ミネラルコルチコイド拮抗薬MRAのスピロノラクトンが重症心不全の死亡率を30%も下げることを報告したRALES試験後に処方頻度が4.38倍に上昇し、それによる高カリウム血症による死亡者が6.7倍に増加したことが問題になった。腎機能低下患者ではすべてのMRAで重篤な副作用である高カリウム血症の懸念はあるし、心不全、CKDともにほぼRAS阻害薬と併用されるので、腎機能もわかっていない高齢者などに外来で投与するのは問題だ。MRAを使うのであれば、入院患者でしばらく観察して高カリウム血症になりにくい症例であることを確認してから退院させる、あるいはケイキサレートⓇやロケルマⓇなどのカリウム吸着薬を併用するなど万全な配慮が必要だろう。ところでST合剤(バクタⓇ)とスピロノラクトンの併用は高カリウム血症による入院リスクを12.4倍、突然死リスクを2.45倍上昇させるって知ってた?第3世代MRAのフィネレノン(ケレンディアⓇ)の構造はなんとCa拮抗薬と同じジヒドロピリジン骨格を持っていて、性ホルモン様作用が少なく、糖尿病性腎症のアルブミン尿を減少させるだけでなく、高カリウム血症も従来薬に比し軽い。



PPIは意外とアレルゲン性が高く、アレルギー性の急性間質性腎炎になりやすい(図1)。免疫チェックポイント阻害薬と併用すると、重症のアレルギー性の腎障害が起こりやすい(図2)が、これらは用量依存的ではない。長期投与で問題なのはPPIによる毒性ではなく、胃酸分泌抑制による諸問題なのだ。まず下記の4つの副作用に注意しよう。①胃酸分泌の抑制による腸内細菌叢の変化によってクロストリジオイデス・ディフィシル(CD)腸炎などの多剤耐性菌のコロニー形成のリスクになる(図3)、②Mgの吸収障害による重度の低マグネシウム血症により、QT延長、心停止を起こす可能性がある。TdP (Torsades de pointes)発症患者の半数以上が低マグネシウム血症でTdP発症群の血清Mg濃度は低く、PPI服用中にTdP発症群の血清Mg濃度はさらに低いことが報告されている(図4)③胃酸分泌抑制によって吸収されにくくなる薬物がある(アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール、HIV抗レトロウイルス薬のリルビビビン、アザタナビル、チロシンキナーゼ阻害薬のダサチニブなど)④PPI長期投与によってビタミンB12の吸収障害(PPIを常用している平田も欠乏レベルに近かった)。
そのほかにも様々な報告がある。Ca吸収障害による骨折のリスク増加、種々のがんリスク上昇、肺炎のリスク上昇、認知症悪化リスク上昇など様々だが、これらは矛盾するデータも多く、交絡因子の影響を受けているものが多いので確立されていない。本当にPPIの必要な患者さんに対して、再生回数を増やすために、明確になっていない副作用、薬の怖さだけ強調する医療系SNSには気を付けよう。





これから暑い夏、トリプルワーミー処方や活性型ビタミンDを服用している患者さんにはこまめな飲水よりもより積極的な飲水励行をしよう。そして保険薬局や在宅でも簡易に脱水を早期発見するには、「爪毛細血管再充満時間(CRT:Capillary refilling time)2~3秒以上」の特異度が高いことを知っておこう。もともとこれはトリアージ(災害時などで誰を優先的に治療するかの順位を決める)で循環機能を簡易的に判定する指標で,爪を5秒間加圧した後に解除し,爪の赤みが回復するまでの時間(Blanch test)。2秒以上なら、緊急治療群(Ⅰ:赤)とするトリアージに用いる手法である。2秒未満なら、循環に関しては問題ないと判断される(3秒とすることもある)。McGeeらは脱水症の判定に応用した循環血漿量が減少しているかどうかを簡易に見つける特異度の高い方法として報告した。右手で左人差し指のつま先をつまんでみよう。ピンク色の爪が一瞬、白くなるが、2秒以上白いままだと脱水(末梢循環の不良)が疑われる。これは特異度、つまり脱水がない患者で症状が現れない確率が95%と高い。口腔粘膜の乾燥は感度、つまり脱水が存在する時に出現する確率(脱水を見逃さない確率)が85%と高いことを覚えておき、どちらも高ければ脱水と簡易診断可能だ。そのほかにも体重減少・血圧低下もとても良い参考になる。輸液の専門家はなぜか、皮膚の張り(skin turgor)を参考にするという人が多いけど高齢者ではしわが多いのでもともと張りがないので平田は高齢者にはあまり使わない。


日本腎臓病薬物療法学会前日の前夜祭として、10月31日(金)17時30分から20時30分までの3時間にわたり、虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された平田塾「薬物動態学を好きになれないあなたへ」のQ&Aです。
Q.緩和医療ではジクトルⓇテープが使われていることが多くなりました。緩和ケア領域の患者さんでは高度の低アルブミンの方が少なくありません。ジクロフェナクの蛋白結合率は99.5%と極めて高く低アルブミンでは遊離型が大きく増えるのではないかと考えています。さらにジクロフェナクは腎の臓器濃度が他の臓器に比べて1〜2桁高かったと思います。ジクトルⓇテープなどのジクロフェナクは低アルブミンの患者さんでは腎障害のリスクが著しく高くなるのではないかと心配しており、栄養状態の悪い患者さんでは避けた方がいいものか、お教えいただければと思います。
A.まずジクロフェナクのPKパラメータを日腎薬グリーンブックから、調べてみましょう。その時に平田の考察(この薬ってどんな顔をしてるんだろう?)も記載します。
CL: 経口投与時CL/F: 6.0mL/min/kg
単位が分かりにくい。F54%が正しいなら、緩和領域なので軽めの50kgの体重とすると、300mL/min×0.54=162mL/minとなり脂溶性薬物としては意外と小さいと感じる。でも脂溶性薬物出汁2C9の基質だからCLの個人差が大きいと思うので、この値を信じて積極的に使うと痛い目に合うかもしれないので使う気にはなれない。
Vd: 靜注で0.17L/kg
意外と小さいが、PBRが高すぎるためアルブミンにトラップされて血漿濃度が高くなるため、組織に移行しにくいためと解釈される。Vdは安定した値で臨床では非常に使い勝手が良いパラメータだ。
fe: 尿中未変化体回収率6.7%
尿中排泄されないと考える。10%以下であれば数値はどうでもよい
F: 54%
吸収率は意害と低い。脂溶性薬物なのにほんとかなと疑う。
PBR: 99.5%、主にアルブミンと結合
この質問の中では重要なパラメータ。これがVdが小さい原因!ただしこれは健康成年男子のデータであり、投与する患者は高齢者が多いことを知っておく必要がある
t1/2β: 1.2-1.5hr
速く効く。シャープな切れ味はこの半減期の短さにある?ただしすぐに痛みが再発しそう。初日から定常状態になる
PK/PD関連情報: CYP2C9により水酸化体となり、その後グルクロン酸抱合体となる ワルファリンと絶対併用しちゃいけないことが分かる
特記事項: 主要血管イベントのリスク上昇に関連する NSAIDsの中では心血管リスクが高いので気を付けよう!
