第21回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2023年1月14日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 登録していただいた方には再放送を繰り返し視聴できるようになりました。ただし、再放送は質疑応答のQ&Aはありません。今回のテーマは「薬剤性腎障害を防ぐ~Quadruple whammyを防げ~」です。

 加齢とともに服用薬剤数が増え、それによる薬剤性腎障害が起こりやすくなります。そしてその対処が遅れれば腎機能は不可逆的に悪化して透析導入に、なんてこともあり得ます。今までに言われていたtriple whammyはNSAIDs、利尿薬、RAS阻害薬による3重攻撃ですが、今回は閉経後骨粗鬆症でよく投与される活性型ビタミンDを加えたQuadruple whammy、つまり4重攻撃についてです。この処方による薬剤性腎障害を防ぐキーパーソンは薬剤師ではないでしょうか?その具体的な防止対策、服薬指導について薬剤師塾で考えてみたいと思います。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書くんだという大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

第 19回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
腎機能悪化を防ぐこれからのtriple therapy
~SGLT2阻害薬、ARNI、MRAの適正使用について考える~

 

講演中にいただいた質問


I&H株式会社 那須裕之先生

Q1.心不全患者にSGLT2阻害薬を投与する際の「こまめな飲水」は具体的には何時間おきにすればいいのですか?

A.重症の心不全では心不全患者の心不全悪化による入院理由で溢水による呼吸困難などはよくあることで、ループ利尿薬を投与して症状が軽減したら退院します。このような症例に対して、飲水励行はしません。ただし心不全患者の多くが高齢者(口渇中枢の機能が低下している)であることを考慮すると、飲水量は少なめであっても「こまめな飲水」をしてもらわないと、SGLT2阻害薬の副作用である脱水(とそれに伴う腎機能悪化)、性器感染症、糖尿病性ケトアシドーシスになりやすくなりますので、医師の指示した1日飲水量、例えば冬では1日1.2L程度、発汗の多い夏にはより多め水をのどが乾いていなくても少量ずつ飲んでいただくことになります。具体的に1~2時間おきでしょうか。起床時やお風呂上がりにも飲んでいただきましょう。むくみ(足背部の圧痕性浮腫pitting edema:図1)、体重増加、息苦しさがあれば飲水量を少なめに、逆に脱水(皮膚の張り:図2、口腔内乾燥のチェック、爪毛細血管再充満時間≧2秒()など)、体重減少などがあれば多めの飲水を心がけてもらってもよいでしょう。

 

 

 

 

Q2.SGLT2阻害薬による尿糖排泄作用はずっと持続するはずなのに、カナグルの利尿作用は1日のみなのはなぜですか?

A.SGLT2阻害薬後の尿量変化の報告が少ないので、明確ではないのですが、カナグルに関しては初日にプラセボに比し、尿量の増加が認められましたが、この効果は2日目以降には消失したと報告されており1)、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジンともに投与1日目には尿量が増加するものの、7日目には投与前と同じになる(7日以内に利尿が消失しているのは確かだがいつ利尿作用が消失したかは不明)という報告もあります2)。ダパグリフロジン投与後尿中グルコース排泄量は1週間かけて有意に増加し、尿量は、尿中Na排泄量、尿中Cl排泄量は0日目に比し、2日目に増加したものの、7日目には元に戻った3)。ダパグリフロジン投与後の尿量は7日間にわたり数値的に増加した4)など、報告によって異なります。一方、エンパグリフロジン投与後、800~900mL/日の増加5)がみられた、あるいはエンパグリフロジンの利尿はフロセミド併用によって6週間後も続く6)ことが報告されていますが、これらはいずれもループ利尿薬が併用されています。ループ利尿薬との併用効果は尿中Na排泄量の増加を伴わずに24時間尿量を有意に増加させたことが報告されており6)7)、SGLT2阻害薬とループ利尿薬の併用時の尿中Na排泄分画(FENa)の増強は、単剤投与時に比べて4倍以上であったことも報告されていることから、SGLT2阻害薬とループ利尿薬は相乗作用を示すと考えられ6)、SGLT2阻害薬投与初期及びループ利尿薬併用時には脱水に要注意と思われます。ということでSGLT2阻害薬の利尿作用、Na排泄作用は一過性であるが、薬によってその持続時間は異なるかもしれません。ただしSGLT2阻害薬投与後の尿糖排泄促進作用は持続します。Na利尿は投与初期には認められますが、早期に減弱します。例えばエンパグリフロジン、ダパグリフロジンのNa排泄促進作用は3日以内6)、7日以内には消失します3)

 まとめますと投与2日を超えると7日目でほぼ利尿作用がなくなるという報告もあれば、1か月くらい利尿作用が続く症例もあるようです。概してSGLT2阻害薬投与初期にみられた尿量増加は、持続的にはみられないことが多く、SGLT2阻害薬投与時の尿量は飲水量が規定因子となるため、飲水量や回数を過度に増やすことは頻尿や尿量増加につながります。脱水の副作用は8つのRCTのメタ解析で8)、SGLT2阻害薬群で有意となった副作用の1つであり、発症率も高いため、利尿作用がどれくらい持続するかは重要な問題ですが、今のところ尿量の持続に関する報告は限られています。

 SGLT2阻害薬の利尿作用が持続しないメカニズムについては動物実験ではありますが、髄質の尿素増加9)とアクアポリン210)およびバソプレシンV2受容体のタンパク質発現量が増加11)してバソプレシンを介した水再吸収によって、SGLT2阻害薬を継続投与すると、その利尿作用は持続しないと考えられています。Na利尿に関しても近位尿細管でSGLT2阻害薬がNaの再吸収を阻害しても、遠位部でNaを再吸収して低ナトリウム血症になるのを防いでいるのだと思われます。ただしブドウ糖については近位尿細管以外に再吸収部位がないため、糖利尿は持続するのだと思います。

引用文献
1)Tanaka H, et al,: Adv Ther 2017; 34: 436-51
2)Nakagaito M, et al: Circ Rep 2019;1:405-413
3)Masuda T, et al: POJ Diabetes Obes 1: 1-8, 2017
4)Ohara K, et al: Nephrology. 2019 ;24:904-911.
5)Damman K, et al: Eur J Heart Fail. 2020 Apr;22(4):713-722. doi: 10.1002/ejhf.1713.
6)Mordi M, et al: Circulation 2020; 142:1713-1724.
7)Damman K, et al: Eur J Heart Fail. 2020 Apr;22(4):713-722. doi: 10.1002/ejhf.1713.
8)Qui M, et al: Diab Vasc Res Mar-Apr 2021;18(2):doi: 10.1177/14791641211011016.
9)Marton A, et al: Nat Rev Nephrol 17: 65–77
10)Chung S., et al: Front Physiol 10, 271. 10.3389/fphys.2019.00271
11)Masuda T, et al: Physiol Rep 8 , e14360. 10.14814/phy2.14360



沼津市民病院 平野雄一先生

Q.フィネレノン投与時に注意すべき点は?

