、筋肉量が減少し1)、平均67歳では10日間で20%減少する2)と報告されていますし、ICU患者では1週間に20%程度の筋肉が減少し、特に人工呼吸器を装着するとさらに呼吸筋が著明に減少します3)。同様にICUに入っているCHDF患者は日に日に筋肉量が減少しますので、腎機能の過大評価が問題となります。

逆に特に若年のICU患者では輸液や血管作動薬の投与などの影響によってARC(過大腎クリアランス)になることもあり4)本当に腎機能が非常に高いこともありますので、蓄尿して実測CCrを測定することは、腎排泄性ハイリスク薬を投与するときの腎機能評価では非常に重要と思われます。

寝たきりでない人の畜尿は病院のトイレ(畜尿室)で患者名の書かれた畜尿容器に尿を貯めて測ります。入院患者ではよほど認知症の進行した方でない限り、蓄尿忘れはないと思います。

1)Müller EA : Arch Phys Med Rehabil 51 : 449-462, 1970
2)Kortebein P, et al:. JAMA  297 : 1772-1774, 2007
3) Liano-Diez M, et al Crit Care 2012; 16: R209
4) Udy AA, et al: Clin Pharmacokinet 49: 1-16, 2010


また講演依頼に関しましては平田のメールアドレスhirata@kumamoto-u.ac.jpまでお気軽にご連絡ください。

 

 

『SGLT2阻害薬』のテキスト(PDF)ダウンロードができます。

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 第10回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年2月1日(火)18時~20時まで の申し込みを始めます。今回のテーマは前回の続編で「透析患者の薬~応用編 合併症と薬物療法~」です。

 透析患者は高リン血症、二次性副甲状腺機能亢進症、腎性貧血、高カリウム血症、アシドーシス、尿毒症と腸内細菌叢の変化・腸腎連関、高血圧、低血圧、腸管穿孔と便秘といった多彩な合併症の問題を抱えています。今回は透析患者の病態とそれに対して用いられる薬物療法の基本について解説します。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾への参加者はどなたでも構いませんが、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書き、海外の学会で発表し、英語論文をまとめて博士号を取るんだというような大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

 2021年12月22日、20時より2時間、株式会社ネクスウェイの主催するアスヤクLIFE研修会に783名登録していただき、多くの参加者の方々から質問をいただきました。これらの質問及び回答を、司会進行していただいた株式会社バンブーの松村歩美様からご承諾いただき「平田の薬剤師塾」の画面上で回答させていただきます。

 2022年以降の「基礎から学ぶ薬剤師塾」でも、参加者の皆様からこのような質問を受け付け、参加された皆様のご意見や感想、ご要望などをお伺いしたいと思っています。

 また株式会社バンブーの松村歩美様は「薬剤師カモ―ンTV」というYoutube番組に出演されており、保険薬局の方にはとっても役立つ内容のテーマに取り組んでいます。内容も堅苦しくなく、明るく楽しい進行をしていますので、よろしかったらご覧ください。平田もさっそく登録させていただきました。


12月22日、アスヤクLIFE研修会の質問内容とその回答

Q.高齢者向けの服薬に関するガイドラインがあると伺ったことがあるのですが(お恥ずかしい話ですが、不勉強でまだ確認までできていません‥)、そういったものに、減薬の目安等は記載があるのでしょうか?

A.「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」はありますが、これは減量の目安などについては記載されていないと思います。高齢者だから減量するのではなく、腎機能が低いから減量、体重減少が著しいから減量ということを意識しましょう。日本腎臓病薬物療法学会は腎機能別薬剤投与量一覧を随時作成、じほう社がそのポケットブックを2年に1回改訂出版しています。この学会に2022年8月末までに入会すると新しいポケットブック(現在3,960円)が無料で配布されますので、会員になるとお得です。


Q.輸入細動脈を拡張するCa拮抗薬を服薬することで、改善することはあるのでしょうか?

A.講演で触れましたが、Ca拮抗薬は臓器血流を改善しますので、通常は糸球体内圧がやや上がり、蛋白尿がやや増えるのが難点です。アテレックのようなL型以外のCaチャネルを阻害するものは輸出細動脈を拡張するので素晴らしいい薬理作用のように見えますが、実はエビデンスレベルの高い論文はありません。


Q.外来の看護ステーションや調剤薬局と協働で、主治医に相談・提案し、週1~2回程度の細胞外液補充液の点滴などが実施できるようには、ならないのでしょうか…?

A.腎臓が機能して、ちゃんと食事がとれていれば、定期的な点滴をする必要はありません。腎臓が余分なものだけを排泄して必要なものはすべて再吸収してくれますから、輸液なんてしなくても、水やお茶、時にみそ汁など、水分を摂取して食事を摂ってくれていれば、腎臓が最終的な帳尻(不要なものをすべて尿中に捨て、必要なものは尿細管で再吸収する)を合わせてくれますから、全く問題ありません。腎機能が悪くなると余分な水や塩を排泄できなくなりますので、定期的な輸液はかえって害になりますね。よい高齢者施設では10時、3時など定期的にお茶を配りますが、これは脱水を防ぐよい方法だと思います。ただし脱水時の輸液は素晴らしい効果を示します。


Q.Triple warmmy における利尿剤はサイアザイド系も含めて考えて宜しいんでしたっけ?

A.通常はサイアザイド系利尿薬が主です。講演では超高齢者の心不全のことなどについて言及したので、心不全の肺水腫による呼吸困難を改善する薬としてループ利尿薬を挙げさせてもらいました。


Q.VD製剤中で最も腎機能に影響が少ないものは何でしょうか?

A.いわゆる活性型ビタミンDの作用は強力なため、高カルシウム血症を起こしやすいので、すべて危ないです。尋常性乾癬に対して全身塗布されるオキサロール軟膏などの活性型ビタミンD軟膏も全身吸収されて、のみ薬よりも血中濃度が高くなりますので、腎機能が低下している方には非常に危ない薬です。活性型でないnativeなビタミンDはあまり怖くありませんが、Ca剤との併用は気を付けるべきです。


Q.摂取した水分が尿として排出されるまでのラグはどれくらいありますか?

A.よく分かりません。腎機能によると思います。高齢者の私でも30~60分で尿意を催しますから、若年者ではもっと早いかも?


Q.RAS阻害薬には用量依存的にCREをあげてしまうなどのデメリットもあると思いますが腎保護作用もありCKDに低用量で処方されている印象があります。どのような症状・検査値があれば減量・中止の提案をするとよいでしょうか。

A.今までは「eGFRが30%低下したら、あるいは血清カリウム値が5.5mEq/L以上になれば減薬か中止」と言われていました。しかしRAS阻害薬服用後の血清Cr値の上昇はガイドラインが治療の中止を推奨していた30%未満の場合も、累進的に心・腎疾患発症リスクを上昇させることが2017年のSchdmitらの報告()により明らかになりました。特に末期腎不全(透析導入)・全死亡リスクで顕著でした。これ以降は基準を示していません。安全な基準を示されないくらい要注意な薬になったということです。蛋白尿陽性患者以外の高齢者には腎機能悪化の恐れがありますので、CCBの方が無難です。用量依存性はあまりないような気がします。


Q.疑義照会しても医師が個別eGFRを計算しない、個別eGFRを知らないケースが多々あります。医師のなかの個別eGFRの知名度はどのようになっていますか?

A.血清Cr値ではわかりにくいからeGFRを使おうということが書かれてあった「CKD診療ガイド2012」は開業医も含めて、ほぼすべての医師に配布されたと聞いております。ですから医師はすべてeGFRを知っていなくちゃいけないと思います。でも勉強していない人は医師だけじゃなくてどの世界にもいますよね。


Q.腎機能低下時の夜間頻尿に関して、腎機能低下に気が付かずに対症療法で頻尿改善薬が出されているのではないかと思います。水分摂取を積極的にすることで薬剤追加は回避可能なのでしょうか?

