『わかりやすい細菌と抗菌薬の話』のテキスト(PDF)ダウンロードができます。
『わかりやすい細菌と抗菌薬の話』の目次です。
第5回:抗菌薬のPK/PD理論~抗菌薬を有効かつ安全に使うために~
第6回:高齢者の腎機能を正確に評価して抗菌薬・抗ウイルス薬を投与する
第7回:抗菌薬が効かない多剤耐性菌MRSAが出現した~抗菌薬の耐性化~
第9回:前編 クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)腸炎について考える
第9回:後編 クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)腸炎について考える
第10回:薬物代謝に関わる腸内細菌~アレルギー疾患が急増した理由~
第11回:腸腎連関gut-kidney axis
~腎機能を悪化させる尿毒素Ureic toxinの蓄積には腸内細菌が関わっている~
第12回:前編 共生生物としての腸内細菌の役割~腸内細菌叢とTregの話~
第12回:後編 共生生物としての腸内細菌の役割~腸内細菌叢とTregの話~
筆者は透析患者の便秘に関する研究1)2)3)やプレバイオティクスとしての作用を持つ下剤のラクツロースが腎不全モデルマウスで腎保護作用を示したという研究4)を介して腸内細菌叢microbiotaに興味を持った。今回は腸内細菌叢と腸管免疫について書きたいが、近年の免疫学の進歩は著しく、私の専門外なので、中には間違った記載や古い学説があるかもしれないことをご容赦していただきたい。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
以前の連載で「吸収率の低い第3世代経口セフェムってこんなに必要?」の時に現在、アレルギーや自己免疫疾患、様々な精神疾患などが急増しているのは腸内細菌叢の変化によるのではないかと書いた。しかしそれだけなら野菜や発酵食品をたっぷりと摂れば、あるいはプロバイオティクスとなる整腸剤を毎日摂取すれば済む話であるが、そんな簡単な話ではなさそうだ。これらの現代病が増えた理由について考察してみたい。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
今回の連載は抗菌薬シリーズの中に入れていますが、厳密にいうと今回は抗菌薬は出てきません。腸内細菌叢micobiotaと尿毒素uremic toxinの話、つまり「腸腎連関」の話です。ただし抗菌薬を投与すれば、腸内細菌叢は大きく変化するはずですから「抗菌薬」シリーズの中に入れさせていただきます。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
1.ジゴキシンとエリスロマイシン、テトラサイクリンの相互作用のメカニズム
ジゴキシンの代謝には腸内細菌が関わっているのをご存じだろうか?ジゴキシンとエリスロマイシンの併用によってジゴキシンの血中濃度が上昇するといわれている。添付文書には「エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリンとの併用によって腸内細菌叢*への影響による本剤の代謝の抑制、あるいは、P糖タンパク質を介した本剤の排泄の抑制により血中濃度が上昇するとの報告がある。」とされているが、クラリスロマイシンはCYP3A4阻害薬でありP糖タンパク質の阻害薬であることは今となっては誰でも知っているが、テトラサイクリンにはそのような阻害作用はないはずだ。ではエリスロマイシンはどうなんだろう、というのが今回のテーマだ。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
2.クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)腸炎を防ぐために
(5)CD腸炎はどんな人が罹患しやすい?
CD腸炎の院内感染に罹患しやすい患者は我々の経験のように①広域スペクトル抗菌薬が投与された患者がほとんどで、②高齢者(特に長期入院患者)、③胃酸分泌抑制薬のPPIやH2遮断薬投与患者ではCD関連下痢症のリスクが3倍高くなることが報告されており4)、PPIの服用で再発性CD腸炎を4.2倍になる5)。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
1.クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)腸炎・偽膜性大腸炎とバンコマイシンのTDM
(1)はじめに
今回は抗菌薬関連下痢症・細菌性腸炎の原因菌として最も重要なクロストリディオイデス・ディフィシル感染症Clostridioides difficile(CD)腸炎について我々の経験した症例について解説したい。これも腸内細菌叢の変化が大きく関わる疾患である。なおCDは2016年まではクロストリジウム・ディフィシルと呼ばれていた有芽胞偏性嫌気性グラム陽性桿菌で下痢、腹痛、発熱を伴うCD腸炎や偽膜性大腸炎、あるいは麻痺性イレウスや巨大結腸症発症、腸管穿孔の主要な原因菌とされ、健康成人でも日本人で10~50%前後の糞便から検出され、もともと弱毒菌で菌量が少なければ健常者には病原性はないが、菌量が増えてトキシンA、トキシンBという外毒素を産生すると、腸炎を引き起こす。傷口から感染しやすい破傷風菌 (C. tetani )、真空パックの食品内部でも増殖して食中毒の原因になるボツリヌス菌 (C. botulinum )、常在菌だが毒素を産生して食中毒の原因になり、ガス壊疽菌を起こすことがあるウェルシュ菌 (C. perfringens )などは今まで通りClostridium属である。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
1.腸内細菌叢の異常によっておこる様々な疾患が増えている
この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
1.第1世代~第2世代セフェムの時代
筆者が薬剤師になった1977年、第1世代セフェムのセファメジンⓇ(セファゾリン、1971年発売)が飛ぶように売れていた。この当時の外科領域感染症は黄色ブドウ球菌が主だったからグラム陽性球菌に強い第1世代セフェムはよく効いた。そして1gのバイアルが3,000円以上の高薬価であり、仕入れ値は20~30%引きであったため、比較的清潔な手術でも1日3バイアルの予防投与をすると売り上げ10,000円/日、薬価差による純利益2,000~3,000円/日で予防投与として1~3週間、退院まで処方され、多額の利益(薬価差)が病院に入ってきた。
約10年後、グラム陽性菌をターゲットにした第1世代の乱用の影響でグラム陰性桿菌の大腸菌、肺炎桿菌が起炎菌の主役になってくると、グラム陰性菌にも効力を示すパンスポリンⓇ(セフォチアム、1981年発売。パンスポリンⓇが悪いのではなくこの当時、一番売れていたイメージがあるのがこの薬ということです)などの第2世代セフェムが登場し、この薬価が3000円以上になって、セファメジンⓇの薬価は2000円程度に下げられたため、より薬価差の高く儲かる第2世代セフェムを各社比較して、薬価差の大きいものを購入して、どの病院も相変わらず、2週間程度の長期間、予防投与と称して使い、1手術当たり3万円~5万円の利益を得ていた。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます