平田の考える薬剤師像

① 2004年4月~2017年1月までのthe Japanese Adverse Drug Event Report (JADER) databaseによると薬剤性腎障害の原因薬物として最多は?
A.ロキソプロフェン
B.バラシクロビル
C.シスプラチン

正解:B
バラシクロビルとアシクロビルを加えると1000件以上で断トツの1位。ロキソプロフェン+ジクロフェナクで約500件で2つ併せるとNSAIDsは2位(表1

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② グレープフルーツを食べても問題ないとされている薬は?
A.イブルチニブ
B.アムロジピン
C.シンバスタチン

正解:B
アムロジピンは論文でグレープフルーツジュース(GFJ)によってわずかに血中濃度が上昇したという報告はあるが、一般的にグレープフルーツの相互作用を防ぐための選択肢としてアムロジピンを推奨されている。イブルチニブのFは絶食時2.9%、食前7.6%と非常に低いのでGFJの併用によって2.1倍になる。シンバスタチンもFが5%のみなので、阻害力の強いイトラコナゾールの併用で活性体のAUCが19倍になり(図1)GFJでも血中シンバスタチン濃度は10倍になる。

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③ 「イトラコナゾールは投与量を増やすとすごく効く」と言われるが、AUC依存的な抗真菌作用を示す以外で考えられる理由は?
A.フェニトイン型の非線形の薬物動態を示すから
B.バルプロ酸型の非線形薬物動態を示すから
C.カルバマゼピン型の非線形薬物動態を示すから

正解:A
図2)、投与量を増やすと確かによく効くが、血中濃度が非線形的に上昇するため、よく効くが、当然副作用も起こりやすくなる。

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④ 腎機能低下患者では特に重篤な低血糖を起こしうる薬はどれか?
A.アマリール
B.グリミクロン
C.グルファスト

正解:A
アマリール(グリメピリド)だけでなくグリベンクラミド、グリメピリド、クロルプロパミド、アセトヘキ サミド、ナテグリニドには低血糖作用を示す活性代謝物があるため(表2)、腎機能が低下するほど蓄積しやすくなる。グリミクロン(グリクラジド)には活性代謝物がない。

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⑤ 心移植患者があるサプリメント摂取開始3週間後に重篤な拒絶反応。原因のサプリは何か?
A.うつ症状に効くサプリ
B.認知機能を悪化させないサプリ
C.血液をサラサラにするサプ

正解:A
うつ症状に効くサプリのセントジョンズワート(西洋オトギリソウ)。これらはドイツ語圏では医療用医薬品に指定されており、日本ではファンケルやDHCなどからコンビニでも売られている。図3は心移植後に3週間セントジョンズワートを摂取したため、血中シクロスポリン濃度が低下し重篤な拒絶反応が起こった2症例である。リファンピシン、フェニトインなどのように代謝酵素を誘導するため、併用される薬を効かなくさせることがあり、ピルを飲み、セントジョンズワートを摂取していた女性が妊娠し堕胎した症例報告もある。

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⑥ ステロイド抵抗性膜性腎症患者にシクロスポリンを投与すると筋肉痛が起こった。禁忌になっている薬は薬剤師がすべてチェック済み。何が投与されていた患者?
A.リピトール
B.ベザトールSR
C.ローコール

正解:A
スタチンを取り込むトランスポータ有機アニオントランスポータをシクロスポリンが阻害するため、スタチンが肝に取り込まれなくなって血中濃度が上昇する。ストロングスタチンのクレストール、リバロはシクロスポリンと併用禁忌になっているが、この相互作用が分かる以前に発売されたリピトールは禁忌になっていないが、シクロスポリンによってCYP3A4も阻害されるため、CYP3A4基質のリピトールの相互作用はクレストール、リバロよりも強力である。ローコールはこのトランスポータの基質にならない(表3)。

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⑦ 日本のガイドラインで推奨されている75歳以上のCKDステージG4患者に最適な降圧薬は?
A.Ca拮抗薬
B.ACE阻害薬
C.ARB