A.頻尿改善薬を腎機能低下時の夜間頻尿に投与する是非については、よくわかりません。ごめんなさい。
夜間頻尿があれば基本的には水分励行はすべきではありません。夏季の脱水が著明な場合でtriple whammyの一部の薬物が投与されていれば、飲水励行すべきですが、飲水してもらえない理由として、高齢者の腎機能低下に伴う夜間頻尿があることを理解していただきたいと思ってお話ししました。


Q.triple whammy初めて聞いたのでとても勉強になります。RAS-i、NSAIDs、利尿剤心不全+IHD患者の内服薬を思い浮かべました。

①アスピリンもNSAIDsに含まれると言う認識でいいでしょうか?

A.いいです。ただし低用量アスピリンは抗血小板薬として心血管病変に有効なところが通常のNSAIDsとは異なります。他のNSAIDsは血圧を上げ、心不全リスクを高め、心血管病変を悪化させる要因になります。

②水分摂取の推奨をされていましたが、心不全患者に水分摂取の推奨は怖いように思いました。その辺りはどのようにお考えですか?

A.これは講演で説明しました。ループ利尿薬を服用している心不全患者には基本的に飲水励行をしてはいけません。ただしループ利尿薬による脱水でたとえば「体重が1日で1kg減っていれば水を飲んでもよい」「2kg減っていれば、利尿薬をやめて水を飲んでもよい」などと説明してくれる、あるいは夏場はループ利尿薬を減量してくれる優れた循環器医はいらっしゃいます。このような指導を薬剤師にもさせていただけるよう処方医との話し合いの場を持てるといいと思います。


Q.このデータはCBDCAカルボプラチンの投与量で、顕著にリスクになると思いました。(長期臥床患者の腎機能は過大評価されているスライドより)

A.カルボプラチンは腎排泄型のハイリスク薬だから確かにその通りです。悪液質(カヘキシア)でやつれたがん患者さんは筋肉量が減っているため、eGFRが過剰値に推算されますので、血清Cr値に0.2を加えてJaffe法で測定した血清Cr値に読み替えて推算CCr値を算出し、その値をカルバート式のGFRの代わりに代入する方法をとると腎機能の予測精度が高くなります。不明な方は「平田の薬剤師塾」◆連載◆腎機能評価の10の鉄則 4日目を参照するか、FAQ 副作用を防ぐために知っておきたい腎機能の正しい把握法(平田純生) | 2017年 | 記事一覧 | 医学界新聞 | 医学書院 (igaku-shoin.co.jp)を参照ください。


Q.特にこの高齢社会で、シスタチンCが腎機能評価のゴールドスタンダードにならないのは何故でしょう?

A.ゴールドスタンダードはイヌリンクリアランス!これは鉄則です。イヌリンは糸球体で100%濾過され、尿細管で再吸収も分泌もされないので正確無比で、何にも変えようがありません。シスタチンCは簡便で筋肉量に依存しないだけで問題はいろいろとあります。


Q.病院勤務時代、高齢者でScr低値の患者では0.6補正をしてCcr計算をしておりました。この補正はどれくらい有効な指標になるでしょうか。

A.0.6補正は安全性のために行うもの。「効かなくなっても仕方ない」ということを覚悟してからやってください。僕はeGFRでは過大評価するから、ハイリスク薬投与時にはやったことはありますが、推算CCrでは患者さんの病態も考え合わせて、少し考えます。特に抗菌薬の過小投与によって亡くなったりしたら、後悔してもしきれませんので。


Q.知識不足のため教えていただきたいのですが、元々若い時からARBを飲んでいた場合、高齢になったらCa拮抗に変えた方がよいのでしょうか?
若い頃は腎機能下がってきていたらCCBは要注意と言われていたので・・・

A.「75歳以上ではCCBを推奨する」とCKD診療ガイドライン2018に書いています。だからと言って75歳まではARBを投与して、「75歳の誕生日になったらCCBにしましょう」というデジタル薬剤師にならないでください。患者さんは1人1人が違います、患者さんの病態に合わせた最高の薬物療法を提供できる優れた薬剤師を目指してください。


Q.結局CCBとRASの使い分けはどう判断するかもう一度教えて下さい。

A.CCBは臓器充血をもたらす血管拡張薬(初回投与時に顔面紅潮や頭痛があります。エベレストの登山隊は凍傷を防ぐためにアダラートを飲んだという話もあります)、RAS阻害薬は腎虚血をきたす血管拡張薬と考えると分かりやすいかも。


Q.膠原病があり、5年蛋白尿があります。低血圧です。先生からヒドロキンクロロキンをすすめられますが、どう思われますか?

A.ごめんなさい。蛋白尿の抑制だったら分かりますが、膠原病にヒドロキンクロロキンを投与すべきかどうかについては僕の専門外ですのでわかりません。


Q.透析患者は高度腎機能障害と捉えるべきでしょうか? 透析によって薬がクリアされるので腎機能は考慮不要とする考えもあるようですが…。

A.eGFR<30未満を高度腎障害、eGFR<15mL/min/1.73m2未満を末期腎不全と言います。透析患者は末期腎不全に含まれますが、透析自体が虚血操作なので5年後には全員が無尿になり腎機能がゼロになります。透析によって全く抜けない薬はすべての薬のうち6~7割以上を占めます。蛋白結合率が90%以上の薬、分布容積が2L/kg以上の薬、分子量が数万の薬などです。だから透析でクリアされる薬の方がうんと少ないですし、そのクリアされる程度は末期腎不全患者の腎臓の機能と同レベルであり、健常者とは全く異なります。透析患者は腎排泄性薬物が最も蓄積して中毒性副作用が非常に起こりやすい状態にあると思ってください。


Q.水を飲み過ぎて腎うっ血を悪化させることはありませんか?

A.その通りです。講演でも述べましたがループ利尿薬が投与されているような心不全に伴う腎うっ血などで飲水励行はしてはいけません。


Q.利尿剤服用中の高齢者の癌性疼痛で使用するNSAIDsは可能な限りアセトアミノフェンにするか、オピオイドだけでコントロールしていくべきでしょうか?

A.患者さんによって異なります。米国ではアセトアミノフェンとオピオイドのみで疼痛管理していました。僕を指導してくれた指導薬剤師はアセトアミノフェン625mg錠を頓服で1日6回分まで服用可という処方をして、がん患者が0~2錠しか服用していなかったら疼痛コントロールできていると考え、4~6錠まで増えれば、疼痛緩和不十分として麻薬の増量を進言していました。日本ではトラマドール、トラムセットなども含んでいいと思います。


Q.CKD患者でリスク低下の理由は何でしょうか?

A.CKDでリスク低下は喜ばしいことですが、リスク低下があっても腎機能は加齢とともに悪化する一方ですので、悪化速度を緩める治療法しかありません。その中で最も注目されているのがSGLT2阻害薬です。糖尿病ではGLP-1作動薬も期待されていますが、食欲不振によって体重減少するのが悩ましいです。


Q.平田先生、今回も素晴らしい講演をありがとうございます。SCrの検査値、海外ではJaffe法、日本では酵素法で検査してるので、添付文書のCCrによる投与量を確認するのに0.2を加えて補正するって考え方があったと思いますが、現在もこの考え方は有効でしょうか?

A.ありがとうございます。有効ですが、手間のかかる方法ですのですべての薬に適応するのではなく、カルボプラチンなどのハイリスク薬だけで十分だと思います。


Q.術後疼痛に短期使用されるNSAIDsはどの程度の腎機能まで許容されると考えていいのでしょうか?

