第 18回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
広げてみようTDMの世界
~薬剤師が主役になれる薬物療法~

 

講演中にいただいた質問


沼津市立病院 平野雄一先生

Q1.腎機能が分からないときにシスタチン Cの依頼をしますが、返ってくるのが遅いです。その間のバンコマイシンの投与はどうすればよいのでしょうか?

A.おそらく腎機能低下患者にバンコマイシンを投与して数回目のトラフ値を測定していると思いますが、「測定したトラフ値が高いということは投与量が多すぎた=腎機能を高く見積もりすぎた」ということを表します。どの程度高かったかによって腎機能の見積もりの甘さを推測できます。バンコマイシンは尿中排泄率90%の薬ですので、腎機能の不明なときに投与するのは怖いことですが、逆にバンコマイシンの血中濃度測定によって、ある程度の腎機能をつかむことができます。多くの場合、高齢で栄養状態不良で活動度の低い患者さんがMRSA感染症に罹患しやすいのですが、このような症例では筋肉量が少ないために血清Cr値が低いので推算腎機能が高く見積もられるために用量過多になることが多いと思います。24時間畜尿による実測CCr(×0.715でGFRとして利用可能)またはシスタチンCによるeGFRの絶対値が分かれば、その後は血清Cr値が上昇しつつあるのか、低下しつつあるのかによって腎機能を追うことができます。


Q2.当院での
TDMの実施はバンコマイシンだけで終わっているが、次にやるとすれば何がおすすめですか?

A.バンコマイシンのTDMをやっているのであれば、抗菌薬のTDMを極めることから始めてはいかがでしょうか。テイコプラニン、アルベカシン、アミノグリコシド系抗菌薬、それに加えてボリコナゾールのTDMも開始すれば、院内でICTやAMT(抗菌薬適正使用推進チーム)で活躍できると思います。

 ちなみに私の場合、1994年に100床以下の病院でも病棟での服薬指導業務を開始できるようになってから、通常のTDM対象薬の抗菌薬、ジゴキシン、テオフィリン、抗不整脈薬、抗てんかん薬、シクロスポリンに加えてアセタゾラミド、アシクロビルなどのTDM対象薬以外もHPLCを用いて測定することで、数か月で20種類近くのTDMを一挙に開始しました。薬剤科の人数は4~5人なのでHPLCを使用する薬物は担当性、つまりアシクロビルの依頼が来れば私が、ジソピラミドなどの抗不整脈薬の依頼が来ればAさんが研究室で前処理をして、検体をHPLCのある薬剤科に持って帰って分析していました。薬物動態的な解析(透析患者がほとんどなので解析ソフトはありません)をしたうえでのコメント記載は病棟でその患者さんの服薬指導担当者が記入することとし、最終的には私が内容をチェックしてからA4サイズの測定コメント付きの結果をカルテに貼付していました。つまり全員でTDMを担当していました。

 TDMを開始する以前は仕事が終わってから午後6時くらいになって、ようやく研究(透析患者の中分子尿毒素、カテコラミン濃度の経時的変化、セレンなどの微量元素に関する研究)を開始できましたが、それはとても辛かったのです。でも透析患者のTDM自体が珍しかったこともあり、「原著論文が通常業務の一環として書ける」ということはとてもおいしいことだと思いました。



講演中にいただいたチャットでの質問


たかだ調剤薬局 永石潤先生

Q.TDM対象の薬剤の副作用の確認は行っていますが、先生はその他に薬局薬剤師に望むことはありますか?

A.クリニックの門前でも薬物濃度を測定することがあるはずです。ワルファリンだってINRを測定して、相互作用などによって異常値になることがよくあると思います(INRによるワルファリンの投与設計も広義のTDMといえます)。ジゴキシン、テオフィリンが当たり前に投与されていた1990年代には薬局薬剤師がTDMの解析をしていますという学会発表もありました。

 例えば糸球体腎炎でシクロスポリンやタクロリムスの投与をしたり、抗てんかん薬を投与して血中濃度を測定することはクリニックでもあることだと思います。でもシクロスポリン濃度がいつもは100~200ng/mLだったのが800ng/mLになっていたらドクターは怖くなって投与中止してしまうかもしれません。実は単にトラフ値ではなく飲んだ直後のα相の採血だったというようなシンプルな間違いだと思いますが、薬物動態や相互作用に強くないドクターではやりがちなことです。だからクリニックでのTDMの解析やワルファリンの適正使用のお手伝いを申し出てはいかがでしょうか?

 抗てんかん薬などもいのですが、くれぐれも濃度が低いだけで患者さんの病態を見ずに増量を申し出ないでください。抗てんかん薬の有効治療域には個人差がありますし、前回の薬剤師塾「薬物動態」で説明したように蛋白結合率低下によって、総クリアランスが低下するため、総濃度は低下しますが遊離型濃度は不変なことが多いので薬効は変化しないのです。患者さんを十分見ないで「血中濃度を直す」ことをTDMとは言いません。Therapeutic drug assayに過ぎません。Therapeutic drug monitoringによって患者さんの病態を観察して「患者さんを治す」ためにやっているのが本来のTDMですから。



国保多古中央病院 木内陽子先生

Q.全く基本的な質問ですが、トラフ採血を次回投与前の時間で代用してはいけないでしょうか。

A.トラフ値は、通常、次回投与直前の採血が望ましいとされています。一番低い濃度、つまりトラフ(谷底の意味)値ですから。



飯塚病院 田先由佳先生

Q.ガイドラインの改訂でCKDでのテイコプラニンの使用が増えそうな気がしました。あまり使用経験がないものの安全なイメージなのですが、副作用などのモニタリングのポイントはありますか?

A.僕もテイコプラニンのどの副作用をマークすべきなのかよくわからないくらい安全なイメージを持っています。だから副作用として聴覚障害や肝障害や腎障害など言われていますし国家試験にも出題されていますが、これらの経験をされた医師・薬剤師は非常に少ないと思います。蛋白結合率90%ですが、低アルブミン血症や尿毒症では蛋白結合率が低下し、遊離型のクリアランスが増大して総濃度は低下します。このことについての詳細はテイコプラニンが6種類の混合物であるため不明ですが、これによる増量によって起こった有害反応の例をあまり聞かないので、やはり安全性の高い薬物と考えてよさそうです。

 ポイントは半減期が長いので初回負荷投与を躊躇しないことだと思います。新しいガイドライン2022でも腎機能に関わらず初日10~12mg/kgを2回、2日目10~12mg/kgを2回、3日目10~12mg/kgを1回で初回負荷投与をやっているって、初日からなんで1回2000mg程度の負荷投与をしないんだろうと思っています(平田の個人的な感想です)。初日の1回10~12mg/kgでは初日から有効濃度になるとは思えません。感染症は急性疾患ですから初日から効果を示さず、2~3日目から有効濃度になるようなやり方は、いい加減のやめてもらいたいと思います(これも平田の個人的な感想です)。

 それからバンコマイシンによる腎障害が心配な症例、心内膜炎,骨関節感染症などの炎複雑性感染症では,目標トラフ値20~40 µg/mL(通常は15~30)を考慮します。バンコマイシン、テイコプラニン無効な症例ではリネゾリドやダプトマイシンなどをうまく使い分けてください。



講演後のアンケートでいただいた質問


熊本赤十字病院薬剤部 古庄 弘和先生

Q.90歳35㎏のサルコペニア高齢者にVCMを投与した症例において、シスタチンCの測定を考慮するとありましたが、私自身はどのような状況であれ、あまりシスタチンCの測定自体を医師に提案したことがありません。シスタチンCは保険診療請求で3月に1回しか測定できなかったり、外注で制約が多かったりするためです。腎機能が悪くなってしまった状態や、AKI発生により腎機能が変動している段階での測定では意義も低いように感じます。

 サルコペニア高齢者であってもVCM開始のタイミングで測定を提案するには抵抗があり、シスタチンCはどういった患者にどのタイミングで測定を提案するべきでしょうか?

