11月13日(木)開催の、シリーズ③「慢性心不全治療のFantastic Four ってどんなもの?」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.サルコペニアフレイルには避けるということでしたが、
A.SGLT2阻害薬は非糖尿病ではブドウ糖200kcal分が尿中に喪失するだけですが、糖尿病では血糖値に依存してもっと尿糖排泄量が増加しますし、それによってケトン体産生が増えるということは体脂肪・筋肉が消費され、尿中にケトン体が喪失するのでエネルギー喪失はもっと強力だと思います。今回紹介した論文のほとんどが米国のもので、高齢者なのに平均BMIが30前後なので「痩せると楽になる患者さんたち」だと思いますが、日本人高齢者は加齢とともに痩せが顕著になってきますので、やはりSGLT2阻害薬は投与しにくいです。
SGLT2阻害薬は瘦せるからサルコペニアやフレイルには投与しない方がよいだけではなく、この方たちは活動度が低く、要介護度の高い患者さんだということですね。ということは女性では性器感染のリスクも高くなりますし、食欲も低いと思いますので、糖尿病患者ではケトアシドーシスを発症するリスクも高くなると思われます。非糖尿病CKD患者であっても心不全ステージAですから、ガイドライン上では投与できると思いますが、サルコペニアやフレイルを合併した患者ではやはり投与しにくいですが、最終的には主治医の判断になると思います。サルコペニアやフレイルが悪化するリスクよりも腎機能悪化を防ぐベネフィットが高いと判断すれば投与してもよいと思いますが、その後のケア(体重、活動度、性器感染、尿路感染など)は大変になると思います。
Q.SGLT2阻害薬が腎臓の負担を減らすということは、透析患者にも効果(貧血改善効果など)が期待できるのでしょうか?
A.SGLT2阻害薬がどうやって効いているかについてはさまざまな説があります。僕はケトン体産生による恩恵を受けているという説が、一番説明しやすいので、この説をメインに解説しましたが、貧血改善、長寿遺伝子SIRT1の活性化、尿酸低下作用など様々な説も唱えられていますし、動物を使った基礎研究ではもっともっと様々な説があります。長期透析患者では尿細管が線維化していてほぼ機能していないので、SGLT2阻害薬は無効だと思いますし、貧血改善作用はSGLT2阻害薬よりもESAやHIF-PH阻害薬のほうが強力です。透析患者で使える可能性があるとすれば、透析導入して1~2年、あるいは残腎機能のあるCAPD患者さんだけではないでしょうか。
11月13日(木)開催の、シリーズ③「慢性心不全治療のFantastic Four ってどんなもの?」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。
ファンタスティックフォーについての研修会、とても楽しみにしていました。先生の教えを自分のものとして、患者様が思わず飲みたくなるような服薬指導をしていきたいです
SGLT2阻害薬により、ケトン体亢進作用が、心筋や血管 にいい効果をもたらすこと、貧血改善と腎臓に大変良い影響があることがわかり、早期に開始できるように医師とコミュニケーションをとっていきたいと思います。
いつもありがとうございます。 聞きそびれとところなどがあるのでYouTubeの配信でもう一度聞きたいと思います。ケトン体の働きについてこの間からどうしてだろうと考えていたので非常に参考になりました。 ありがとうございました。
SGLT2阻害薬をもっと使ってもらいたいなとは思っていました が、具体的な推奨する患者さんが考えられるようになったので、先生に少し相談してみたいと思います。
腎臓薬物療法学会の平田先生のご講演で今回から参加 しました。◯◯医院薬剤部の◯◯と申します。平田先生、本日は貴重なご講演ありがとうございました。新卒で今年入職した上に不勉強なため知識がかなりない状態でしたが大変わかりやすかったです。入職して半年間参加できる勉強会はほとんど参加してきたのですがあまり理解できず身になっていないので平田先生のご講演で学んだことは忘れないようにアウトプットしたいです。