A.わかりません。患者さんの病態によると思います。個人的には若くて腎臓病のない人ではあまり気にする必要はないと思いますが、弱った高齢者ではあまり使ってほしくないです。


Q.実際に医師へSGLT2への変更などを処方提案していくにあたって、どのような患者さんに優先順位をつけていくべきなのかなと気になります(先ほどの結果ではnon-DMの人や腎機能が良い人の方が改善効果がありそうですが、病態考えるとそうでないですよね)

A.栄養状態の悪い人は避けてもらわねば栄養状態悪化で予後不良になります。
non-DMのほうがよかったという言い方は実はよくありません。だってnon-DMの方がDMと比較して有意に効いたというデータじゃないですから。これは僕の言いすぎですが、ハザード比がより小さかったからそのような表現をしてしまいます。腎機能の良い人の方が効くのはこの薬は尿細管に作用するのだから当然です。CKDの適応を取得したダパグリフロジンではCKDの診断指標のヒートマップでオレンジまたは赤の方で末期腎不全(おそらく効かない)を除いた方が投与対象になります()。


Q.ケトアシドーシスに近づく印象ですが、ケトーシスは総合して予後改善と理解して良いのでしょうか?

A.それはYurista先生の意見()を引用しただけです。僕自身は非糖尿病のケトーシスはデメリットではないと思いますが糖尿病で、厳格な糖質制限をやったり食事がとれなくなるとケトアシドーシスが起こる可能性がありますので、糖尿病患者にSGLT2阻害薬が投与されたときには「厳格な糖質制限をやらないよう」指導する必要があると思います。ケトアシドーシスは死亡することもよくある非常に怖い副作用です。


Q.SGLT2阻害薬を導入時にeGFRが少し下がる現象は、eGFRがどのくらいの数値まで許容されますか?eGFRが20なら導入は怖いと思います。

A.ダパグリフロジンに関してはeGFRが20mL/min/1.73m2でSGLT2阻害薬を導入してはいけません。尿細管に作用する薬ですから末期腎不全には使えませんが25mL/min/1.73m2以上あれば開始することができ、末期の15mL/min/1.73m2未満になれば使えなくなると理解してください。この場合もくれぐれも医師に「15mL/min/1.73m2未満になりましたので中止してください」というようなデジタル薬剤師(ワンポイントの値だけで判断する人のことを僕はデジタル薬剤師といって未熟だと思っています。患者様の病態の変化は1ポイントではなく線でとらえる必要があります)にならないでください。Sugiyamaら1)の報告によるとSGLT2阻害薬を投与後、eGFRが20%以上低下しても、その後の腎保護作用が認められたとされていますが、このような症例は十分、注意を払う必要があると思います。

1)Sugiyama S, et al: J Clin Med Res 12: 724-733, 2020


Q.SGLT2阻害薬を服用されている患者さんで、尿路感染症や膀胱炎と診断されて抗生剤を処方されている患者さんが、結構な数いらっしゃるのですが、患者さんは排尿に違和感を感じて診断を受けているものの、実際は性器感染という方もいらっしゃるのではと感じました。

A.症状だけ聞いて抗生剤を処方してもカンジダ膣炎や陰茎カンジダ症には無効ですから、性器感染症または膀胱炎が疑われた場合には早期に婦人科、泌尿器科医に診ていただき、抗真菌薬(細菌性の場合は抗菌薬)を適正に投与していただく必要があります。

 

 

SGLT2阻害薬による心腎保護作用と急性腎障害抑制作用~ケトン体って何よ?~
9日目(最終回)
SGLT2阻害薬の腎保護作用・心保護作用のまとめ

  この辺でSGLT2阻害薬の心保護・腎保護作用における多面的な作用についてまとめてみましょう。これまでに解説しきれていなかった初見のものも含まれます。

1.尿中に高濃度のブドウ糖を排泄する作用を介して

  1. ブドウ糖の排泄を促進し血糖値を下げる
  2. 全身の糖毒性を軽減する
  3. インスリン濃度が低下し、インスリン感受性を改善する
  4. 体重が減少する
  5. Na利尿作用+浸透圧利尿作用もがあり、血圧も下げ、心臓の前負荷・後負荷を軽減する
  6. 中性脂肪を低下させ、内臓脂肪を減少させる(②③④⑤は、メタボリック症候群による腎機能悪化の改善による心腎効果と同様)
  7. 近位尿細管の糖新生を抑制
  8. 血清尿酸値を下げる

 

 2.尿細管糸球体フィードバックの是正を介して

  1. 糸球体過剰濾過を軽減し糸球体やメサンギウムの負荷を軽減し、アルブミン尿を減少させる
  2. RAS阻害薬が輸出細動脈を無理やり拡張させ、NSAIDsが輸入細動脈を無理やり収縮させるのはと異なり、SGLT2阻害薬は濾過量の増加の程度に応じて輸入細動脈を収縮する方向に「調節」するために過度の虚血や腎機能低下にならない、つまりAKIを防いでくれる(あくまで平田の仮説です)。

 

 3.グルカゴンの影響とブドウ糖からケトン体へのエネルギー基質の変換を介して

  1. 膵α細胞によるグルカゴン分泌が刺激され、肝臓でATP産生能の高いケトン体(β-ヒドロキシ酪酸など)が産生され、循環血中によって全身に運ばれ、acetyl-CoAブからTCAサイクルに入ることによってブドウ糖の代替エネルギーになる
  2. グルカゴンが心筋に対して陽性変力作用を示す
  3. 尿細管のATP産生低下を改善して近位尿細管のNaポンプの活性の上昇を低下させて、酸素消費量を軽減する
  4. 飢餓・絶食状態で活性化されるSirt1、AMPKを活性化して、ミトコンドリア(腎臓はATPを必要とする水、Na, Kを再吸収するトランスポータが豊富なため、ミトコンドリアが大量に存在し、心筋は拍動のためにATPを消費する)を保護して抗酸化、抗炎症作用を示し、オートファジーを増強して心・腎保護作用を示し、エネルギーの恒常性を調節する。そのためミトコンドリア保護薬はミトコンドリア病だけではなく糖尿病や虚血性心疾患、腎臓病などミトコンドリア障害が起こりやすい疾患に使われる可能性を秘めている。Sirt1は長寿遺伝子でもある。
  5. β-ヒドロキシ酪酸が酸化ストレスを軽減する
  6. 直接抗炎症(これもケトン体のβ-ヒドロキシ酪酸の作用という説、炎症性サイトカインによる線維化を抑制するという説もあり)および抗線維化作用もある

 

 4.貧血改善作用を介して

  1. 貧血を改善して腎虚血に対する腎保護作用(利尿作用による脱水だけではなくHIF刺激によるESA産生)
  2. 腎の低酸素状態を改善する

 

 このようにSGLT2阻害薬の「腎保護薬」としての地位は確立したといえます。すでに多くの腎臓内科の先生がおっしゃっているように末期腎不全を除いたCKDというのは非常に幅広いので、GFR区分ではG3b以下の患者さんと蛋白尿の顕著なヒートマップで赤色またはオレンジ色の患者さんに推奨されると思います(図1)。ただしG3aであっても腎機能低下が速やか、AKI発症リスクが高い高齢患者さんは透析導入のリスクが高いので、よい適応になると思います。将来的には平田は糖尿病の有無にかかわらず、栄養状態の良い高齢者にはSGLT2阻害薬を第一選択薬として、できるだけ幅広く使うことによって、健康寿命を長く保つ可能性も秘めているのではないかと期待しています。