質問の回答ですが、低アルブミン血症患者に投与すると確かに遊離型分率(フリー体の割合)が上昇するため、何倍量かを投与したのと同じになるはずと思っている方は多いと思います。ではジクトルⓇテープが使われている患者さんでは顕著な有害反応が起こっているでしょうか?低アルブミン血症患者でと顕著に副作用が起こっているという報告はあまりないように思います。もし起きているとすれば、低アルブミン血症患者が高齢者で低栄養・低体重などの他の要因が関係しているのではないでしょうか?講演の時に申しましたようにPKパラメータの多く(グリーンブックも同じです)はインタビューフォームを引用していますので、多くは第1相試験で対象となるのは「成年健常男子」なのですが、実際に使われる患者さんは多くが高齢者です。だから上記のパラメータも使われる患者さんに翻訳する必要があります。遊離型が高いのでPBRは低い。でも増えた遊離型は組織に移行しやすいし(Vdが大きくなる=血中濃度の振れ幅が小さくなる)、遊離型のみが代謝されるので代謝による消失も早い(CLが大きくなる)ので、副作用に関係する血中遊離型濃度は皆さんが危惧するほど、上がらないのではないかと思います(図)。NSAIDsによる副作用は腎内濃度とは関係ないと思います。ということで「低アルブミン血症患者にジクトルⓇテープを使っても副作用が起こるとは考え難い」という回答になります。

図の解説:上は健常者で下が低アルブミン血症患者です。上の濃いピンクが遊離型薬物で間質液濃度=遊離型濃度ですから5個あります。下の血漿中のアルブミンの数が減ってますので、遊離型薬物の数は増えますが、速やかに組織に移行し、全身循環に乗って肝代謝・腎排泄され、クリアランスが上昇します。そして最初の遊離型濃度と同じ5個になって平衡状態になります。遊離型濃度が同じということは薬効は変化せず、副作用も起こしません。一般的に分布における相互作用はありますが、それが有害反応に結び付いたという報告はほとんどないと思います。ただしこの時点でTDMをやると総濃度が低下しているため、薬剤師が医師に増量を依頼してしまうと有害反応が起こるということは想定できます。
Q.今年も薬剤師塾、ありがとうございました。蛋白結合した薬物はどのくらいの時間が経過したら離れる、などありますか?薬によって異なるものですか?その場合、一時的に遊離型の薬剤が増えて、薬効が強くなる、ようなことはありますか?TDMをするときはそのようなことは考えなくても大丈夫でしょうか?
A.薬物とアルブミンの結合はくっついたらくっつきっぱなしではなくくっついたり、離れたりを繰り返しながら平衡状態を保って一定の蛋白結合率を保っています。すでに投与されている薬物をAとします。アルブミンとの結合を競合する薬物で投与量が多く、アルブミンとの親和性が高い薬物Bが併用されるとAの遊離型分率は高くなり(PBRは低下する)ますが、遊離型薬物は代謝・排泄クリアランスが上昇し、組織への移行性も向上して血中濃度が低下して、併用前と同じ遊離型濃度になって新たな平衡状態になりますので、薬効には変化ありません。つまり有害反応は起こりませんが、TDMをすると、TDMでは通常は総濃度しか測定しないので、遊離型濃度は同じでも総濃度が低下しているので、薬剤師が投与量の増加を依頼すると副作用が起こる可能性があります。
Q.透析患者のバンコマイシンのTDMについて質問です。初回25〜30mg/kg 維持量7.5〜10mg/kgが現在の推奨量かと思いますが、この通りに投与しても血中濃度が低い場合、再度、負荷投与の必要がありますが、投与量の計算方法は何かありますでしょうか?
個人的な考えですが、バンコマイシンの分布容積を0.7L/kg(私の持っている書籍に記載されてました)、透析除去率を20%とします。(調べると10〜30%と記載されてるいので間をとって)推奨投与量の初回30mg/kgを投与するとCmaxは静注モデルで43程度になると思います。例えば透析前の血中濃度が8だったとすると、20%除去されて6.4。Cmaxを43にしたいので、37ほど血中濃度を上げたい。37×分布容積=投与量として投与。以後、有効血中濃度になったら維持量(10mg/kg)を投与。
一応、このような計算で症例数は少ないですが、有効血中濃度に保つことができましたが、この考え方は間違っていますでしょうか?