正解:A
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018では「75歳以上の高齢者のCKDステージG4,5では,脱水や虚血に対する脆弱性を考慮し,Ca拮抗薬を推奨する」と記載されている。腎血漿流量を低下させる利尿薬、糸球体内圧を下げるRAS阻害薬はうまく使えば腎保護作用を発揮できるが、容易に腎虚血になりやすい高齢者には、使いにくい「両刃の剣」となる。

⑧ コルヒチンを飲んでいる人がある種の抗菌薬を併用すると10%以上の人が死亡した。この原因抗菌薬は?
A.クロラムフェニコール
B.ST合剤
C.クラリスロマイシン

正解:C
コルヒチンはCYP3A4基質であるとともに排泄トランスポータのP糖タンパク質の基質であり、クラリスロマイシンはCYP3A4、P糖タンパク質の阻害薬である。コルヒチンの中毒作用は下痢、脱毛、顆粒球減少症であり、コルヒチン服用者にクラリスロマイシンが併用されると汎血球減少症によって10%以上の人が死亡したという報告がある(表4)。

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⑨ フェニトイン300mg/日を飲んでいる人にバルプロ酸1200mg/日を併用したらフェニトインの蛋白結合率が通常90%だったのが75%に低下した。臨床症状として何が起こるか?
A.フェニトインの効果が増大する
B.フェニトインの副作用が起こる
C.何も起こらない

正解:C
フェニトイン血中総濃度は低下し、フェニトイン遊離型分率は上昇するが遊離型濃度は不変のため、臨床症状は変化しない(図4,5

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⑩ バンコマイシン散を投与時に併用して効果があるプロバイオティクスは?
A.ビオフェルミンR
B.ラックビーR
C.ミヤBM

正解:C
ミヤBM(活性酪酸菌: Clostridium butyricum)は芽胞を形成するため、胃酸にも消毒薬にも抗菌薬にも死滅せず、空腸に達してから発芽する。いわゆる耐性乳酸菌はキノロン系抗菌薬やバンコマイシンに殺菌される。

⑪ ハルシオン錠2.5mgを1錠服用患者がリファンピシンが併用されてから不眠になった。ハルシオン錠2.5mgを何錠のませれば以前と同じように効くようになる?
A.2錠
B.8錠
C.20錠

正解:C
図6.に示すようにプラセボ群に比しリファンピシン併用群ではAUCが5%に低下するため、20錠に増量すれば同じ効果が得られるが、こんなことはしない。

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⑫ サインバルタが高度腎障害患者に禁忌である理由は?
A.腎排泄性薬物だから
B.腎排泄ではないが血中濃度が2倍になるから
C.活性代謝物が蓄積するから

正解:B
サインバルタの尿中未変化体排泄率は0%だが、なぜか高度腎障害患者では血中濃度が2倍になる。おそらく尿毒素が蓄積して薬物代謝酵素あるいは、排泄トランスポータの翻訳後修飾などによる発現量低下、昨日の低下などが原因と予測される。(図7

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⑬ エディロールを服用して急性腎障害になった。その主原因は?
A.多尿による脱水から腎前性腎障害
B.尿細管の石灰化
C.リン酸Caの結晶形成による腎後性腎障害

正解:A
BCも考えられうるが、主原因は高カルシウム血症による尿濃縮障害から多尿、脱水から腎前性腎障害を起こすことによる。

⑭ メロペネムの感受性は高いのに1.0gを1日2回30分点滴投与しているのに効きにくい。どうすれば効くようになる?
A.1回0.5gを1日4回1時間点滴で投与する
B.1回2.0gを1日2回30分点滴投与に増量する
C.1回3.0gを1日1回30分点滴投与する

正解:A
セフェム系、カルバペネム系などのβラクタム系抗菌薬の殺菌作用はtime above MICと相関する(図8)。つまり殺菌力を上げようとすればMIC以上の濃度をできるだけ長時間持続させることが重要。一時的に濃度を高くしても(図9左)、投与量を多くしてもあまり効果は上がらない(図9右)。

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医師に出題してみたいファクトフルネス~思い込みはないですか?~