いいことだらけですが、副作用として重要なものには以下のものがあげられます。

1.大量のブドウ糖を尿中に排泄するため
 ①サルコペニアになりやすい(痩せている高齢者で顕著なので、栄養状態の良
  い患者以外では投与しにくい)

 ②性器感染症、壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、尿路感染症を起こしやすい
  (特に活動度の低い高齢者で多い)

  ケトン体が上昇するため(厳密な低糖質食を推奨しない)
 ③ケトアシドーシスになることがある

 2.利尿作用があるため
 ④皮膚障害(皮膚乾燥による)
  利尿作用があるため、特に利尿薬との併用により起こりやすく、皮膚症状は
  SGLT2阻害薬投与 後1日目からおよそ2週間以内に発症している。
 ⑤脱水による血栓症

 3.糸球体過剰濾過を軽減するため
 ⑥一過性の腎機能低下がある

 

 そしてSGLT2阻害薬の副作用発症率については1日目の図3を見てほしい。ケトアシドーシスは前述のように0.22%と非常にまれだが、性器感染は3.8%、脱水は4.5%と発症率が高い。これらの情報を服薬指導に生かすには以下のように薬剤師としてやるべきことがある1)

  1. 水分をこまめに摂るよう指導する。脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用はできれば避けたいが、併用する場合には特に脱水に注意する。
  2. 性器感染症は特に活動度の低い高齢患者で陰部カンジダ症、壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)などがみられており、ウォシュレットを用いる、尿量を気にして飲水を制限しすぎず、適切な飲水によって自浄作用を促すなど陰部を清潔に保っていただく。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすることも重要である。
  3. シックデイ(発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合)には必ず休薬するよう服薬指導する。
  4. ケトアシドーシスの症状(全身倦怠感、悪心・嘔吐、腹痛、口渇・多尿、意識障害などの症状)を教え、ケトアシドーシスが疑われる場合は、血糖値が高くなくても休薬してすみやかに専門医を受診するよう指導する。これを防ぐためにはインスリンレベルの低下した糖尿病患者にはSGLT2阻害薬服用中は厳格な糖質制限・カロリー制限を避けるように指導することはとても重要だ。

 

引用文献
1)日本糖尿病学会: SGLT2阻害薬の適正使用のRecommendations 2020年12月25日.

 

 最後に現在、想定されているSGLT2阻害薬の腎機能低下抑制作用・急性腎障害抑制作用のメカニズ(図2)についてまとめてみよう。

  1. 血糖降下による糖毒性・インスリン濃度の低下、あるいはナトリウム利尿・浸透圧利尿作用による血行動態改善は短期的な心・腎保護作用は確かに考えられるが、これだけでは長期的な作用は説明不可能。
  2. SGLT2阻害薬は尿細管糸球体フィードバックの破綻によって起こる糸球体内圧の上昇による糸球体過剰濾過を抑制(糸球体高血圧の是正)してアルブミン尿を減少させ、糸球体への過剰な負担を軽減して、尿細管を守る。これによって腎の酸素消費量を低下させることもできる。
  3. 肝でのケトン体産生増加によるATP産生増加がエネルギーとして腎で効率的に使えることによって腎低酸素症が軽減する。
  4. β-ヒドロキシ酪酸が酸化ストレスを軽減する。
  5. β-ヒドロキシ酪酸が直接抗炎症および抗線維化作用を示す。
  6. β-ヒドロキシ酪酸による遺伝子発現、異常細胞事象、シグナル伝達経路の活性化、機能的および構造的変化について試験が進行中らしい。
  7. 貧血改善作用によって腎低酸素症が軽減する。
  8. SGLT2阻害薬によって高濃度になったブドウ糖が集合管のブドウ糖・尿酸トランスポータGLUT9を阻害して尿酸再吸収を抑制することによる血清尿酸値低下。
  9. 非糖尿病虚血再灌流モデルマウスでは,SGLT2 阻害により尿細管への糖取り込みを抑制することにより,尿細管からの血管内皮増殖因子VEGF 産生増加依存的に傍尿細管毛細血管網を改善し,尿細管周囲毛細血管うっ血を抑制することが報告されている。

 

阻害薬の心保護作用のメカニズム(図3

 日本でも、DAPA-HF試験によってダパグリフロジンは左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF、ヘフレフ)の治療薬として、2型糖尿病合併の有無にかかわらず承認されています。しかし高齢者に多いHFpEF(ヘフペフ: heart failure with preserved ejection function:左心駆出率の保たれた心不全)は左心室が硬化して拡張できず、心臓へ血液が戻る力が弱くなるため、うっ血が起こり、むくみなどの症状が起こりやすいのですが、これまでは臨床的に有効と証明された治療法がなく、心血管領域で最大のアンメットニーズとされていました。左室駆出率(LVEF)が40%超の成人心不全患者を主に対象にしたEMPEROR-Preserved試験のサブ解析結果によって2021年11月11日付でエンパグリフロジンが左室駆出率(LVEF)に関わらない成人心不全患者の心血管死および心不全による入院のリスク減少に関する適応追加が米国FDAに受理され、優先審査対象になったことが明らかになっています。またSGLT2だけでなく、腸管でのブドウ糖吸収の主経路であるSGLT1をも阻害するSGLT1/2阻害薬であるsotagliflozinでもランダム化比較試験によってHFpEF患者で、心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診の相対リスクを37%と顕著に低下させたことが2021年の米国糖尿病学会ADAで報告されています。では現在、想定されているSGLT2阻害薬の心保護作用のメカニズムについても図3にまとめてみましたが、平田は循環器が専門ではないため、的外れなまとめになっているかもしれません。

 

 

新年のご挨拶

~薬剤師塾が変わります、いや、変えます。
            双方向性の薬剤師塾を目指します~

あけましておめでとうございます。
旧年中はひとかたならぬご厚誼を賜りまして、大変ありがとうございました。

 2020年3月に神戸に引っ越ししてから、コロナ禍が続き、国内も海外にもどこにも行けず、学会の多くが中止、講演会もほとんど中止になりました。4月から芦屋市のI&H株式会社本社で保険薬局薬剤師や病院薬剤師の垣根のない無料の薬剤師塾を開催しようと思っておりましたが、コロナ禍のため中止になり、多くの学会も中止または延期になりました。

 2021年の4月からWeb開催ではありますが、念願の「基礎から学ぶ薬剤師塾」が再開できました。でも昨年の薬剤師塾の反省点は振り返ってみるといろいろとありました。画面を通して私からは皆さんの顔が見えない、連載や掲載内容・講演内容がよかったのか悪かったのかわからない、皆さんが理解できたのかどうかもわからない、満足度もわからないのに「薬剤師塾」と言えるだろうか・・・・・・・というものです。

 今年からはWeb上で①皆さんのご意見・ご感想・ご要望を聞くことのできる場、②講演内容や記載内容に関する質問内容に答えられる場、③症例に対する対処方法の質問に答えられる場なども設けたいと思っております。

 また講演依頼に関しましては平田のメールアドレスhirata@kumamoto-u.ac.jpまでお気軽にご連絡ください。

 今年は何とか芦屋のI&H本社で、皆さんとライブで無料の薬剤師塾を楽しむことが出来ればと思っているのですが、いつになることかわかりません。そこで、Webによる「基礎から学ぶ剤師塾」も以下の問題を解決できればと思っています。

1. 皆さんから顔も声も出していただける質問を優先し、氏名の明確なチャットの質問を優先的に受け付ける方がライブ感はあるのではないかと思っています。

2. 「塾」らしく、双方向性のコミュニケーションを重視したいと思いますので、聴講者の皆様から講演に対する評価、ご意見、ご感想、ご要望、ご質問があれば講演後のアンケートでお聞きしたい。

 

 今年、平田は68歳になります。いわゆる健康寿命は男性で72.7歳と言われていますから、健康でいられるのはあと5年くらい・・・・。ではありません!平田はほぼ毎日ジムに行きサウナに入り、土日以外はI&H本社に出勤し、今年の2月には大阪マラソンを走る予定です。完走すれば7年連続のフルマラソン完走です。昨年末の12月25日にもアップダウンの激しい「第8回 壮大!広大!極限RUN!神戸農業公園走り納め」で20kmを走り、意外と元気なのでそのあと近所のジムのプールで1kmを泳ぎました。本当に元気いっぱいなのです。ということで、今年も平田は精いっぱい頑張りますので、本年もなにとぞよろしくお願いいたします。 

 

SGLT2阻害薬による心腎保護作用と急性腎障害抑制作用~ケトン体って何よ?~
8日目 再び食事について考えてみよう
           ~再びケトン体について~

(1)ケトン体は有益?有害?