また、初回投与終了直後の血中濃度をとると、血中濃度と投与量から正確な分布容積を計算することができるかと考えますが(状態により変化することもあると思いますが)、血中濃度をとる意義はあるとお考えでしょうか?長々とすいません。よろしくお願いいたします。
A.僕は初回負荷投与が好きなんです。特に抗菌薬では早く治してあげたいので。だからバンコマイシンのように透析患者では投与間隔が長くなるので初回は20-25mg/kgなどの「恐る恐る投与する」のではなく心置きなく30mg/kgを投与していました(バンコマイシンの投与設計は主治医から任されていましたので)。でも2013年12月にメーカーもMeiji Seikaファルマからパンフレット作製を依頼された時にはやむを得ず25mg/kgで作成しました(平田作成の図)。抗菌薬の投与量はTDMの結果によって増減しますので、血中濃度が予想よりも著しく低い場合、増量してください。どれくらい増量すべきなのかはデータも患者さんも診ていないので僕にもわかりません。

Vd0.7L/kgは点滴修了後1時間のα相に採血したデータなので僕は使いません。バンコマイシンは分布するのに2時間以上かかりますので、0.9-1.0L/kgだと思います。だから僕の考えではCpeakが43まで上がることはありません。
Q.とてもわかりやすいご講演ありがとうございます。質問です。今回ニューキノロン系はAUC/MICの薬剤でレボフロキサシンが1日1回投与を学びましたが、しかし、ニューキノロン系薬剤のシプロフロキサシンは添付文書では1日3回投与となっています。これは古い薬剤なので1日3回投与のままとなっているのでしょうか?
A.抗菌薬適正使用ガイドラインの投与方法は添付文書にのっとって作っているわけではありません。そして新たなエビデンスが得られてガイドラインが変わっても、よほどのことがない限り添付文書が改定されることはありません。シプロキサンも耐性菌を生じないように投与を続けたいのであれば1日1回投与すべきだと思います。査定されればエビデンスとなるガイドラインや論文を保険者に提出すれば査定は取り消されます。
Q.キノロンの分布容積の所で急性前立腺炎の場合は炎症により、血管透過性の増加でセフェム系でも治療するのは前立腺の表面の炎症及び菌をやっつけているイメージ、慢性化する場合は前立腺奥まで必要だから脂溶性のキノロン、ST合剤であっているでしょうか?
A.感染症は炎症性疾患ですから、血管透過性の亢進は常に起こると思います。でも血管透過性の亢進が薬物投与に関係するのはβラクタム系委抗菌薬かアミノグリコシド系抗菌薬などの細胞外液に分布する薬物です。前立腺炎の場合はやはり移行性が高いキノロンやST合剤が用いられるようです。感染形態のイメージはよくわかりません。ごめんなさい。
Q.ご講演ありがとうございました。アルベカシンについて確認です。入退院を繰り返す心不全患者で、アルベカシンを心不全増悪しておる入院初期に使うときでは、前回などの退院時のむくみのない体重に0.3L/kgをかけて、その後に浮腫んでいる分を足してVdとすれば良いですか?
A.正解です。現在の浮腫で増加している体重分+0.3L/kg×体重でVdとします。
Q.心不全の退院時は入院時と同じものを出すとまたすぐ入院するので、ループ系を増量したり、トルバプタンを入れたりして利尿剤を強化してお帰りいただくイメージがあります。先生のご講演では同じ量だと脱水というのは、食指不振で薬だけ飲んでいた患者さんだった可能性などございませんでしょうか? 心保護のエンレストやSGLT2阻害薬は利尿効果もあり、ループ系利尿剤など減量できる可能性があると言われておりますが、それらを上手に入れたりしなければ進行性の病気ということもあり、入院時と退院時でフロセミド、アゾセミドを減らせないと考えておりますがどうでしょうか。不躾な質問ですみません。いろいろ考えることができてとても素敵なお時間をありがとうございました。
A.食思不振で吸収速度は変わっても吸収率はあまり変化しないのでは?「フロセミドは消化管浮腫によって著明にバイオアベイラビリティが低下する」というのは動態の教科書によく載っている定説です。消化管浮腫があればフロセミドのFは大きく低下しますし、消化管浮腫が消失すれば、フロセミドは70%近く吸収されます。入院時とか退院時とかではなく消化管浮腫の有無によって、フロセミドの吸収率は変化しますので。浮腫が消失していれば利尿薬は必要ないのに、フロセミドを投与すれば当然、脱水になります。
Q.レボドパをパーキンソン病で頻回に投与することがあります。こう言った脳に移行しやすい薬について、1日何回投与したら良いか、予測することは可能でしょうか?
A.ごめんなさい。僕は万能ではありません。向精神薬についてはほとんど知りません。腎臓の専門家で精神科・心療内科の薬について強い人はいないのです。向精神薬の投与設計をどうすればよいのか見当がつきません。
Q.保険薬局で服薬指導をしていると、外来で血中濃度測定をあまりしない医院の処方にしばしば出会います。例えば炭酸リチウムは、効果が安定したら同量がずっと続く場合があります。高齢者の双極性障害患者であっても、です。薬剤師から医師たちに警鐘を鳴らしたいのですが、どういった危険性がありそうでしょうか?
A.僕は向精神薬についてはほとんど知りません。申し訳ありません。
Q.平田先生、体調のせいか声が小さかった。特に、語尾。お大事にしてください。
A.できれば元気はつらつの姿をお見せしたかったです。僕も、この点はほんとに残念。頭痛もあったので頭の回転もよくなかったです。ごめんなさい。ご心配をおかけしましたが、とにかく早く寝ることを心掛けると2日後の11月2日の早朝には皇居1周5kmのコースを楽に完走できるほど元気になりました。
日本腎臓病薬物療法学会前日の前夜祭として、10月31日(金)17時30分から20時30分までの3時間にわたり、虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された平田塾「薬物動態学を好きになれないあなたへ」に参加された方々の感想です。
日々の仕事の中で、薬剤師として考えないといけない事が有りすぎます。患者さんの治療と向き合える為にも、腎機能の勉強は続けたいです。
平田先生ご自身が経験した症例を用いて説明してくださり、とても分かりやすく興味が持てました。
先生のご講演を聞くことで薬剤師である事を実感しています。ありがとうございます。
大変参考になりました
資料を用意していただいたので聞くことに集中でき、後で見直すこともできます。ありがとうございます
大変勉強になりました。私の専門とする緩和ケアでも役立てられそうです。
先生のパッションが伝わってくる講演でした。初回投与で効果を出したい薬剤については、薬物動態パラメーターを使うと投与量を予測できること、つまり薬を使いこなせることがよく分かりました。お声がマイクに入っておらず聞き取りづらかったです。
ご公演ありがとうございました。とても勉強になりました。
大変参考になるありがたいお話でした。ありがとうございます。機会があれば是非CRRTなどにおける薬物動体や投与設計の考え方など伺いたいです
時間が足りなかったところが残念でした(仕方ないことですが)。今度ブログなど拝見します。
苦手とする分野なのでとても勉強になりました。薬物動態の考え方、捉え方の目安がなんとなくですが見えた気がします。
会場の関係で途中で終わってしまい残念であった。最後まで御拝聴したかったです
今日一日で、薬剤師としてかなりレベルアップしたと思います。ありがとうございました。
薬物動態学は苦手意識がありましたが、久しぶりに学び直せて大変勉強になりました。アセトアミノフェンの用量については、たしかに現場では過小投与の症例が多いので増量も視野に入れるべきだなと思いました。ありがとうございました。
何回も参加させてもらっていますが、資料がいただけて、だいぶ楽に聞けるようになりました。
ただ満席だったら資料が足りないなと思い、早く来て良かったです。
大学の講義で学んだような薬物動態の基礎をもう一度思い出すことが出来ました。ありがとうございました。
実際にお会いできて大変光栄でした。日頃の業務に活かせるように邁進します。ありがとうございました。
もう少し時間拡大できるとありがたいと思います。お体ご自愛ください。
深く掘り下げるには、どうしたら良いのかと考えました。画一的になりすぎていることを反省しました。高齢者の筋肉量は減少している可能性もあると考える一方で、そこまで悪くない場合もあると考えて、セフェム系抗菌薬等は極力多めに投与していますが、気づいていない副作用がでてるのか…?心配になりました。TMAOの話は職場で広めます。3時間聴講出来るか最初心配でしたが、気づいたら終わっていました。ありがとうございました!