SGL-2阻害薬服用患者には常に1.5Lの水分摂取を 勧めています。先生がおっしゃた様に1.5Lをこまめに摂取するようにと。間違っていなくてよかったと思います。
何回か拝聴させて頂き、ようやくパズルがはまったように なってきました。Fantastic fourの各薬剤、組合せによる相性や腎保護作用、ケトン体など引き込まれるように勉強させて頂きました。有難うございました。
分かり易く説明いただくので、頭の中が整理されます。 開業医への薬の進言に関しては大変気を使いますが、ファンタスティック4の導入に加え、既に処方されている患者への服薬指導を、早速明日からの学会資料を利用させて頂きます。
私は◯◯市で在宅医療、外来、施設の調剤、OTC販売の日常を過ごしていますが、限界集落で超高齢地域なので、心不全の患者が多くの時間を食事の指導に費やしてきた気がします。MRAでケレンディアの使用経験がありません。DM患者に使え、高圧作用が少ないのは魅力です。引き続き本薬剤について新たな知見があればご指導ください。
SGLT2阻害薬の可能性の高さには驚きます。 貧血についてはもう少し詳しく知りたいところです。
いつも大変勉強になります。
いつもありがとうございます。 とても勉強になるのと、もっと勉強しなければという気にさせていただけるので、これからも仕事と自分の勉強を頑張ろうと思います。 ありがとうございました。
前回の内容も振り返りながら進めていただき、ありがとうござ いました。ケレンディアが心不全でも使えるように願います。
本日はありがとうございました。
今年の9月から本公演会に参加しております。本年度の4月からの公演も是非視聴したいので、配信頂ければと思います。
わかりやすい講義をありがとうございました。
脂溶性の高い薬物でないと細胞膜の脂質二重相を通過できない。ということは極めて親水性の高いβラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬がクラミジアやレジオネラなどの細胞内に寄生して増殖する細胞内寄生菌を殺菌できるわけがない!脂溶性の高いマクロライド、テトラサイクリン、クロラムフェニコール(チフスには今でも使ってるらしい)が細胞内寄生菌に効果がある。キノロンはクラビットⓇが尿中排泄されるので親水性と思っている人は多いけど、モキシフロキサシンなど脂溶性が高く組織透過性も高い(Vdは2.0~3.0L/kg)ので細胞内寄生菌にも効く。結核菌にまで効いてくれるのは困ったものだけどね。だけどキノロンを除く脂溶性抗菌薬は殺菌性ではなく静菌性抗菌薬なので、重症感染症にはあまり頼りにならない。逆に殺菌力が強くてスペクトルが広すぎるキノロンは「原爆みたいな薬」なので、軽微な感染症に気やすく投与すべきじゃないと平田は思う!
細胞壁にペプチドグリカンがないため、細胞壁合成阻害によって殺菌するβラクタム系抗菌薬・グリコペプチド系は細胞壁のない細胞内寄生菌やマイコプラズマには無効であり、マクロライド系・テトラサイクリン系・キノロン系といった抗菌剤が治療には用いられるというのも理解しやすいね。




多剤耐性菌では難儀な緑膿菌などのグラム陰性菌は脂質外膜(ヒトの細胞膜と同じ脂質二重相)をもっているため抗菌薬の透過性はよくないが、外膜にはポーリン孔があり、脂溶性薬剤は透過しにくい。そのためアミノ配糖体のような水溶性薬物の効果が高い。カルバペネムもポーリン孔を透過しやすいため陰性菌に効果が高い。さらにポーリン孔は分子量600以上のものが透過できない。これで分子量が1500Da足らずのバンコマイシンや1500~1900Daのテイコプラニンは分子量が大きいため、全くグラム陰性菌には全く効かなくて、巨大な環状構造を持ったマクロライド系抗菌薬(分子量約800Da)がグラム陰性菌には強くないってことが理解しやすくなる。この理論、合ってるかどうかは知らないけど、これで抗菌スペクトラムが理解しやすくなるのは確か。




薬剤師の皆さん、一般内科医の先生方、以下の質問に答えられますか?
①CKD患者の降圧薬の第1選択薬は何?
②糖尿病患者の降圧薬の第1選択薬は何?
③糖尿病患者の降圧目標は?
④CKD患者の降圧目標は?
⑤RAS阻害薬の投与開始時にはeGFRをモニターするが、投与3か月後までの時点で前後の30%未満の減少は、薬理効果としてそのまま投与を継続してもよい?
では回答は図をご覧ください。



これら①~⑤の回答の赤字部分はCKD診療ガイド2012(ガイドラインではないが、CKDを知っていただくために多くの製薬メーカーの協力を得て、日本全国の開業医に配布された)に記載されていた事項を正した回答だ。腎臓専門医であればその後のCKD診療ガイドラインの記載事項変更によってアップデートできているが、一般内科医には配布されて13年も経っているアップデートされていないCKD診療ガイド2012の情報を今でも信じている人が多いはずだ。だから薬剤師の皆さん、RAS阻害薬はトリプルワーミー処方の1つ、薬剤性腎障害の原因薬としてはトップクラスなんだ。腎機能が悪化すれば透析患者になってしまうことだってあるんだよ!

SGLT2阻害薬ほどは注目されてないけれど、「心不全のfantastic four」、「CKDの三種の神器」の両方に入っているのがMRAのフィネレノン(ケレンディアⓇ)。他のMRA と異なり、Ca拮抗薬と同じジヒドロピリジン骨格で、利尿作用が弱く、収縮期血圧は下げても2~3mmHgと弱いので、MRAの中で唯一、降圧薬としての適応はない。だけどアルブミン尿を30~40%も下げてくれ、心・腎の繊維化・炎症を抑えてくれるので糖尿病関連腎臓病DKDでの腎保護作用・心保護作用は強力だ。MRAはRAS阻害薬やARNIと併用されがちなため、腎機能低下患者での高カリウム血症が非常に怖い。しかしフィネレノンを用いて腎複合イベントを主要評価項目としたFIDERIO-DKD試験で血清カリウム値は0.25~0.3mEq/mLの上昇のみ、心血管複合イベントを主要評価項目としたFIGARO-DKD試験でもカリウム値の上昇は0.16mEq/Lの上昇のみだった。これで安心して心・腎保護作用が期待できるMRAとして認められた。
ところでFIDERIO 、FIGARO って聞いたことない?前者はベートーヴェン、後者はモーツァルトのオペラの題名だ。「フィガロの結婚」は僕も大好きな楽曲だけどベートーヴェンがオペラを作ったってことは知らなかった。RAS阻害薬+SGLT2阻害薬を使っても微量アルブミン尿が持続するなら血清K濃度<5mEq/LでeGFR≧25mL/min/1.73m2のDKDであればケレンディアⓇの追加を提案してみよう!





ミネラルコルチコイド拮抗薬MRAのスピロノラクトンが重症心不全の死亡率を30%も下げることを報告したRALES試験後に処方頻度が4.38倍に上昇し、それによる高カリウム血症による死亡者が6.7倍に増加したことが問題になった。腎機能低下患者ではすべてのMRAで重篤な副作用である高カリウム血症の懸念はあるし、心不全、CKDともにほぼRAS阻害薬と併用されるので、腎機能もわかっていない高齢者などに外来で投与するのは問題だ。MRAを使うのであれば、入院患者でしばらく観察して高カリウム血症になりにくい症例であることを確認してから退院させる、あるいはケイキサレートⓇやロケルマⓇなどのカリウム吸着薬を併用するなど万全な配慮が必要だろう。ところでST合剤(バクタⓇ)とスピロノラクトンの併用は高カリウム血症による入院リスクを12.4倍、突然死リスクを2.45倍上昇させるって知ってた?第3世代MRAのフィネレノン(ケレンディアⓇ)の構造はなんとCa拮抗薬と同じジヒドロピリジン骨格を持っていて、性ホルモン様作用が少なく、糖尿病性腎症のアルブミン尿を減少させるだけでなく、高カリウム血症も従来薬に比し軽い。