A.フィネレノンはMRAの中では高カリウム血症を最も起こしにくいと言われていますが、やはりMRAなので、高カリウム血症です。投与初期の腎機能悪化initial dippingはSGLT2阻害薬と比べると非常に軽度ですし、降圧作用・利尿作用も弱いので、ARNIのように過降圧や利尿作用による脱水もあまり問題にはなりません。



講演後のアンケートでいただいた質問


平成横浜病院 廣瀬里美子先生

Q.CKD以外の腎機能の低くなりつつある人たちにもSGLT-2阻害薬は効果があるのであれば、日常症状を感じないのに健康診断で腎機能があまりよくない予備軍の人たちは受診して服薬していくという未来もあるのでしょうか。これで日本の、医療や世界の医療費が軽減するなんて感動します。

A.SGLT2阻害薬は蛋白尿またはアルブミン尿があって腎機能が低下した症例で、腎保護作用が非常に強力になるとされますので、それのない疾患、つまり高血圧が持続すれば腎機能が低下しますが、そのような腎硬化症予備軍が加齢に伴いCKDになっても大きな効果を示しにくいかもしれません。ただしSGLT2阻害薬は長寿遺伝子を活性化させる作用や酸化ストレスを軽減し抗炎症作用を持つなど、腎疾患、心疾患を持たない方にとっても様々な健康増進作用が期待できるかもしれません。



北見赤十字病院 加藤理愛先生

Q.ARNIの腎保護効果はアルブミン尿と関係しないのはなぜでしょうか?

A.Voors AA, et al: Eur J Heart Fail 2015; 17: 510-517の結果に基づいて、36週間後のARNI群の腎機能悪化は-1.5mL/min/1.73m2、バルサルタン群は-5.2mL/min/1.73m2でARNIの方が有意に腎機能悪化速度が緩やかでした(調整後のP = 0.002:図1)が、ARNIの尿中アルブミン/Cr比の幾何平均値はARNI群で増加した(2.1-4.0mg/mmol)のに対し、バルサルタン群では横ばいに推移した(1.5-2.6mg/mmol、36週間の差に関するP=0.016:図2)で2つの介入群間でUACRに有意差が生じました。これって2.1-4.0mg/mmolは18.6-35.4mg/gCrにあたり、1.5-2.6mg/mmol は13.3-23mg/gCrにあたります。尿中アルブミンは30mg/gCr未満は正常ですので、ARNI群はバルサルタン群に比し有意にアルブミン尿を増やしたのは確かですが、単位に騙されました。アルブミン尿はARNIを投与しても平均値としては正常域内です。大変失礼いたしました。図2は意味ないですね。

 

 

 



北九州宗像中央病院 高田由美子先生

Q.eGFRが30前後でHbA1cは6.7前後、ジャヌビアを50mg服用中です。このままで続けるか、SGLT -2を追加するか、SGLT-2に変更するか、処方提案をどうしたらいいか悩んでいます。先生はいかがお考えですか?

A.この症例の年齢、BMIが知りたいです。後期高齢者でBMIの低い症例には使いにくいと思います。

 それとSGLT2阻害薬はeGFRが25mL/min/1.73m2未満の患者では、効果が期待できるかどうかについてもよくわかっておりませんし、フィネレノンも高カリウム血症のリスクがあるため、eGFRが30前後の症例に積極的な処方提案はしにくいと思います。

 第20回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年12月10日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 登録していただいた方には再放送を繰り返し視聴できるようになりました。ただし、再放送は質疑応答のQ&Aはありません。今回のテーマは「腎機能低下時に減量が必要な薬~根拠は尿中排泄率だけじゃない~」です。

 腎機能が低下すれば、尿中未変化体排泄率の高い薬物は腎機能に応じて減量しないと中毒性副作用が起こることは今や常識になりました。しかし中には活性代謝物が蓄積して思わぬ副作用が起こったり、腎で代謝される薬物も副作用が遷延しやすいことも知られています。そして最近になって分かったのは完全に肝代謝型薬物なのに、腎機能低下患者で血中濃度が異常に上昇する薬物の原因としてある種の代謝酵素、トランスポータの発現量が低下していることも分かってきました。

 この辺のことは医師にはわかりませんし、腎を専門としない薬剤師にも理解しにくいと思いますが、「ある種の代謝酵素、トランスポータ」が最近になって明確になりつつあります。患者さんに中毒性副作用を起こさせない、有効かつ安全な薬物療法を提供できる有能な薬剤師になるためには避けて通れない情報と思われます。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書くんだという大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

2022年10月24日 アスヤクlife研修会 Q&A

 今回、私の声が聞きにくかったというアンケート結果が多かったようですが、これは私のテンションが低かったからではなく、おそらく機器上の問題だと思います。音が小さいということが早めに分かっていれば、ヘッドセットを交換してみるなどの手段が取れますので、今後はチャットなどを利用して指摘していただければ幸いです。


Q.リオナで、便が鉄臭く、便器にもつくので飲みたくない患者さんが数名いましたが、リオナはタール便ではないのですか?

A鉄剤による便はタール便ではなく、黒色便です。タール便と黒色便との違いは講演中に述べた通りです。鉄を含む薬剤(特にピートル)では下痢しやすくなりますし、鉄臭い便が排泄されることはありますが、タール便は消化管出血によるものなので、血液を大量に含み、もっともっと鉄臭く、気色悪いです。


Q.カルタンを服用中にPPIが追加処方された場合、P値に影響がなければそのままカルタンを継続が通常ということでしょうか。それとも念のため他のリン吸着薬に変更していくのでしょうか。

Aカルタンを投与しているのは、低カルシウム血症で高リン血症などのそれなりの理由があると思われます。私の経験ではカルタン投与中に著明にリンが上がる方はそんなに多くはありません。そのようにリンの上がりやすい方には他のリン吸着薬に変更していただき、血清Ca濃度を上げる必要があるなら活性型ビタミンDの増量などの工夫が必要と思います。


Q.リンを健常者並みにコントロールした方が予後が良いという報告も見かけましたが、先生はどの様に考えますか。

A私もリンを健常者並みにコントロールした方が予後が良くなると思っています。食事が十分摂れないためにリンが低い方はやせて栄養状態が不良なため、アルブミン濃度も低下し免疫能も低下しますので、感染症などによる死亡率が高くなります。そのため総合的なデータでみるとリンの低い人は死亡率が高くなります。ただしもしも十分な栄養をしっかり摂れている人であれば、3.5~5.0mg/dL程度の低い方がいいです。低すぎはよくありません。


Q.リン吸着力が強い薬剤がたくさん出てきているのに、レナジェルやキックリンの10錠以上/回を選択する理由にどんなことが考えられますか。 

Aそれは患者さんが下痢気味なのでこれらのポリマーを選ばれたのか、医師の好みか、患者さんの好みかによると思います。鉄が充足していて(フェリチン<300ng/mL)、リオナ、ピートルが投与できない、ホスレノールはむかつきがあるため服用できないなどの問題があるのかもしれません。


Q.腎機能CCrが40台 70代高齢の患者様で徐々に腎機能低下しているのですが、便秘の症状があり酸化マグネシウムが1日3回でよく効いていたのですがどの程度腎機能が下がったら他の薬剤に切り替えるのがいいのでしょうか?血清マグネシウム値などを見ながら考えればよろしいのでしょうか?

A血清マグネシウム値をモニターしながらなら、酸化マグネシウムは腎不全患者さんにでも透析患者さんになってでも使えます。ただしさすがに3~6g/日の大量を処方する医師はいないはずです。血清Mg濃度の基準値は1.8~2.6mg/dLとなっていますので、2.6mg/dLを超えると「高マグネシウム血症」と決めつけてはいけません。透析患者の血清Mg濃度は2.7-3.0mg/dLで有意に全死亡が低下したという報告(図11)、高リン血症に伴う心血管死亡リスクの上昇は、血中Mg濃度の低い群(血清Mg濃度<2.7mg/dL)では顕著であったが、血中Mg濃度が高くなるにつれてリスクは軽減され、特に血中Mg濃度高値群(血清Mg濃度≧3.1mg/dL)では血中リン濃度が上昇しても死亡リスクは有意な変化を示さなかった(図2)という報告があります2)。さらに血清Mg濃度が低いほどインスリン抵抗性が大きくなることも報告されています3)。Mgは心血管病変を防ぐために重要な元素なのです。ただし定期的なモニターをしていない施設では高マグネシウム血症(図3)を避けるため、腎機能低下患者にMg剤を漫然と投与すべきではありません。

 

 

 

 

引用文献
1)図説 我が国の慢性透析療法の現況 2014年12月31日現在
2)図説 我が国の慢性透析療法の現況 2015年12月31日現在
3)Chutia H, Lynrah KG: J Lab Physicians 7:75-78, 2015

 10月18日に開催された群馬腎薬「CKD患者さんの療養指導~透析導入を減らすための薬剤師からの処方提案~」では質疑応答の時間が取れなかったために、ブログ上で質問に答えさせていただきます。


Q.急性腎不全患者で入院した患者の内服薬について。薬の用量の考え方が難しいです。3剤ほど減量の提案をしたのですが「元々の腎機能は正常な患者なので問題ありません」との回答でした。

A.急性腎不全というのは急性腎障害(AKI)の中でも重篤なものとして考えると、急性腎不全時によって腎機能が急激に低下して一時無尿になったとしても、血清クレアチニン(Cr)値はすぐに下がってくれないことがあるため、急性腎不全時発症直後の腎機能の評価はむつかしいです。通常は血清Cr値によるeGFRでは腎機能が過小評価されますので、腎排泄性薬物の過剰投与が危惧されます()。

 

 

 

 ただし脱水などによっておこる軽度の腎障害の場合、医師の判断では急性腎障害になったけれど回復しつつあるという判断をされたのかもしれません。たとえば、いつものCCrは50以上だったけど、今回だけ、明らかな脱水によるAKIで一時的にCCr<30になっただけなのに「メトホルミンは禁忌ですので中止してください」という疑義照会をしたら、医師から怒られたという話をよく聞きます。病態を十分、観察して検査値の動きを把握しておけばこのようなことは起こらないですね。

 例えばSGLT2阻害薬を投与されている患者の腎機能が今回だけ下がっても、副作用が起こるわけではなく「効きにくくなる可能性がある」だけですから、疑義照会は熟慮してやりましょう。CCr<30で禁忌の薬があった時、29になったという1回の検査値のみで疑義照会をする「デジタル薬剤師」にならないよう注意したいものです。


Q.血圧を下げすぎるとeGFRが下がるとのことですが、降圧薬の服用をしていない低血圧の体質のCKD患者さんは血圧を100/50くらいにあげた方がいいのでしょうか。

A.血圧を下げすぎると当たり前にeGFRが下がるのではなく、正確にはSPRINT studyで収縮期血圧を120mmmHg以下に下げた群でeGFRが低下した症例が有意に多かったということです。血圧を下げすぎるとみんなeGFRが下がるわけではありません。

 高血圧を放置すると腎硬化症によって高齢者になると腎機能が悪化することはふつうにあります。ただしこの状況を通り過ぎて、さらに高齢になると心機能が低下して血圧を上げることができなくなって腎血流が低下します。心腎連関といいますね。このような状態であれば動脈硬化は進行していて収縮期血圧は高いものの、拡張期血圧が低い、つまり脈圧が大きくなります。収縮期血圧が高いので、血圧を下げたいのですが、拡張期血圧が低すぎて降圧薬を使いにくくなります。

 低血圧は低血圧症状のある人に対しては治療が必要ですが、無症状の人であれば治療する必要はありません。駆出率の低い心不全になったために血圧が下がった(血圧を上げる力がなくなった)症例に、RAS阻害薬やβ遮断薬を投与すべきかとなると、非常に悩ましいと思います。循環器医のご判断にお任せするしかないと思います。


Q.アセトアミノフェン750〜1000mg/回を推奨というお話がありましたが、これは体重50kg程度として考えてよろしいでしょうか。

A.体重50kg以上として考えてください。80歳以上の高齢女性で35kgなんて症例では500mgでも十分だと思います。


Q.心不全治療でfantastic fourとして注目されているARNIですが、RAS阻害薬に比較して腎障害作用が少ないとの一部データもあるようです。平田先生の見解はいかがでしょうか。

A.ARNIに関しては今のところ心不全に対する報告のみで、そのサブ解析でARNIのCKD予防作用はSGLT2阻害薬単独よりも明らかになっています血清クレアチニンの0.3 mg/dLを超える増加(AKI)および/またはeGFRの25%以上の低下,ESRDの発症,または腎死の複合アウトカムではARNIはRAS阻害薬群に比し、有意に優れていました(RR 0.84; 95% CI 0.72-0.96, p = 0.01;)。

 

 

 

 しかし降圧作用がARNI>RAS阻害薬だし、ARNIはANPやBNPを産生させるため利尿作用も強いことから、AKIには要注意かもしれません。上記のデータはあくまで複合アウトカムですので。カリウムの上昇はRAS阻害薬よりもやや軽度みたいです。

引用文献: Xu Y,et al. Front Pharmacol 2021 Nov 19;12:604017.


Q.トリプルワーミーを見た瞬間に疑義紹介するべきですか?

A.弱った高齢者のトリプルワーミー処方に関しては疑義照会すべきです。ただし、ちゃんと理論武装して、資料を見せて、医師に納得してもらわないと、その後のトリプルワーミー処方の減少にはつながらないと思います。ぼくが保険薬局薬剤師だったら電話で疑義紹介した後、論文を持参して医師とディスカッションしに行きます。


Q.米国と日本のCVDリスクと透析導入の差については医療制度の違いなどが影響しているのでしょうか?

A.アジア人はインスリン分泌量が少ないので、太りにくい。そして米国での食事摂取量や摂取カロリー量ははとても多いので肥満患者が非常に多いです。米国では心筋梗塞・心不全による死亡ががんよりも高いのは肥満が最も心血管病変リスクになっているためと思っています。貧しい人ほど安価なファストフードを食べざるを得ないので貧困者の方が肥満になりやすく、貧しいがゆえに保険を持っていない事によって心血管病変を起こしても十分なケアができないこともその理由だと思います。米国の医療レベルは非常に高いものの、先進国の中で皆保険制度がない国は米国だけといわれていますので、米国人のCVDリスクが高いのはおっしゃる通り医療制度も関与していると思われます。


Q.エンパグリフロジン開始初期はeGFR低下前か低下後、どちらの値で腎機能評価を行うほうが良いのでしょうか?

A.SGLT2阻害薬の投与によって腎機能は少しだけ低下しますが(効きすぎると腎機能が悪くなりすぎて投与しにくい人もいますが・・・)、過大評価も過小評価もされていないのですから低下後、その時の腎機能をそのまま用いるべきだと思います。


Q.腎保護作用についてはナトリウム利尿との認識でしたが、スライドの中でATPの消費量が影響しているのでしょうか?