A.サルコペニア患者では血清Cr値による腎機能の絶対値は全く役に立ちません。だから実測CCrの測定か、それが無理ならシスタチンCの測定を、私は推奨しています。でも実際には沼津市立病院の平野先生への Q1 の回答と同じく、「測定したトラフ値が高いということは投与量が多すぎた=腎機能を高く見積もりすぎた」ということを表します。どの程度高かったかによって腎機能の見積もることができますので、これで十分対応できるように思います。

 何もないときにシスタチンCの測定依頼をすることはあり得ないので、どのタイミングかといえば、VCM投与開始時になると思います。AKI発症により腎機能が変動している段階での測定ではシスタチンCの測定意義が低いのはおっしゃる通りです。古庄先生が医師にシスタチンC測定依頼を躊躇されるのはなぜ?僕はおそらく「シスタチンCってなに?」という医師がほとんどだからじゃないかと思います。腎臓内科医はもちろん測定経験がありますが、泌尿器科の先生はシスタチンCをもちろん知っていますが、測った経験者は非常にまれで、他科の先生はほとんどが「シスタチンCってなに?」という先生がほとんどだと思いますから。それでも何例かでも測定していただくことができれば、シスタチンCによるeGFRと血清Cr値によるeGFRあるいは推算CCr×0.789によるeGFRの乖離を体感できると思います(でもこのような場合、一番信頼できる腎機能マーカーは実測CCrだと思っています)。

 バンコマイシンを投与する対象は多くの場合、高齢で栄養状態不良で活動度の低い患者さんがMRSA感染症に罹患しやすいので、このようなときに薬剤師がもっと医師にシスタチンCの測定を当たり前に依頼するようになれば、3か月に1回のみという制限も撤廃され、検査費用も1回1000円以上という価格も安くなるのではと思うのは私だけでしょうか。



松戸市立総合医療センター 井上大樹先生

Q.いつも大変貴重なご講演ありがとうございます。講演の中で、バンコマイシンやアミノグリコシドのピーク値採血のタイミングのお話がありましたが、病態や腎機能障害の有無、投与方法などにより分布相の延長や短縮などが発現する場合はございますでしょうか。ご教授いただけますと幸いです。

A.アミノグリコシド系抗菌薬の分布は細胞外液のみですので、末梢の毛細血管から間質液の移行にはほとんど個人差はないように思います。浮腫があると分布容積は増大しますが、ほぼ瞬時平衡に近いと思いますので分布相の時間の個人差はほとんどないでしょう。

 バンコマイシンでは静注投与後の分布は各臓器によってさまざま濃度が異なりますから、病態や体格の個人差はありえると思いますが、具体的にそれらについて論じた報告はないと思います。「vancomycin×prolonged distribution time」で一応PubMed検索してみましたら何と21論文がヒットしましたが、決定的な論文は見つかりませんでした。

 ただしUpToDateではバンコマイシンの分布容積に関しては「Adults: 0.4 to 1 L/kg (ASHP/IDSA/SIDP [Rybak 2009]); 0.3 to 0.5 L/kg in patients who are morbidly obese (Adane 2015; Bauer 1998; Hong 2015).」と記載されており、肥満患者ではVdが非常に小さいそうです。同じくUpToDateによるとピーク値測定について以下の記載がありました。「点滴終了後1~2時間を分布後のピーク濃度(Cmax)としているものの、定常状態に近い投与間隔での分布後ピーク濃度が望ましい」という記載は前半部分(赤字)と後半部分の内容(緑字)が著しく矛盾していますね。

UpToDateのTiming of serum samplesでの記載

投与1~2時間後に測定した分布後ピーク濃度(Cmax)と投与間隔の終了時に測定したトラフ濃度(Cmin)の2つの血清濃度の収集が必要である。定常状態に近い投与間隔での分布後ピーク濃度及びトラフ濃度を用いることが望ましい(可能であれば)。ベイズ法による AUC モニタリングでは、定常状態の血清濃度を必要としない(ASHP/IDSA/PIDS/SIDP [Rybak 2020] )。



≪ 2022.10.08 ≫  I&H平田塾「基礎から学ぶ心房細動治療薬と症例」での質問

Q.どの不整脈薬がどのタイプの不整脈に効果的という考え方がよく分かりません。1b群の抗不整脈薬が上室性の頻脈に効かない理由について心房筋の活動電位持続時間は短い為、APDを短くする1b群は効かないと聞いた事がありますがこの理解で合っていますか?

A.Vaughan-Williams分類Ⅰb群の中でもアプリンジンは上室性不整脈に効きますが、リドカイン、メキシレチンは心室性不整脈のみにしか効きません。その理由はおっしゃる通り「心房と心室ではAPDが異なり心房で短いためリドカイン、メキシレチンが心房のNaチャネルと結合できる時間は限られているので、不活性化状態にある時間が短い心房筋では効きにくい」で合っています(私も詳しくないです。ごめんなさい)。

 心筋梗塞後の心室性不整脈患者にⅠc群の抗不整脈薬を投与すると不整脈に起因する心停止やすべての心停止がプラセボ群に比し有意に高かったという1991年のCAST study以降、循環器医による抗不整脈薬の投与は少なくなりました。致死的な心室性不整脈(心室細動、心室性頻拍、低心機能または肥大型心筋症に伴う心房細動)にアミオダロンなどを使わざるを得ないようなケースなど、極めて危険な不整脈にまれに処方することはありますが、危険な不整脈に関しては薬物療法以外のデバイスが進歩していますので、近年、循環器医が抗不整脈薬を投与することは多くはありません。ということで私自身は「薬剤師が不整脈という幅広い病態をすべて理解する必要はないけど、心房細動は心原性脳塞栓、心不全への移行が非常に怖いのでよく理解しておこう。あとはQT延長を起こす抗不整脈薬(ベプリジル、Ⅰa群、Ⅲ群のすべて)、WPW症候群による心房細動でレートコントロール薬の投与は心室細動に移行するため投与してはいけないなど、薬剤師が知っておくべきポイントをつかんでおけばいい」と大学での薬物治療学の講義で教えてきました。


平田への講演依頼に関しましては平田のメールアドレス
hirata@kumamoto-u.ac.jp までお気軽にご連絡ください。

 第19回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年11月12日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 登録していただいた方には再放送を繰り返し視聴できるようになりました。ただし、再放送は質疑応答のQ&Aはありません。今回のテーマは「腎機能悪化を防ぐこれからのtriple therapy~SGLT2阻害薬、ARNI、MRAの適正使用について考える~」です。

 SGLT2阻害薬の腎保護作用、心保護作用は皆さんご存知の通り。でもこれに加えてARNIのサクビトリル/バルサルタン、MRAのフィネレノンはCKD腎機能悪化を防ぐtriple therapy(三種の神器と呼ぶ方もありますね)として欧米の腎関係学会で話題沸騰中です。これにβ遮断薬を加えるとfantastic fourという駆出率の低下した心不全治療の決め手となります。残念ながらわが国では今のところCKD患者への適応はないのですが、かなり近い将来、triple therapyは透析導入を減らすための重要な切り札になると平田は考えています。

 今回はやはりSGLT2阻害薬が中心ではありますが、ARNI、MRAの情報も先取りしちゃいましょう。SGLT2阻害薬が腎保護に効く究極のメカニズムって何なの?併用したら薬剤性腎障害が心配じゃない?MRAの併用で高カリウム血症は怖くないの?どんな副作用が起こりやすいの?副作用を防ぐための薬剤師の服薬指導は?など、様々な疑問について考えてみたいと思います。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書くんだという大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

第 17回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
物性から薬物動態を理解してみよう
~「動態=薬の顔・特徴」だと思えば難しくない(2)~

 

チャットでの質問について
質問を4ついただきましたが、その内容をコピペし忘れておりました。そのため、一部、どの先生からの質問かが不明になってしまいました。申し訳ありません。


①チャットによる質問

高田調剤薬局 永石 潤先生

Q.デエビゴ(レンボレキサント)は半減期が長いのですが、頓服でも有効でしょうか?

A.断っておきますが、私は、向精神薬の薬理についてはあまり詳しくありません。「レンボレキサントは、2種のオレキシン受容体サブタイプ(OX1R及びOX2R)の両者に対し、競合的かつ可逆的拮抗作用 を有するオレキシン受容体拮抗剤である。OX1R及びOX2Rの両者に親和性を示し、結合及び解離を示した(in vitro)。」とインタビューフォームにあり、これだけでは、血中濃度依存的に効果を示すかどうかは分からないのですが、血中濃度依存的と仮定してお答えさせていただきます。

 初回投与時から効きますので、頓服でも効くはずです。でないと不眠症治療薬として臨床使用できるはずがないと常識的に考えます(インタビューフォームには「不眠症患者に対するレンボレキサント投与により、客観的評価による夜間後半部分の中途覚醒時間の短縮が認められた」とあります)。レンボレキサント10mg単回投与時の消失半減期は56.15時間と長いのですが、10mg投与後のCmaxが2時間で約36ng/mLですが、投与5時間足らずには約15ng/mL未満に低下しており、半減期は約3時間未満になります(図:インタビューフォームより)。ただしその後、血中濃度は非常に緩やかに消失し、24時間後もゼロにはなっていません。ですからレンボレキサントは1-コンパートメントモデルに適応する薬物ではなく、マルチコンマートメントモデルに適応するのだと思います。消失半減期は長いのですが、分布が終了する前のα相の濃度が高くなるため、催眠作用を示すのではないでしょうか。あくまで私の予想ですが・・・・。

 ベンゾジアゼピン系のニトラゼパムやジアゼパムも半減期はそれぞれ、26時間、20~70時間ととても長いですが、早朝覚醒しにくいような薬ではありません。
この図のように採血を何度も行うと、薬物によっては2コンパートメント、3コンパートメント以上の薬物があり、消失相もβ相だけではなく、γ相やδ相が認められることがあります。例えばアミノグリコシド系抗菌薬のゲンタマイシンは、薬物によって抗菌力や抗菌スペクトルは異なるものの、薬物動態は同一のパラメータを使えます。例えば腎機能が正常であれば半減期は1~4時間ですが、採血ポイントを増やすと血液から間質液に移行するα相(半減期は極めて短い)が認められますし、いわゆる臨床での消失相のβ相(1~4時間)が認められ、長期投与すると腎臓の近位尿細管上皮細胞に蓄積して、中止後、しばらくしても、腎臓に蓄積した薬物がじわじわと排泄されるため、半減期100時間のγ相が認められることがあります。この観察だけでもアミノグリコシド系を長期投与することが薬剤性腎障害のリスクであることが理解できますね。

 あくまで個人的な予想ですが、分配係数log P=3.7と極めて使用性の高い薬物であるため、中枢か脂肪組織などに蓄積したレンボレキサントが、じわじわと溶出して肝代謝されているのかもしれません。


②アンケートによる質問

高田調剤薬局 永石 潤先生

Q.デエビゴは反復投与でのCmaxが単回投与に比べて高くなりますが、頓用でも有効と考えて良いでしょうか?それとも連用すべきなのでしょうか?