動態を分かりやすく、とっつきやすい形に示していただき、敬遠してしまっていることに対して少し距離を縮められたと思います。
薬物動態パラメータを活用することは、薬剤師の強みになることなので、さらに理解を深めたいです。
先生がきっかけで動態学が面白くなってます。今回も勉強になりました。
貴重なご講演をありがとうございました。
カロナールが高用量で処方されている患者さんがいますが、今日の講演で納得がいきまいた。平田塾も拝聴したいと思います。
疼痛時のアセトアミノフェンの投与量が全然少なかったということに衝撃を受けました。今度、医師にも伝達して見直しを図りたいと思います。
いつも楽しい講演をありがとうございます。
私も薬物動態は苦手ですが、以前、先生のご講演を拝聴してから、食わず嫌いをせずに頑張ってみようと思い、少しずつ苦手を克服しています。まだまだ難しいと感じていますが、薬物動態を知ることで、グリーンブックの使い方が分かるようになりましたし、IFをより活用できるようになりました。今回、資料の内容全てを教えていただくことが出来ず、残念です。機会があれば残りについてもぜひご講演いただきたいと思います。
初めて参加させていただきました。
自分は薬剤師2年目で最近、病棟に本格的に入り始め、腎機能や分布容積等を考慮して投与設計をすることの重要性・難しさをまさに今感じているところです。本日先生のご講演を聴講し、目を向けるポイント、考え方、必要な知識が分かり投与設計のイメージを掴むことができ、とても勉強になりました。大学で学んだ薬物動態学の重要性を改めて感じ、再度学び直していこうと思いました。
本日はお忙しい中、貴重なご講演をありがとうございました。
初めて聴講しました。色々な視点を学べてよかったです、ありがとうございました
平田先生、体調のせいか声が小さかった。特に、語尾。お大事にしてください。
2025年12月開催の平田の薬剤師塾のお知らせです。
第60回平田の薬剤師塾 初級編は「Triple whammyを防げ!」です。
薬剤性腎障害シリーズの1回目は「Triple whammyを防げ!」。RAS阻害薬+利尿薬+NSAIDsの
◆12月11(木)開催「Triple whammyを防げ! 」
お申し込みは こちら から
【申込期限:講演会開始直前まで】
【定員:300名】
第61回平田の薬剤師塾 中級者編「バラシクロビル腎症・脳症を防ぐ!」です。
薬剤性腎障害シリーズの2回目は「バラシクロビル腎症・脳症を防
◆12月18(木)開催「バラシクロビル腎症・脳症を防ぐ!」
お申し込みは こちら から
【申込期限:講演会開始直前まで】
【定員:300名】
通常、腎排泄性の薬物ってリーマスⓇやゾビラックスⓇ、アミノグリコシド系やβラクタム系の抗菌薬のように水溶性で、蛋白結合率が低く、分布容積が小さい薬が多いイメージを持っているよね。これらは透析でよく抜けるから過量投与してもいざというときには透析で救命できるから怖くない。これは常識!だけど中に例外がある。ジゴシンⓇ、シベノールⓇ、シンメトレルⓇの3つの薬物だ。3つとも腎排泄性なので腎機能低下患者に減量せず投与すると当然、致死的な有害反応が起こる可能性が高いハイリスク薬だが、分子量も大きくないし蛋白結合率も高くないけど、分布容積が5.0L/kg以上あるため、透析で抜けない。透析だけじゃない、CHDFを含むあらゆる血液浄化法が無効だから救命できない。だから初回投与設計を間違えないことがとっても重要なんだけど、残念ながら医師にこの能力はない。動態をよく知っている薬剤師であれば初回投与設計を間違えないはず、薬剤師の力の見せ所なんだ。


バラシクロビルで無尿になって急性腎障害で緊急入院、たいていの患者は小柄な高齢女性へのバラシクロビルの過量投与だ。腎障害だけでなく、ろれつが回らないアシクロビル脳症を併発していることが多いので、血液透析を2日以上連続して施行すると、2回目の透析中に目を覚ましたように意識障害が消失することがよくある。透析でアシクロビルが抜けたからだ。じゃあどんな薬物中毒の時に血液透析が有効なの?