A.最近の研究でSGLT2阻害薬のNa利尿は初期だけで、持続しないと言われています。おそらく腎でのNaを調整する機構が関わってSGLT2阻害薬によるNa利尿を調整しているのだと思います。ただし尿細管上皮細胞内のNa過剰は確実に起きていますので、SGLT2阻害薬による近位尿細管上皮細胞内でのNaポンプを回すためのATPの消費量軽減は、弱った腎臓を休ませてくれる可能性は大いにあると思っています。


Q.トリプルワーミーの論文間でリスク比がだいぶ違うのですが、その理由はどのようなことでしょうか?

A.トリプルワーミーの論文間で使っているNSAIDs、利尿薬、RAS阻害薬がみんなばらばらだからオッズ比に差があるのは当然です。NSAIDsだけでもセレコキシブのように腎機能に影響が少なく、心血管病変を起こしにくいものもありますが、ピロキシカムやメロキシカムのように半減期の長いオキシカム系は一般的に腎障害も胃障害も強いです。利尿薬だってサイアザイド系とループ利尿薬では利尿作用ははるかにループ利尿薬で強いですから、差が出て当然でしょう。また対象患者が日本人のように高齢者がほとんど、しかも後期高齢者が多いとなるとオッズ比は高くなりますから、対象患者の年齢や人種が異なることによって結果が異なることも考えられます。

 SGLT2阻害薬のように併用によって急性腎障害が少なくなったという報告は前向きの大規模RCTのメタ解析によるものですから、リスク比・ハザード比がより均一なデータとして表れますが、トリプルワーミーの報告は薬剤師による後ろ向きの報告も多く、前向きの大規模RCTはほとんどないと思います。


Q.エンレストのバルサルタンの作用と抗利尿効果にNSAIDsを併用することはTriple Whammyとなるとお考えでしょうか。

A.エンレストもRAS阻害作用を持つので狭義のRAS阻害薬と考えていいと思います。それにNa利尿ペプチドの作用増強が加わりますので、降圧作用・利尿作用はRAS阻害薬より強く、カリウム上昇はRAS阻害薬よりも弱いです。となると脱水・降圧による腎機能悪化には気を付けるべきなので、Triple Whammyのリスクがあると今のところは考えています。ただしARNIはGFRを上げて腎保護作用を示すことからSGLT2阻害薬のようにAKIを予防する効果が出てくるかもしれませんが・・・・・。


Q.循環器疾患においてPCI後など低用量アスピリンを使用することが多く、RAS阻害薬が推奨されたりARNIが使用されるようになっております。その場合、心不全患者では既にダブルワーミーとなる場合が多くあると思います。やはりそういった患者様も腎障害リスクは高くなるのでしょうか?

A.心筋梗塞後で梗塞部位の大きければ心不全は必発です。心不全ではRAS阻害薬またはARNIの投与が必須になります。PCI後は低用量アスピリンを含めた2剤の抗血小板薬の併用は12か月は必要です。低用量アスピリンが腎機能を悪化させるかどうかは不明ですが、心不全の自覚症状が強くなれば利尿薬が必要になりますので、これらの薬物療法のそれぞれが腎障害リスクを上げる可能性があります。また心腎連関によって心不全自体が腎機能を悪化させます。

 

第 18回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
広げてみようTDMの世界
~薬剤師が主役になれる薬物療法~

 

講演中にいただいた質問


沼津市立病院 平野雄一先生

Q1.腎機能が分からないときにシスタチン Cの依頼をしますが、返ってくるのが遅いです。その間のバンコマイシンの投与はどうすればよいのでしょうか?

A.おそらく腎機能低下患者にバンコマイシンを投与して数回目のトラフ値を測定していると思いますが、「測定したトラフ値が高いということは投与量が多すぎた=腎機能を高く見積もりすぎた」ということを表します。どの程度高かったかによって腎機能の見積もりの甘さを推測できます。バンコマイシンは尿中排泄率90%の薬ですので、腎機能の不明なときに投与するのは怖いことですが、逆にバンコマイシンの血中濃度測定によって、ある程度の腎機能をつかむことができます。多くの場合、高齢で栄養状態不良で活動度の低い患者さんがMRSA感染症に罹患しやすいのですが、このような症例では筋肉量が少ないために血清Cr値が低いので推算腎機能が高く見積もられるために用量過多になることが多いと思います。24時間畜尿による実測CCr(×0.715でGFRとして利用可能)またはシスタチンCによるeGFRの絶対値が分かれば、その後は血清Cr値が上昇しつつあるのか、低下しつつあるのかによって腎機能を追うことができます。


Q2.当院での
TDMの実施はバンコマイシンだけで終わっているが、次にやるとすれば何がおすすめですか?

A.バンコマイシンのTDMをやっているのであれば、抗菌薬のTDMを極めることから始めてはいかがでしょうか。テイコプラニン、アルベカシン、アミノグリコシド系抗菌薬、それに加えてボリコナゾールのTDMも開始すれば、院内でICTやAMT(抗菌薬適正使用推進チーム)で活躍できると思います。

 ちなみに私の場合、1994年に100床以下の病院でも病棟での服薬指導業務を開始できるようになってから、通常のTDM対象薬の抗菌薬、ジゴキシン、テオフィリン、抗不整脈薬、抗てんかん薬、シクロスポリンに加えてアセタゾラミド、アシクロビルなどのTDM対象薬以外もHPLCを用いて測定することで、数か月で20種類近くのTDMを一挙に開始しました。薬剤科の人数は4~5人なのでHPLCを使用する薬物は担当性、つまりアシクロビルの依頼が来れば私が、ジソピラミドなどの抗不整脈薬の依頼が来ればAさんが研究室で前処理をして、検体をHPLCのある薬剤科に持って帰って分析していました。薬物動態的な解析(透析患者がほとんどなので解析ソフトはありません)をしたうえでのコメント記載は病棟でその患者さんの服薬指導担当者が記入することとし、最終的には私が内容をチェックしてからA4サイズの測定コメント付きの結果をカルテに貼付していました。つまり全員でTDMを担当していました。

 TDMを開始する以前は仕事が終わってから午後6時くらいになって、ようやく研究(透析患者の中分子尿毒素、カテコラミン濃度の経時的変化、セレンなどの微量元素に関する研究)を開始できましたが、それはとても辛かったのです。でも透析患者のTDM自体が珍しかったこともあり、「原著論文が通常業務の一環として書ける」ということはとてもおいしいことだと思いました。



講演中にいただいたチャットでの質問


たかだ調剤薬局 永石潤先生

Q.TDM対象の薬剤の副作用の確認は行っていますが、先生はその他に薬局薬剤師に望むことはありますか?

A.クリニックの門前でも薬物濃度を測定することがあるはずです。ワルファリンだってINRを測定して、相互作用などによって異常値になることがよくあると思います(INRによるワルファリンの投与設計も広義のTDMといえます)。ジゴキシン、テオフィリンが当たり前に投与されていた1990年代には薬局薬剤師がTDMの解析をしていますという学会発表もありました。

 例えば糸球体腎炎でシクロスポリンやタクロリムスの投与をしたり、抗てんかん薬を投与して血中濃度を測定することはクリニックでもあることだと思います。でもシクロスポリン濃度がいつもは100~200ng/mLだったのが800ng/mLになっていたらドクターは怖くなって投与中止してしまうかもしれません。実は単にトラフ値ではなく飲んだ直後のα相の採血だったというようなシンプルな間違いだと思いますが、薬物動態や相互作用に強くないドクターではやりがちなことです。だからクリニックでのTDMの解析やワルファリンの適正使用のお手伝いを申し出てはいかがでしょうか?

