1.ジゴキシンとエリスロマイシン、テトラサイクリンの相互作用のメカニズム
ジゴキシンの代謝には腸内細菌が関わっているのをご存じだろうか?ジゴキシンとエリスロマイシンの併用によってジゴキシンの血中濃度が上昇するといわれている。添付文書には「エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリンとの併用によって腸内細菌叢*への影響による本剤の代謝の抑制、あるいは、P糖タンパク質を介した本剤の排泄の抑制により血中濃度が上昇するとの報告がある。」とされているが、クラリスロマイシンはCYP3A4阻害薬でありP糖タンパク質の阻害薬であることは今となっては誰でも知っているが、テトラサイクリンにはそのような阻害作用はないはずだ。ではエリスロマイシンはどうなんだろう、というのが今回のテーマだ。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
2.クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)腸炎を防ぐために
(5)CD腸炎はどんな人が罹患しやすい?
CD腸炎の院内感染に罹患しやすい患者は我々の経験のように①広域スペクトル抗菌薬が投与された患者がほとんどで、②高齢者(特に長期入院患者)、③胃酸分泌抑制薬のPPIやH2遮断薬投与患者ではCD関連下痢症のリスクが3倍高くなることが報告されており4)、PPIの服用で再発性CD腸炎を4.2倍になる5)。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
ホームページのタイトルを本日より変更します。題して「平田の薬剤師塾~薬のことを分かりやすく丁寧に~」です!
実は2020年3月に熊本大学を定年退職して、やる気満々で神戸に転居し、I&H株式会社の学術顧問として「平田塾」を関西でと意気込んでいましたが、コロナ禍のためなかなか、実施できませんでした。でも平田は肉体年齢40歳、精神年齢20歳という若さを保っており、非常に元気です。これからはホームページの力を借りて平田が長年培ってきた薬剤師力をぶつけてみたいと思います。
◆腎機能評価の10の鉄則(中級者向け)
このブログの中で一番多くの方に読んでいただき、
この内容に関する質問も一番多く いただいています。
◆育薬に活用できるデータベース
大学病院医学部の先生方がよく利用してくれているらしいです。
若い先生から感謝の言葉をいただくことがあります。
◆わかりやすい細菌と抗菌薬の話(現在連載中)
時には弱い広島カープのことをぼやいたりすることもあるかもしれませんが、基本的に薬剤師力をアップさせるためのコツ、知っておくべき知識のようなことを書いていきたいと思います。こうご期待!
1.クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)腸炎・偽膜性大腸炎とバンコマイシンのTDM
(1)はじめに
今回は抗菌薬関連下痢症・細菌性腸炎の原因菌として最も重要なクロストリディオイデス・ディフィシル感染症Clostridioides difficile(CD)腸炎について我々の経験した症例について解説したい。これも腸内細菌叢の変化が大きく関わる疾患である。なおCDは2016年まではクロストリジウム・ディフィシルと呼ばれていた有芽胞偏性嫌気性グラム陽性桿菌で下痢、腹痛、発熱を伴うCD腸炎や偽膜性大腸炎、あるいは麻痺性イレウスや巨大結腸症発症、腸管穿孔の主要な原因菌とされ、健康成人でも日本人で10~50%前後の糞便から検出され、もともと弱毒菌で菌量が少なければ健常者には病原性はないが、菌量が増えてトキシンA、トキシンBという外毒素を産生すると、腸炎を引き起こす。傷口から感染しやすい破傷風菌 (C. tetani )、真空パックの食品内部でも増殖して食中毒の原因になるボツリヌス菌 (C. botulinum )、常在菌だが毒素を産生して食中毒の原因になり、ガス壊疽菌を起こすことがあるウェルシュ菌 (C. perfringens )などは今まで通りClostridium属である。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
1.腸内細菌叢の異常によっておこる様々な疾患が増えている
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1.第1世代~第2世代セフェムの時代
筆者が薬剤師になった1977年、第1世代セフェムのセファメジンⓇ(セファゾリン、1971年発売)が飛ぶように売れていた。この当時の外科領域感染症は黄色ブドウ球菌が主だったからグラム陽性球菌に強い第1世代セフェムはよく効いた。そして1gのバイアルが3,000円以上の高薬価であり、仕入れ値は20~30%引きであったため、比較的清潔な手術でも1日3バイアルの予防投与をすると売り上げ10,000円/日、薬価差による純利益2,000~3,000円/日で予防投与として1~3週間、退院まで処方され、多額の利益(薬価差)が病院に入ってきた。
約10年後、グラム陽性菌をターゲットにした第1世代の乱用の影響でグラム陰性桿菌の大腸菌、肺炎桿菌が起炎菌の主役になってくると、グラム陰性菌にも効力を示すパンスポリンⓇ(セフォチアム、1981年発売。パンスポリンⓇが悪いのではなくこの当時、一番売れていたイメージがあるのがこの薬ということです)などの第2世代セフェムが登場し、この薬価が3000円以上になって、セファメジンⓇの薬価は2000円程度に下げられたため、より薬価差の高く儲かる第2世代セフェムを各社比較して、薬価差の大きいものを購入して、どの病院も相変わらず、2週間程度の長期間、予防投与と称して使い、1手術当たり3万円~5万円の利益を得ていた。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
加齢とともに動脈硬化が進行して40歳代で150gの重量は80歳代では100gに委縮する(図1)1)。
前回の抗菌薬シリーズ第4回で、腎毒性のあるゲンタマイシンはPK/PD理論*から考えると1回少量投与で1日数回投与よりも1日1回大量投与の方が、腎毒性が少なく殺菌力も高い安全で有効性が高くなる投与法であると解説した。しかし若い薬剤師や医師の方は当たり前に理解しているPK/PD理論であっても、なぜ「1回少量を1日数回投与」の方が「1日1回大量投与」よりも安全性が低いのかについては理解に苦しむ方がいるのではないだろうか。ここで、抗菌薬のPK/PD理論について改めて説明したい。これらの理論は米国ウィスコンシン大学のWillian A Craig先生の研究成果1)によるもので、2008年の日本TDM学会の特別講演でCraig先生が講演していただける予定であったが、脳梗塞のため来日が急遽中止になったのが非常に残念であったことを思い出す。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
前回説明したとおり、生死を分けるような重篤な感染症の時に頼りになる殺菌性の抗菌薬はほとんどが腎排泄である。ということは腎機能低下患者や高齢者では蓄積して中毒性副作用を起こすことがある。しかも腎機能低下患者や高齢者では免疫能が低下し、感染症に罹患しやすいため、抗菌薬を投与する機会が多い。致命的な感染症の時に抗菌薬の投与量不足によって有効性が現れなかったことが分かったときには、非常に後悔する。帯状疱疹におけるアシクロビル、バラシクロビルは副作用を起こさないよう、細心の注意を払って腎機能に応じた投与設計をしたいが、抗菌薬を使うときには初回投与量は十分量投与するなど、基本的に攻める投与設計を心掛けたいと思っている。ただし、腎機能低下患者に腎排泄性で薬剤性腎障害などの副作用を起こすことは避けなければならないし、副作用を起こしにくい投与設計を心がけることが必要となる。そのため今回は腎機能低下患者で起こりやすい抗菌薬の副作用についてまとめたい。
殺菌性の抗菌薬はなぜか腎排泄
2,000種類以上ある薬物のすべてについて腎排泄性か肝代謝性かを片っ端から記憶することは容易ではない。というか多すぎて超記憶力の良い特殊な方にしか勧められない。くすりオタクだけど記憶力が悪い(というかほとんどない)筆者はどうやって克服したかというと、少ない例外の薬物を覚える方が、楽なので、少ない方の腎排泄性薬物だけ覚えた。そのおかげで肝代謝型薬物は覚えなくてもだいたいわかるようになった。だって、図を見ればわかるように薬物の7割以上が肝代謝、5%程度のレアな胆汁排泄を除けば残りの2割だけが腎排泄だからだ。でもこの図はトップ200の薬物だけなので、いずれは2000くらいある成分でどれくらいの割合になるのかを検証してみたいと思う。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます