3限目:バイオアベイラビリティを理解しよう
~吸収率と肝初回通過効果~
今回の要約: バイオアベイラビリティが低い原因は2つと理解する!
①脂溶性薬物の消化管吸収は良好だが、初回通過効果を受けやすいからFが小さいと考える。
②水溶性薬物は初回通過効果を受けにくいが、吸収率が不良だからFが小さいと考える。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
2限目:プロプラノロールとアテノロールの違いからADMEを知ろう!
今回の要約:
①Ca拮抗薬、ARB、α遮断薬はすべて肝代謝型薬物なので腎機能が低下しても減量の必要はない。
②ACE-I、ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬、クロニジンは腎排泄型降圧薬。
③β遮断薬だけは薬によってさまざまでアテノロール、ナドロール、カルテオロールだけは腎排泄、それ以外は肝代謝と覚えよう。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
1限目:導入講義 薬剤師の存在価値はどこにある?
今回の要約
①薬物動態の考え方は薬剤師にとって大きな武器になる。これが医師との違い、薬剤師のアイデンティティといって過言ではない!
②だけど難解な薬物動態学の理論を理解しなくちゃいけないと思うと憂鬱になる。薬のそれぞれの性質・特徴を知ること、つまり「薬への興味」が薬物動態の習得につながると考えると楽しくなる。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
薬物動態学が苦手なあなたへ ~記憶することなく理解する~
2020年3月末に神戸に移り住んで、これまでの熊本と同じように定期的に薬剤師塾を開催したいと思っていました。5月にはI&H株式会社(阪神調剤グループ)の研修室を借りて阪神調剤の薬剤師だけに関わらず、病院薬剤師・保険薬局薬剤師あるいは医師の区別なく、活気のある薬剤師塾を開催する予定でした。でも今、この新型コロナウイルスの緊急事態のために、e-ラーニングか、文章で発信するしかありません。僕は昨年秋に高齢者の仲間入りしたので、少々焦っています。むっちゃ元気だから余命はたぶん長いと思うけど、いつボケるかわからないのです。本来ならば、対面で熱いディスカッションをしたいけれど、みなさんに知ってもらいたいことをブログで発信しようと思います。この内容はじほうの「透析患者の投薬ガイドブック」の改定第2版1)までの一番最初に書いてきたことですが、改訂3版から、同じことを繰り返したくないのでお蔵入りになったネタを大幅に書き直し加筆しました。「薬物動態が苦手」という方のために難解な式は使わず、薬の特徴が理解できるように書いたつもりです。薬に興味を持っていただくために、読んだことのない若い人たちにはぜひとも読んでいただきたいと思います。
明日より、7回にわたり連載致します!
引用文献
1. 平田純生, 和泉 智, 古久保 拓, 編: 改訂2版 透析患者への投薬ガイドブック. じほう, 東京, P1-666, 2009
『腎機能評価10の鉄則』のテキスト(PDF)ダウンロードができます。
ゼロから1にすることが非常に大変だけど、それを超えれば一流の研究者
①まずは学会発表。
やったこと、経験したことは学会で発表しましょう。これは大学での卒業研究の経験もあるでしょうし、職場の先輩のアドバイスもいただけるでしょう。学会発表は緊張しますが、その夜の飲み会で苦労は吹き飛びます。ただし実績としてはほとんどないに等しい。だって仕事の内容が数百字の抄録だけだから、評価できるものにはなりません。
②その次のレベルは原著論文の投稿。
これは実績として残ります。原著論文の筆頭著者になっていれば、認定薬剤師を飛び越して専門薬剤師になれます。実際、原著論文を書くことは、慣れれば大変なことではありません。ただし慣れていないために学会発表と比べて、初めて文献にまとめることは大きなストレスになりますし、書き始めて「あれをやっていなかった」「症例数が少なかった」「このデータがそろっていなかった」などの理由で論文にならないこともありますので、臨床研究は計画的に行うこと、症例報告はできるだけ検査値など漏れのないよう、しかも経時的に検査値の推移が見れるよう、医師にはきっちりと検査依頼をしておきましょう。