 抗てんかん薬などもいのですが、くれぐれも濃度が低いだけで患者さんの病態を見ずに増量を申し出ないでください。抗てんかん薬の有効治療域には個人差がありますし、前回の薬剤師塾「薬物動態」で説明したように蛋白結合率低下によって、総クリアランスが低下するため、総濃度は低下しますが遊離型濃度は不変なことが多いので薬効は変化しないのです。患者さんを十分見ないで「血中濃度を直す」ことをTDMとは言いません。Therapeutic drug assayに過ぎません。Therapeutic drug monitoringによって患者さんの病態を観察して「患者さんを治す」ためにやっているのが本来のTDMですから。



国保多古中央病院 木内陽子先生

Q.全く基本的な質問ですが、トラフ採血を次回投与前の時間で代用してはいけないでしょうか。

A.トラフ値は、通常、次回投与直前の採血が望ましいとされています。一番低い濃度、つまりトラフ(谷底の意味)値ですから。



飯塚病院 田先由佳先生

Q.ガイドラインの改訂でCKDでのテイコプラニンの使用が増えそうな気がしました。あまり使用経験がないものの安全なイメージなのですが、副作用などのモニタリングのポイントはありますか?

A.僕もテイコプラニンのどの副作用をマークすべきなのかよくわからないくらい安全なイメージを持っています。だから副作用として聴覚障害や肝障害や腎障害など言われていますし国家試験にも出題されていますが、これらの経験をされた医師・薬剤師は非常に少ないと思います。蛋白結合率90%ですが、低アルブミン血症や尿毒症では蛋白結合率が低下し、遊離型のクリアランスが増大して総濃度は低下します。このことについての詳細はテイコプラニンが6種類の混合物であるため不明ですが、これによる増量によって起こった有害反応の例をあまり聞かないので、やはり安全性の高い薬物と考えてよさそうです。

 ポイントは半減期が長いので初回負荷投与を躊躇しないことだと思います。新しいガイドライン2022でも腎機能に関わらず初日10~12mg/kgを2回、2日目10~12mg/kgを2回、3日目10~12mg/kgを1回で初回負荷投与をやっているって、初日からなんで1回2000mg程度の負荷投与をしないんだろうと思っています(平田の個人的な感想です)。初日の1回10~12mg/kgでは初日から有効濃度になるとは思えません。感染症は急性疾患ですから初日から効果を示さず、2~3日目から有効濃度になるようなやり方は、いい加減のやめてもらいたいと思います(これも平田の個人的な感想です)。

 それからバンコマイシンによる腎障害が心配な症例、心内膜炎,骨関節感染症などの炎複雑性感染症では,目標トラフ値20~40 µg/mL(通常は15~30)を考慮します。バンコマイシン、テイコプラニン無効な症例ではリネゾリドやダプトマイシンなどをうまく使い分けてください。



講演後のアンケートでいただいた質問


熊本赤十字病院薬剤部 古庄 弘和先生

Q.90歳35㎏のサルコペニア高齢者にVCMを投与した症例において、シスタチンCの測定を考慮するとありましたが、私自身はどのような状況であれ、あまりシスタチンCの測定自体を医師に提案したことがありません。シスタチンCは保険診療請求で3月に1回しか測定できなかったり、外注で制約が多かったりするためです。腎機能が悪くなってしまった状態や、AKI発生により腎機能が変動している段階での測定では意義も低いように感じます。

 サルコペニア高齢者であってもVCM開始のタイミングで測定を提案するには抵抗があり、シスタチンCはどういった患者にどのタイミングで測定を提案するべきでしょうか?

A.サルコペニア患者では血清Cr値による腎機能の絶対値は全く役に立ちません。だから実測CCrの測定か、それが無理ならシスタチンCの測定を、私は推奨しています。でも実際には沼津市立病院の平野先生への Q1 の回答と同じく、「測定したトラフ値が高いということは投与量が多すぎた=腎機能を高く見積もりすぎた」ということを表します。どの程度高かったかによって腎機能の見積もることができますので、これで十分対応できるように思います。

 何もないときにシスタチンCの測定依頼をすることはあり得ないので、どのタイミングかといえば、VCM投与開始時になると思います。AKI発症により腎機能が変動している段階での測定ではシスタチンCの測定意義が低いのはおっしゃる通りです。古庄先生が医師にシスタチンC測定依頼を躊躇されるのはなぜ?僕はおそらく「シスタチンCってなに?」という医師がほとんどだからじゃないかと思います。腎臓内科医はもちろん測定経験がありますが、泌尿器科の先生はシスタチンCをもちろん知っていますが、測った経験者は非常にまれで、他科の先生はほとんどが「シスタチンCってなに?」という先生がほとんどだと思いますから。それでも何例かでも測定していただくことができれば、シスタチンCによるeGFRと血清Cr値によるeGFRあるいは推算CCr×0.789によるeGFRの乖離を体感できると思います(でもこのような場合、一番信頼できる腎機能マーカーは実測CCrだと思っています)。

 バンコマイシンを投与する対象は多くの場合、高齢で栄養状態不良で活動度の低い患者さんがMRSA感染症に罹患しやすいので、このようなときに薬剤師がもっと医師にシスタチンCの測定を当たり前に依頼するようになれば、3か月に1回のみという制限も撤廃され、検査費用も1回1000円以上という価格も安くなるのではと思うのは私だけでしょうか。



松戸市立総合医療センター 井上大樹先生

Q.いつも大変貴重なご講演ありがとうございます。講演の中で、バンコマイシンやアミノグリコシドのピーク値採血のタイミングのお話がありましたが、病態や腎機能障害の有無、投与方法などにより分布相の延長や短縮などが発現する場合はございますでしょうか。ご教授いただけますと幸いです。

A.アミノグリコシド系抗菌薬の分布は細胞外液のみですので、末梢の毛細血管から間質液の移行にはほとんど個人差はないように思います。浮腫があると分布容積は増大しますが、ほぼ瞬時平衡に近いと思いますので分布相の時間の個人差はほとんどないでしょう。

 バンコマイシンでは静注投与後の分布は各臓器によってさまざま濃度が異なりますから、病態や体格の個人差はありえると思いますが、具体的にそれらについて論じた報告はないと思います。「vancomycin×prolonged distribution time」で一応PubMed検索してみましたら何と21論文がヒットしましたが、決定的な論文は見つかりませんでした。

 ただしUpToDateではバンコマイシンの分布容積に関しては「Adults: 0.4 to 1 L/kg (ASHP/IDSA/SIDP [Rybak 2009]); 0.3 to 0.5 L/kg in patients who are morbidly obese (Adane 2015; Bauer 1998; Hong 2015).」と記載されており、肥満患者ではVdが非常に小さいそうです。同じくUpToDateによるとピーク値測定について以下の記載がありました。「点滴終了後1~2時間を分布後のピーク濃度(Cmax)としているものの、定常状態に近い投与間隔での分布後ピーク濃度が望ましい」という記載は前半部分(赤字)と後半部分の内容(緑字)が著しく矛盾していますね。

UpToDateのTiming of serum samplesでの記載

投与1~2時間後に測定した分布後ピーク濃度(Cmax)と投与間隔の終了時に測定したトラフ濃度(Cmin)の2つの血清濃度の収集が必要である。定常状態に近い投与間隔での分布後ピーク濃度及びトラフ濃度を用いることが望ましい(可能であれば)。ベイズ法による AUC モニタリングでは、定常状態の血清濃度を必要としない(ASHP/IDSA/PIDS/SIDP [Rybak 2020] )。



≪ 2022.10.08 ≫  I&H平田塾「基礎から学ぶ心房細動治療薬と症例」での質問

Q.どの不整脈薬がどのタイプの不整脈に効果的という考え方がよく分かりません。1b群の抗不整脈薬が上室性の頻脈に効かない理由について心房筋の活動電位持続時間は短い為、APDを短くする1b群は効かないと聞いた事がありますがこの理解で合っていますか?