PPIは意外とアレルゲン性が高く、アレルギー性の急性間質性腎炎になりやすい(図1)。免疫チェックポイント阻害薬と併用すると、重症のアレルギー性の腎障害が起こりやすい(図2)が、これらは用量依存的ではない。長期投与で問題なのはPPIによる毒性ではなく、胃酸分泌抑制による諸問題なのだ。まず下記の4つの副作用に注意しよう。①胃酸分泌の抑制による腸内細菌叢の変化によってクロストリジオイデス・ディフィシル(CD)腸炎などの多剤耐性菌のコロニー形成のリスクになる(図3)、②Mgの吸収障害による重度の低マグネシウム血症により、QT延長、心停止を起こす可能性がある。TdP (Torsades de pointes)発症患者の半数以上が低マグネシウム血症でTdP発症群の血清Mg濃度は低く、PPI服用中にTdP発症群の血清Mg濃度はさらに低いことが報告されている(図4)③胃酸分泌抑制によって吸収されにくくなる薬物がある(アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール、HIV抗レトロウイルス薬のリルビビビン、アザタナビル、チロシンキナーゼ阻害薬のダサチニブなど)④PPI長期投与によってビタミンB12の吸収障害(PPIを常用している平田も欠乏レベルに近かった)。
そのほかにも様々な報告がある。Ca吸収障害による骨折のリスク増加、種々のがんリスク上昇、肺炎のリスク上昇、認知症悪化リスク上昇など様々だが、これらは矛盾するデータも多く、交絡因子の影響を受けているものが多いので確立されていない。本当にPPIの必要な患者さんに対して、再生回数を増やすために、明確になっていない副作用、薬の怖さだけ強調する医療系SNSには気を付けよう。





これから暑い夏、トリプルワーミー処方や活性型ビタミンDを服用している患者さんにはこまめな飲水よりもより積極的な飲水励行をしよう。そして保険薬局や在宅でも簡易に脱水を早期発見するには、「爪毛細血管再充満時間(CRT:Capillary refilling time)2~3秒以上」の特異度が高いことを知っておこう。もともとこれはトリアージ(災害時などで誰を優先的に治療するかの順位を決める)で循環機能を簡易的に判定する指標で,爪を5秒間加圧した後に解除し,爪の赤みが回復するまでの時間(Blanch test)。2秒以上なら、緊急治療群(Ⅰ:赤)とするトリアージに用いる手法である。2秒未満なら、循環に関しては問題ないと判断される(3秒とすることもある)。McGeeらは脱水症の判定に応用した循環血漿量が減少しているかどうかを簡易に見つける特異度の高い方法として報告した。右手で左人差し指のつま先をつまんでみよう。ピンク色の爪が一瞬、白くなるが、2秒以上白いままだと脱水(末梢循環の不良)が疑われる。これは特異度、つまり脱水がない患者で症状が現れない確率が95%と高い。口腔粘膜の乾燥は感度、つまり脱水が存在する時に出現する確率(脱水を見逃さない確率)が85%と高いことを覚えておき、どちらも高ければ脱水と簡易診断可能だ。そのほかにも体重減少・血圧低下もとても良い参考になる。輸液の専門家はなぜか、皮膚の張り(skin turgor)を参考にするという人が多いけど高齢者ではしわが多いのでもともと張りがないので平田は高齢者にはあまり使わない。


日本腎臓病薬物療法学会前日の前夜祭として、10月31日(金)17時30分から20時30分までの3時間にわたり、虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された平田塾「薬物動態学を好きになれないあなたへ」のQ&Aです。
Q.緩和医療ではジクトルⓇテープが使われていることが多くなりました。緩和ケア領域の患者さんでは高度の低アルブミンの方が少なくありません。ジクロフェナクの蛋白結合率は99.5%と極めて高く低アルブミンでは遊離型が大きく増えるのではないかと考えています。さらにジクロフェナクは腎の臓器濃度が他の臓器に比べて1〜2桁高かったと思います。ジクトルⓇテープなどのジクロフェナクは低アルブミンの患者さんでは腎障害のリスクが著しく高くなるのではないかと心配しており、栄養状態の悪い患者さんでは避けた方がいいものか、お教えいただければと思います。
A.まずジクロフェナクのPKパラメータを日腎薬グリーンブックから、調べてみましょう。その時に平田の考察(この薬ってどんな顔をしてるんだろう?)も記載します。