 ファクトフルネスはハンス・ロスリング氏の著書である「ファクトフルネス」という本で、東南アジアやアフリカと聞くだけで貧困にあえいでいる国、人々ときめつける人が多い。しかも賢い人ほど思い込みに陥りやすいのですが、世の中は時代とともに良くなっているのです。ニュースや、マスコミは一部の悲惨な部分を映し出しているので、それに惑わされている方が多いらしいのです。「ファクトフル(FACTFULL)」というのは、「事実に満ちている」という意味ですが、実際には当たり前のことをまだまだ理解していない人が多いのです。
 薬剤師だったら当たり前にわかることが、医師にはわかんないことっていうのも世の中にいっぱいあるってことを知っていきたいと思いますし、医師と薬剤師の違いを知っていただきたい。そして薬剤師がどんな分野に可能性を持っているかを理解していただきたいため、医師向けの14問のクイズを用意しました。薬剤師の専門分野を医師に問うのは場違いで、大変失礼ではありますが、薬剤師にはこんな特技、15017715_s.jpg特殊能力があるということを知っていただければ、よりよい協力関係、チーム医療が成立するものと思います。ただし同じ薬剤師でも個人差はありますが、薬剤師だったら全問正解できますよね?
 さて、医師の先生で全問正解できたとしたら本当にすごい先生だなと感心してしまいます。先生方は何問正解できますでしょうか?ではいきましょう。



解答詳細は明日掲載させていただきます。

 

 

薬剤師っていらなくない?


 初の薬剤師が主役のテレビドラマであるアレクサングシンデレラで「薬剤師っていらなくない?」ということばが話題になりました。「薬剤師なんていらない?なんでいらないの?薬剤師は絶対に必要なんだよ!だって処方箋を書く医師は薬物動態や相互作用、薬の化学構造や物性、製剤学などをほとんど習っていないんだよ。併用することによって血中濃度が1/20になって薬が効かなくなったり、20倍以上の血中濃度になったりするとき、それを防ぐ薬の組み合わせを提言できて、配合変化が起こるのを防ぎ、副作用の起こらないよう服薬指導するには薬剤師が絶対に必要なんだ。患者さんが使っている薬の有効性・安全性を担保するために薬剤師が監査し、疑義紹介しなければならないんだ。40118462_s.jpg多くの患者さんが薬物療法によって病気を治療している。薬剤師は患者さんの薬の安全性を守る最後の砦なんだ。」これはこのドラマが始まる前から、僕が熊本大学薬学部で繰り返し学生たちに熱く語ってきたことです。でも「薬物動態学」の大好きな薬剤師や、それに関わる難解な計算式を得意とする薬剤師はあまり多くない(筆者も含めて)のが実態かもしれません。実際、処方箋監査をするのに「薬物動態学の知識って必要?」と思っている薬剤師も多いのではないでしょうか?
 「薬剤師は薬の専門家」、幅広い薬の知識を持っているのは薬剤師自身も薬剤師以外も自覚していることでしょう。この薬の特性は何で表されるの?たとえば「どれくらいたてば効き始めて、どれくらい効果が持続するの?」「体の中に薬が溜まり続けて害になることはないの?」「いつ飲んだら一番効果的?」「同じ成分なのに飲み薬と注射薬と投与量が同じこともあるし、飲み薬の方が注射薬よりもうんと量が多いことがあるけど副作用は心配ないの?」「同じ量をのんでも人によって副作用が起きたり、効かなかったりすることがあるのはなぜ?」これらは動態を知っている薬剤師にとってはおそらく容易に答えられる質問内容ですが、医師には少し難しいかもしれません。
 37606545_s.jpgもしも現在の医薬分業が数十年以上前の院内処方に戻り、薬剤師不在のクリニックで建前上は医師(実際には事務員)が調剤して薬を渡すようになれば、訴訟沙汰になるような薬の有害反応が日常茶飯事のように起ってしまうかもしれません。おぉ~、怖い。

 

 


 2021年 4月、これから実務実習に行こうとする薬学科5年生の薬物処方学試験 記述問題『あなたにとって薬剤師とはどのような役割を担った職種だと考えますか?また将来どのように変わっていくべきだと思いますか?』より。これは2015年のブログでも紹介しましたが、薬物処方学のこの試験問題は60点に満たなかった人を救済するために、10点の下駄をはかせる目的で毎年、出題しています。今年は非常勤講師としてですが、平田が感動し、なるほどと思った7名の、素晴らしい考えをご紹介いたします。みんな実務実習、頑張って!