血液透析で除去されにくい薬物の共通点は蛋白結合率PBRの高い薬物、脂溶性の高い薬物、腎排泄性の低い薬物、分布容積Vdが大きい薬物、分子量の大きい薬物。もっと具体的には、①PBR>90%以上の薬物は血液透析によって除去されない(図1)、②分布容積Vd>2.0L/kgの薬物は除去されにくい(図2)、③PBR>80%かつVd>1.0L/kgの薬物も除去されにくい。たいていの肝代謝型薬物は上記の性質を持っているので透析では抜けないが、まとめるとこうなる(図3)。逆にアシクロビルの蛋白結合率は30%程度で低いし、分布容積Vdは0.7L/kgと体内水分量に近いくらい小さいし、分子量は225Daしかないから透析でよく抜けるんだよね。詳しくは薬物除去率予測式 を参照してね。



①ステージ4以降(eGFR<30mL/min/1.73m2)にまで腎機能が低下すると、②尿中へのリン排泄低下が起こり、FGF23というホルモンが骨から分泌されて、血液中のリンを減らそうとして、尿からのリンの排泄を促す。③ビタミンDの活性化がFGF23によって抑制される。④血清リン濃度の上昇、⑤ビタミンDの活性化障害によって腸管からのCa吸収能が低下して、低カルシウム血症になる。⑥血清Ca濃度が低下すると副甲状腺ホルモン(PTH: parathyroid hormone)が過剰に分泌されて骨吸収が増加(骨からCaを溶け出させる)ため、骨塩量が低下して骨がスカスカになって脆くなる。⑦これを線維性骨炎と言うが、同時に血中に溶出したCaとリン酸が血管に沈着して石灰化を起こす(図1)。この一連の流れを「慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD: mineral bone disease)」と言う。
その治療の基本は①リン、②Ca、③PTHの順にコントロールするのが鉄則。腎機能が低下して最初に上がるのが血清リン値、血清Ca値、血清intact PTHだからだ。PTHは骨の代謝回転を上げる悪玉のように言われるが、この中では3番目に重要。また図2には左からリン、Ca、PTHの折れ線グラフは全死亡ハザード比、棒グラフは透析患者の各濃度の人口分布を示すが、ハザード比の振れ幅が大きい、つまり血清濃度が高くなると全死亡ハザード比が高くなる順は明らかに①血清リン値、②血清Ca値、③血清intact PTH値の順だ。だからこの順に正すべきというのが鉄則なのだ。ではそれらの適正濃度は①血清リン値3.5~6.0mg/dL、②血清Ca値はアルブミン濃度で補正した補正Caとして8.4~10.0mg/dL、③血清intact PTH値60~240pg/mLに入るようにしよう(図3)。複雑だけど分かった?



10月16日(木)開催の、シリーズ②「慢性心不全治療の薬物療法の基本」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.平田先生、いつもわかりやすい講演ありがとうございます。
A.高齢者は患者さんによって腎機能の見方が変わります。
Q.透析導入後、フロセミドに、トルバブタン7.5㎎(または15㎎)を透析クリニックで継続する際、トルバブタンはどこまで継続すべきか、何かガイドラインとなるものがあるのでしょうか。
A.フロセミド+トルバプタンは心不全ではどうしようもない溢水、呼吸困難、ひどい低ナトリウム血症などで緊急的に併用する薬物療法だと思います。僕自身は高価なトルバプタンを透析患者に併用するのはどうだろうと思います。その理由として透析患者であれば、溢水がひどければ透析で除水すればいいし(水の引き残しがあれば、透析終了後に透析液を流さず限外濾過(ECUM)をやるのもいい)、電解質異常は透析で是正できるからトルバブタンを併用するのは水分管理がよほどひどいときだけだと思います。肝硬変による腹水や腎嚢胞などで溢水があるからフロセミドを必要とするケースなのだと思いますが、透析をやっていれば徐々に腎機能が低下して3~5年で無尿になって、フロセミドの中止はやむを得ないと思います。トルバプタンの併用はよほどの時に一時的にとどめるべきではないでしょうか。ということで、透析患者を対象にフロセミド+トルバプタンの有効性を見る試験は誰もやらないと思いますので、ガイドラインには記載されていないはずです。