論文の書き方がわからないときは論文のテーマによく似た論文を探して手本としてみましょう。ただし、コピペはいけません。論文の中の数行コピペするだけで盗用となりますので自分の言葉で書きましょう。これらのことは「言うは易し、行うは難し」です。分からないことがあった時にすぐに聞くことのできるメンター(師、あるいは師匠)を見つけましょう。大学を卒業したら、教師はいません。自分で尊敬できる人、それは先輩薬剤師でも、医師でも構いませんし、同じ職場にいなければ学会で見つけて仲良くなることも大事です。「中小病院の薬剤師だから、開局薬剤師だから」というのは言い訳に過ぎません。施設外の勉強会や学会に行けば様々な出会いがあるはずですから。若い薬剤師さん、名刺を作ってますか?名刺は仕事道具ですので、職場で作ってくれなければ自分で作りましょう。安いところでは100枚が1000円程で作れます。
※僕のメンターは薬物動態では上野和行先生(写真右下)、論文の書き方についてのメンターは田中一彦先生(写真左)です
③日本語論文の1本目が大変なだけであって徐々に楽になります。
どれくらい楽かというと私の経験では1本目に要する努力が100だとしたら、2本目は50の力で、3本目は25の力で、4本目は12.5の力で、ということは半減期と同じようにどんどん楽になって3本目以降はほとんどストレスを感じなくなります。すなわち原著論文を3本書けば、あなたはもう一人前といっていいでしょう。とにかく論文ゼロから1本目を書くことが非常に大変ですがそれを乗り切れば、あなたのレベルアップの道は自然に開けてきます。その1本目を書くときに一番ストレスのない方法は、学会発表する前に論文投稿しておくことです。前述のように何度も同じことを繰り返すことは非常につらい作業ですが、未知のことを知ることはドキドキワクワクします。引用論文をすべて読んで夢中になって論文を書いて、学会発表に臨めば全く怖いものなしです。座長にどんなに難しいことを聞かれても「それに関しては全く検討されていません。つまり誰もそれについて検討していませんので私も知りません。ただし私が推測するに・・・・」などと言えるようなくらい文献をチェックしておけば何を聞かれても怖くありません。
④英語論文に挑戦しましょう。
結果云々よりもしっかりしたプロトコルが大切になりますが、日本語論文を数本書いた経験のある方ならもうお分かりですね。方法に関しては綿密に検討しましょう。お金がないけれど時間は十分ある人は、日本語を完璧にして(直しようのないくらい推敲しましょう)、それを英語に素直に直訳して、その英文を医学・薬学関係に長けたNative speakerにチェックしてもらうと安上がりです。私も数年前まではそうしていました。夜、職場を出る前に米国在住の元教授にFAXすると翌朝には訂正文が帰ってきていて費用は8000円程度の安さです。英語が苦手でお金持ちの方は英文作成会社に丸投げします。10万円くらいとられるかもしれませんが、こちらの方が自分で書くよりは専門家の英語なので、英文の出来は良いように思います。医学部の先生は多くの方がこのようにやっていました(きっとお金持ちだからでしょうね)。英語論文も論文ゼロから1本目を書くことが非常に大変ですがそれを乗り切れば、あなたのレベルアップの道は自然に開けてきます。英語論文3本も書けば博士号取得だって夢ではなくなります。僕も実はそのようにして基礎研究なしで博士号を取得しました。
僕は40歳になってからまともな薬剤師、つまり服薬指導するために病棟に行って臨床経験を積むことのできる薬剤師になれた遅咲きです。でもその臨床が最初のうちはさっぱり分からない。薬物動態も、病態についてもからっきし力がないことを思い知らされました。
その時に僕を救ってくれたのが図書館です。大阪市立図書館には専門書も患者向けの本もたくさんありました。動態については廃版になっていた日本の臨床薬理の父と言われていた石崎高志先生(元熊本大学薬学部教授)「循環器病薬の臨床薬理」をはじめとした名著を借りて読むことができましたし、腎臓以外の苦手な分野については患者向け、ナース向けの本を借りました。
最新の学会誌を読んでも、新しいことしか書いていないから、かなり力がつかないと読んでも無駄ですが、患者向け、ナース向けの本はわかりきったことしか書いていない。つまりよくわかっていないことは書いていないから、とってもわかりやすいのです。患者向け、ナース向けの本で僕はジェネラリストになれました。
それともう1つは白鷺病院の図書室です。その当時は英語論文が熊大図書館以上にたくさんありましたし、腎臓関係の臨床雑誌は10以上ありました。その中で目を付けたのが電話帳のような「BrennerのThe Kidney」、「Seldin, GiebischのThe Kidney」、「Scribner, GottscharlkのDisease of the kidney」です。どれも2~3冊組。厚さにして3冊で20cmくらいあります。それらの英文教科書の巻末には腎機能低下時の薬物動態と腎機能別薬物投与量一覧が載っているのです。それを白鷺病院の医薬品集に入力し、薬物動態に関しては自分で訳してノートを作りました。そしてその中で分かりやすい図表は自分でアレンジして3冊の本のエッセンスをまとめた「自分ノート」ができたのです。
それをもとに自分の臨床経験も交えて日本では誰も書いていなかったことを著したのが月間薬事の連載「透析と薬物療法~投与設計へのアプローチ~」であり、それをまとめた「透析患者への投薬ガイドブック」です。この本は難しくありません。だって僕はダメ薬剤師だったからこそ、その立場が分かっていたので、難しい書き方を一切やめて、英文を訳したものの、内容は自分の臨床経験や体験した症例を加えて非常に「わかりやすい本」が書けたのだと思います。これで僕は「透析と言えば平田」と言われるようになりました。でもその狭い範囲がコンプレッススに感じたので、その後は頑張って幅広く「腎臓と言えば平田」と言われるよう、間口を広げる努力をしました。これが僕のスペシャリストへの道です。
※写真右上:初めての書籍「透析患者の投薬ガイドブック」
※写真左下:僕をスペシャリストにしてくれた英文の専門書
◆まずは好きになる努力が大切
何も知らなければ、取り残されて、つらくなる。だから少し努力しても最初に勉強しよう。そうすればみんなよりできるようになる。みんなよりできるようになると楽しくなる。苦痛じゃないので好きになる。好きになったら夢中になれる。夢中になれる人を他人は「オタク」という。オタクは天才に勝てるのです。そうすれば普通のあなたが他人から天才と呼ばれるようになるのです。それは痛快でしょ?
まとめましょうか。まずは1つの薬、1つの病態について詳しく知りましょう。それに関する分かりやすい日本語論文を2~3読んでみるだけでいいのです。それだけであなたはその薬局でトップの知識人になれます。うれしくなって主だった英語論文を読むとあなたは県下で有数の物知りになれるはずです。学会で専門家に質問もできるようになりますよ。それをもとにどんな研究をすればよいかが分かるようになって自分で論文を書く。そして日本語論文に飽き足らなくなれば英語論文を書く。これであなたは日本で有数の臨床研究者の仲間に入るのです。
最初の「好きになってみる」ために、ちょっとだけ努力をしましょう。その努力は「さし水」や潤滑油のようなものです。ほんの少量でこれからの情報量を増やしてくれるもとになるのです。
◆疲れたら休む
疲れたら休む。眠くなったら眠る。眠くないけどやる気が起こらないときにはスポーツジムで汗を流す。ギターを弾く。要するに気分転換も大切です。やる気もないのにやったって成果が出るはずもないのです。
その代わり眠れないようなくらい夢中になって仕事ができて、翌日が休みなら朝まで頑張る。これが僕の仕事のコツです。僕は仕事に夢中になると頭が冴えてくるので、土曜日はほとんど朝帰りです。
◆待ち時間を有効に
待ち時間は無駄だと思っています。何か自分の成長につながることをやりましょう。英会話をスマホで聞いてもいい。気持ちを落ち着かせるために音楽を聴くのもいい。もちろんいろんな書物も読める。
僕は電車の中では論文を読んでます。なぜか机の上で読むよりも頭に入りやすいのと、新しいアイデアが生まれやすいのです。これは僕の場合、電車の中が適した環境ですが、人によってはスタバやドトール、マックの方が落ち着く人もいますし、図書館やネットカフェの方がいい人もいるでしょう。
◆フレキシブルに時間を使いこなせ
朝9時から夕方5時までのコアタイム。これはできれば守りたいのですが、本来ならば職場にいた時間ではなくて成長できるときに成長しよう。別に朝早くでも夜遅くでも構わない。僕は断然夜型なので、帰るのはほぼ12時。仕事が好きだから(それと不器用だから)12時までいるんですよ。いやだったら早く帰るしかない。
だけど職場と家の往復だけじゃ息が詰まりそうなときもある。だから友達の誘いはできるだけ断らないし、嫁とランチやディナーはできるだけ出かけるようにしてる。気分転換も大切です。そして良いアイデアは机の上以外のところで発生しやすいのです。トイレ、スポーツジム、通勤時、野球観戦時などなど。だから僕はポケットメモをいつも持っていて、それをすぐにメモると、結構いいアイデアや名言が生まれてきます。
◆ストレスを抱え込まないで
一喜一憂って言葉があるけど、1つ1つのことに敏感に反応すると、ストレスでつぶされそうになります。
仕事は抱えすぎるとパニックになります。仕事を貯めないようにするコツはない。いやな仕事も早くこなすしかない。溜まった仕事に追われると仕事は苦痛に変わる。でも仕事を1つ1つ終え、自由な時間を作ると、これからは自分から仕事を追えるようになります。
言っていること分かりますか?仕事を中途半端にしておくと、中途半端な仕事を何回も繰り返さなくちゃいけなくなる。飽きてしまうような仕事を何度も繰り返すのはストレスフルでとってもつらいことなのです。
だけど予習は未知のことなので、ワクワクドキドキします。つまり自分から仕事を追える、こんな楽しいことはないのです。そして予習しておけばスタートラインから他人に勝っている。予習は知らず知らずのうちに好きになる努力をしていることと同じなのです。これをする人はいい意味での「オタク」です。天才よりすごいのです。
現時点で薬剤師が処方権を持つことには賛成しかねる。薬剤師は医師の処方を患者の病態、薬物の特性を十分理解したうえで、より有効かつ安全で、目の前の患者さんに配慮した最高の薬物療法を提供するという崇高な職務を全うすべきであり、ScienceをベースにしたIntelligenceの高い職種であると考える。
そのためには「薬物療法のすべてに関して責任を持つのが薬剤師」といわれるようにしたい。しかし今の薬剤師の問題はその多くがOrder-taker(指示されないと仕事ができない人)であることではないだろうか。薬剤師が今後のスキルミックスによって薬物療法に対して例示された業務内容を受身的にやるだけでなく、より大胆かつ先進的な業務を推進・標準化し、医原病となるような副作用をなくし、患者様にとってより良い薬物療法を提供できるよう主体的に取り組まなければならない。そのためには薬剤師はSelf -starter(自分からイニシアチブをもって仕事のできる人)にならなくては。
医学はアート、薬学はサイエンスとよくいわれる。患者の特性と薬物の特性を十分理解してうえで、最高の薬物療法の提供するのが薬剤師の職務。
うまくいかない薬物療法を何とか改善したいという思いが臨床研究に駆り立てる。そのうまくいかない理由を徹底的に追及して行けば薬物療法は薬剤師の力によってよりよくなる。それが薬剤師の本来の姿なのではないのだろうか?
日病薬から例示されたからやるのではなく、今、この患者さんの薬物療法に対して何が問題で、誰が主体的になって薬物療法を改善していくかを考えると、薬剤師である自分が主体的に改善するしかない。職能拡大は与えられるものではなく、実績を残した証しとして自ら勝ち取っていくものでは?

慢性腎臓病(CKD)患者に腎排泄型薬物を投与して中毒性副作用が発現した症例、あるいは腎機能悪化要因を持っている患者にアミノグリコシド系抗菌薬・造影剤などの腎毒性薬物、あるいは漫然としたNSAIDsの投与・不適切な利尿薬投与などによる腎虚血によって腎機能が悪化した症例は、今、現在に至っても枚挙にいとまがない。6年制薬剤師の誕生によって、これからの薬剤師は薬物動態・薬理作用・相互作用・副作用だけでなく病態にも精通した薬物療法のエキスパートになることが期待される。そのため腎臓病の薬物療法に関しては、アシクロビル、ジゴキシンなどの腎排泄型薬物を腎機能に応じて適切に減量することを怠ったために起こる中毒性副作用や、ベザフィブラートなどの腎機能を悪化させる薬物を不適切に投与したため起こる腎機能低下を未然に防止できる薬剤師が必要となる。さらにクラリスロマイシンとコルヒチンの併用など、CKD患者では特にマークしておくべき相互作用を予測することによって、未然にこれらの薬物不適切使用を回避できる実力のある薬剤師を養成することが急務と考えられる。
日本透析医学会の「二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン」に沿ったリン吸着薬の投与量・投与薬物の変更という日病薬の提言にとどまらず、「腎性貧血患者のガイドライン」に沿った検査データによるESA療法、鉄剤投与の適正化の医師への提案、腎排泄性薬物の腎機能に応じた至適投与設計の推進、さらにCKD患者に対して腎毒性薬物の投与忌避および代替薬の提案、相互作用により横紋筋融解症による腎機能悪化が懸念される場合の代替薬の提案なども積極的に行うべきある。これから薬剤師は「薬の処方は医師の仕事だから」と考えるよりも「患者様の薬物療法をよりよくする」ために、より主体的に行動する必要性があるのではないだろうか?
明日『これからの薬剤師のなすべきこと』に続く