 ヒトは24時間エネルギーを消費しているため早朝、8時間もたつと前夜に蓄えた肝臓のグリコーゲンは枯渇してしまいます。このような空腹時でブドウ糖を最も多く消費しているのは脳で、肝臓が10g/hr産生して血中に放出したうち、1時間に5~6g(安静時に全身で使われる60%に相当)のブドウ糖を使います。赤血球には核がないので自分でエネルギーを産生できないからでしょうか、ブドウ糖しかエネルギーとして使えません。そのほかの細胞はブドウ糖を節約して脳に回すため、代謝エネルギーの50~60%を遊離脂肪酸で賄っています。ただし遊離脂肪酸は血液脳関門を通過できないため脳は遊離脂肪酸を使うことができません。ヒトは空腹が続くとインスリン分泌をやめグルカゴンが分泌されることによって血糖値を上げ、さらに脂肪の分解を促進して遊離脂肪酸の代謝を促進し、血液脳関門を通過できる小分子のケトン体にしてブドウ糖の代替エネルギー源にします。したがって飢餓時にはケトン体は脳のエネルギーになります。脳以外の心臓や安静時の骨格筋は遊離脂肪酸を使っていますが、これはブドウ糖を節約して脳に回すためと考えられています。ただし心不全などの心臓病になると、エネルギー源が脂肪酸からケトン体にスイッチされます1)

(2)SGLT2阻害薬によるケトアシドーシス

 インスリン欠乏が高度、かつグルカゴン分泌過多になると脂肪分解に歯止めが効かなくなって多量のケトン体が蓄積するとケトアシドーシスになって、意識障害から死に直面することがあるとされています。SGLT2阻害薬を投与すると大量のブドウ糖が尿中に排泄され、脂肪が分解してケトン体が産生されるため、体脂肪は減少しますが、体重も減少するという低糖質ダイエットをしているのと同じようになるため、サルコペニア患者には使えませんし、副作用としてケトアシドーシスがまれに(1000人に1.3人くらい2)、1000人に2.3人くらい3))起こっています。しかし不適切なインスリン減量や中断や極端な糖質摂取不足、あるいは脱水などによって、酸性物質である血中ケトン体が急増するとケトアシドーシスが発症します。有益とも考えられているケトン体はあまり増加させ過ぎないことも重要です。SGLT2阻害薬によるケトアシドーシスの約1/3が正常血糖ケトアシドーシス(BS<300mg/dLで起こるケトアシドーシス)と言われており、服薬指導時に飲水を励行して嘔気・嘔吐、腹痛、全身倦怠感、息切れ、脱水、意識障害などのケトアシドーシスの兆候を見逃さないことが重要です。

 ケトアシドーシスはSGLT2阻害薬が1型糖尿病への適応が承認されたことに伴い、ケトアシドーシスの報告が増加しているそうですし、臨床試験の報告では、 アルコール多飲者、感染症や脱水など、女性、非肥満・やせ(BMI<25)で起こりやすいといわれており4)、そのほかにもインスリン欠乏、インスリンの減量、発熱、ストレスなども言われており、手術は少なくとも3日前にはSGLT2阻害薬を一時中止する必要があります。

(3)緩やかな糖質制限か厳格な糖質制限か

 山田悟先生は1食につき糖質を20~40gを1日3回+嗜好品10gまでという緩やかな糖質制限食をロカボと称して、糖尿病患者さんや肥満患者さんに推奨するとともに、全国的なムーブメントも展開しておられます。一方、1日50g以下の糖質とする極端な糖質制限(ケトン産生食)に対してはケトン体が増え、血糖降下薬を服用中の糖尿病患者では低血糖に陥る可能性があるので、推奨はしておりません。最近になってケトン体食という極端な糖質制限食に関する書物が増えていますが、中には平田が読んでも「エビデンスに乏しい」と思うものがほとんどでした。

 

 その中で平田が大変興味深いと思ったのが、厳格な糖質制限食の推進者である産婦人科医の宗田哲男先生の「ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか」(図45)という書物です。宗田先生はMEC食という肉(Meat)、卵(Eggs)、チーズ(Cheese)の3つの食品を中心にたっぷり食べ、30回かむというルールの食事法を推進して、妊娠糖尿病患者を対象に実際にケトン体濃度を測定したデータを学会に発表しています。

 その要点は①「アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸は強い酸だからアシドーシスになる」というのは間違い、②厳密な糖質制限食によって血清ケトン体濃度は2,000-7,000µmol/Lになることがあるが、ケトン体は無害だから高濃度になってもなに起こらない、アシドーシスの症状も起こらない、③糖尿病性アシドーシスは必ず高血糖を伴う。つまりインスリンの働きが極端に落ちた人で発症する、④糖質制限をすればケトーシス(血中ケトン体濃度が200µmol/L以上に増加した状態)にはなるが、高血糖を起こさない限り重症のケトアシドーシスにはならない、という内容でケトン体は極めて安全という立場です。そして宗田先生は1型糖尿病のため他病院から見捨てられた妊婦を糖質制限食でインスリン不要にして正常分娩に成功した驚くべき症例を報告しています。さらに正常妊婦60名の血液、胎盤、新生児、妊婦のケトン体濃度を測定して英語論文にしており6)(なぜかPubMedでは検出されないのですがWebで入手可能でした)、血糖値はやや低めで、ケトン体を測定すると胎盤で2,235.0µmol/L、臍帯で779.2µmol/L、4日後の新生児では240.4µmol/L、30日後は366.7µmol/Lと高値であり、胎盤組織液3-βヒドロキシ酪酸濃度は臍帯血の約3倍高値で血清標準値(85μmol/L)の20~30倍高く、胎盤ブドウ糖濃度は75~80mg/dLと低値でした(図56)。そのうえでβ-ヒドロキシ酪酸は生後30日までは新生児の栄養として不可欠であると結んでいます。つまり7日目に解説したとおり、ケトン体は毒物ではなく、もともと胎児・新生児の栄養素の主役であると考えられます。胎盤で2,235.0µmol/Lもの高濃度になっていてもアシドーシスは起こしているはずがないのですから、胎児の栄養物が大人にとって毒物というのは確かにナンセンスかもしれません。

 ただし平田が2021年11月12日に医中誌で検索したところ、SGLT2阻害薬×症例報告×原著で124件。そのうちケトアシドーシスの報告が13件あり、正常血糖ケトアシドーシスは8件でした。つまり論文になっているSGLT2阻害薬の症例報告124件中13例がケトアシドーシスを発症した症例報告であり、13例中8例が正常血糖ケトアシドーシスだったのです。したがってSGLT2阻害薬が投与されている糖尿病患者が厳密な低糖質食にすると正常血糖ケトアシドーシスを発症した報告が多いため、糖尿病患者でSGLT2阻害薬が投与されている症例には厳密な糖質制限食は危険です。山田悟先生の提唱する緩やかな糖質制限食(ロカボ)にとどめるべきであり、朝食を抜くダイエットもSGLT2阻害薬服用患者には推奨できないように思います。