A君:医師と対等に意見交換できる薬剤師
 私の将来なりたい職である病院薬剤師を例に挙げるが、薬剤師は「薬物治療」に関しては全責任を負い、患者にとって最善で安全な治療を提供する役割を担う職種であると考える。
 また、この役割を担う上で、薬剤師としてのあり方として変わらなくてはいけないと思う点が2点程ある。
 自分は身近な所に現役の看護師として働いている人がいるのだが、よく話を聞くのが「薬剤師さんの回答が自信なさげであいまいだからいつも不安」という事についてであり、私はこの話を聞いて「薬剤師は他職種から薬に関しては信頼を置かれるべき存在なのだから、単に知識を蓄えるだけでなく、堂々とした態度でコミュニケーションをとる事も等しく重要なのだ」と感じた。
 また、2点目に、現場の声を聞いていると、やはり薬物治療に関しても医師の方が立場が上、といった印象があるらしく、将来、薬の特性に関して医師以上に知識をもつ薬剤師が、医師と対等に意見交換できるような環境を作らなければいけないと強く感じた。

平田の感想:堂々とした態度でコミュニケーションをとれるようになる秘訣は、20210701_1.png僕の場合は「なりたい薬剤師像」を心の中で作って、それを演じ切ることでした。僕の場合は「やさしくて物知りの薬剤師」が理想像でした。それとやっぱり医療人すべてに共通することですが、患者さんを好きになり、薬に興味を持つことだと思っています。夢中になって実習を乗り切っていけば、いい薬剤師さんになれると思います。頑張って!


Bさん:高齢者に寄り添える薬剤師
 薬剤師は、これからの超高齢社会における人と医療をつなげる役割を担った職種だと考えます。高齢者の方は多くの方が薬をのみながら生活していらっしゃるので、そういった方ができるかぎり自立した、自分らしい生活を長く送れるように、また、体調が悪くてなかなか病院へ行けない方のサポートができるように働きかけることができればいいなと思います。また、高齢者が多く暮らしていらっしゃる地方においては、そういった方々のコミュニティーの場、薬剤師も交えた情報交換の場として薬局や薬局が主催するイベントが活用されればいいなと考えております。その中で、やはり、処方権が完全に委託されたままでは薬剤師の活動の場が広がらないので、薬剤師が可能な処方変更のラインを認定薬剤師制度などを活用して変えていければいいのかなと考えています。

平田の感想:コミュニティーの場で身近な存在の薬剤師ってすばらしい。相談しにくいことがこの人なら相談できる、という人になりたいですよね。でも話は聞くけど、何もできないのは寂しい。よりよい医療に貢献できるようになるには薬剤師1人1人が力を付けて責任ある仕事をこなしていくこと。そうすればこの仕事は薬剤師に任せようという機運が生まれるんじゃないかしら。


Cさん:安全性を守り、処方権を持てるように
 薬は病気を治療できる便利なものである反面、使い方を少しでもあやまると患者さんの健康を害してしまうおそれのあるとても怖いものである。薬剤師は、患者さんの薬のリスクから守るセーフティーネットのような役割を担った職業であると考えた。
 現在、薬剤師は医師や歯科医師の処方せんがないと患者さんに医療用薬品を渡すことができないが、将来的には、薬剤師も処方することができ、重症でない限りは薬局に直接来てもらって薬を渡せるようなことができるようになったら良いと思った。


Dさん:専門性から地域まで幅広い薬剤師の活躍に期待
 薬剤師は薬の専門家であるのはもちろん、公衆衛生や地域の健康づくりをも支える一員である。医療機関ではチーム医療の一員として薬の適正使用に努めなければならない。平田先生の授業で学んだように、例えば抗菌薬適正使用も医療現場では課題となっている。そのようなケースで、薬学を学んできた私たちは抗菌薬適正使用のサポートチームに介入していくのはもちろん重要だ。さらに現在、がん治療が外来で行われることも多くなってきた。外来で治療を進めていく患者の薬の安全と、心の不安の解消のために薬剤師が寄り添っていくことも重要だ。このように、抗菌薬の適正使用や外来がん薬物療法など、様々な面での課題を知り、専門、認定薬剤師として、患者により安全な薬物療法を提供できるようにするのも必要ではないだろうか。また、今後も続いていく高齢社会で、病院完結型医療ではなく地域完結型医療が求められている。このような状況でもますます薬剤師が必要とされていくと考えられている。病院で処方せんをもらって来局した患者の薬歴だけでなく、地域住民のセルフメディケーションのサポート、健康情報の共有において役割を担える。さらにかかりつけ薬剤師の普及などから住民の安否確認にもつながる可能性はある。医療スタッフ、また地域住民のかかわりを築きながら薬剤師としての課題はますます見つかるだろうと考えている。


E君:AIにはできない薬のプロ
 薬剤師は薬のプロフェッショナルとして、医療に携わり、患者に寄り添っていく役割があると思う。現在、AI化が進んでいく未来には多くの職業がAIによってまかなわれていくことが予想される。薬剤師の仕事もAIによって行われ、薬の調剤などを無人で行われるようになるかもしれないというものをTVの番組で拝見した。しかし、私は、薬剤師の仕事はAIに代わっていいものではないと考える。AIでは、患者の心情、背景、本音をすべて正確に感じとることは、不可能であると思う。40118462_s.jpg薬のプロフェッショナルである薬剤師だからこそ、人間がやるからこそ、患者に寄り添い、ひとりひとりにあった医療を行うことができると思う。そのため薬剤師はAI化されるべきではないと考える。
 最後に、薬剤師の給料は、もう少し高くても良いと思う。病院内での医師との差がより縮まればよいと思う。


Fさん:医療従事者とscientist の側面を持職業 
 私は薬剤師とは身近な医療の相談相手であると考える。もちろん患者やその家族の健康に関する相談や現在服用中の薬に関する情報を提供するという意味もあるが、最近流行する新型コロナウイルスについて正しい知識を提供するといった務めもあると考える。
 また、薬剤師は医療従事者としての側面と、さらにscientistとしての側面、この2つをもつ職種であると考える。この強みを生かしながら、経験と知識を目の前の患者だけでなく、地域全体に活かせるような薬剤師になりたい。


Gさん:病院薬剤師の給与は低すぎる 
 医者と同様に患者さんの治療法を考える大事な存在だと思います。特に救急では、原因がわからない方が多く、時間もないので、長年の経験や知識が必要になると感じました。しかしながら、そのような責任のある職種であるのにも関わらず、日本では薬剤師の給料は低く(とくに病院)、価値が認められていないように感じます。私たちのような新しい世代の薬剤師が病院内で価値を認めさせ、今後の医療界を支えていく必要があると強く感じています。


ひとり光る。みんな光る。何もかも光る(陶芸家 河井寛次郎)

 という言葉を知っていますか?」の意味は、「誰かひとり(この時はエースの前田健太氏)がコツコツ努力して光を放つようになれば、その姿を見てみんなが光りだす。さらに、みんなでそれを続けていると、何もかもが光りだす」と説明し、達川氏は「今の広島投手陣がまさにこの状態でしょう」と言ったそうです。いい職場や学会など様々な場面で、足を引っ張りあうのではなく、協力して頑張るとよりよい環境の社会が実現できるのではないでしょうか。

僕は国際主義者。今起こっているナショナリズムの台頭には耐えられない。壁を作るんじゃなく橋を作りたい。アメリカで起こっていることは残念だ。これは一過性のことと信じて世の中が1つにならなくては。(ロックバンド・クイーン ブライアン・メイ)

 ブライアン・メイと言えば、映画ボヘミアン・ラプソディで再び脚光を浴びた英国のロックバンド・クイーンのギタリストです。国際社会の軋轢を言ったものでしょうが、国家間の問題だけではなく、保険薬局薬剤師と病院薬剤師、薬剤師会と病院薬剤師会、医師会と薬剤師会、薬剤師と医師、薬剤師と患者さん、薬剤師と看護師、基礎系と臨床系、教師と学生などいろんな軋轢があると思っています。壁を作っておけば楽かもしれませんが、これからは橋を作ってよりよい関係を築いていければなと思っています。もう少し話し合う時間が欲しいのですが、話し合えない人もいる。むつかしい問題ですが、アドラー心理学を分かりやすく解説した名著「嫌われる勇気―自己啓発の源流『アドラー」の教え』を読むと「人の悩みは100%、対人関係の悩み」という言葉には非常に共感しました。