A.私は薬理学の専門家ではないし、向精神薬についてはあまりよく知りませんので推測に過ぎないのですが、頓服で無効、連用しないと効かないような薬物は臨床で睡眠導入薬としては使い物になりませんから、レンボレキサントは頓服でも有効だと思いますし、連用しなくても効く薬だと思っています。でないと不眠治療薬としては使い物にはなりませんから。

 確かにインタビューフォームを見ると10mgを14日間反復経口投与後のピーク濃度は70.2ng/mL で初回投与時のピーク濃度46.5ng/mLの2倍足らずになっています。これによってずっと眠ってしまうような薬物であれば、不眠治療薬としては不適格で、鎮静剤としてしか利用できないはずです。だからこの薬の薬理作用は血中濃度と相関しにくいメカニズムがあるのではないかと思っています。

 たとえば抗血小板薬のアスピリンは不可逆的にシクロオキシゲナーゼを、PPIも不可逆的にプロトンポンプを阻害するため、血中濃度がゼロになっても薬効が持続するような薬物がありますし、抗うつ薬のように薬物の血中濃度とは無関係に2~3週間経過してから効果を表し始める薬物もあります。このように、薬物によっては必ずしも血中濃度と薬効がパラレルな関係にならないものもあります。

 これらの回答はあくまで個人的な意見ですが、インタビューフォームの「治療の関する項目」「薬効薬理に関する項目」を見ると様々な臨床効果について記載されており、Cmaxが高くなることによる不利益はあまりないように思います。


③チャットによる質問

Q.定常状態になるまで薬物の効果が発現しないのでしょうか?

A.血中濃度依存的に薬効を示す薬であれば、半減期ごとの投与間隔で投与するとすれば、1回投与しただけで定常状態の50%になります。TDMの対象薬のように有効治療濃度域が狭い薬物でも、目標濃度の1/2で全く効かない薬は少ないと思いますので、多くの薬が1回目でも効果があると思います。ただし2回目の方が、よりよく効くでしょうし、3回目の方がもっと効くはずですが、定常状態になるとそれ以上投与しても効果は望めません。これは先述のように血中濃度依存的に薬効を示す薬の場合です。

 頓服で効果を示す薬が多くあるように、定常状態にならなくても効果が発現するものも多くあります。またフロセミドのように半減期が0.3~1.5時間と短い薬は、初回投与時から定常状態になっていると考えてよいでしょう。

 また前問②のようにたとえば抗血小板薬のアスピリンは不可逆的にシクロオキシゲナーゼを、PPIも不可逆的にプロトンポンプを阻害するため、服用後の時間がかなり経過して、血中濃度がゼロになっても薬効が持続するような薬物がありますし、抗うつ薬のように薬物の血中濃度とは無関係に2~3週間経過してから効果を表し始める薬物もあります。また講演でお話ししたようにアミノグリコシド系やキノロン系などでは血中濃度がゼロになっても殺菌効果が持続するpost antibiotic effect(PAE: 抗菌薬残存効果)が認められることがあります。


④チャットによる質問

Q.バンコマイシンの血中濃度が上がらない人がいます。どのような理由が考えられるのでしょうか?

A.ICUに入院している若年男性では、血管作動薬が投与されたり、全身熱傷で大量輸液などをすると、ARC (augmented renal clearance: 過大腎クリアランス)といって腎機能が高くなってバンコマイシンなど腎排泄性抗菌薬の血中濃度が上がらないため、効かないことがあります。これらの患者では実際にGFRが150~200mL/minと高くなるため、1.5~2倍以上投与しないと血中バンコマイシン濃度が十分上がりません(図1)。

 また糖尿病の初期の男性でもGFRが150mL/minになることはふつうに見られます。これは血糖値が非常に高いため、近位尿細管でSGLT2が過剰発現してブドウ糖とNaを一生懸命再吸収するため、尿細管腔中のNa濃度が低下し、それを感知したマクラデンサが輸入細動脈を拡張するという「尿細管糸球体フィードバック異常」になり、糸球体過剰濾過が起こるためです(図2)。そのためこの状態を放置しておくとアルブミンが尿中に漏出し腎機能が悪化するのが典型的な糖尿病性腎症です。それを防ぐためにRAS阻害薬やSGLT2阻害薬の投与が推奨されています。この状態でも腎機能が高いため尿中排泄率90%と総クリアランスの90%が腎クリアランスを占めるバンコマイシンの血中濃度は総クリアランスの増大によって上がりにくくなります。血中濃度=投与量/総CLですからね。

 これらの方々は血清Cr値が男性なのに0.5mg/dL程度と低く、eGFRが150~200mL/min/1.73m2になることがありますが、これは痩せた高齢者のように腎機能が過大評価されたのではなく、実際に腎機能が高いのです。


⑤チャットによる質問

Q.妊娠中の体重増加時には推算CCrの式に標準体重を用いてよいのでしょうか?

A.妊娠時には血圧が上がり、腎血流も妊娠前に比し約30%上がり、GFRも妊娠前に比し50~60%程度上昇し、糸球体に負担がかかるため妊娠高血圧腎症になることがあります。そのため、血清Cr値はほぼ半減しますが、これは腎機能が過大評価されているためではなく、実際に腎機能が高くなっているためです。しかも妊娠第1期、2期、3期と腎機能が変化する可能性があります。ただし妊娠時に腎排泄性の薬物を投与することはまれでしょうが、感染症か何かでしょうか?「何のために腎機能を知る必要があるのか?」について、もう少し情報が欲しいところです。妊娠時の腎機能の推算について聞かれたのは私にとって初めての経験ですが、妊娠時の腎機能把握するための標準は24時間畜尿の実測CCrになります。

 でもそれは簡易に測定できるものではありませんので、「pregnancy × estimation of renal function × body weight」でPubMed検索したところ、85論文がヒットしましたが、「CG式の計算式には妊娠前の体重を使用した。(140 – 年齢 × 体重 [kg] × 0.85)/72 x 血清Cr (mg/dL). CCrについては第1期26例、第2期33例、第3期21例、産後15例を比較し、蛋白排泄については第1期16例、第2期29例、第3期15例、産後15例を比較検討した。3つの期間を合わせたCCrの実測値(105±40mL/分[平均±SD])は、CGクリアランス(113±52mL/分;r = 0.87)と有意な相関があった。」1)と記載されていますので、妊娠前の体重を用いるのがよいかもしれません。r=0.87ということは臨床で確実性は必ずしも高くはないけれども参考にできると思います。

 その他の論文2)では妊娠時の腎機能をCG式、MDRD式、CKD-EPI式を用いた腎機能と胎児の大きさを調べた報告では、おそらく何も特別な記載がないので、実測体重が使われていると思います。

 また妊婦の血清シスタチンC値は、妊娠第1期には0.89±0.12mg/lと高値を示し、第2期には0.651±0.14mg/lと有意に減少し(第1期と比較してp = 0.0000)、第3期には0.82±0.191mg/lに再び上昇した。出産後は0.94 +/- 0.12 mg/lに上昇した。血清シスタチンCと血清Crの間に強い相関が認められた。女性ではGFRとシスタチンC値との間に強い負の相関が認められた(r = -0.546, p = 0.000)。GFRとシスタチンC値の間には直線的な関係が認められたという興味深い報告もありましたが、どの体重を用いたかは不明です3)

 妊婦の実測CCrと各予測法で算出された推算CCrの間には計的に有意な強い相関が認められ、徐脂肪体重を用いると有意に低くなるが、実測値により近いクリアランス推定値が得られたという報告もありました4)

 ただし、正確な腎機能を知りたい場合には、実測CCrを測定することをお勧めします。

引用文献
1)Quadi KH, et al: Assessment of renal function during pregnancy using a random urine protein to creatinine ratio and Cockcroft-Gault formula. Am J Kidney Dis 1994; 24: 416-420
2)Morken NH, et al: Maternal glomerular filtration rate in pregnancy and fetal size. PLoS One. 2014 Jul 8;9(7):e101897. doi: 10.1371/journal.pone.0101897. eCollection 2014.
3)Babay Z, et al: Serum cystatin C in pregnant women: reference values, reliable and superior diagnostic accuracy. Clin Exp Obstet Gynecol. 2005; 32: 175-179.
4)Sawyer WT, et al: A multicenter evaluation of variables affecting the predictability of creatinine clearance. Am J Clin Pathol. 1982; 78: 832-838.