A.Vaughan-Williams分類Ⅰb群の中でもアプリンジンは上室性不整脈に効きますが、リドカイン、メキシレチンは心室性不整脈のみにしか効きません。その理由はおっしゃる通り「心房と心室ではAPDが異なり心房で短いためリドカイン、メキシレチンが心房のNaチャネルと結合できる時間は限られているので、不活性化状態にある時間が短い心房筋では効きにくい」で合っています(私も詳しくないです。ごめんなさい)。

 心筋梗塞後の心室性不整脈患者にⅠc群の抗不整脈薬を投与すると不整脈に起因する心停止やすべての心停止がプラセボ群に比し有意に高かったという1991年のCAST study以降、循環器医による抗不整脈薬の投与は少なくなりました。致死的な心室性不整脈(心室細動、心室性頻拍、低心機能または肥大型心筋症に伴う心房細動)にアミオダロンなどを使わざるを得ないようなケースなど、極めて危険な不整脈にまれに処方することはありますが、危険な不整脈に関しては薬物療法以外のデバイスが進歩していますので、近年、循環器医が抗不整脈薬を投与することは多くはありません。ということで私自身は「薬剤師が不整脈という幅広い病態をすべて理解する必要はないけど、心房細動は心原性脳塞栓、心不全への移行が非常に怖いのでよく理解しておこう。あとはQT延長を起こす抗不整脈薬(ベプリジル、Ⅰa群、Ⅲ群のすべて)、WPW症候群による心房細動でレートコントロール薬の投与は心室細動に移行するため投与してはいけないなど、薬剤師が知っておくべきポイントをつかんでおけばいい」と大学での薬物治療学の講義で教えてきました。


平田への講演依頼に関しましては平田のメールアドレス
hirata@kumamoto-u.ac.jp までお気軽にご連絡ください。

 第19回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年11月12日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 登録していただいた方には再放送を繰り返し視聴できるようになりました。ただし、再放送は質疑応答のQ&Aはありません。今回のテーマは「腎機能悪化を防ぐこれからのtriple therapy~SGLT2阻害薬、ARNI、MRAの適正使用について考える~」です。

 SGLT2阻害薬の腎保護作用、心保護作用は皆さんご存知の通り。でもこれに加えてARNIのサクビトリル/バルサルタン、MRAのフィネレノンはCKD腎機能悪化を防ぐtriple therapy(三種の神器と呼ぶ方もありますね)として欧米の腎関係学会で話題沸騰中です。これにβ遮断薬を加えるとfantastic fourという駆出率の低下した心不全治療の決め手となります。残念ながらわが国では今のところCKD患者への適応はないのですが、かなり近い将来、triple therapyは透析導入を減らすための重要な切り札になると平田は考えています。

 今回はやはりSGLT2阻害薬が中心ではありますが、ARNI、MRAの情報も先取りしちゃいましょう。SGLT2阻害薬が腎保護に効く究極のメカニズムって何なの?併用したら薬剤性腎障害が心配じゃない?MRAの併用で高カリウム血症は怖くないの?どんな副作用が起こりやすいの?副作用を防ぐための薬剤師の服薬指導は?など、様々な疑問について考えてみたいと思います。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書くんだという大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

第 17回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
物性から薬物動態を理解してみよう
~「動態=薬の顔・特徴」だと思えば難しくない(2)~

 

チャットでの質問について
質問を4ついただきましたが、その内容をコピペし忘れておりました。そのため、一部、どの先生からの質問かが不明になってしまいました。申し訳ありません。


①チャットによる質問

高田調剤薬局 永石 潤先生

Q.デエビゴ(レンボレキサント)は半減期が長いのですが、頓服でも有効でしょうか?

A.断っておきますが、私は、向精神薬の薬理についてはあまり詳しくありません。「レンボレキサントは、2種のオレキシン受容体サブタイプ(OX1R及びOX2R)の両者に対し、競合的かつ可逆的拮抗作用 を有するオレキシン受容体拮抗剤である。OX1R及びOX2Rの両者に親和性を示し、結合及び解離を示した(in vitro)。」とインタビューフォームにあり、これだけでは、血中濃度依存的に効果を示すかどうかは分からないのですが、血中濃度依存的と仮定してお答えさせていただきます。

 初回投与時から効きますので、頓服でも効くはずです。でないと不眠症治療薬として臨床使用できるはずがないと常識的に考えます(インタビューフォームには「不眠症患者に対するレンボレキサント投与により、客観的評価による夜間後半部分の中途覚醒時間の短縮が認められた」とあります)。レンボレキサント10mg単回投与時の消失半減期は56.15時間と長いのですが、10mg投与後のCmaxが2時間で約36ng/mLですが、投与5時間足らずには約15ng/mL未満に低下しており、半減期は約3時間未満になります(図:インタビューフォームより)。ただしその後、血中濃度は非常に緩やかに消失し、24時間後もゼロにはなっていません。ですからレンボレキサントは1-コンパートメントモデルに適応する薬物ではなく、マルチコンマートメントモデルに適応するのだと思います。消失半減期は長いのですが、分布が終了する前のα相の濃度が高くなるため、催眠作用を示すのではないでしょうか。あくまで私の予想ですが・・・・。

 ベンゾジアゼピン系のニトラゼパムやジアゼパムも半減期はそれぞれ、26時間、20~70時間ととても長いですが、早朝覚醒しにくいような薬ではありません。
この図のように採血を何度も行うと、薬物によっては2コンパートメント、3コンパートメント以上の薬物があり、消失相もβ相だけではなく、γ相やδ相が認められることがあります。例えばアミノグリコシド系抗菌薬のゲンタマイシンは、薬物によって抗菌力や抗菌スペクトルは異なるものの、薬物動態は同一のパラメータを使えます。例えば腎機能が正常であれば半減期は1~4時間ですが、採血ポイントを増やすと血液から間質液に移行するα相(半減期は極めて短い)が認められますし、いわゆる臨床での消失相のβ相(1~4時間)が認められ、長期投与すると腎臓の近位尿細管上皮細胞に蓄積して、中止後、しばらくしても、腎臓に蓄積した薬物がじわじわと排泄されるため、半減期100時間のγ相が認められることがあります。この観察だけでもアミノグリコシド系を長期投与することが薬剤性腎障害のリスクであることが理解できますね。

 あくまで個人的な予想ですが、分配係数log P=3.7と極めて使用性の高い薬物であるため、中枢か脂肪組織などに蓄積したレンボレキサントが、じわじわと溶出して肝代謝されているのかもしれません。


②アンケートによる質問

高田調剤薬局 永石 潤先生

Q.デエビゴは反復投与でのCmaxが単回投与に比べて高くなりますが、頓用でも有効と考えて良いでしょうか?それとも連用すべきなのでしょうか?