CL: 経口投与時CL/F: 6.0mL/min/kg
単位が分かりにくい。F54%が正しいなら、緩和領域なので軽めの50kgの体重とすると、300mL/min×0.54=162mL/minとなり脂溶性薬物としては意外と小さいと感じる。でも脂溶性薬物出汁2C9の基質だからCLの個人差が大きいと思うので、この値を信じて積極的に使うと痛い目に合うかもしれないので使う気にはなれない。
Vd: 靜注で0.17L/kg
意外と小さいが、PBRが高すぎるためアルブミンにトラップされて血漿濃度が高くなるため、組織に移行しにくいためと解釈される。Vdは安定した値で臨床では非常に使い勝手が良いパラメータだ。
fe: 尿中未変化体回収率6.7%
尿中排泄されないと考える。10%以下であれば数値はどうでもよい
F: 54%
吸収率は意害と低い。脂溶性薬物なのにほんとかなと疑う。
PBR: 99.5%、主にアルブミンと結合
この質問の中では重要なパラメータ。これがVdが小さい原因!ただしこれは健康成年男子のデータであり、投与する患者は高齢者が多いことを知っておく必要がある
t1/2β: 1.2-1.5hr
速く効く。シャープな切れ味はこの半減期の短さにある?ただしすぐに痛みが再発しそう。初日から定常状態になる
PK/PD関連情報: CYP2C9により水酸化体となり、その後グルクロン酸抱合体となる ワルファリンと絶対併用しちゃいけないことが分かる
特記事項: 主要血管イベントのリスク上昇に関連する NSAIDsの中では心血管リスクが高いので気を付けよう!
質問の回答ですが、低アルブミン血症患者に投与すると確かに遊離型分率(フリー体の割合)が上昇するため、何倍量かを投与したのと同じになるはずと思っている方は多いと思います。ではジクトルⓇテープが使われている患者さんでは顕著な有害反応が起こっているでしょうか?低アルブミン血症患者でと顕著に副作用が起こっているという報告はあまりないように思います。もし起きているとすれば、低アルブミン血症患者が高齢者で低栄養・低体重などの他の要因が関係しているのではないでしょうか?講演の時に申しましたようにPKパラメータの多く(グリーンブックも同じです)はインタビューフォームを引用していますので、多くは第1相試験で対象となるのは「成年健常男子」なのですが、実際に使われる患者さんは多くが高齢者です。だから上記のパラメータも使われる患者さんに翻訳する必要があります。遊離型が高いのでPBRは低い。でも増えた遊離型は組織に移行しやすいし(Vdが大きくなる=血中濃度の振れ幅が小さくなる)、遊離型のみが代謝されるので代謝による消失も早い(CLが大きくなる)ので、副作用に関係する血中遊離型濃度は皆さんが危惧するほど、上がらないのではないかと思います(図)。NSAIDsによる副作用は腎内濃度とは関係ないと思います。ということで「低アルブミン血症患者にジクトルⓇテープを使っても副作用が起こるとは考え難い」という回答になります。

図の解説:上は健常者で下が低アルブミン血症患者です。上の濃いピンクが遊離型薬物で間質液濃度=遊離型濃度ですから5個あります。下の血漿中のアルブミンの数が減ってますので、遊離型薬物の数は増えますが、速やかに組織に移行し、全身循環に乗って肝代謝・腎排泄され、クリアランスが上昇します。そして最初の遊離型濃度と同じ5個になって平衡状態になります。遊離型濃度が同じということは薬効は変化せず、副作用も起こしません。一般的に分布における相互作用はありますが、それが有害反応に結び付いたという報告はほとんどないと思います。ただしこの時点でTDMをやると総濃度が低下しているため、薬剤師が医師に増量を依頼してしまうと有害反応が起こるということは想定できます。
Q.今年も薬剤師塾、ありがとうございました。蛋白結合した薬物はどのくらいの時間が経過したら離れる、などありますか?薬によって異なるものですか?その場合、一時的に遊離型の薬剤が増えて、薬効が強くなる、ようなことはありますか?TDMをするときはそのようなことは考えなくても大丈夫でしょうか?