⑥アンケートによる質問

手束病院 楠本倫子先生 

Q.以前バンコマイシンの血中濃度について質問させて頂きました。今日も説明して頂いたのでとてもよく理解できました。臨床の現場では、日本化学療法学会のPATと言うソフトを使っています。ピーク値は点滴終了後2時間の値だとすれば、このソフトに入力する時もピーク値として入力した方が良いでしょうか?点滴終了後2時間後と言う選択肢もあるので、迷いますが。

A.ごめんなさい。PATというソフトを使ったことがありませんので、よくわかりません。僕は透析患者のバンコマイシンのTDMをやっていましたので、ソフトは使えなかったので、使った経験がありません。

 透析患者では非透析時半減期200時間と非常に消失が遅いため、点滴終了後2時間の採血をピーク値としても大過ありませんが、腎機能がよければトラフ値と消失相に入った点滴終了2時間以降の2点の延長線と点滴終了時の交点をピーク値とすべきでしょう。


⑦アンケートによる質問

森之宮病院 力石慶子先生 

Q.低alb血症ではバルプロ酸の血中濃度が上がりにくいと思いますが、増量を続けていくうちに血中濃度が有効血中濃度まで上がってきました。この場合、血中濃度と効果をどう評価すべきでしょうか。組織へはかなり分布してしまうのでしょうか。血中濃度の割に傾眠はでやすいでしょうか。

A.バルプロ酸はフェニトインと逆の非線形薬物動態を示し、投与量が増えるほど、低アルブミン血症や尿毒症でも総血中濃度が上がりにくくなります。それで副作用がなく、てんかん発作が抑えられていればよいのですが、血中総濃度が低いからといって、増量すると遊離型濃度のみ上昇しますので、危険です()。総濃度のみを測定するTDMを実施することによって薬剤師が増量を提言して、副作用が起こってしまう最悪のパターンが想定されます。理想的にはアミコンフィルターを使ってフリー濃度を測定することをお勧めします。総濃度の有効治療域は50~100µg/mLで、腎機能正常者であれば蛋白結合率は90%と考えて、有効治療濃度が5~10µg/mLに入れるのが基本です。ただし抗てんかん薬は有効治療域以下でもコントロールできている人もあれば、有効治療域以上でも副作用を起こさずてんかん発作をコントロールできている人もいます。ですから、有効治療域にこだわるよりも発作が抑えられていて副作用が起こっていなければ、通常は投与量を変更しない方がよろしいかと思います。てんかんの専門医はそのようにしているはずです。


⑧アンケートによる質問

北見赤十字病院 加藤理愛先生

Q.知識不足でお恥ずかしいのですが、非腎クリアランスが上昇することでどんな問題が生じるのでしょうか?

A.ごめんなさい。お恥ずかしいのは私の方でした。最後のスライド「今回の研究のヒント」で、「末期腎不全患者では非腎クリアランスが上昇する」と書いており、言い間違いを連発していました。非腎クリアランスの「上昇」ではなく、「低下」です。訂正させていただきます(訂正版の図)。

 2000年より以前では腎排泄性薬物では腎機能に応じて薬物投与量の減量をすればそれでよかったのです。そして、もちろん肝代謝型薬物は腎不全患者では減量をする必要はありませんでした。しかしFDAも日本の厚労省もメーカーに腎不全患者に投与したときの薬物動態を提示するよう求めたことから、様々な肝代謝薬物の血中濃度が末期腎不全患者で上昇することや腎排泄性薬物であってもGiusti-Hayton法で推測された腎機能別用量では血中濃度が上がってしまう薬物があることが明らかになってきました。

 例えばサインバルタのように尿中排泄率がゼロであっても高度腎障害患者に投与すると血中濃度が2倍になるため投与禁忌になっているような薬物が少なからずあります。この理由はおそらく尿毒素が蓄積したため、代謝酵素のCYP2C9や排泄トランスポータのP-糖タンパク質などの発現量やmRNAの発現量が低下して、薬物の代謝・排泄が低下するためと考えられています。ですから、高度腎障害、末期腎不全など、腎機能がかなり低下してから尿毒素が蓄積して血中濃度が上昇することが多いと思います。これらは非腎クリアランスの低下によって末期腎不全患者では血中濃度が上昇します。


平田への講演依頼に関しましては平田のメールアドレス hirata@kumamoto-u.ac.jp までお気軽にご連絡ください。

 第18回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年10月8日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 登録していただいた方には再放送を繰り返し視聴できるようになりました。ただし、再放送は質疑応答のQ&Aはありません。今回のテーマは「広げてみようTDMの世界~薬剤師が主役になれる薬物療法~」です。

 このタイトルの通り、患者さんの病態を考慮し、薬物動態パラメータを使いこなしてTDMを実施すれば、薬物の血中濃度が自由自在に操れます。そうなると薬剤師にとって最も重要な仕事である「有効かつ安全な薬物療法」が可能になります。TDM対象薬も70種類近くに増えつつあります。うまくTDMを活用すれば、薬剤師が主役になって薬物療法を先導することができるようになるでしょう。

 でもこの素晴らしくやりがいのある業務が薬剤師の間に広がっていないのはなぜ?バンコマイシンだけで終わっている薬剤師が多いのはなぜ?20種類くらいの薬物のTDMを実施してきた平田にとっては本当に不思議でならないことなのです。今回はTDMを通して薬剤師らしい仕事ができるようになれるよう、TDMの活用例、うまくいくコツなどについて解説させていただきたいと思います。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書くんだという大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

 第17回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年9月10日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 登録していただいた方には再放送を繰り返し視聴できるようになりました。ただし、再放送は質疑応答のQ&Aはありません。今回のテーマも「物性から薬物動態を理解してみよう~「動態=薬の顔・特徴」だと思えば難しくない~(2)」です。つまり前回の続編になります。1回目を受講した方は、そのままでは消化不良ですので、続編もぜひご覧ください。そういえば薬物動態は熊本大学でも薬剤師塾でテーマにしていましたが、90分×4コマでしたので、1回で理解してもらうのはやはり無理がありました(反省…)。ということで、今回は血中濃度の推移を頭の中で描けるようになるために知っておくべき3つの式について、それも加減乗除だけで計算できる簡単な式を理解してもらいましょう。

 そしてワルファリン投与患者にNSAIDsが投与されて、重篤な消化管出血。この原因はなになのか?この処方の組み合わせは腎機能低下患者で危険なのはなんで?

 今回は動態パラメータを使いこなして、薬剤師らしい仕事ができるようになれるよう、実は薬物動態学の苦手な平田が、このテーマについて話させていただきたいと思います。

 今回は動態パラメータを使いこなして、薬剤師らしい仕事ができるようになれるよう、実は薬物動態学の苦手な平田が、このテーマについて話させていただきたいと思います。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書くんだという大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

薬剤師塾の今後の取り組み2022年8月17日
今月から事前登録者にはyoutubeで再視聴可能になります

 今回の8月13日(土)から「基礎から学ぶ薬剤師塾」は薬物動態についてのテーマで「物性から薬物動態を理解してみよう(1)~「動態=薬の顔・特徴」だと思えば動態なんて難しくない~」でした。薬物動態学は僕も大の苦手ですが、医薬品集や透析患者の投薬ガイドブック、腎機能別ポケットブックなどに反映するため、様々な薬物動態パラメータを入力していくうちに個々の薬物動態パラメータがある程度予測できるようになりました。というか、動態って吸収・分布・代謝・排泄と言う薬の特徴そのものですから、本当は非常に興味深いものなのです。僕のように頭が少々悪くても、熱中すれば薬の特徴くらいは分かってくるものだと思っています。

 今回のアンケートでのご感想では「薬物動態が苦手でしたが、面白さが分かった」という意見が多く、満足度はむつかしかった前回の「薬物の透析性」の4.3点に比べ、かなり向上して4.86点でしたので、後のアーカイブ放送候補として残しておこうと思います。


 

Small group discussion 可能なテーマ

回数 テーマ 日時
10
基礎から学ぶ慢性心不全治療薬 2022.03.12
11 基礎から学ぶ降圧薬と症例 2022.05.14
12 基礎から学ぶ虚血性心疾患と症例 2022.06.18
13 基礎から学ぶ慢性心不全治療薬と症例 2022.07.09
14 基礎から学ぶ糖尿病治療薬と症例 2022.08.13
15 基礎から学ぶCKD新規治療薬と症例 2022.09.10
16 基礎から学ぶ心房動治療薬と症例 2022.10.08
17 基礎から学ぶ感染症・抗菌薬と症例 2022.11.12
18 基礎から学ぶ皮膚科の帯状疱疹治療薬、ビタミンD軟膏処方 と症例 2022.12.10
19
基礎から学ぶ便秘と下剤と症例 2023.01.14
20
基礎から学ぶFantastic Fourによる慢性心不全治療と症例 2023.02.11
21
基礎から学ぶ整形外科のNSAIDsと活性型ビタミンD処方と症例 2023.03.12

 

 大学での非常勤講師ができます。「実務実習で代表的な8疾患」のうち高血圧、糖尿病、心疾患、感染症の4疾患と、薬物治療学+腎疾患、輸液、TDMなどについて国家試験対策も含め教えることができます。また上記のようなsmall group discussionによる少人数の症例検討会なども実施可能です。


