今日も7時半からMichaelと一緒に処方内容のチェック、このデータを下に午後から検査データ、患者の臨床症状を見ながら薬物の投与量を体表面積から電卓を使用して計算し、薬物投与の是非について3人でディスカッションし、問題ある処方は投薬内容変更の旨をドクターに電話で伝え、カルテに新処方を記入するのがJoeのやり方。Oncologyは略語が多い。ステッドマン医学辞書の入ったセイコーの電子辞書が大いに役立つ。8時から血液内科医と骨髄移植症例のミーティング。ここでもJoeは積極的に発言し、ドクターも投薬についてはアドバイスをしてくれるJoeを大変ありがたがっているようだ。やはりスペシャリストの薬剤師は必要である。薬剤師も含めた症例ミーティングは以前にも白鷺病院であったが、金院長退職とともになくなってしまったが、これは非常におろかな決定だったと今でも思う。9時からPharm Dによる急性心筋梗塞とSandyの「薬物動態蛋白結合と分布」。これは得意だから問題なし。でも蛋白置換の相互作用を教えていた。起こりえないわけではないが臨床的意義は非常に低いから日本でも最近は教えなくなりつつあるのに。そういえばSandyの部屋と僕の部屋は隣で僕がポートランドに来たときにgreeting cardとチョコレートと花を机に置いていてくれた。ポートランドには本当に優しい人が多い。

午後からJoeのところに行き、いつものように症例検討。なぜか今日はJoeは生の人参をかじりながらMichaelに助言する。TDM対象薬はほとんどTDMを実施している。日本の大学ようにTDMのスペシャリストがいるわけではなく、病棟薬剤師自身がスペシャリストなのだ。日本と異なり解析ソフトを使わないが、動態パラメータから計算するので、こちらのほうが動態理論が身に付きやすい。日本の薬剤師には「TDMをやるにはどの解析ソフトを使えばいいんですか?」とよく聞かれる。解析ソフトがないとシミュレーションによる血中濃度曲線は書けないが、それに頼りきって動態の解っていない薬剤師が多すぎる。

末期がんの症例が今日退院するという。Joeは僕に「スミオ、日本ではがん患者は病院で亡くなることが多いのか?」と聞いてきたので、「そうです。でも患者自身はそれを望んでいるとは思いません」と答えたら、「アメリカでは10年前くらいから家に帰って最後を迎える患者が増えつつある」と言われた。

Oncologyでは輸液にほとんど生食を用いhydration目的にたまに5%ブドウ糖が使われる。「乳酸リンゲルや1号輸液や4号輸液などは使わないのか?」と聞いたら、「癌では高Ca血症やSIADHになることが多いからカルシウムが入っていないほうがいいし、アシドーシスを伴わない場合が多いので乳酸は必要ない。」といわれ、納得。そういえば昨日の症例ではSIADHによってNaが105mEq/Lにまで低下している症例があった。中枢障害を起こしており、この症例はアルコール大量摂取者なので、Joeは「ビールは水分が多いのでNa濃度がよけい低くなるので、のむならウイスキーやブランデーを飲むように」と言っていた。

3時からムナ先生と糖尿病の内科クリックのDr.Bultmeiyerと面会。来年から午後、糖尿病の患者指導に参加してもらうようにお願いしに行く。いろいろな話をしたが、アメリカではインスリンの持続注入機が汎用されつつあるそうだ。ランタスが日本では話題になっているがNPHインスリンと臨床的差異はまだ不明だそうだ。ここでは患者にPDAを持たせ何を食べたかを入力してもらい、インスリン投与量を決めるようなプログラムがあるらしい。

このような研修内容になったのは僕が前もって書面で出した希望が臨床ないろいろな現場で薬剤師が活躍できる部分、そしてPh.Dコースで学生と一緒に学びたいという希望からだ。おかでで僕の指導係りのムナ先生は非常に忙しくなり、申し訳なく思う。

帰りにBook shopでDrug Information Handbookを買う。動態に関してもUSPDIより詳しく書いてあり、かなり分厚いが一応ポケット版で安い。これで明日からさっぱりわからなかった薬も理解できるようになるだろう。

 

今日習ったこと:10/12

AAGには4種の遺伝子多形があり薬物との親和性はアルブミンよりも高い。置換はアルブミンによってbufferされる。

リポ蛋白は塩基性から中性の薬物と結合し、プロブコール、シクロスポリン、ジギ、TCN(テトラサイクリン)と結合する。そのため腎高脂血症は移植後のシクロスポリン投与のときの拒絶の原因になる。

新生児のアルブミン、AAGとの結合性率は低下する。

高齢者ではアルブミンとの結合性は弱いが、AAGとの結合率は上昇する。

妊娠の3期にはアルブミン、AAGとの結合性率は低下する。

AAGは喫煙、肥満、手術でも上昇する。

DMではアルブミンとの結合性は低下するが利尿期にはアルブミン、AAGとの結合性率は上昇する。

甲状腺機能亢進症ではアルブミン、AAGとの結合性率は低下する。

Golden standardは間違いでgold standardが正しい。蛋白結合率のgold standardは平衡透析法であり、限外濾過法ではない。限外濾過法は温度や限外濾過時間の影響を受けやすい。

蛋白結合率をin vivoで調べる方法として唾液中濃度/血清濃度でも算出できる。

メトトレキサートには炭酸水素ナトリウムを併用する。

イホスファミドの膀胱からの出血(血尿)の副作用を防ぐためにはメスナを併用する。

BIDは1日2回のことだが、必ずしも12時間おきではない。この場合、5oomg/12hrと具体的に12時間おきに投与することを明記する。

高用量のchemotherapyによる肝障害を防ぐためにはウルソUrsodiolを用いる。

Consolidation: 硬化(特に膀胱でみられる)