最後に5つの名言です。
・優れた者ほど、間違いは多い。それだけ新しいことを試みるからである。
・失敗者が何をして失敗したかよりも、成功者が何をして成功したかを学びなさい。
・サラリーマンに限らず、社会生活において成功するには、その道でエキスパートになる事だ。ある一つの事について、どうしてもその人でなければならないという人間になることだ。
・人生に勝利するには、何より勝つ心がけが必要である。人が八時間働くなら、十五時間働く気概、人がうまいものを食べているときには、自分はうまいものを食べないだけの度胸がなければいけない。
・下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ。

 これらの言葉は現・阪急阪神東宝グループの阪急電鉄の創業者の小林一三氏(松岡修造氏の祖父でもあります)の名言集です。僕も今は高齢者になってしまいました。若い人には頑張ってもらいたいので、学会や研究会では頑張っている若い人たちには小さなチャンスを与えたいと思っています。例えば10分間のミニレクチャー、そしてその中に光るものがあるなら30分の講演をしてもらいます。それが及第点なら全国区のシンポジウムで話してもらいます。それが素晴らしければ論文を書いてもらい、それらをことごとく素晴らしいパフォーマンスを見せれば、1人前と認めようと思っています。幸いにして、腎臓病薬物療法学会には一人前に育った薬剤師が多くいます。


~薬剤師として心に刻んだ名言~
 僕は1995年ころ、病棟活動をしてようやく一人前の薬剤師として出発したとき、「自分の理想とする薬剤師像を築き、そしてその役を演じよう」を心に刻み、病棟では「優しい薬剤師・明るい薬剤師・何でも知っていて不安を取り除いてくれる薬剤師」を一生懸命演じていました。本当はそんなに明るくないけど患者さんを元気づけることができるような薬剤師になりたかったのです。  「薬物動態が苦手と言っている薬剤師は、診察が苦手と言っている医師と同じだ」は日本で初めてわかりやすい薬物動態の本を出版された岩手県のどんぐり工房の菅野彊先生だと思っていましたが、実はそうではなかったらしいです。「薬効・副作用=患者〔(薬力学)×(薬物動態)」が菅野彊先生の唱えた言葉だと思います。

100里を行くものは90里を半ばとす(中国のことわざ)

 最後まで気をゆるめずに努力をしなければならないという戒めです。フルマラソンも35kmからが辛い。今、君は若いが、後で後悔しないために、若いうちに苦労しろ。薬剤師として学会発表する人は多いが、論文を書いた人は少ない。さらに英語論文を書いた人はさらに少ない。僕もはじめて論文を書いたときはとても苦労したが、慣れれば何でもないことと今は思っています。テーマの選定方法が間違っていなければ続ける努力さえあればできるのに、あきらめるなんてもったいない。つらいからというだけで自分に負けるな。くじけるな。あきらめるな。頑張れ。ゴールはもう少しだ!と自分を励ましたものです。

たった1人しかいない自分を、たった1度しかない人生を、本当に生かさなかったら、人間、生まれてきたかいがないんじゃないか (路傍の石・山本有三)

 これも励ましてくれる言葉でした。

今日 精一杯生きれば明日がある。
才能に限界はあるが、努力には限界がない。

 これらの2つの名言、どちらも広島カープ時代の丸佳浩選手が言った言葉だと思いますが、丸選手が考えた言葉じゃないと思います。野村克也氏が「能力には限界があるが、思考力には限界はない」というよく似た名言を残しています。その当時、広島カープの不動の3番打者だった丸選手はプロに入ったころはフライもろくにとれないくらいに不器用だったし、送球もどこに行くかわからなかったらしいです。当時、コーチだった緒方興孝市氏が丸選手に言った言葉「お前は不器用だから、一つのことを覚えるのに時間がかかるだろう。だけど不器用な人間というものは、一度覚えたら忘れないものなのだ」と諭したそうです。丸選手はその後、メモ魔になり「野球ノート」を作って努力し、2013~19年まで7年連続ゴールデングラブ賞をとる「守備の名手」になり、打撃でも2年連続3割、2年連続MVPになる活躍をした。そしてフリーエージェントで巨人に行ってしまいましたが・・・・。