A.薬物とアルブミンの結合はくっついたらくっつきっぱなしではなくくっついたり、離れたりを繰り返しながら平衡状態を保って一定の蛋白結合率を保っています。すでに投与されている薬物をAとします。アルブミンとの結合を競合する薬物で投与量が多く、アルブミンとの親和性が高い薬物Bが併用されるとAの遊離型分率は高くなり(PBRは低下する)ますが、遊離型薬物は代謝・排泄クリアランスが上昇し、組織への移行性も向上して血中濃度が低下して、併用前と同じ遊離型濃度になって新たな平衡状態になりますので、薬効には変化ありません。つまり有害反応は起こりませんが、TDMをすると、TDMでは通常は総濃度しか測定しないので、遊離型濃度は同じでも総濃度が低下しているので、薬剤師が投与量の増加を依頼すると副作用が起こる可能性があります。
Q.透析患者のバンコマイシンのTDMについて質問です。初回25〜30mg/kg 維持量7.5〜10mg/kgが現在の推奨量かと思いますが、この通りに投与しても血中濃度が低い場合、再度、負荷投与の必要がありますが、投与量の計算方法は何かありますでしょうか?
個人的な考えですが、バンコマイシンの分布容積を0.7L/kg(私の持っている書籍に記載されてました)、透析除去率を20%とします。(調べると10〜30%と記載されてるいので間をとって)推奨投与量の初回30mg/kgを投与するとCmaxは静注モデルで43程度になると思います。例えば透析前の血中濃度が8だったとすると、20%除去されて6.4。Cmaxを43にしたいので、37ほど血中濃度を上げたい。37×分布容積=投与量として投与。以後、有効血中濃度になったら維持量(10mg/kg)を投与。
一応、このような計算で症例数は少ないですが、有効血中濃度に保つことができましたが、この考え方は間違っていますでしょうか?
また、初回投与終了直後の血中濃度をとると、血中濃度と投与量から正確な分布容積を計算することができるかと考えますが(状態により変化することもあると思いますが)、血中濃度をとる意義はあるとお考えでしょうか?長々とすいません。よろしくお願いいたします。
A.僕は初回負荷投与が好きなんです。特に抗菌薬では早く治してあげたいので。だからバンコマイシンのように透析患者では投与間隔が長くなるので初回は20-25mg/kgなどの「恐る恐る投与する」のではなく心置きなく30mg/kgを投与していました(バンコマイシンの投与設計は主治医から任されていましたので)。でも2013年12月にメーカーもMeiji Seikaファルマからパンフレット作製を依頼された時にはやむを得ず25mg/kgで作成しました(平田作成の図)。抗菌薬の投与量はTDMの結果によって増減しますので、血中濃度が予想よりも著しく低い場合、増量してください。どれくらい増量すべきなのかはデータも患者さんも診ていないので僕にもわかりません。

Vd0.7L/kgは点滴修了後1時間のα相に採血したデータなので僕は使いません。バンコマイシンは分布するのに2時間以上かかりますので、0.9-1.0L/kgだと思います。だから僕の考えではCpeakが43まで上がることはありません。
Q.とてもわかりやすいご講演ありがとうございます。質問です。今回ニューキノロン系はAUC/MICの薬剤でレボフロキサシンが1日1回投与を学びましたが、しかし、ニューキノロン系薬剤のシプロフロキサシンは添付文書では1日3回投与となっています。これは古い薬剤なので1日3回投与のままとなっているのでしょうか?
A.抗菌薬適正使用ガイドラインの投与方法は添付文書にのっとって作っているわけではありません。そして新たなエビデンスが得られてガイドラインが変わっても、よほどのことがない限り添付文書が改定されることはありません。シプロキサンも耐性菌を生じないように投与を続けたいのであれば1日1回投与すべきだと思います。査定されればエビデンスとなるガイドラインや論文を保険者に提出すれば査定は取り消されます。
Q.キノロンの分布容積の所で急性前立腺炎の場合は炎症により、血管透過性の増加でセフェム系でも治療するのは前立腺の表面の炎症及び菌をやっつけているイメージ、慢性化する場合は前立腺奥まで必要だから脂溶性のキノロン、ST合剤であっているでしょうか?
A.感染症は炎症性疾患ですから、血管透過性の亢進は常に起こると思います。でも血管透過性の亢進が薬物投与に関係するのはβラクタム系委抗菌薬かアミノグリコシド系抗菌薬などの細胞外液に分布する薬物です。前立腺炎の場合はやはり移行性が高いキノロンやST合剤が用いられるようです。感染形態のイメージはよくわかりません。ごめんなさい。
Q.ご講演ありがとうございました。アルベカシンについて確認です。入退院を繰り返す心不全患者で、アルベカシンを心不全増悪しておる入院初期に使うときでは、前回などの退院時のむくみのない体重に0.3L/kgをかけて、その後に浮腫んでいる分を足してVdとすれば良いですか?
A.正解です。現在の浮腫で増加している体重分+0.3L/kg×体重でVdとします。
Q.心不全の退院時は入院時と同じものを出すとまたすぐ入院するので、ループ系を増量したり、トルバプタンを入れたりして利尿剤を強化してお帰りいただくイメージがあります。先生のご講演では同じ量だと脱水というのは、食指不振で薬だけ飲んでいた患者さんだった可能性などございませんでしょうか? 心保護のエンレストやSGLT2阻害薬は利尿効果もあり、ループ系利尿剤など減量できる可能性があると言われておりますが、それらを上手に入れたりしなければ進行性の病気ということもあり、入院時と退院時でフロセミド、アゾセミドを減らせないと考えておりますがどうでしょうか。不躾な質問ですみません。いろいろ考えることができてとても素敵なお時間をありがとうございました。
A.食思不振で吸収速度は変わっても吸収率はあまり変化しないのでは?「フロセミドは消化管浮腫によって著明にバイオアベイラビリティが低下する」というのは動態の教科書によく載っている定説です。消化管浮腫があればフロセミドのFは大きく低下しますし、消化管浮腫が消失すれば、フロセミドは70%近く吸収されます。入院時とか退院時とかではなく消化管浮腫の有無によって、フロセミドの吸収率は変化しますので。浮腫が消失していれば利尿薬は必要ないのに、フロセミドを投与すれば当然、脱水になります。
Q.レボドパをパーキンソン病で頻回に投与することがあります。こう言った脳に移行しやすい薬について、1日何回投与したら良いか、予測することは可能でしょうか?
A.ごめんなさい。僕は万能ではありません。向精神薬についてはほとんど知りません。腎臓の専門家で精神科・心療内科の薬について強い人はいないのです。向精神薬の投与設計をどうすればよいのか見当がつきません。
Q.保険薬局で服薬指導をしていると、外来で血中濃度測定をあまりしない医院の処方にしばしば出会います。例えば炭酸リチウムは、効果が安定したら同量がずっと続く場合があります。高齢者の双極性障害患者であっても、です。薬剤師から医師たちに警鐘を鳴らしたいのですが、どういった危険性がありそうでしょうか?
A.僕は向精神薬についてはほとんど知りません。申し訳ありません。
Q.平田先生、体調のせいか声が小さかった。特に、語尾。お大事にしてください。
A.できれば元気はつらつの姿をお見せしたかったです。僕も、この点はほんとに残念。頭痛もあったので頭の回転もよくなかったです。ごめんなさい。ご心配をおかけしましたが、とにかく早く寝ることを心掛けると2日後の11月2日の早朝には皇居1周5kmのコースを楽に完走できるほど元気になりました。