 

今までの薬剤師塾とこれからの薬剤師塾の予定

回数 講演タイトル 日時
01 薬剤師ってなに? 2021.04.24
02 高齢者薬物療法について考える triple whammy処方への対応 2021.06.01
03 腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう 2021.07.06
04 CKD患者の腎機能を守るための薬剤師の役割 ポイントは蛋白尿と血圧 2021.08.10
05 腎機能低下時に減量が必要な薬 根拠は尿中排泄率だけじゃない 2021.09.07
06 NSAIDsの腎障害 アセトアミノフェンに腎障害はある? 2021.10.05
07 SGLT2阻害薬の腎機能低下抑制作用とAKI防止作用 2021.11.02
08 初めての学会発表から、博士号取得までの道 2021.12.07
09 透析患者の薬① 基礎編 病態と薬物療法 2022.01.04
10 透析患者の薬② 応用編 合併症と薬物療法 2022.02.01
11 腎臓が何をやっているか①糸球体編 ようこそこの複雑で精密な世界へ 2022.03.01
12 腎臓が何をやっているか②尿細管編 ようこそこの複雑で精密な世界へ 2022.04.16
13 透析患者の便秘と下剤の適正使用
たかが便秘と考えないで!透析による虚血によって腸管穿孔することも
2022.05.14
14 腸腎連関
心血管病変・腎機能を悪化させる尿毒素は腸内細菌によって産生される
2022.06.18
15 透析を科学する CHDFの薬用量、透析後の補充用量ってわかります? 2022.07.09
16 物性から薬物動態を理解してみよう
「動態=薬の顔・特徴」だと思えば動態なんて難しくない(1)
2022.08.13
17 物性から薬物動態を理解してみよう
「動態=薬の顔・特徴」だと思えば動態なんて難しくない(2)
2022.09.10
 18 広げてみようTDMの世界 薬剤師が主役になれる薬物療法 2022.10.08
 19 腎不全とtriple therapy、心不全とfantastic four
SGLT2阻害薬、ARNI、MRA±β遮断薬の適正使用について考える
2022.11.12
 20 初心者向けシリーズ①感染症と抗菌薬の使い方
殺菌性抗菌薬はほぼ腎排泄。グラム陽性桿菌、陰性球菌は知らなくていい
2022.12.10
 21 腎機能低下時に減量が必要な薬 根拠は尿中排泄率だけじゃない  
 22 初心者向けシリーズ②慢性心不全とその治療薬
これからのヘフレフにははFantastic Fourの時代
 
 23 薬剤性腎障害を防ぐ Quadruple whammyを防げ!  
 24 初心者向けシリーズ③降圧薬の適正使用
クリニカルイナーシャに陥るな
 
 25 薬剤師って必要?何のためにいるの?  
 26 初心者向けシリーズ④虚血性心疾患とその治療薬  
 27 高齢者薬物療法最前線 中毒性副作用・薬剤性腎障害を防げ!  
 28 初心者向けシリーズ⑤心房細動とその治療薬  
 29 腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう  


以上のテーマで講演可能です。

平田への講演依頼に関しましては平田のメールアドレス
hirata@kumamoto-u.ac.jp までお気軽にご連絡ください。

第 16回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
物性から薬物動態を理解してみよう
~「動態=薬の顔・特徴」だと思えば難しくない~

 

チャットによる質問

①今井病院 粕谷美枝子先生

Q.薬物動態学が本当に苦手で大嫌いでしたが、平田先生のご講演を拝聴するたびに、その重要性を痛感しています。基本から勉強し直するためにお薦めの【薬物動態学】の参考書をお教え頂ければ幸いです。

A.僕も薬物動態学はむつかしい、特に難解な式を理解できないし、2-コンパートメントモデルなんて実臨床に本当に必要なの?と思っていました。薬物動態を身近にしてくれたのは現どんぐり工房の菅野彊先生が1998年に書かれた「わかる臨床薬物動態が理論の応用」という医薬ジャーナルの本でした。とても分かりやすい解説とかわいいイラストが薬物動態学のハードルを下げてくれました。僕にとっては革命的な本でした。ただし残念ながらこの医薬ジャーナル社は負債を抱えて事業停止になりましたので、この本は廃版になっていますが中古が手に入るかもしれません。

 菅野彊先生はその後、「薬剤師のための『添付文書の読み方10の鉄則』改訂第3版(‎ アドバンスクリエイト株式会社)」や「薬物動態を推理する55Question(南江堂)」を書かれていますし、どんぐり工房のお弟子さんの佐藤ユリ先生が「どんぐり未来塾の薬物動態マスター術 第2版(じほう)」を著されています。慶応義塾大学薬学部の大谷壽一先生の「マンガでわかる薬物動態学」を僕は読んだことがないのですが、大谷先生(九大大学院の時の僕のメンターです)の薬物動態学の講演はとても分かりやすく、濃い内容だったのできっと素晴らしい内容だと思います。これらの本をじっくり読んでいただけると薬物動態学を好きになるかもしれません。 それと僕の場合、このような入門書で、ある程度、薬物動態が理解できるようになったら、いわゆる大学で使っている教科書の加藤隆一先生の「臨床薬物動態学(改訂第5版): 臨床薬理学・薬物療法の基礎として」、緒方宏泰先生の「第4版 臨床薬物動態学: 薬物治療の適正化のために」「ウィンターの臨床薬物動態学の基礎―投与設計の考え方と臨床に役立つ実践法」などの教科書を3冊以上を読んで薬物動態理論を補強しました。よく売れているシリーズの「薬がみえる」vol.4は薬物動態学だけでなく薬力学や相互作用もかなり詳しく、そして分かりやすく解説されていますので、若い皆さんにはこれが一番かもしれません。

 理解できないようなむつかしい数式を理解することはあきらめて、読み飛ばしていいのです。だって2-コンパートメントモデルなんて、何度も採血しないといけないので、臨床で使うのは無理があるし、分からないことはどうやっても分からないのだから!でも、これらの複数の教科書を読むと、すでに入門書で理解したことであっても、もっとわかりやすく理解できるようになるヒントが隠されていますし、「これって実臨床に使えそう」、「以前に体験した症例はこれで説明できる!」という薬剤師としての「気づき」が臨床薬剤師としての実力をアップしてくれるのだと思っています。


②たかだ調剤薬局 永石潤先生

Q.アセトアミノフェンのお話がありましたが、胃腸障害の副作用はないと考えてよろしいでしょうか?

A僕が米国で研修させてもらった大学病院でもがん患者さんに「痛いときに」頓服でアセトアミノフェン650mg錠を6回分/日(3,900mg/日)、痛みのある多くの患者さんに投与されていました。癌性疼痛がきつくなれば服用錠数が徐々に増えるので、服用錠数が痛みのVASスケールの役割をして、0錠から2錠、4錠と増えることを強オピオイドの投与量を増やすマーカーにしていました。また米国の別の病院の小児科ではTPN(total parenteral nutrition)施行時、つまり絶食時の発熱や未熟児の発熱に対しアセトアミノフェンの懸濁液が汎用されていましたが、これは解熱に用いる低用量投与では胃障害が少ないことの裏づけと考えてもよいでしょう。

 ただしアセトアミノフェンは用量増加に伴い胃腸障害を起こすことがありうるため、鎮痛用量では空腹時服用は推奨されません。日本ではアセトアミノフェンは添付文書上では解熱目的には1回300~500mg を頓用とし原則として1日2回まで、鎮痛目的には1回300~500mgを4~6時間おきとなっています。

 NSAIDsを空腹時に飲むとのたうち回るような強烈な胃障害を起こしますが、OTC薬のタイレノールのパッケージには「空腹時にものめる優しさで、効く」と書いてあるように、NSAIDsに比べると胃障害は格段に弱いのですが、日本の添付文書では解熱用量でも添付文書上は空腹時の投与は避けることが望ましいとなっており、特に用量が多いときには胃障害を起こしやすくなるため、食後に投与すべきだと思っています。


③平成横浜病院 廣瀬里美子先生

Q.体重が多いのは一口に腎不全による浮腫であったり筋肉であったり脂肪太りだったりと色々ですが薬物動態の違いはどう理解すればよいでしょうか。基本的でお恥ずかしいのですがアドバイスお願いします。

A.薬物動態における「体重」の判断は薬用量の設定時にどう判断するか?という質問だと思って回答させていただきます。

 筋肉が多い人は病気しにくいのですが、ジゴキシンはNaポンプ阻害薬なのでNa+-K+-ATPaseの豊富にある筋肉には血中濃度の10~20倍、心筋には30~50倍の濃度で分布するため、分布容積が大きくなります(初回負荷投与するとすれば多めに投与する必要があります)。でも患者さんの薬用量はジゴキシンが腎排泄性であるためVdではなく腎機能、つまり腎クリアランスによって決まります。

 浮腫であれば間質液が増えていますので、細胞外液のみに分布する親水性薬物(脂質二重層を通って細胞内に移行できない薬物)の投与設計では重要です。アミノグリコシド系抗菌薬やβラクタム系抗菌薬がそのような親水性薬物です。ではアミノグリコシド系抗菌薬に関する例題を解いてみましょう。