毎日5000回も素振りをしたから阪神の掛布氏は名選手になれたという人がいるが、掛布氏本人は「5000回なんてプロ野球選手ではみんなやっている。ただ僕はただ素振りをして筋トレをやってスイングスピードを上げるだけではなく、こんな球種を内角低めに槇原が投げたらどうやって打ち返すか、常にいろんな場面を想定しながら素振りをしていた。」

 続いてプロ野球選手に関する名言です。おそらく島田紳助氏が掛布氏のことを称してテレビで言った言葉だと思います。すごく耳に響いたのでメモしました。学会で発表して僕も質問にうまく答えられないことがよくあった。30歳を過ぎても予期しない質問に頭が真っ白になった事もあった。僕はそのころマラソンをしてたけど、ウォークマンやiPodがない時代、何を考えながら3時間のLSD(long, slow, distance: 長時間かけてやるゆっくりとしたジョギング)をやっていたかというと「こう聞かれたらこう切り返そう」「この座長ならこんなことを聞いてくるはずだ」「ここが弱いからこの文献を探して読もう」だったら何を突っ込まれても「これはまだ誰も検討していませんよ」と言えるようになるくらい論文をチェックしたら世界中で負ける人なんていなくなる」と思った。3時間も走っていると、時にすごくいいフレーズがわくことがある。その時は立ち止まってメモをする。これは今も続行けていることです。 元広島カープの名捕手の達川光男氏が言っていました。


多くの人から、何かにチャレンジするときに、気持ちが続かないと聞きますが、それは、心の底から、おもしろがらないからじゃないでしょうか。夢を持つ人生は、持たない人生の何倍も楽しい。一回しかない人生、いくつになっても挑戦していきたい。(毛利衛)

 好きでもないけど重要なことに対して頑張り続けることはつらいので、挫折することもよくあります。こんな時に夢を持つことの大切さを心に刻んでくれ、好きになり興味を持ったことは一生懸命できるよと励ましてくれたのが宇宙飛行士の毛利衛氏の一言でした。このころから好きになる、面白くなるための努力も必要と感じるようになりました。

人生を変えるきっかけっていうものは、日常茶飯事のいろいろなところに転がっていると思うんです。転がっているのに気付くか、気付かないか。気付いたときに取るのか、取らないのか。(向井千秋)

 同じく宇宙飛行士で医師の向井千秋氏。日本人女性初の宇宙飛行士のこの言葉も勇気づけてくれました。宇宙飛行士になるという通常では実現しにくい夢を実現するためには、夢に見るだけではなく、行動することが大切なんだなと思い知らせてくれました。

If you have a dream, you can do it. 夢を持ったその時点で、あなたの夢の大半は達成できている。 (ウォルト・ディズニー)

 この言葉は僕が若いころから心の中に刻んできた名言なのですが誰が言った言葉かよくわからなかったので、調べてみるとウォルト・ディズニーが言った名言でした。
 人は一人では生きてゆけない。今のあなたはあなたの両親、学生時代の先生、幼なじみ、学生時代の親友の影響を受けて、今のあなたに至っている。今、優れている人は今まであなたが生きてきた人生の中で、すばらしい人々のよい影響を受け、そして自分自身が伸びようと努力したから今の優れたあなたがある。しかし伸びようとする努力をなくせばあなたの成長はそこで止まってしまう。あなたがこれからも伸びようと努力する限り、あなたは伸び続けられる。だから目標を高く持ちましょうと考えるようになりました。

これを知るもの、これを好むものに如(し)かず、これを好むもの、これを楽しむものに如かず (孔子)