Parainfluenza: 春から夏にかけて多い。子供でアウトブレイクするとも多い。リバビリンがこれに有効という報告もある。

Cockcroftの式で高齢女性の場合、血清クレアチニンが0.4mg/dLと異常に低いことがある。この場合0.8を代入する。このようにCockcroftの式は女性と「やせ」が最も重要な問題となるがMDRD法ではこれらが解決されている(http://nephron.com/mdrd/default.htmlを参照)。

血小板輸血は10単位輸血する場合10人分だとアレルギーの発症率が高いが1人で成分輸血したものだとアレルギーの発症率が1/10に低減できる。

5HT4antagonistは痛み止めになる。

Mantol cell lymphoma(外套細胞リンパ腫)ではメトトレキサート200mg/m2+NaHCO3250mLをローディングし、その後800mg/m2/1000mL生食/24hr+シタラビン3g/m2+500m2生食×2時間を12時間おきに4回投与する。ハイドレーションとして5%ブドウ糖液+75mEq NaHCO3 250mL×4時間その後150mLを持続する。

抗がん剤投与での検査値は腎機能のチェックが一番大切なこと。

抗ウイルス薬を投与するときにはHSV, CMVに状態を調べておくこと。

骨髄移植の後には血小板が低下し、白血球数が上昇する。G-CSF投与後は好中球が90%以上になることもある。

バンコマイシンによる腎障害は低く5%以下。トラフ値は敗血病には10μg/mL以下でいいが、臓器の感染の時には15~20、肺炎の場合は20以上に設定する。

今日は朝6時に起きて朝食を食べるとJohnに場所を聞いておいたバス停にダッシュ。10月はまだサマータイムだから朝1011.pngは真っ暗。約束どおり7時半に腫瘍病棟のDr. Joe Bubaloのオフィスに行く。Aliのオフィスと違って部屋中、本や文献だらけで足の踏み場もないほど滅茶苦茶に散らかっている。即、病棟に行き7時から患者の処方チェック。癌についてはほとんど知識がないので、最初はOncology(腫瘍学)に行くのはすごくいやだったが、実際には抗がん剤の投与よりも癌による合併症対策の薬物療法が中心で、感染症、麻薬、嘔気などの治療薬が主だったので、少し安心。ザイロリック3錠の処方に「抗癌薬を使用して間もないんだからtumor lysis syndromeの心配もないな」と処方中止を検討していた。毎週火曜日の8時にはカンファレンスがあるので行こうと言われ一緒に行くが、Joeは話を聞かず処方チェックを続けていた。彼はOncologyの3病棟の患者のすべての処方をチェックし、検査値、病態をチェックしているのだからかなり忙しいみたい。ただしAliも一緒だけどいくら忙しくても日本人(白鷺病院の薬剤科)のように遅くまで残ることはなく、超スピードで仕事を済ませ、5時には帰る。

1011_2.png今日のカンファレンスのテーマは薬物相互作用。講師は3名の女性で、当然薬剤師と思いきや全員ドクターとのこと。内容は症例を提示しながら興味深かった。それにしても、日本の臨床医で、1人でもCYP3A4, 2D6の相互作用、遺伝子多形、P糖蛋白質を介したジゴキシンの相互作用について話のできるドクターが日本にいるだろうか?目新しい話としてはセロトニン症候群、抗菌薬による低血糖などが興味深かった。JoeによるとこのカンファレンスはOncologyだけでなく病院全体のものだ。

9時からの講義は虚血性心疾患と末梢血管障害、不整脈についてどちらもPharm Dの講義。少し眠い。1時間後に5分間のブレイクがあるため、ダイエットコークを買いに走る。今日の講義はテキストがあらかじめ配布されていない。こういうときは学生は講義をICレコーダーやPDAを使って録音しているが、香港から来たKevin Tzeだけは僕と同じようにMDウォークマンを使って録音しているが、KevinのはよくみるとSonyのHi MDで日本では4万円位するがアメリカではなぜか1万5千円で買えるらしい。でもアメリカのMDウォークマンにはリモコンが付いていないのだ。そういえば初日に僕がMDウォークマンで録音していたら、リモコンを指差して「これは何?」ってKevinに聞かれたことがあった。今はベトナム系のHai、メキシコ系のSully、中国系のKevinの3人が一番親しい。Man(Martin) Wongには今日、自己紹介され、握手した。なぜかPharm Dコースではアジア系の友達が多くできる。

午後はMichael JohnstonというスキンヘッドのPhDコースの学生と一緒に検査値と病態をチェックする。彼はOncologyに来て3週間目だがJoeも言っているようにまじめで優秀な学生だ。

きちんと全患者の処方、検査内容を把握している。そして身長・体重から理想体重、体表面積を計算し腎機能をCockcroftの式より算出して約50人の投薬内容をチェックし、必要のない薬物を削除し、必要な薬物を投与し、投与量の増減を最適にする。最終的にはドクターに電話し、了承を得てからカルテのドクターのサイン欄だけを残して、処方を適正に変更する。Joeはドクターからの信頼も厚く、了承を得られないことはまずない。オレゴン州ではNurse Practitionerが抗がん剤以外の抗菌薬や抗ウイルス薬、抗真菌薬の投与も可能であるが、薬剤師にはその処方権はない。Nurse Practitionerはほぼドクターと似たような仕事をしているが、Joeの前ではJoeの言いなりで、薬のことがわからなければ納得するまでJoeに質問している。これだけの実力のある薬剤師に処方権がなく、薬のことを知らないドクターやNurse Practitionerに処方権があること自体が不思議で仕方ない。

1011_3.pngAliと違ってJoeは服薬指導にはあまり行かない。行くとすれば処方変更することによって不安を感じる患者だけだ。免疫能が弱っている患者が多いため、ドア越しに服薬指導する。今日みた症例は高齢女性だが、抗がん剤の副作用で髪の毛がまったくなく、不安感が強い。やはり癌病棟の服薬指導は難しい。Oncologyの病棟での薬剤師の役割は服薬指導よりも投与設計と薬物の適正使用が最も重要だと感じた。

アパートに帰る。もったいないくらい広くてきれい。リビングは15畳くらいでキッチンもカウンター式でかなり広いし、巨大な皿洗い機とグリルが付いている。これらは1度も使わないかもしれないな。それにしても部屋が暗い。部屋が暗いのでレンタル家具で照明をつけることを勧められて借りたが、大理石でできた巨大のつぼに裸電球がついて傘が付いたもの。豪華であるがちっとも明るくない。日本の洋式ホテルは何でこんなに暗いんだろうと思っていたが、アメリカの普通の家と同じなんだと思った。ただしリビングやベッドルームが暗い分、台所やバスルームは必要以上に明るい。これから台所で勉強しようかな?

 

今日習ったこと:10/11

NSU: neurosurgical unit(脳外科)

OBS: observation

MED: Medical(内科)

ONC: oncology

ENT: ears, nose, and throat

Tramadolはμアゴニストで、非麻薬性鎮痛薬、中等度から重篤な痛みに使用。

脳腫瘍にはデキサメタゾンを使用する。

Air hungerとは末期がんの呼吸不全。末期なので、死亡前にモルヒネを使用することが原因。

Neutropenic;好中球減少

シクロスポリンの至適トラフ濃度は通常は200~300で、重症の場合は400~500ng/mL。

Serotonin syndromeとはphenerzineというMAO阻害薬の抗うつ薬投与によって起こる。ハロペリドールによって抑制した患者が4時間後、呼吸停止になる。Serotonin syndromeの症状は倦怠感、傾眠傾向、Air hunger(アシドーシスなどで、著しく深い換気により細胞換気を増加する。CaCo3をより多く呼出する)

カルバマゼピンにジルチアゼムを投与することによって痙攣が起こる。

ニフェジピンにイトラコナゾールを併用することによってankle edemaが発症する。そのときの血清ニフェジピン濃度は12.7ng/mLから54.7ng/mLに上昇していた。

メトプロロールにフルオキセチン併用で徐脈、血圧低下などのメトプロロールの作用が強く現れる。

黒人のCYP2D6のPMはアジア人と同じ1%以下だが、白人は8~10%。

SSRIのフルオキセチン、パロキセチンと2D6基質のメトプロロールの作用が強く現れ、コデインは痛み止めとしての効果が現れない。

ジゴキシンとワルファリンの相互作用はERで多い。

ベンゾジアゼピンのことをBenzoと略す。

ベラパミル、キニジン、シクロスポリン、クラリスロマイシンは強いP-gp阻害薬。オメプラゾールは弱いP-gp阻害薬。アトルバスタチン、トリメトプリム、アミオダロン、プロパフェノン、スピロノラクトンも血清ジゴキシン濃度を上昇させる。

添付文書のことをpackage insertという。

QT延長の起こる薬物は全ての抗不整脈薬、ハロペリドール、チオリダジン、リスペリドン、マクロライド、メサドン、ドロペリドール、ドンペリドン、クロルプロマジン、三環系抗うつ薬、SSRI、キノロン、ペンタミジン、オンダンセトロン(www.Torsades.org

キノロンにより低血糖が起こることがある。レボフロキサシン投与6時間後血糖値が6mg/dLに低下(Friedrich and Doughety, 2004: The exact mechanism of this effect is unknown but is postulated to be a result of blockage of adenosine 5′-triphosphate-sensitive potassium channels in pancreatic beta-cell membranes.)。

8時半までにチェックアウトをすませ、エージェントのJohnのジープに荷物を積む。これでT先生ともお別れし、新居に向かう。最初は大学までバスで10分と聞いていたのに、よく調べたら40分かかると聞いてがっくり。アメリカ人はこういうところは少しルーズ。でもJohnの人柄は信用できるし、頼みは何でも聞いてくれるので助かる。Johnはヒロミさんという奥さんを紹介してくれ、1人息子のノアと一緒に遊びに来てくれた。ノア君は3歳前かな?子供と友達になるのは得意なので、最初は人見知りしていたノア君ともプラレールやヨーヨー、紙飛行機などですぐに打ち解ける。John一家とは同じアパートなどでこれからは友達として付き合いたい。引越しの書類作り、荷物の整理、レンタル家具の搬入、テレビ・インターネットの設置などで大学に行くのは12時半の予定が2時になる。今日は12時半からコンピュータのトレーニングと聞いていたが、遅れて3時に着くと実は地獄のようなプログラムが待っていた。患者に対する守秘義務、患者個人の尊重、差別・ハラスメントの撤廃に関するコンピュータのプロ不ラムにアクセスし、一通りの説明後、クイズが出され、70点以上取らないと合格できないと怖い顔で事務員のAngieが脅かす。合格できなかったら、大学のコンピュータを使って文献検索などもできないのだ。問題自体は難しくないが全て英語なので、1時間以上、英文のみを聞いていたら集中力が途切れる。3時間くらいかかってようやく2つのプログラムを終了。何とかどちらも合格証書をもらえた。客員教授が不合格じゃ格好悪すぎる。一安心。終わって帰ろうとしたら大学の事務員はAngieも含めてみんな帰っていた。

    アパートに帰って早速ご飯を炊こうとするが日本から持ってきた炊飯器が壊れていて、仕方なく鍋で炊く。キャンプの経験から「始めちょろちょろ、中パッパ、赤子泣いてもふた取るな」を守っておいしいご飯が炊ける。それと平行してカレー作り、カレールーはジャワカレー。牛肉・野菜は近くの安い巨大スーパー「フレッドマイヤー」でJohnと一緒に昼に調達したもの。自分が作っても、やっぱり日本食はうまい。明日の朝はご飯を電子レンジで温めてインスタント味噌汁と漬物だ。明日の朝食が楽しみ。寝る前にテレビを見るがアメリカは70チャンネルもあるのにどれもこれもつまらないものばかり、安っぽい喜劇、通信販売だらけでやたらとコマーシャルが多い。

  今日はT先生の運転で買い物とオレゴンの海岸キャノンビーチを散策。リンカーンシティとウッドバーンのアウトレットストア、安売りのスーパーのウォルマート、日本食のそろうスーパー「宇和島屋」で電子レンジ、プリンター、蛍光灯、鍋・フライパン・ナイフ・フォーク・お玉などのセット、お皿・コップ・コーヒーカップのセット、布団、電気毛布、米、漬物、味噌、ブリタ(浄水器)、包丁、下着のTシャツ、バスタオル、タオル、雑巾などを購入。1009.png

帰りにダウンタウンで一番評判の日本食レストラン「コージ大阪屋」で、今までに外食では注文したことのない「焼きさば定食」を注文。食欲はなかったが、食べた後、ずっと続いていた胃のもたれが、完全に治った。今夜、初めてポートランドの月を見た。夏は毎日見えて星もきれいだそうだ。

明日は引越し。夜遅くまでT先生とのどが痛くなるほど話をする。おかげでホームシックは吹きとんだ。

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今日は久しぶりの休み。英作文、英会話の勉強をするつもりだったが、全然、頭にはいらない。あせるばかりでホームシックで鬱になりそうだ。仕方なく日本から持ってきたNHK教育テレビの英会話、英文法のDVDを見ながらうとうとする。知らないうちに眠気が襲ってきて眠りにつく。10時間は眠っただろうか?やっぱり初めての週で知らないうちに疲れてたんだろう。

ようやく頭がはっきりした頃に市大からシアトルに来て2年半で、今月の13日に帰国予定のT先生(白鷺病院でのテニス仲間)が訪ねてくる。久しぶりに日本人と日本語を思い切り話して、冗談を言い合ってホームシックは吹き飛ぶ。どんなテレビが面白いか、小切手の書き方など、買い物はいつどこでどんなものを買ったら安いかなど、米国情報について教えてもらう。

明日は日本食を買うために「宇和島屋」に行く予定。T先生は早めに眠ったが、僕は昼間にずっと寝ていたので、眠気が起こらないので、この日記を書く。T先生は2年半いるが「米国生活には慣れたものの英会話は全然うまくならなかった」と言っている。1週間で、決めるのは早計だが大学や病院でも日本語に翻訳してから聞き、日本語で考えて英語に翻訳している自分に気がつく。しかも日本語で日記を書いていたらよけい日本語で考えてしまう。これからは英語で考えるようにならなければ・・・・。ということでオレゴン日記も日本語の急性血液浄化法(CHDF)の薬物療法に関する依頼文献を済ませ、いつか落ち着いてから英語で書くことを心に誓う。今日と明日はT先生とダブルベッドで一緒に寝る。

今日習ったこと:

T先生は最初の1年は腎不全マウスモデルを作っていた。最初に片腎を電気メスで焼き、1週間後にもう一方の腎臓を摘出するもの。

今日は午前中の講義はなし、Aliも忙しいため、病棟には行かず。事務のAnjiに頼んでエプソンのレーザープリンターを用意してもらう。悪戦苦闘の末、僕のオフィスのコンピュータからプリンタードライバーをダウンロードしてもらうことに成功。Anjiいわく「I’m genius!」。このコンピュータで図書館の多くの図書の原著がダウンロード可能になるそうだが、使い方はAnjiよりもMyrnaに聞いたほうがいいだろう。ただし日本語ソフトがないため、ダウンロードを自分で試みる。ExcelとPowerpointは立ち上がって印刷可能だがWordはなぜか開かない。

来週からはOncologyである。帰ってから抗がん剤について勉強するが、苦手な分野なのでなかなか頭に入らない。疲れのためか口唇ヘルペスも出てきた。バルトレックスをのむ。でもなぜか眠れない。

最初の講義は昨日と同じで、Dr.Dreilingという医師による心疾患検査について。僕にはあまり理解できなかったがエコーや画像診断についても習った。彼はなぜか僕に興味を持っているらしくて、「君の英語はすばらしい。どこで習った?」と聞くから「まだまだだめです」と答えると「私の日本語よりずっとうまい」だって。これってほめ言葉?

興味を持ってくれたのは、昨日ドクターが「尿酸は心疾患のリスクファクターである」って言ったから、「透析患者では尿酸値が上がるけどそれによって心疾患が悪化することはない」と質問したからかもしれない。「腎不全患者は別の話で、尿酸値は心血管病変のリスクファクターにはならない」と答えてくれた。

オレゴンでの講義スタイルは教授によって個性がまったく異なる。今日のドクターはジーンズをはいていたし、講義中に実践的なクイズを出すことも多い。中には正解者にキャンディを配る先生もいる。みんな身振り手振りを交えながら話し、広い階段教室を歩き回ったり、ジョークで笑わせるなどエンターテイナーみたいだ。学生の心をつかむのは大変なんだと思う。学生は帽子をかぶったままでもOKだし、授業中にバナナやリンゴをかじっている子もいる。でも日本と最も違うのは居眠りしている学生が1人もいないということ。

今日は授業が終わって講義内容についてのアンケートが回ってきた。講義はわかりやすかったか?配布資料はうまくまとめられているか?配布資料やスライドが見やすかったか?を5段階評価しそして自由に建設的なコメントをという欄が広いスペースであった。このようなアンケートを行っているからか、教授は後ろからは見えづらい黒板を使うことは全くなく、授業前にはパワ-ポイントの6分割のスライドをファイルで渡しておいて、まったく同じスライドを使って講義したりOHPを使ったりの形式が多かった。だからみんな予習できるし鋭い質問をする。スライドに写ったものがテキストになかったら「それを後からコピーして配ってくれ」と学生側から文句が出ることもある。

 

午後はAliについて病棟に行く。例の腎移植後、薬剤性糖尿病になった1歳の女の子が下痢をしている。これは矯味剤にソルビトールを多く使ったためだ。シロップ剤の種類の少ないアメリカでは錠剤をつぶしてイチゴシロップ、オレンジシロップ、単シロップなどに溶解して作るのだが、ソルビトールは溶解性が高いためと、DMだから血糖値が急上昇しないようにという配慮から多く使われたみたいで、シロップを作り直してもらった。

フェリチン値が2500ng/mLと異常高値のため腎障害を起こした患者にはデスフェラールの内服が使われた。これはPhase Ⅲで発売前だが注射薬に比べて皮膚炎が起こりにくいのだそうだ。

PharmD4年目のJanに「これは高アルミニウム血症にも使われるんだよ。高アルミニウム血症は透析痴呆症といわれる脳症と骨軟化症の原因になるんだ」とデスフェラールの構造を書きながら教えてあげた。Janの医薬品集にはちゃんと高Al血症の適応があった。

今日は退院処方が多いので、Aliは大忙しだ。ちなみに退院処方は30日分だ。ドクターが処方を作成してくれるようにAliのオフィスをよく訪ねてくるが「今は忙しいので、1時間待ってくれないか?」と丁寧に追い返す。その後ドクターとディスカッションするが、Aliの言われたとおりの新規処方をし、言われたとおりに不要な薬剤を中止した。ここではドクターとAliの立場まったく逆転している。カルテには付箋が張ってあるページがあって「これはナースか薬剤師が書いているのですか?」と聞くと「アメリカではCase managerという保険についてチェックする職種の人がいて、ドクターの医療行為に介入することがあるんだ」と説明を聞き、アメリカの医療制度の問題点を感じた。

Aliは講義もする暇がないから廊下を歩きながら「一番優れているβブロッカーは何だと思う?そしてその根拠は?」などと聞きながら、各々エビデンスを説明しながらカルベジロールの有用性について説明した。

処方変更すると続いて服薬指導だ。Aliは普通は早口だが服薬指導は非常にゆっくりわかりやすくちゃんと相手の目をみて説明する。日本のように目線をあわせるために座ったりはしない。「透明のインスリンは1日3回ブン、ブン、ブンとすばやく効くんだよ。だけどにごったインスリンは(両手を伸ばしながら)すごーく長く利くんだ。」こんな説明だとだと誰でも理解できる。

薬剤起因性の昏迷があるかないかをチェックするときには「大統領の名前は?」「Bush」「じゃ今日は何曜だったっけ?」「木曜日」と聞いて「パーフェクト」といって確認していた。

Janは中国から来た子で、レジデントのBryanよりもはるかに優れている。彼女に聞くとundergraduateを2~4年行って、PharmDを4年行く。さらに薬剤師免許を取得したら、調剤薬局(オレゴンではスーパーの中にあったり、巨大チェーン店が多い)に勤められるけど、病院薬剤師になるにはさらに           Residentを1年、専門薬剤師になりたかったらさらにその専門の病院に1年間、さらにFellowshipで1年研究する人もいるそうだ。一人前の薬剤師になるには10年近くかかる。Janは薬剤師の卵のPharmD最後の年だが、臨床のことも薬理学も、薬物の構造についても動態についても実によく知っている。白鷺病院にいた頃、ある薬科大学の教授が白鷺病院に訪問したとき、「ピラマイド」を見て、「この病院では古い薬を使ってるんですね」と言ってたが、この教授は臨床を教えているにもかかわらず10年も前に結核治療のガイドラインが変わったことすら知らなかったのだ。こんなことはアメリカでは起こりえないことだと思う。

これから医師や医学生に臨床薬理学の重要性を教えれば、難しい症例は優秀な薬剤師に処方をまかせようということになるかもしれない。そのためには「臨床をよく知った優秀な薬剤師」を育てる必要があるなと感じた。一方、薬剤師は医療薬学会や薬学会などの薬学系の学会にとどまることなく、自分の行っている病棟の専門性を生かした臨床系の学会に参加しなければ最新の情報は得られない。最新の情報を知らない薬剤師は医師から信頼されることはないと思う。

今日は初めて迷子にならずにすんだ。オレゴンは霧雨が多いし、この時期からよく雨が降るそうだが「インディアン、嘘つかない」「オレゴン人、傘ささない」。

今日習ったこと:10/6

カルベジロールの利点はインスリン感受性を挙げて体重を減少できる。コレステロールを下げるが、アテノロール、メトプロロールはコレステロールを上昇させる。ロプレソール、カルベジロールは中枢神経系の副作用が少ないが、アテノロールは半減期が長いので、中枢神経系の副作用が起こりやすい。

Crを上げずにBUNだけが上がることのある薬物はシメチジン、プロベネシド、ペニシリンなど。

ソルビトールは単シロップに比べ溶解性が高いために矯味剤として用いやすい。

屯服のことはAs neededという

昨日のオレゴン日記は長く書きすぎたため、8時半過ぎに学校を出た。でもバスがない。この時間帯は40分待たないとバスが来ない。アメリカの夜は安全なポートランドでも危険で1人歩きしないように言われたが、ジョギングをしている2人組もいたので、心配はしない。ダウンタウンで降りるはずがまた見逃し、迷子になる。乞食によく声をかけられるが、これは無視する。ポートランドの一般人は優しい。バスを待っている人が停溜所を3つ分くらい一緒に歩いてくれてようやくMAXにのって帰宅。帰りがけに寄ったセブンイレブンでビールとアイスクリームを買ったが、ビールは350mLなんてない。ほとんどが500から1000mL以上だ。バドワイザーの価格は発泡酒並みの安さなので500mLを6本買った。9時過ぎにホテルに着くとホテルから部屋を代わるように言われたので荷物をまとめる。おかげで外に食べに行くことができない。ファミレスのデニーズも閉まっており、仕方なく朝食でくすねたパンとドーナツ、リンゴ、それとインスタント味噌汁ですませ、オレゴンで初めてのビールを飲んで寝た。4時半に目が覚めたが、来週からはOncologyで、朝7時にくるように言われたので、来週からは5時に起きて朝食抜きで行かなくちゃ行けない(ホテルの朝食は6時半から)。
今日の講義は医師による心疾患検査についてと、薬物動態。学生がこれだけよく知っているのはなぜかと思って聞いてみたら山ほど本を買わされて、前もってみんな予習してくるんだって。実習時間は毎日じゃないから日本よりは大学内でのゆとりはあるみたい。人によって3回生もいたり、4回生もいたり。たぶん飛び級のためだろう。Pharm.Dを取得するのには8年かかるそうだ。今まで、僕は6年だと思ってた。これじゃ日本の薬剤師のレベルが違うのは当たり前かもしれない。
午後はAliのところに行きレジデントの学生の発表(リチウムの腎毒性と甲状腺機能低下症と亢進症について)そのあとAliによる糖尿病性腎症についての講義。これは得意中の得意だから、英語はうまくないけど中心になって答えることができた。これについては本当は僕のほうがよく知っているけれど、あまり話しすぎて嫌われるといけないので我慢した。服薬指導の後、錠剤を粉にするピルクラッシャー、Med Box(4×7の分割箱)、錠剤を半分に分割する器械などのお土産をAliからもらった。
コンピュータにアクセスできるようにパスワードをもらったがアクセスできない。事務はもう帰っているし、また明日の朝、聞いてみることにする。

今日習ったこと:10/5
Cytomegalovirus (CMV)の抗体陽性率は日本人では100%。
LiはNaと共輸送により神経細胞や筋肉細胞に入る。
9人中7人がリチウムを中止しても腎障害が進行した。尿細管間質障害だけでなく糸球体障害も起こる。
2型でも1型でもHD導入率は同じ。
2型糖尿病の90%が網膜症になる。網膜症は細血管障害の中で最も最初に起こる。
糖尿病性腎症では腎機能がCCrで10mL/min/年(1mL/min/月)低下する。
糖尿病性腎症では尿中マイクロアルブミンが300~500mg、蛋白が3~3.5g/日出る。
eMedicine×薬物×腎毒性で腎障害の発症頻度がわかる。
eMedicineに病名を入れるとその特徴がわかる。病気の原因、人種差、死亡率、発祥暦、病態がわかる。

今日は事務員のネイサンの案内で授業前に白衣を買いにいく。久しぶりの快晴、「これぞ、オレゴンだよ。アスファルトの道なんかやめて土の道を歩こう」と言うネイサンと一緒に白衣を買ってからMackenzy Hallで午前中は学部長のDr. Kradjan(Applied Therapeuticsの編集者の1人)の心不全の講義その2とSandra Earles先生の薬物動態の講義。学部長は心不全治療の概論を述べ、Dr. Sinが実践の臨床的なことについて補則するという形式で、これはほぼ医学部で習うようなエビデンスに基づいた講義内容で、相変わらず学生の鋭い質問があった。これが3回生ではじめて臨床について習っていると学生から聞いて、日本の学生の甘さが感じられた。1004.pngだってかなり予習していないとあんな鋭い質問はできっこない。薬物の成分名だけでなく多くの学生が「ラシックス」や「ノルバスク」などの商品名まで記憶している。講義はメトプロロールとカルベジロールを比較して長所・短所を説明するなど、内容はかなり濃い。1時間後に5分間の休憩があるが学部長とDr. Sinの周りには質問をする学生が列を作っている。これもなんという積極性、日本と大違い。
2時限目は実践的な薬物動態。薬物を連続投与し、3ポイントの血中濃度を測定し、その結果から、X時間後の濃度はどれくらいになるかを関数電卓を使うだけではなく、片対数グラフを使ってOHPのシートに書きながら説明する。もちろん学生も片対数グラフをもらって半減期、AUCの計算、平均定状状態濃度の計算をする。最後には数人ずつに1台コンピュータが配られ、どのようにしてグラフを書くか、濃度の計算をどのような式を用いて行うかを習得する。こんな講義は薬剤師会の講演でも必要だと思う。だって日本の薬剤師はTDMをやるにも解析ソフトがないとできないと思っているし、VdもFもCLもほとんど知らないんだから。
食欲がないというか食堂のハンバーグやピザのにおいをかいだだけでもむかつくので昼ごはんはなし。本当はご飯と漬物と味噌汁がほしい。
午後は昨日と同じAli Olyaeiのオフィスに行くが、方向音痴なので何度も道に迷った。でもみんな親切に案内してくれた。オレゴンの人はみんな優しい。
Aliにはレジデントの学生2人と一緒に最初に高リン血症治療薬、ACE-I, ARB、腎毒性について講義を受けた。主に学生2人に先に質問をしてくれたが、日本の大学院生とは比較にならないくらいレジデントの学生のレベルはかなり高い。彼らは常にPDAを持っていてその中に医薬品集formularyが入っていて、先生の質問にもすぐに答えられる。
講義の後は5時までAliと一緒に病棟に回る。クレアチニンが2.2mgの心内膜炎にゲンタシンとバンコマイシンが併用されていることが判明。TDMはドクターが指示を出しているが、ゲンタシンを200mg近く投与し、トラフ値が11.5mg/Lと異常高値であることが判明。このままでは腎機能は悪くなる一方のはず。直ちにドクターにゲンタマイシンの投与をやめて血中濃度測定を依頼する。TDMは医師が指示するが実際には薬剤師が主導権を握っている。バンコマイシンの目標トラフ値を聞くと「10~20μg/mL、で肺炎の時には20μg/mLに設定する」といわれ、AliはDr.Craigの最新の文献をチェックしていることがわかった。日本では添付文書が10μg/mL以下になっているから、こんなことを言う人は僕と森田先生(同志社女子大)しかいないと思う。
Aliはどんなに患者が重症でも積極的に服薬指導に連れて行ってくれた。この内容がすごい。まず処方を作成し、ドクターの了解を得ると薬の一覧表を作り、処方箋を薬局にFAXしできた薬を持って説明する。ここまでは僕たちと一緒(僕は最初から処方することはなかったが)。服薬指導では膵腎同時移植した患者に一覧表を渡し、薬の名前、いつのむか、何錠飲むか、食後に服用するべきか、副作用は、について説明し終えたら、リピートさせる。つまり「朝飲む薬の名前は?何錠のむんだっけ?食後か食間かいつに飲むんだっけ?」のように。これは南カリフォルニア大学のDr.Sigbandが提唱している「フィードバック」の手法をちゃんと守っている。患者のほうも免疫抑制剤やステロイド、そしてそれらの副作用を防止する薬だから必死になって答える。答えが完全になるまでフィードバックさせる。日本では患者の理解力がありそうならそこまではしないが、患者は見た目では判断できない。理解しているようで理解していないことが多いため、この手法は日本でも取り入れるべきだと思った。
1004_2.png米国ではPTPや散剤はほとんどなく錠剤を瓶に詰めて渡す。そのかわり一週間分の朝昼夕寝る前の28分割のケースはちゃんと渡してた。錠剤を半錠にするのも錠剤を砕いて粉にする器械(ピルクラッシャー)も簡単なプラスチック製のものがあってそれを患者に渡し、患者自身が粉にしたり、1/2錠にしたりで、案外不親切なようだが、考えようによっては患者に任せている、つまり独立心を大切にする国民性の表れなのかもしれない。
次に腎不全からCAPD導入後、腎移植を受けたが、タクロリムスの副作用で糖尿になってしまった1歳の女の子のところにいく。小児病棟では白衣を見るだけで赤ん坊は泣くので、白衣を脱いで部屋に入る。免疫抑制剤を投与されているので、厳重に手を洗うが、マスクやガウンは着ない。なぜなら個室なのに日本の6人部屋よりも広いから患児から遠く離れて父親に服薬指導をする。免疫抑制剤などの大切な薬なので、父親も一生懸命になって話を聞いてくれる。「ほかの薬剤師が食間に服用って服薬指導しても絶対に食後に服用しなきゃだめ」と説明しているのが気になったが、胃腸障害を起こさない配慮だと思う。
服薬指導の途中でAliの顔見知りの女性腎臓内科医と会う。僕を紹介してくれて「腎障害患者のNa制限は日本では6~7g/日なんだって?アメリカでは2~3gよ」と聞いてビックリ。日本人は1日2~3gの食事は不可能だ。アメリカ人との食生活の違いを感じたが「東北地方の人は1日30gの食塩を摂るんですよ」と説明すると今度は相手がビックリ。
ほかにもかなり重症の患者を見た。だってAliは腎専門薬剤師といっても移植病棟の専任薬剤師だから。彼の実力は本当にすごい。僕も完全に脱帽である。今日も寂しくホテルに帰る。早く日本に帰りたい。母ちゃんのおかずが食べたい。漬物と味噌汁だけでもいい。でも学ぶべきことは多い。辛抱、辛抱。

今日習ったこと:
ラシックスの最大投与量は注射で240mgを1日2回。
急性期には半減期の長いカプトリルがよい。
Ejection fractionの改善はカルベジロールのほうがメトプロロールよりもよい。しかし血圧はカルベジロールのほうが低下しやすい。
βブロッカー全体にいえることだが、メトプロロールは倦怠感、めまいを起こしやすい。
腎毒性について調べるにはClinical Nephrotoxins ?Renal injury for Drug and Chemicals, 2nd Edがよい。Kluwer Academic PublishersからMark E DeBroeらの編集で売っている成書。
ACE, ARBの使用はDM発症率を低下させる。
イトラコナゾールはin vitroでは効果が高いがin vivoでは弱い。
アメリカの透析患者は健常者に比べて35倍早く死ぬ。
リン吸着薬の使用は炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、レナジェルの順。
シナカルセットの効果は高い。
アムホテリシンBの構造は水溶性サイドと脂溶性サイドがあり、そのため組織移行性が高い。
アムホテリシンBは尿細管障害により2~3週間の使用でGFRが低下する。ただし早期にクレアチニンやBUNが上昇する(80%)。
アムホテリシンBを3ヶ月使用すると85%の腎障害が回復しない。
アムホテリシンBを2g(約20日)以上の使用で45%の腎障害が回復しない。
Deptomycinは肺炎に有効だがcyclo lipopeptideという新しい種類で横紋筋融解症が起こることがある。
フェニトインには心毒性があるため投与初期から注意深い観察が必要。

いよいよ今日から大学へ。興奮しているからか朝4時頃目が覚めました。MAXという市電に乗ってバスに乗り換えていくんだけど少しややこしいい。行ってみると僕は教授扱いで広いオフィスとコンピュータをもらいました。学生も教授たちもみんな僕のことを知っていていろいろな人に話しかけられて戸惑いました。でもやってることは学生か実習生だけどね。授業は心不全と薬物動態の二科目。薬物動態も日本とは異なり実践で使える臨床薬物動態学すごく白熱していてしょっちゅう学生が先生に質問するし、先生も学生に問いかけると学生はみんな先を競って答えを言う。教授の教え方も丁寧でわかりやすく手作りテキストも充実している。日本の大学で教授が難しいことを言って、何も反応しない学生ばかりなのとはわけが違う。
午後になって腎臓専門薬剤師のAli Olyaei(イラン系のnephrologist、すごい病棟薬剤師で、腎毒性の講義もうまい)について病棟を回る。オレゴン州の薬剤師には処方権はないが、重症患者の処方は全面的に任されている。処方を病態、体格にあわせて処方し、ドクターのところに行くと「Perfect!」の一言。それから薬局に処方せんを送り、処方をもらったら、即、患者のところに行き、服薬指導。今日は腎移植を受けた1歳の赤ちゃんや肝移植を受けて退院間近の高齢女性。どちらも免疫抑制剤やその副作用防止のための処方で、処方数もかなり多い。頻繁にポケベルが鳴り、そのたびごとに病棟に行く。患者さんや意思やドクターから「Hi! Ali」と声をかけられていつもにこやかに対応する。その後、薬学研修生2名と一緒に腎毒性についてPower Pointを使った講義を受ける。僕も薬物の腎毒性についてはよく知っているつもりだったけど、完敗だった。もっと勉強しなくては・・・・。それと驚いたことに腎不全の薬物療法の世界一の権威であるWilliam Bennet先生がポートランドに住んでいて、Ali Olyaeiもムナ先生も彼の教え子のnephrologistだった。僕がBennet先生のことを尊敬しているというと、すぐに電話をかけてBennet先生と話ができた。彼はシカゴ出身でホワイトソックスの大ファン。井口の話もした。
大変な一日だった。これが毎日続くと神経が参りそう・・・・。

今日習ったこと:10/3
Pixisという自動薬物引渡し装置が薬局にあったこと。
ACE-Iは副作用を考慮して少な目から投与すること。
ACE-Iの中でラミプリルは半減期が飛びぬけて長い(50~120hr)。心筋梗塞後の予後もACE-Iの中で一番よい(Pilotel, et al: Am J Intern Med 141: 102-112, 2004)。
ACE-Iの蛋白尿抑制作用はdose dependentだが、降圧作用はdose dependentではない。
ACE-Iによる血管浮腫はいつ起こるかわからない。投与後1年後に起こることもある。これはbradykininは関与していない。
ACE-Iに比べてARBのほうがカリウムは上がりにくい。
MDRD法は従来のCockcroft法に比べて優れている。計算式は複雑だが、検索エンジンでMDRPとCalculationで自動計算できる。
トリメトプリム、シメチジン、セファキシジンは腎毒性がない。

今日あった先生:Hearleen Sings(Internal medicine, Heart failure), Dale Kramer(統計と薬学経済学)、Donna Bella(PK), Wayne Kradjan(Heart Failure, Dean)、Allison(Aliのボスのnephrologist)、Ali Olyaei(イラン系のnephrologist、すごい病棟薬剤師で、腎毒性の講義もうまい)、Anji and Neithan(事務)

今日、会った学生:Sully(大阪出身の友達がいるメキシコ系の?女の子)、Hai(ベトナム系の男の子でカリフォルニアに家がある)、Thuy Duong(日本語のうまい子)

今日行った所:Gaines Hall, School of Nursingを通って講義室(Mackenzie Hall)、Hatfield research Center/HRCV emergency Dept 9階:Ali Olyaeiのオフィス)

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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