例題:通常時の体重が50kgの肝硬変患者がMRSA肺炎に罹患した。本症例は肝硬変による腹水を伴う溢水により体重が65kgに増加している。この患者にアルベカシン(ハベカシン®)の初回投与量の投与設計をどのようにすべきか。アルベカシンの目標ピーク濃度は17µg/mLとし、Vdは0.3L/kgとする。

解答:アルベカシンXmgを65kgの患者に投与し17µg/mLを目標ピーク濃度にするとXmg/(0.3L/kg×65kg)=17µg/mLとなり、332mgを投与すると十分なピーク濃度を保てるはず(図1左)。ただし腹水は細胞外液のため、実際には通常体重50kgのVd 15L+腹水15Lが分布容積に近似すると考える。つまり溢水患者のVdは感染症患者のVd(0.3L/kg×50kg)に体重増加量15Lを加算して、Xmg/(0.3L/kg×50kg+15L)=17µg/mLとなり、目標ピーク濃度を17µg/mLにするならば510mgの投与量が必要(図1右、図2)。初回投与量は腎機能による差はありませんが、2日目以降は腎機能に応じた減量または投与間隔の延長が必要になります。

 ただし本症例が肝硬変ではなく、末期腎不全による尿量減少によって体重が65kgに上昇しているとすれば、主治医には保存期腎不全患者であれば腎毒性のない他剤を選択すべきです。

 添付文書には「1日1回150〜200mg(力価)を30分〜2時間かけて点滴静注する(2回に分けてもよい)」と書かれているので、医師の多くが「こんな大量投与したことがない」と言って引いてしまいますが、200mg/日では効きません。アミノグリコシドの添付文書のほとんどがピーク濃度が低いため効かず、ましてや2回に分けるとピーク値は下がりトラフ値が上がって、効きめはより弱くなって、腎障害が起こりやすくなります。

 ただし浮腫があって体重が増えても腎機能がよくなるわけがないので(腎うっ血によってかえって悪くなることがあります)、eGFRや推算CCrに代入する体重は浮腫のないときの体重を使いましょう。

 肥満患者で腎機能を推算するときに問題になるのが、推算CCrで身長が考慮されていないため、体重が2倍になると腎機能も2倍に評価されますが(図3)、脂肪太りの場合も、太ったために腎機能がよくなるわけではないので(一般的に肥満はCKDの進行要因になります)、太っていないときの体重は理想体重ですが、生来肥満気味の人は体重が多い分だけ、筋肉も使いますので、筋肉量も増えると考えると、通常、補正体重を使うのがよいとされています。

理想体重(男性)=50+{2.3×(身長−152.4)}/2.54

理想体重(女性)=45.5+{2.3×(身長−152.4)}/2.54

補正体重(kg)= 理想体重+[0.43×(実測体重-理想体重)]

 ただし薬物によって体重の評価に何を使うのかが異なります()。僕自身は組織に分布しやすい(Vdの大きい)薬物は実測体重、親水性の高い薬物は理想体重を使うイメージを持っています。例えばバンコマイシンは実測体重を用いますが、米国の病院で200kg以上の肥満患者がMRSA敗血症で入院してきて「スミオ、バンコマイシンのトラフが5µg/mLにしかならないのよ」と相談を受けましたが、投与量は4gを超えて投与したことがないので、4gを初日投与したとのこと。PubMedで調べるとバンコマイシンは実測体重で投与設計することが分かったので、「8g/日投与しなきゃ効かないよ」と答え、実際に倍量投与してトラフ値が10以上になりました。


④伊奈オリーブ薬局 米坂由可里先生

Q.フェノフィブラート を肝機能低下傾向の方が服用していました。その後肝機能は改善しましたが、腎機能が悪化しました。どのように理解すればよろしいでしょうか?

A.この限られた情報で判断することはなかなかできないのですが、フィブラート系の投与によって腎機能が悪化すると、ふつうは横紋筋融解症による腎機能悪化を疑います。骨格筋が壊死して融解し、筋肉内の成分が血中に溶けだして、ミオグロビンが尿細管に詰まって急性腎障害が起こります。クレアチンキナーゼ上昇とともに LDH, AST, ALT などが上昇し、血尿が観察されれば、横紋筋融解症と考えてよいでしょう。フェノフィブラートの活性代謝物のフェノフィブリン酸の尿中排泄率は73%と高いため、腎排泄性薬物ですが、肝機能低下傾向患者に発症した理由はこれだけの情報では不明です。もしかして横紋筋融解症によってAST, ALTが高くなったため、肝機能低下傾向と判断したのではないでしょうか?


⑤今井病院 粕谷美枝子先生

Q.グリメピリド1mgを腎機能CCr35mL/minくらいの80歳代の患者さまに使用しており、低血糖症状と思われる症状が時々出るのですが、減量提案をしても処方医にあまり取り上げていただけません。認知機能も低下しており本人の自覚症状も薄いため、本日の先生のお話を聴いて低血糖症状の遷延化が不安になりました。 このような場合、減量提案よりも処方変更を提案した方が良いでしょうか。

A.腎機能の低下した後期高齢者の低血糖、とても危ないですね。SU薬とナテグリニドは重篤な腎機能低下(CCr<30mL/min)には禁忌です。CCr35mL/minであれば安全域の広い薬であれば投与しても構わないのですが、SU薬の低血糖と抗凝固薬による出血は超ハイリスク薬にあたる副作用ですからCCr<30mL/minには禁忌となっていてもCCr<50mL/minでも投与しない方が無難な薬と言えます。講演でお話ししましたように表に示すSU薬とナテグリニドには活性代謝物があり、それらは親化合物よりも親水性が高いため特異的に腎機能低下患者で蓄積しやすいのです。だからCCr35mL/minだからという理由でSU薬の投与にこだわる医師であれば、活性代謝物のないグリミクロン錠がより低血糖リスクが少ないので、変更を提案してみてはいかがでしょうか?以下の3点で理論武装しましょう。

腎機能低下患者は遷延性低血糖が起こりやすく、重症低血糖はインスリン拮抗ホルモンであるカテコラミンの分泌を介して重症高血圧、低カリウム血症、QT延長→トルサード・ポアン→心停止など、心血管病変の悪化原因になるとても危険。

②活性代謝物のあるアマリール錠はインスリン抵抗性を改善する作用のある第3世代SU薬と言われているが、活性代謝物のないグリミクロン錠の方が安全。ミチグリニドが禁忌じゃないのにナテグリニドだけが禁忌なのは発売後に透析患者が重症低血糖事故が起こったため。

③80歳代でCCr35mL/minという腎機能は不可逆的に(進行性に)腎機能が悪化するため、重篤な腎機能障害でSU薬が禁忌になる腎機能になるのは間近です。


時間内に回答できなかった質問

⑥南相馬市立総合病院 中島先生

Q.薬剤の効果の持続時間は薬剤が有効血中濃度域にある間と考えています。薬剤毎の有効血中濃度域はどのように調べたら良いのでしょうか

A.薬剤の有効治療域は常に有効下限以上の濃度でないといけないわけではありません。前述のようにアミノグリコシド系抗菌薬のように、トラフ値が低いほど腎障害が起こりにくいので、血中トラフ濃度がゼロになっても構いません。アミノグリコシド系抗菌薬やキノロン系のように殺菌力の強い抗菌薬にはPAE(post antibiotic effect:抗菌薬残存効果)があるため、MIC以下のゼロになっても抗菌メカニズムは持続しますから。このようにPKだけではなく、PDも考慮した投与設計が必要になります。

 すべての薬に有効治療域が設定されているわけではありません。TDM対象薬であっても有効治療域が不明な抗てんかん薬があります。抗てんかん薬はアドヒアランス不良でてんかん発作を起こすため、アドヒアランスの確認の意味だけでもTDMを実施する価値があります。TDM対象薬の治療域に関してはこのブログ「育薬に活用できるデータベース」の「2.薬物動態・TDM」に知りうる限りの有効治療域が載っています。


⑦高砂市民病院 白木先生

Q.CYPの寄与率や阻害率を確認する方法はありますか。

⑦佐賀大学医学部附属病院 橘川奈生先生

Q.CYPの寄与率などを用いて計算できる薬剤についてご教示いただけますと幸いです。薬剤のプロファイルにより異なるかと存じますが、約何倍までですと安全性の面から許容されますでしょうか。

A.これらに関しましては僕は専門家ではないので、よくわかりません。鈴木洋史先生、大野能之先生の著された「これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践 第2版(じほう)」を参照してください。

 例えばスタチン薬のシンバスタチンのFは5%と極めて低いのは、CYP3A4の寄与がほぼ100%のため小腸のCYP3Aによって初回通過効果を受けやすいから→CYP3A4を100%近く阻害するボリコナゾールやイトラコナゾールでは血中濃度が約20倍近くになるはず。そしてグレープフルーツを食べたりすると10倍近く血中濃度が上がるので、横紋筋融解症が起こりやすい→薬剤師はFの小さいシンバスタチン、アトルバスタチン、フェロジピンに関しては「グレープフルーツを食べたり飲んではいけません」という薬剤情報提供用紙を渡すだけではだめで、ちゃんと口頭でも注意しなくてはならない などの理論展開が可能になります。

 薬の安全性は薬によって大きく異なります。βラクタム系抗菌薬は腎排泄性薬物でアレルギー性副作用が怖いが、安全性が高いので、初回負荷投与は思い切りいこう。だけど2回目以降も減量せず投与すると1週間くらいで数倍以上の血中濃度が持続すると痙攣をおこすことがあるので、腎機能低下患者や高齢者に減量せずに継続投与はあり得ない。抗凝固薬のダビガトランは超ハイリスク薬であるため、血中濃度はほんの数倍でも非常に危険です。繰り返しますが、薬の安全性はこのように薬によって大きく異なります。

 フェニトインは非線形薬物動態を取るTDM対象薬ですから数10倍の血中濃度になると「致死濃度」になるかというと、30年前くらいに恐怖の「アレビアチン原末」が売られていました。僕はこれは危ないと思っていましたが、当時の精神科医は1包に複数の抗てんかん薬の散薬を混ぜて投与することを好んでいたので、カサの高い10倍酸はではなく原末を好んでいたため、製薬会社も危ない原末の製造中止に踏み切れなかったのです。そこで10倍散の代わりに原末を調剤したという薬剤師の誤薬が10件以上も起こったのですが、十数症例目の誤薬でようやく死亡例が出たのです。フェニトイン濃度は10倍ではなく、非線形であるため、数百倍あるいは1000倍近くになったのかもしれません。その時「非線形でTDM対象薬のフェニトインでも人はそう簡単には死亡しないんだ」と感じた方は多かったと思います。でもCCr<30mL/minで禁忌のダビガトランは発売半年間で24名が出血死しました。24名中22名が70歳以上の高齢者です。

 これで何が言いたいかわかりますか?フェニトイン服用患者は結構若年者や青年患者が多いですよね。何倍という血中濃度だけではなく、70歳以上の後期高齢者は弱い!しかも心房細動は心不全をきたすことが多い。心不全でフレイル、サルコペニアの高齢者は極めて脆弱、という患者側の要因も考慮しなくてはならないということです。ちなみに皆さんの把握している薬物動態パラメータは治験時に行われた第1相試験、つまり「若年青年男子」が対象なのです。でも疾病の多くは高齢者に発症し、当然薬を飲む多くの人は高齢者ですよね。薬の専門家である皆さんは薬物動態パラメータのデータを高齢者に翻訳しなければならないのです!PBRはアルブミン濃度の低い高齢者では低くなるはず、tmaxは消化管運動の遅延する高齢者では遅延するはず、腎機能は当然低下するはず…………のようにです。


⑧道ノ尾病院 渕上朋一先生

Q.薬物動態について、理解がより深まる講演をありがとうございました。講演の中で、ファーマコジェネティクスと薬物動態の話しがでてきましたが、エピジェネティクス機構が薬物動態の個人差となることはあるのでしょうか?

A.僕はこの分野の専門家ではありませんが、双子であっても1人は喫煙者、1人は非喫煙者であればCYP1A2の誘導により、テオフィリンやプロプラノロールのクリアランスが2倍近くの差が出てくるはずですし、飲んでいる薬によって耐性、自己誘導などを起こしえますので、環境因子によって薬物動態は変わります。したがってエピジェネティクス機構が薬物動態の個人差となることは十分にあると思います。

薬剤師塾の今後の取り組み2022年7月15日
今月から事前登録者にはyoutubeで再視聴可能になります

 今回の7月9日(土)から「基礎から学ぶ薬剤師塾」は薬物の透析性についてのテーマで「透析を科学する~CHDFでは透析よりも薬がよく抜けるのはなぜ?~」でした。内容は決して高度ではないと思いますが、日ごろから血液透析、CAPD、CHDFなどの血液浄化法に関わっていない方には大変難しい内容だったのかと思います。アンケートでのご感想では「非常にわかりやすい」から「難しすぎてついて行けなかった」方まで様々でした。満足度は今まで多かった1点がなくなって平均4.3点でしたので、後のアーカイブ放送候補として残しておこうと思います。


 

Small group discussion 可能なテーマ

回数 テーマ 日時
1 基礎から学ぶ降圧薬と症例 2022.05.14
2 基礎から学ぶ虚血性心疾患と症例 2022.06.18
3 基礎から学ぶ慢性心不全治療薬と症例 2022.07.09
4 基礎から学ぶ糖尿病治療薬と症例 2022.08.13
5 基礎から学ぶSGLT2阻害薬と症例 2022.09.10
6 基礎から学ぶ心房動治療薬と症例 2022.10.08
7 基礎から学ぶ感染症治療薬と症例 2022.11.12
8 基礎から学ぶ下剤と症例 2022.12.10

 


 

今までの薬剤師塾とこれからの薬剤師塾の予定

回数 講演タイトル 日時
01 薬剤師ってなに? 2021.04.24
02 高齢者薬物療法について考える triple whammy処方への対応 2021.06.01
03 腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう 2021.07.06
04 CKD患者の腎機能を守るための薬剤師の役割 ポイントは蛋白尿と血圧 2021.08.10
05 腎機能低下時に減量が必要な薬 根拠は尿中排泄率だけじゃない 2021.09.07
06 NSAIDsの腎障害 アセトアミノフェンに腎障害はある? 2021.10.05
07 SGLT2阻害薬の腎機能低下抑制作用とAKI防止作用 2021.11.02
08 初めての学会発表から、博士号取得までの道 2021.12.07
09 透析患者の薬① 基礎編 病態と薬物療法 2022.01.04
10 透析患者の薬② 応用編 合併症と薬物療法 2022.02.01
11 腎臓が何をやっているか①糸球体編 ようこそこの複雑で精密な世界へ 2022.03.01
12 腎臓が何をやっているか②尿細管編 ようこそこの複雑で精密な世界へ 2022.04.16
13 透析患者の便秘と下剤の適正使用
たかが便秘と考えないで!透析による虚血によって腸管穿孔することも
2022.05.14
14 腸腎連関
心血管病変・腎機能を悪化させる尿毒素は腸内細菌によって産生される
2022.06.18
15 透析を科学する CHDFの薬用量、透析後の補充用量ってわかります? 2022.07.09
16 物性から薬物動態を理解してみよう
「動態=薬の顔・特徴」だと思えば動態なんて難しくない
2022.08.13
17 広げてみようTDMの世界 薬剤師が主役になれる薬物療法 2022.09.10


平田への
講演依頼に関しましては平田のメールアドレス
hirata@kumamoto-u.ac.jp までお気軽にご連絡ください。


大学での非常勤講師も可能です。「実務実習で代表的な8疾患」のうち高血圧、糖尿病、心疾患、感染症の4疾患の薬物治療学+腎疾患、輸液、TDMなどについて国家試験対策も含めを教えることができます。またsmall group discussionによる少人数の症例検討会なども実施可能です。

第 15回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
透析を科学する
~CHDFでは透析よりも薬がよく抜けるのはなぜ?~

 

チャットによる質問

匿名

Q.エベレンゾ(ロキサデュスタット)の透析性は?

A蛋白結合率99%ですから全く透析で除去されません。


アンケートによるご質問

滋賀医大 福井先生

Q.CHDF時の用量設定について、透析機器設定から計算される腎機能と血液検査での腎機能に大きく乖離がある場合でも(無尿)、計算上で考えられる投与量を投与して問題ありませんでしょうか。

Aごめんなさい。「透析機器設定から計算される腎機能」というのがよくわかりません。


薬局フォーリア 河村美弥子先生

Q.基本的なことで申し訳ないのですが透析クリアランスと透析性と同じ意味と思っていました。透析クリアランスは速度を表し、透析性というのは性質のことで、透析除去率というのは割合ということでしょうか??? 