(4)SGLT2阻害薬による2型糖尿病患者の正常血糖ケトアシドーシス症例を見てみよう

 インスリン分泌能を失った1型糖尿病患者ではケトアシドーシスを起こしうると思いますが、2型糖尿病ではいかがなものだろうと思い、PubMedで「SGLT2 inhibitors × 3-Hydroxybutyric acid × type 2 diabetics」で検索すると、カナグリフロジン投与後のβヒドロキシ酪酸濃度は平均100µmol/L足らずで、投与前後の差であるΔβヒドロキシ酪酸濃度濃度は平均100µmol/L足らずでアシドーシスを起こす濃度ではありません(図67)。Letter to the EditorではSGLT2阻害薬を投与して2.8mg/dL(269µmol/L)を超えるβヒドロキシ酪酸濃度が14%の患者に認められたがアシドーシスは起こらないという報告がありました8)が、これは前述の宗田先生のご指摘の通りで1000µmol/L程度のケトン体濃度ではアシドーシスは起こっていないということが再確認できました。

 カナグリフロジン服用中の71歳の女性が食欲不振、倦怠感、悪心および腹痛を訴えて救急搬送され、血糖値259mg/dLとさほど高くないものの、pH 6.89でβヒドロキシ酪酸濃度10,000µmol/Lを超える重篤な正常血糖糖尿病性ケトアシドーシスを発症し、3日間の持続的血液浄化法の後改善したという久留米大学病院の報告がありました9)。この報告で興味深かったのは尿糖はSGLT2阻害薬中止後10日以上持続し多尿・尿糖の管理のために乳酸リンゲル液の輸液が必要であったことです。カナグリフロジンはUGTによりグルクロン酸抱合されるため、本症例にはUGTの欠損があったのかもしれないことを考察していますが、患者の遺伝子検査はされていません。

 2型糖尿病による正常血糖ケトアシドーシスについてはイタリアでもエンパグリフロジン20mg/日での報告があり10)、高カリウム血症、血圧低下、頻脈、呼吸数増大、多尿、尿中ケトン体7,692mmol/L、および血液ガスはpH6.91で重篤なアシドーシス、意識障害、腎機能悪化(2週間前に投与されたNSAIDによると考察)が認められておりますが、尿糖の遷延はこの症例も同様でSGLT2阻害薬が中止されて7日後も2,700mg/dLでした。またこの症例も重炭酸を用いた血液透析を2日間連続実施後、症状が改善しています。この尿糖の遷延や多尿や尿中ケトン体検出が持続することはわが国の正常血糖アシドーシスの報告でも散見されており、単なる偶然とは思われません。単にSGLT2阻害薬が不可逆的にSGLT2を阻害し、SGLT2のターンオーバーが長いためという理由ではなさそうです。

 カナグリフロジン、エンパグリフロジンの消失半減期は各々10~12時間、7.4~18時間なので、血中濃度は遅くとも中止後4日でほぼ3%近くに低下するはずなのですが、7日あるいは10日以上、効果が持続するのはやはり不可思議であり、UGTの遺伝子多型が関わっているなど疑問が残ります。ひょっとしたらSGLT2服用患者で1000人に1~2人しか発症しないケトアシドーシスのうち、正常血糖アシドーシスはSGLT2阻害薬を代謝する酵素のUGT、あるいは何らかの機能性タンパクの遺伝子多型や人種差が考えられるかもしれません。前述の山田悟先生はMedical Tribuneの Doctor‘s Eye 2021年4月13日「ケトン体は味方だった!」で肝臓はSCOT(サクシニルCoA/オキソ酸CoAトランスフェラーゼ)という酵素を持たないため、ケトン体を利用できないので、SGLT2阻害薬によってケトアシドーシスになるのは末梢組織におけるSCOTあるいはミトコンドリア2の遺伝子欠損者ではないか、という仮説を考えているそうです。この症例報告の考察では正常血糖アシドーシスの特徴が書かれていましたので、表1に示しますが過剰のアルコール摂取やカロリー摂取の低下は正常血糖ケトアシドーシスのリスク原因になります。

(5)SGLT2阻害薬によるケトアシドーシスを防ぐために

 SGLT2阻害薬服用者には厳密な糖質制限食を避け、食欲不振・嘔気・嘔吐、脱水などでは、シックデイ対策としてSGLT2阻害薬の服用を一時中止して来院するよう服薬指導する必要があります。SGLT2阻害薬の適正使用のRecommendations11)では、手術時には術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開するということになっています。術直前の中止は避けるべきであり、尿糖を測定しながらの栄養管理が必要じゃないかと思いました。やはり2型糖尿病であっても、そして血糖値がさほど高くなくても糖尿病性ケトアシドーシスは起こりえますので、全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などのケトアシドーシスの症状をしっかりと指導する必要があります。

 「SGLT2 inhibitor×acute kidney injury×case report」で検索するとAKI症例がヒットすると思ってPubMed検索しましたが、ヒットした10論文中、5論文はケトアシドーシスの症例で、ケトアシドーシスによる脱水による腎機能悪化ではないかと思います。その他はSGLT2阻害薬による間質性腎炎、コカインを併用した症例、症例報告ではない後ろ向き研究などであり、SGLT2阻害薬による純粋なAKIは非常に少ないのではないか、ほとんどがケトアシドーシスによる脱水によるAKIではないかと感じました。

 非糖尿病のCKD患者にSGLT2阻害薬を投与してケトアシドーシスを起こした症例やケトン体濃度を測定した報告は今のところ見当たりません。インスリンの働きが正常で、ブドウ糖の利用が適切である限り、ある一定濃度のケトン体は極めて安全なエネルギー源となるため、非糖尿病のCKD患者にSGLT2阻害薬を投与してもケトアシドーシスになることは極めてまれ、あるいは糖尿病では起こらないのではないかと思います。最近の海外の論文の傾向を見ているとケトン体は有害→ケトン体は危険だが有用な面もある→ケトン体は有用なだけで危険性は低いので、極端な糖質制限食も容認できるのでは?というように変わりつつあると感じています。ただしSGLT2阻害薬服用者で極端な糖質制限食をすると、インスリン分泌能が低下した(つまり糖尿病)患者では、非常にまれではありますが、重篤な正常血糖ケトアシドーシスを起こす危険性が高くなると思います。

(6)カロリー制限食・米飯には利点もある?~理想的な食事には食物繊維も重要~

 日本糖尿病学会は、炭水化物を50~60%エネルギー、たんぱく質 20%エネルギー以下を目安とし、残りを 脂質とするカロリー制限食を「糖尿病診療ガイドライン2019」が出るまではずっと推奨しており、「日本人は古くから白米を主食とした食事を主流に糖質をエネルギーとして活用してきた。そして糖質は脳や赤血球のエネルギー源となる重要な栄養素だから、糖質は身体に良くないという考え方自体が間違っている」という考え方がつい最近まで日本糖尿病学会の主流でした。今でもカロリー制限食を支持する意見は根強いようです。

 戦前の日本人は米食中心で、昭和初期には1日3合と現在の3倍以上のご飯を食べていましたが、戦後の高度成長期あたりから米を食べる量が少なくなり、食事の欧米化が進行していきました。それによって肥満、糖尿病、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が増えてきたのは事実です。食事の欧米化=カロリー摂取の過剰、脂質の過剰摂取と信じられてきたのです。

 厳格な低糖質食でMEC食は糖尿病や肥満患者には適しているかもしれませんが、7日目に触れたように、食物繊維不足による腸内細菌叢の多様性が失われて、大腸がんやアレルギー性疾患、自己免疫疾患などの様々な病気の原因になる可能性もあります。フルーツもポテトもカボチャもダメでたまにはケーキやクッキー、アイスクリームだって食べたいものです。糖尿病や肥満患者だけではなく育ち盛りの子供や妊婦、栄養状態の不良な高齢者など多様な人々にとって理想的な食事って何なのでしょうか?

 図7に食物研究者会議の考案した「世界的な健康食」12)を抜粋します。北米では澱粉質野菜(ジャガイモなど)、動物性蛋白、乳製品が摂取過多で野菜、全粒穀物、フルーツ、食物性蛋白は不足しており完全に肉食タイプで、3大栄養素はすべて過多で圧倒的に食物繊維不足だと思われます。日本・中国・韓国などの東アジアやオセアニアでは澱粉質野菜、動物性蛋白が摂取過多で乳製品、全粒穀物、フルーツ、食物性蛋白は不足、野菜はやや不足しており、野菜少なめの低カロリー食に近いという感じです。ヨーロッパはこの中間で、サハラ砂漠以南のアフリカでは澱粉質野菜が摂取過多でその他はすべて不足という深刻な栄養不良状態です。平田はいわゆる健康食は緩やかな低糖質食+適度なフルーツ、全粒粉穀物の摂取、つまり緩やかな低糖質食+食物繊維に近いと思っています。では我々の食事で不足気味な食物繊維はどのような役割を果たしているのでしょうか?

 現在でも米食中心の東南アジアやアフリカ・中南米の一部、欧米のベジタリアンや地中海食は高食物繊維食を摂っています。Natureに報告された論文によると13)、これらの高食物繊維食を摂取する人々の腸内細菌叢は食物繊維分解作用が強いPrevotella属が主流を占めており2型に分類され、現在の日本人やスエーデン人は動物性蛋白質・脂肪が多くRuminococcus属が主流で3型に分類され、脂質や糖質をため込み糖尿病・心筋梗塞のリスクになるとされています。そして中国人・米国人は低炭水化物・高蛋白食でBacteroides属が主流で1型になっています。Bacteroides属は尿毒素のインドキシル硫酸産生に関与しており、下剤でプレバイオティクス(ビフィズス菌など短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌プロバイオティクスのエサで食物繊維もプレバイオティクス)として作用するラクツロースを用いた我々の検討14)では、アデニン腎不全モデルマウスにラクツロースを投与するとインドキシル硫酸やp-クレジル硫酸濃度の低下とともに、腎機能悪化が抑制されました。さらに腎不全モデルマウスのTGF-βのmRNA発現がラクツロースの投与量依存的に低下し、腎線維化が抑制されました(図814)。興味深いことにラクツロース投与によってBacteroidesが減少、Prevotellaは増加したのです(図914)。ラオスなどの東南アジアの住民は、米国住民よりも腸内細菌叢の構成が多様で、腸管内に有益な微生物が多く存在しますが、これらの人々が米国に移住すると、速やかに腸内細菌叢が変化し肥満や慢性疾患のリスクが高まるといわれています15)Prevotella が多いタイプには認知症患者がいない16)など、興味深い報告が増えつつありますが、腸内細菌叢についてはまだまだ不明な点が多いのが現状です。どの菌がよい、悪いではなくバランスの良い食事によって多様な腸内細菌叢を作ることが、便秘や大腸がんを減らし、免疫系の暴発による自己免疫疾患やアレルギー性疾患を防ぎ、健康、長寿に寄与すると思っています。◆連載◆共生生物としての腸内細菌の役割 ~腸内細菌叢とTregの話~ 第12回 後編を参照。

 

引用文献
1) Murashige D, et al: Science 370: 364-368, 2020
2) Ueda P, et al: BMJ 2018; Nov 14;363:k4365. doi: 10.1136/bmj.k4365
3) Qui M, et al: Diab Vasc Res Mar-Apr 2021;18(2):doi: 10.1177/14791641211011016.
4) 日本糖尿病学会: SGLT2阻害薬の適正使用のRecommendations 2020年12月25日.
5) 宗田哲男: ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか. 光文社, 2015
6) Muneta T, et al: Glycative Stress Res 3:133-140, 2016
7) Polidori D, et al: Diabetes Obes Metab 20: 1321-1326, 2018
8) Thapa SS, et al: J Fomos Med Assoc 118: 1473, 1474, 2019
9) Fukuda M, et al: Int J Emerg Med . 2020 Jan 22;13(1):2.doi: 10.1186/s12245-020-0261-8.
10) Nappi F, et al: Medicina . 2019 Aug 10;55(8):462.doi: 10.3390/medicina55080462.
11) 日本糖尿病学会: SGLT2阻害薬の適正使用のRecommendations 2020年12月25日.
12) Willett, W. et al. Lancet 393: 447?492, 2019
13) Arumugan M, et al: Nature 473:174-180, 2011
14) Sueyoshi M, et al: Clin Exp Nephrol 23: 908-919, 2019
15) Vangay P, et al: Cell 175: 962-972, 2018
16) Saji N, et al: Sci Rep 2019; 9(1):1008. doi: 10.1038/s41598-018-38218-7

 

 

SGLT2阻害薬による心腎保護作用と急性腎障害抑制作用~ケトン体って何よ?~
7日目 食事について考えてみよう ~糖質制限食の重要性~

(1)糖質制限食の重要性

 日本糖尿病学会では国際的に認められ、エビデンスの高い糖質制限食ではなく、炭水化物を50~60%含むカロリー制限食を「糖尿病診療ガイドライン2019」以前はずっと推奨してきましたが、そろそろ見直す時期に来ていると思います。平田もこの説を長期間、信じていました。アメリカ人に肥満が多いのは脂っこいものばかり食べるから、カロリー摂取量が多いからだと思っていましたが、実は肥満の原因は糖質の摂りすぎと食べ過ぎだったのです。そういえばアメリカのケーキ、アップルパイなど日本人の僕には甘すぎて食べられないくらい甘かったし、マクドナルドのコークのLサイズは1300mLのようにバケツ並み、レストランで食べるパスタの量も食べきれないくらいの大盛でした。

 マラソン大会の直前にはつらいカロリー制限(熊本のころ講演会後の飲み会でも刺身も食べずに刺身のツマの大根ばかり食べていたのを思い出します)をして、63kgに減量し、それが終わると普通に食べるだけで、直ちにお腹が出て67kgに戻るという繰り返しをしましたが、David A Sinclair博士の「ライフスパン 老いなき世界」を読んでから「16:8ダイエット」という16時間何も食べないが、食事量は減らさない「辛くなくリバウンドしないダイエット(具体的には夕食を20時に食べると16時間後の翌日12時までナッツ[糖質を含まないもので、ピーナッツはNG]以外は食べない)」+緩めの低糖質食で常に62kgの体重を維持しています。

 基本的に低糖質であれば満腹になるほど食べても、カロリー過多であっても太らないのです。そして糖質摂取量が少なければ少ないほど体脂肪は減少し、それに伴って体重が減少するのです。現在ではコンビニに行っても食品のカロリー数ではなく炭水化物量(糖質量)を気にするようになりました。ただし「16:8ダイエット」は糖尿病患者やフレイル気味の高齢者、成長期の小児には勧められません。平田は若年者ではありませんが、今のところ毎日ジムに通うくらい健康なのでやっています。 67歳にして平田は6年連続フルマラソンを完走でき、「脱いでも凄い(人前で脱ぐことはありませんが)」体型を手に入れることができたのです。

 医療者である薬剤師であれば患者さんから食事の質問を受けることがあると思いますが、北里大学北里研究所病院の内分泌・代謝内科部長であり糖尿病センター長の山田悟先生の著した「糖質制限の真実(図1)」1)または「カロリー制限の大罪」2)、いずれも新書の文庫本ですから1,000円もしません。真実を伝えるためにはこれらのエビデンスを重視した著書を読んでいただければと思います。

 

(2)カロリー、脂質は気にしないでいいんだ!

 これらの本で学んだことは、いまだに推奨されている「カロリー制限食」による心臓病発症率が低下するエビデンスはなく、骨密度が低下することが明らかになっています。カロリー制限食は1gで9kcalあって、糖質や蛋白質よりもカロリーの高い脂質を制限するのが最も効果的と思われがちですが、脂質制限をしても痩せないし、血清脂質濃度もコレステロールも下がらないので、脂質異常症も改善せず、動脈硬化や心筋梗塞を予防できません。有酸素運動をしてもコレステロールはエネルギー源ではない(胆汁酸やステロイドの成分として必要なだけ)ので下がりません。LDLが高すぎればスタチン薬を服用するしかありません。逆に動物性脂肪の摂取は脳卒中リスクを減らし、動脈硬化を予防できるので、脂質を制限する必要はありません。コレステロールを多く含む卵黄などを制限してもコレステロールは下がりません(一時的に下がったとしても元に戻る)。平田の検査値異常はLDL高値だけだったので、長期間、卵を食べるのをやめていましたが、これは全くの無駄でした。

 1984年には米国の著名な一般誌「TIME」は「コレステロールに関する悪いニュース」で「食物中のコレステロール、血清コレステロールと心臓病の関係という試験からコレステロールは死をもたらす」と飽和脂肪酸が心臓病の原因になると警告を鳴らしました。このような間違った知識によって数十年、脂質は怖いというイメージがついてしまったのです。しかし実際には脂質の摂取よりも重要なのは、CRPなどの炎症マーカーの方が総コレステロール値や心臓病と密接に関連していたのです。何十年にもわたる低脂肪食(低カロリー食)は、肥満、糖尿病、心臓病の発生率の上昇と一致しています。「バターは何十年もの間、それはアメリカの食事療法の中で最も邪悪な栄養素でした。しかし、新しい科学は、脂肪が私たちの健康を害するものではないことを明らかにしています。脂肪を減らすことが、病気の発生率の上昇にどのように寄与するのでしょうか? 人々は実際に非常に高炭水化物の食事に切り替え、そしてそれらの炭水化物は肥満、糖尿病に関しては飽和脂肪よりもはるかに悪いように見えることがわかりました。」ということでTIME誌は謝罪の意味も込めて、30年後の2014年に「バターを食べろ!」という特集を組んで、それまでの脂質に対する否定的な考えから30年間にもわたって「低脂肪/高炭水化物(カロリー制限食)」を推奨してきたことを謝罪しています(図2)。ただし、単にバターを食べることがいいと推奨しているのではなく、「ファストフード、加工食品を減らすことが重要で、脂肪の摂取量はこれから気にしなくていい」というメッセージが込められています。

 脂質は悪くなかったのです。αリノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などのω-3多価不飽和脂肪酸、あるいは一価不飽和脂肪酸のオリブ油が、心臓病のリスクを軽減することはよく知られていますが、栄養素としては飽和脂肪酸も悪くなかったのです。米国ではすでに脂質摂取量の上限が撤廃されており、脂質を多く摂取するとカロリー摂取量は増えても、脂肪組織の中性脂肪が分解されて脂肪酸が使われるため、脂質代謝が亢進して肥満が解消されるのです。悪いのは血糖値を上げる糖質だったのです。厳格な糖質制限食(炭水化物は20g/日でカロリー、たんぱく質、脂質制限なしだが動物性は避ける)vs低脂肪食群(カロリー制限食で男性1800、女性1500kcal/日でカロリーの30%が脂肪)vs健康に良いとされる地中海食(低脂肪食と同じカロリー制限症で脂質は35%以下で30~35gのオリーブオイルと5~7個のナッツを含む)の体重変化を検討したRCTであるDIRECT試験の報告3)では体重減少は平均で,低脂肪食群で 2.9 kg,地中海食群で 4.4 kg,糖質制限群で 4.7 kg でした(図3)。ただし完遂率は糖質制限食が78%で最低で低脂肪食で90.4%、地中海食で85.3% だったことは、厳格な糖質制限食はこの研究ではなかなか楽にはできなかったのかもしれません。これは炭水化物は20g/日という極端な糖質制限だったからだと思われます。

 山田悟先生は緩やかな糖質制限、つまり「糖質摂取量1食40グラム以内、1日130グラム以内のロカボ」を推奨しています。ちなみにライザップの食事は厳格な糖質制限食+高たんぱく食だそうで、糖質を制限することで効率よく体脂肪を減らす作戦です。健康を保つための食事やダイエット本の中には根拠のない嘘で固められたものが多くありますので気をつけてください。たとえば下記のような記載はすべてウソです!

 コンビニ食品はすべてダメいうのはウソです。アスパルテーム、スクラロースなどの人工甘味料(摂取制限はある)、糖アルコールのエリスリトールなどのカロリーにならない甘味料もダメというのはウソです。蕎麦はカロリーが低いが糖質そのものですし、果物もブドウ糖や果糖(もっとも太りやすい)が多いもの(ブドウ、リンゴなど)、ショ糖の多いもの(バナナ、パイナップルなど)の摂りすぎはよくありません。果物の中ではイチゴやブルーベリー、ラズベリーなどのベリー類は食物繊維が豊富で低糖質なのでおすすめです。そういう意味では果物は良いが、フルーツジュースはダメというのも食物繊維の有無による差、リンゴやブドウの皮に含まれる抗酸化物質アントシアニンなどの差はありますが、果物の糖質量はジュースと丸ごとの果物に差があるわけではありません。玄米は良いが白米はダメいうのは微妙です。玄米には確かに食物繊維が含まれているので腸内細菌叢などに好影響を与え、総死亡率、がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病などのリスクが低下する報告が多いのですが、糖質量としては白米とほぼ同じです。同様に全粒粉パンは白パンよりは健康によいのでしょうが、糖質量が劇的に減っているわけではありません。

 カボチャやジャガイモに糖質が多いのはよく知られていますが、ニンジンや玉ねぎなどほのかな甘みのある野菜にも糖質を含んでいるようです。アボカドはカロリーは高いですが糖質を含みませんし、ブロッコリーやカリフラワーも糖質を含みません。砂糖を吸収されない甘味料のエリスリトール、スクラロースに変更するだけでも「甘いもの」を減らすことなく糖質を減らすことは可能です。

 ちなみに平田は厳格な糖質制限食は糖尿病、肥満患者にはいいかもしれませんが、赤肉やソーセージやハム、ベーコンなどの加工食品を増やすのは「がん」予防の観点からは良くないですし、腸内細菌叢を健全に保つ(これもがんだけでなく免疫系の暴発によるアレルギー性疾患や自己免疫疾患を防ぐことができると思われます:わかりやすい細菌と抗菌薬の話の第8回 吸収率の低い第3世代経口セフェムってこんなに必要?を参照)には多少は糖質を含んでいてもいいから、食物繊維の豊富な野菜をもっと摂るべきだと思います。ヨーグルト、納豆などの発酵食品も積極的に摂りたいと考えています。そして食事を楽しむためには、たまには羽目を外して、甘いものも取りすぎにならない程度に摂ってもいいと考えています。

 

引用文献
1)山田悟: 糖質制限の真実日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて. 幻冬舎新書, 2015
2)山田悟: カロリー制限の大罪. 幻冬舎新書, 2017
3)Shai I, et al: N Engl J Med 359: 229-241, 2008

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)