A.私は薬理学の専門家ではないし、向精神薬についてはあまりよく知りませんので推測に過ぎないのですが、頓服で無効、連用しないと効かないような薬物は臨床で睡眠導入薬としては使い物になりませんから、レンボレキサントは頓服でも有効だと思いますし、連用しなくても効く薬だと思っています。でないと不眠治療薬としては使い物にはなりませんから。

 確かにインタビューフォームを見ると10mgを14日間反復経口投与後のピーク濃度は70.2ng/mL で初回投与時のピーク濃度46.5ng/mLの2倍足らずになっています。これによってずっと眠ってしまうような薬物であれば、不眠治療薬としては不適格で、鎮静剤としてしか利用できないはずです。だからこの薬の薬理作用は血中濃度と相関しにくいメカニズムがあるのではないかと思っています。

 たとえば抗血小板薬のアスピリンは不可逆的にシクロオキシゲナーゼを、PPIも不可逆的にプロトンポンプを阻害するため、血中濃度がゼロになっても薬効が持続するような薬物がありますし、抗うつ薬のように薬物の血中濃度とは無関係に2~3週間経過してから効果を表し始める薬物もあります。このように、薬物によっては必ずしも血中濃度と薬効がパラレルな関係にならないものもあります。

 これらの回答はあくまで個人的な意見ですが、インタビューフォームの「治療の関する項目」「薬効薬理に関する項目」を見ると様々な臨床効果について記載されており、Cmaxが高くなることによる不利益はあまりないように思います。


③チャットによる質問

Q.定常状態になるまで薬物の効果が発現しないのでしょうか?

A.血中濃度依存的に薬効を示す薬であれば、半減期ごとの投与間隔で投与するとすれば、1回投与しただけで定常状態の50%になります。TDMの対象薬のように有効治療濃度域が狭い薬物でも、目標濃度の1/2で全く効かない薬は少ないと思いますので、多くの薬が1回目でも効果があると思います。ただし2回目の方が、よりよく効くでしょうし、3回目の方がもっと効くはずですが、定常状態になるとそれ以上投与しても効果は望めません。これは先述のように血中濃度依存的に薬効を示す薬の場合です。

 頓服で効果を示す薬が多くあるように、定常状態にならなくても効果が発現するものも多くあります。またフロセミドのように半減期が0.3~1.5時間と短い薬は、初回投与時から定常状態になっていると考えてよいでしょう。

 また前問②のようにたとえば抗血小板薬のアスピリンは不可逆的にシクロオキシゲナーゼを、PPIも不可逆的にプロトンポンプを阻害するため、服用後の時間がかなり経過して、血中濃度がゼロになっても薬効が持続するような薬物がありますし、抗うつ薬のように薬物の血中濃度とは無関係に2~3週間経過してから効果を表し始める薬物もあります。また講演でお話ししたようにアミノグリコシド系やキノロン系などでは血中濃度がゼロになっても殺菌効果が持続するpost antibiotic effect(PAE: 抗菌薬残存効果)が認められることがあります。


④チャットによる質問

Q.バンコマイシンの血中濃度が上がらない人がいます。どのような理由が考えられるのでしょうか?

A.ICUに入院している若年男性では、血管作動薬が投与されたり、全身熱傷で大量輸液などをすると、ARC (augmented renal clearance: 過大腎クリアランス)といって腎機能が高くなってバンコマイシンなど腎排泄性抗菌薬の血中濃度が上がらないため、効かないことがあります。これらの患者では実際にGFRが150~200mL/minと高くなるため、1.5~2倍以上投与しないと血中バンコマイシン濃度が十分上がりません(図1)。

 また糖尿病の初期の男性でもGFRが150mL/minになることはふつうに見られます。これは血糖値が非常に高いため、近位尿細管でSGLT2が過剰発現してブドウ糖とNaを一生懸命再吸収するため、尿細管腔中のNa濃度が低下し、それを感知したマクラデンサが輸入細動脈を拡張するという「尿細管糸球体フィードバック異常」になり、糸球体過剰濾過が起こるためです(図2)。そのためこの状態を放置しておくとアルブミンが尿中に漏出し腎機能が悪化するのが典型的な糖尿病性腎症です。それを防ぐためにRAS阻害薬やSGLT2阻害薬の投与が推奨されています。この状態でも腎機能が高いため尿中排泄率90%と総クリアランスの90%が腎クリアランスを占めるバンコマイシンの血中濃度は総クリアランスの増大によって上がりにくくなります。血中濃度=投与量/総CLですからね。

 これらの方々は血清Cr値が男性なのに0.5mg/dL程度と低く、eGFRが150~200mL/min/1.73m2になることがありますが、これは痩せた高齢者のように腎機能が過大評価されたのではなく、実際に腎機能が高いのです。


⑤チャットによる質問

Q.妊娠中の体重増加時には推算CCrの式に標準体重を用いてよいのでしょうか?

A.妊娠時には血圧が上がり、腎血流も妊娠前に比し約30%上がり、GFRも妊娠前に比し50~60%程度上昇し、糸球体に負担がかかるため妊娠高血圧腎症になることがあります。そのため、血清Cr値はほぼ半減しますが、これは腎機能が過大評価されているためではなく、実際に腎機能が高くなっているためです。しかも妊娠第1期、2期、3期と腎機能が変化する可能性があります。ただし妊娠時に腎排泄性の薬物を投与することはまれでしょうが、感染症か何かでしょうか?「何のために腎機能を知る必要があるのか?」について、もう少し情報が欲しいところです。妊娠時の腎機能の推算について聞かれたのは私にとって初めての経験ですが、妊娠時の腎機能把握するための標準は24時間畜尿の実測CCrになります。

 でもそれは簡易に測定できるものではありませんので、「pregnancy × estimation of renal function × body weight」でPubMed検索したところ、85論文がヒットしましたが、「CG式の計算式には妊娠前の体重を使用した。(140 – 年齢 × 体重 [kg] × 0.85)/72 x 血清Cr (mg/dL). CCrについては第1期26例、第2期33例、第3期21例、産後15例を比較し、蛋白排泄については第1期16例、第2期29例、第3期15例、産後15例を比較検討した。3つの期間を合わせたCCrの実測値(105±40mL/分[平均±SD])は、CGクリアランス(113±52mL/分;r = 0.87)と有意な相関があった。」1)と記載されていますので、妊娠前の体重を用いるのがよいかもしれません。r=0.87ということは臨床で確実性は必ずしも高くはないけれども参考にできると思います。

 その他の論文2)では妊娠時の腎機能をCG式、MDRD式、CKD-EPI式を用いた腎機能と胎児の大きさを調べた報告では、おそらく何も特別な記載がないので、実測体重が使われていると思います。

 また妊婦の血清シスタチンC値は、妊娠第1期には0.89±0.12mg/lと高値を示し、第2期には0.651±0.14mg/lと有意に減少し(第1期と比較してp = 0.0000)、第3期には0.82±0.191mg/lに再び上昇した。出産後は0.94 +/- 0.12 mg/lに上昇した。血清シスタチンCと血清Crの間に強い相関が認められた。女性ではGFRとシスタチンC値との間に強い負の相関が認められた(r = -0.546, p = 0.000)。GFRとシスタチンC値の間には直線的な関係が認められたという興味深い報告もありましたが、どの体重を用いたかは不明です3)

 妊婦の実測CCrと各予測法で算出された推算CCrの間には計的に有意な強い相関が認められ、徐脂肪体重を用いると有意に低くなるが、実測値により近いクリアランス推定値が得られたという報告もありました4)

 ただし、正確な腎機能を知りたい場合には、実測CCrを測定することをお勧めします。

引用文献
1)Quadi KH, et al: Assessment of renal function during pregnancy using a random urine protein to creatinine ratio and Cockcroft-Gault formula. Am J Kidney Dis 1994; 24: 416-420
2)Morken NH, et al: Maternal glomerular filtration rate in pregnancy and fetal size. PLoS One. 2014 Jul 8;9(7):e101897. doi: 10.1371/journal.pone.0101897. eCollection 2014.
3)Babay Z, et al: Serum cystatin C in pregnant women: reference values, reliable and superior diagnostic accuracy. Clin Exp Obstet Gynecol. 2005; 32: 175-179.
4)Sawyer WT, et al: A multicenter evaluation of variables affecting the predictability of creatinine clearance. Am J Clin Pathol. 1982; 78: 832-838.


⑥アンケートによる質問

手束病院 楠本倫子先生 

Q.以前バンコマイシンの血中濃度について質問させて頂きました。今日も説明して頂いたのでとてもよく理解できました。臨床の現場では、日本化学療法学会のPATと言うソフトを使っています。ピーク値は点滴終了後2時間の値だとすれば、このソフトに入力する時もピーク値として入力した方が良いでしょうか?点滴終了後2時間後と言う選択肢もあるので、迷いますが。

A.ごめんなさい。PATというソフトを使ったことがありませんので、よくわかりません。僕は透析患者のバンコマイシンのTDMをやっていましたので、ソフトは使えなかったので、使った経験がありません。

 透析患者では非透析時半減期200時間と非常に消失が遅いため、点滴終了後2時間の採血をピーク値としても大過ありませんが、腎機能がよければトラフ値と消失相に入った点滴終了2時間以降の2点の延長線と点滴終了時の交点をピーク値とすべきでしょう。


⑦アンケートによる質問

森之宮病院 力石慶子先生 

Q.低alb血症ではバルプロ酸の血中濃度が上がりにくいと思いますが、増量を続けていくうちに血中濃度が有効血中濃度まで上がってきました。この場合、血中濃度と効果をどう評価すべきでしょうか。組織へはかなり分布してしまうのでしょうか。血中濃度の割に傾眠はでやすいでしょうか。

A.バルプロ酸はフェニトインと逆の非線形薬物動態を示し、投与量が増えるほど、低アルブミン血症や尿毒症でも総血中濃度が上がりにくくなります。それで副作用がなく、てんかん発作が抑えられていればよいのですが、血中総濃度が低いからといって、増量すると遊離型濃度のみ上昇しますので、危険です()。総濃度のみを測定するTDMを実施することによって薬剤師が増量を提言して、副作用が起こってしまう最悪のパターンが想定されます。理想的にはアミコンフィルターを使ってフリー濃度を測定することをお勧めします。総濃度の有効治療域は50~100µg/mLで、腎機能正常者であれば蛋白結合率は90%と考えて、有効治療濃度が5~10µg/mLに入れるのが基本です。ただし抗てんかん薬は有効治療域以下でもコントロールできている人もあれば、有効治療域以上でも副作用を起こさずてんかん発作をコントロールできている人もいます。ですから、有効治療域にこだわるよりも発作が抑えられていて副作用が起こっていなければ、通常は投与量を変更しない方がよろしいかと思います。てんかんの専門医はそのようにしているはずです。


⑧アンケートによる質問

北見赤十字病院 加藤理愛先生

Q.知識不足でお恥ずかしいのですが、非腎クリアランスが上昇することでどんな問題が生じるのでしょうか?

A.ごめんなさい。お恥ずかしいのは私の方でした。最後のスライド「今回の研究のヒント」で、「末期腎不全患者では非腎クリアランスが上昇する」と書いており、言い間違いを連発していました。非腎クリアランスの「上昇」ではなく、「低下」です。訂正させていただきます(訂正版の図)。

 2000年より以前では腎排泄性薬物では腎機能に応じて薬物投与量の減量をすればそれでよかったのです。そして、もちろん肝代謝型薬物は腎不全患者では減量をする必要はありませんでした。しかしFDAも日本の厚労省もメーカーに腎不全患者に投与したときの薬物動態を提示するよう求めたことから、様々な肝代謝薬物の血中濃度が末期腎不全患者で上昇することや腎排泄性薬物であってもGiusti-Hayton法で推測された腎機能別用量では血中濃度が上がってしまう薬物があることが明らかになってきました。

 例えばサインバルタのように尿中排泄率がゼロであっても高度腎障害患者に投与すると血中濃度が2倍になるため投与禁忌になっているような薬物が少なからずあります。この理由はおそらく尿毒素が蓄積したため、代謝酵素のCYP2C9や排泄トランスポータのP-糖タンパク質などの発現量やmRNAの発現量が低下して、薬物の代謝・排泄が低下するためと考えられています。ですから、高度腎障害、末期腎不全など、腎機能がかなり低下してから尿毒素が蓄積して血中濃度が上昇することが多いと思います。これらは非腎クリアランスの低下によって末期腎不全患者では血中濃度が上昇します。


平田への講演依頼に関しましては平田のメールアドレス hirata@kumamoto-u.ac.jp までお気軽にご連絡ください。

 第18回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年10月8日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 登録していただいた方には再放送を繰り返し視聴できるようになりました。ただし、再放送は質疑応答のQ&Aはありません。今回のテーマは「広げてみようTDMの世界~薬剤師が主役になれる薬物療法~」です。

 このタイトルの通り、患者さんの病態を考慮し、薬物動態パラメータを使いこなしてTDMを実施すれば、薬物の血中濃度が自由自在に操れます。そうなると薬剤師にとって最も重要な仕事である「有効かつ安全な薬物療法」が可能になります。TDM対象薬も70種類近くに増えつつあります。うまくTDMを活用すれば、薬剤師が主役になって薬物療法を先導することができるようになるでしょう。

 でもこの素晴らしくやりがいのある業務が薬剤師の間に広がっていないのはなぜ?バンコマイシンだけで終わっている薬剤師が多いのはなぜ?20種類くらいの薬物のTDMを実施してきた平田にとっては本当に不思議でならないことなのです。今回はTDMを通して薬剤師らしい仕事ができるようになれるよう、TDMの活用例、うまくいくコツなどについて解説させていただきたいと思います。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書くんだという大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

 第17回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年9月10日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 登録していただいた方には再放送を繰り返し視聴できるようになりました。ただし、再放送は質疑応答のQ&Aはありません。今回のテーマも「物性から薬物動態を理解してみよう~「動態=薬の顔・特徴」だと思えば難しくない~(2)」です。つまり前回の続編になります。1回目を受講した方は、そのままでは消化不良ですので、続編もぜひご覧ください。そういえば薬物動態は熊本大学でも薬剤師塾でテーマにしていましたが、90分×4コマでしたので、1回で理解してもらうのはやはり無理がありました(反省…)。ということで、今回は血中濃度の推移を頭の中で描けるようになるために知っておくべき3つの式について、それも加減乗除だけで計算できる簡単な式を理解してもらいましょう。

 そしてワルファリン投与患者にNSAIDsが投与されて、重篤な消化管出血。この原因はなになのか?この処方の組み合わせは腎機能低下患者で危険なのはなんで?

 今回は動態パラメータを使いこなして、薬剤師らしい仕事ができるようになれるよう、実は薬物動態学の苦手な平田が、このテーマについて話させていただきたいと思います。

 今回は動態パラメータを使いこなして、薬剤師らしい仕事ができるようになれるよう、実は薬物動態学の苦手な平田が、このテーマについて話させていただきたいと思います。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書くんだという大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)