A透析性は透析除去率と同じ意味で使われており、「薬物の透析による除去率(透析性)=1回の透析によって体外に除去された薬物量/もともと体内にあった薬物量」で通常は%で表されます(だから割合ですね)。透析クリアランスはクリアランスですから、単位時間あたりに浄化された液体の総量ですから通常はmL/minで表します(だから速度ですね)。いくらダイアライザークリアランスが高くてもVdが大きな薬物の除去率は高くなるとは限りません。講演の時に理解度チェックその1で昇圧薬のリズミックの例を出しましたが、図に誤記があったために分かりにくかったと思いますので正しいものを示します。

 


佐賀大学医学部附属病院 薬剤部 橘川奈生先生

Q.HD・CHDF・PDでアンモニアの除去率に違いはございますでしょうか。また、リバウンドにも差がございますでしょうか。ご教示いただけますと幸いです。

A分離量の小さいアンモニアは尿素と同様、血液浄化法でよく抜けます。ただし講演のスライドで示しましたように何らかの中毒症状の治療にCAPDは低クリアランスであるため有効ではないのと同様、日本のような低クリアランスのCHDFも有効性は低いと思います(これは平田の意見です)。ですから溶質の除去率はアンモニア以外も含めてHD>CHDF>CAPDになります。
 それからHDのような急激な血液浄化法ほどリバウンド現象は強いのですが、持続的血液浄化法ではリバウンドはほとんど認められません。小児の高アンモニア血症のように250μmol/L以上の危険な状態で内科的治療が無効な場合には、間欠的HDが使われることがあります。ただし海外では高クリアランスのCRRTも実施可能なため、間欠的HDではリバウンドが危惧される場合には、持続的にアンモニアを除去するためにCRRTを高アンモニア血症の治療に用いられることもありますが、もちろんHDの方が除去性能は高いです。ただしその分、栄養素も短時間の間に急激に除去され体力を消耗するため、CRRTを選ぶこともあるようです。150μmol/L以下になれば治療を中止してよいそうです。ただし血液浄化時に除水をしてしまうと血圧が下がったり、腎虚血によって腎機能が悪化しますし、透析液は透析患者用のものなので、低リン血症、低カリウム血症にならないよう注意して血液透析を実施する必要があります。
 これらの情報はおそらく大学病院では活用可能なUpToDateで「hyperammonemia×blood purification」を検索ワードとして情報を入手できます。


手束病院 楠本倫子先生

Q.バンコマイシンのTDMで採血ポイントはいつがベストでしょうか? 1回の時と2回採血する場合を教えて頂ければ幸いです。又、今まで安定していたトラフ値が突然倍近くになったり、腎機能が急激に悪くなるとすれば病態(敗血症のような重症例)によるものか、それとも腎機能が過大評価されていた可能性(CG式Ccrで判断)も否定できないのでしょうか?

A患者さんはHD患者さんではなく、定常状態に達していると仮定して答えさせていただきます。1回の採血ではトラフ値、つまり次回投与直前の採血だけでよいでしょう。ただし重症感染症の場合、抗菌薬TDMガイドライン2022ではピーク濃度とトラフ濃度の2点採血を行ってAUC/MICを400-600としているため、2点採血が必要となります。バンコマイシンのピーク濃度は点滴終了後1~2時間となっておりますが、1時間は完全にα相(分布相)で、組織と血中濃度が平衡状態になっていません(図1)。2時間以降経過したβ相(消失相)で採血しないとAUCは過大評価されますし(図2:この図では大した差ではないように見えますが、腎機能が低下すればするほどAUCの過大評価が顕著になります)、ピーク濃度が高くなるということはVdが過小評価されます。私は透析患者のTDMをやってきたので、透析終了時から点滴を開始して、点滴終了後2時間(可能なら2時間以上経過した方が確実にβ相になるため望ましい)をピーク値として、次回透析前をトラフ値とし、その2点からKelの傾きを算出して点滴終了時の値をピーク値として採血することが多かったため、バンコマイシンのVdを0.9~1.0L/kgだと信じていますが、点滴終了後1時間で採血している病院ではVdが0.6L/kg程度を採用していると思います。透析患者さんでは非透析時のバンコマイシンの半減期は200時間程度と極めて消失が遅いため、点滴終了後2時間以降のの採血はあまり問題にはなりませんでした。

 トラフ値が突然倍近くになったのはAKIの可能性があります。1つはバンコマイシンによるAKIも考えられますが、重症感染症のために脱水を来たしBUN/Crが30以上になっている場合には輸液をすることでBUNが急低下し、Cr値もやや下がることが多いですので、重症感染症での輸液管理は非常に大切です。それと重症感染症になりやすい方は痩せて栄養状態が不良の高齢者が多いですから、重症感染症が長引けば長引くほど、筋肉量が低下し、血清Cr値が低くなり、腎機能の過大評価をしてしまう原因にもなります。この際には24時間畜尿の実測CCr(×0.715でGFRとして評価できます)かシスタチンCによるeGFRの算出が望ましいと思います。 一般的には感染症に罹患しやすい高齢者ではeGFRの方が推算CCrに比べ過大評価しやすいです。だから感染症に携わっている薬剤師は推算CCrを使う方が多いです。


石川県小松市民病院 薬剤科 小川 依先生

Q.中規模程度の病院でICU担当薬剤師なのですが、CHDF、HD、CAPD患者さん、それぞれにおけるバンコマイシンの投与設計で迷うことがございます。
 CHDFの患者さんに対しては山本武人先生のクリアランス理論に基づくCRRT患者の投与設計論文を参考にして、体重, QF, QDを元に投与設計をしています。残存腎機能を加えられることが臨床で役に立っておりこちらを使うことが多いのですが、今日の講演で先生がご提示して頂いた20mg/kg loadingから、7.5-10mg/kg維持で投与計画を行い、そのあとの血中濃度でフォローする方法も一考なのでしょうか。サブラットの適応もあり、QF+QDがそれほど変化することもないため、確かに特殊な条件とならなければ、固定量投与も一考かと愚考いたします。
 そしてもう一つ悩ましいのがCAPD患者さんのバンコマイシン投与設定です。HD患者さんはある程度明示されたものがあるのですが、CAPD患者さんでのバンコマイシン投与設計はどのように行えば良いのか悩む時が多いです。特に腹膜炎でのCAPD内にバンコマイシンを混注する場合や、敗血症で全身投与する場合もあり状況に応じての投与設計をどうすれば良いか悩んでおります。母集団解析ソフトにはこのような患者は含まれていないと思うのですが、ccr6ml/min前後としてある程度の参考にして考える場合もあります。
 何か投与設計するときのコツはありますでしょうか。血液透析患者さんのように決められた一定量を投与する方法等があるのでしょうか。
 小生のような未熟者ですが、ご教示いただけますと幸いです。

A講演で私がご提示した20mg/kg loadingから、毎日7.5-10mg/kg維持で投与計画を行い、そのあとの血中濃度でフォローする方法はあくまでサブラッドのような置換液を20L/日使用した無尿のCHDF患者の場合です。いわゆる日本で行われているCHDF患者さんの典型です。
 施設によってCHDFのやり方が異なる場合、例えば20L/日ではなく30L/日の補液を使っていれば、投与量は私の示した典型の1.5倍必要です。また患者さんの尿量があり、患者さん自身のGFRが14mL/minで、置換液使用量が同じ20L/日であればCHDFクリアランスが14mL/minですので、加えるとGFR28mL/minの高度CKD患者の用量と同じになり、この場合の投与量は私の示した典型の2倍必要になりますが、これらは山本武人先生のクリアランス理論と同じ考え方です。一応、抗菌薬TDMガイドライン2022ではeGFR<30mL/min/1.73m2では「バンコマイシンの適応としない」となっていますが、これは投与してはいけないというものではなく、化学療法学会でも腎機能が低下してもバンコマイシンを好んで使う感染症専門医もいらっしゃいます。
 CAPD患者さんでMRSA腹膜炎では腹腔内にバンコマイシンを有効濃度に保つには局所投与になるので、15~30mg/kgを5~7日毎で十分だと思いますが、MRSA敗血症や肺炎となると全身投与が必要になります。PBRが34-55%なので腹腔内投与しても半分くらいしか血中に移行しないですし、腹膜への刺激性を考慮すると腹膜炎以外ではあまり抗菌薬の腹腔内投与はしたくありません。血清Cr値が同体型のHD患者さんと同等であれば、ほぼHD患者と同じ用量でよいはずです。血清Cr値が同体型のHD患者さんよりも高く、例えば15mg/dLと高値の男性であれば、そのCAPD患者さん自身の腎機能は低いと思います(いずれHD+CAPD療法が必要になり、やがてHDに完全移行することになるでしょう)。厳密にCAPD患者さんの腎機能を知ろうとすれば、CAPD患者さんの24時間畜尿CCrを測定するとよいでしょうが、ふつうそこまではせず、バンコマイシンのTDMを実施して予測した濃度よりも高ければ腎機能が予想したよりも低い、というように判断して投与設計しなおすのが一般的なやり方だと思います。

 第16回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年8月13日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 6月より皆さんの要望により土曜日13:30から15:30に変更し、登録していただいた方には再放送を視聴できるようになりました。ただし、再放送は質疑応答のQ&Aはありません。今回のテーマは「物性から薬物動態を理解してみよう~「動態=薬の顔・特徴」だと思えば難しくない~」です。

 大学での薬物動態の講義、あるいは薬物動態の教科書には難解な式が並んでいて、あまり好きな人はいないのではないかと思います。でも「有効かつ安全な薬物療法の提供」は動態をよく知っている薬剤師だからこそできる技術です。薬物動態パラメータをすべて記憶しようとするとますます動態を嫌いになってしまいますが、水溶性の薬物は一般的に腎排泄されやすく、吸収率は不良で、タンパク結合率は低く、分布容積もクリアランスも低い。脂溶性薬物はこの逆なんだというように、薬の特徴を理解しようとすると動態を好きになれるかもしれません。例えば殺菌性の抗菌薬はなぜか腎排泄のものが多い、分子標的薬は腎排泄のものは少ないなど、ちょっとしたことで、薬の特徴が分かってくることがあります。

 今回は動態パラメータを使いこなして、薬剤師らしい仕事ができるようになれるよう、実は薬物動態学の苦手な平田が、このテーマについて話させていただきたいと思います。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書くんだという大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)