 知っている人も好きでやっている人には及ばない。好きでやってる人も楽しんでやっている人には及ばないということです。僕はこの言葉を励みに「凡人でも夢中になれば天才に勝てる。要するにオタクになれば天才に勝てるのだが、天才でオタクには勝てない。これは仕方ない。」と頑張ってきました。やっぱり「夜中まで夢中になって頑張って仕事している奴には勝てないや」ということは仕事でも勉強でも趣味でもよくあることです。努力はつらい、好きになればいいんだ。だけど少しだけ好きになる努力はしてみようと思っています。だけど努力する大切さを説いた人もいます。
 課長になることを目標にすればあなたは課長になれます。しかし部長にはなれないでしょう。夢は大きく持ちましょう。博士号をとろうとすればとれます。こつは仕事を好きになる努力をすること。好きになれば天才にも勝てます。好きになり、楽しめるようになればあなたの夢はすべて叶うでしょう。逆に、夢を持たない限り夢は実現できないのです。

自分が本当に好きなこと、自分にとって本当に大切なものを見つけてください。見つかったら本当に大切にしたいもののために努力してください。君たちは、その時、努力したい何かを持っているから、それは君たちの心のこもった立派な仕事になるでしょう。(黒澤明監督の晩年1993年に公開された「まあだだよ」で主人公の百聞先生が子供達に向けていった言葉)

 この名言は映画のワンシーンで先生が学生たちに向けて送ったことばです。


成せばなる 成さねばならぬ何事も 成らぬは人の成さぬなりけり(上杉鷹山)
最大の名誉は決して倒れないことではない。倒れるたびに起き上がることである(孔子)

~努力することの大切さ~
 今まで、自分自身の考え方、アイデンティティを見いだせないで苦しんでいた若いころ、どうやって生きてゆけばいいのだろうと思い悩んで、自分のノートに書きためておいた言葉があります。まずは努力することの重要性を唱える名言は勇気を与えてくれました。あきらめよう、楽をしようとする自分を叱咤激励し、頑張らせてくれました。

最近の若い人に「この仕事は僕にはできない」といわれることがよくある。しかし人間の能力ははかり知れない。できないと思ったらできないが、できると思ってやればできないこともできる。できると思わなければ何もできない。人間の歴史はかつてできないと思ったことを次々可能にしてきた歴史だ。(白川秀樹)

 この名言は2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹先生の言葉をテレビで見て感動し、夢中で自分のノートにわかりやすく書き記したものです。白川先生の名言集では「若い人はもっと挑戦の精神を持つことが大切だ」に近いかなと思います。

努力した人が成功するとは限らない。しかし成功した人はすべて努力している(プロレスラー 長州力)

 プロレス好きだった僕はこんな言葉にも影響を受けました。

一番の才能は”何かをすごく好きになる”こと。だからとことん努力できる。(馳浩)

 熊本赤十字病院の下石和樹先生がこの長州力氏の言葉を好きだとおっしゃっていましたが、偶然ですが僕も大好きな言葉で、名言だと思います。もう1つ、プロレスラーで今は政治家で文部大臣も務めた馳浩氏の言葉(僕のメモによれば馳浩氏だったと思いますが検索しても出てきません)も好きでした

滅私奉公はもう古い。時代は変わったんだ。ホンダに入った以上、会社のためとか、上役のためとかそんな古い意識はきれいさっぱり捨ててもらいたい。君らは自分のために働けば良いのだ。自分の仕事が楽しくなり、打ち込めるようになれば、結局は会社も大きくなり、みんなの生活も向上するのだ。農耕民族型の「長いものにはまかれろ」はやめよう。素直に物を見ろ。自分の考えに固執するな。駄目と思ったら即、方向転換しろ。(本田宗一郎)

~努力だけではつらいが好きなことだとつらくない~
 努力するっていうことは本音からいうと、つらいことかもしれません。自分の好きなことを一生懸命やればいいんだといってくれたのが以下に示す本田宗一郎氏の名言です。本田氏は尋常小学校を出た後、自動車修理工場に丁稚奉公して戦後に本田技術研究所を設立しました。僕の考え方を「努力」から「夢を持って楽しいことに一生懸命やろう」、そして「嫌なことだったらやめてもいいんだ」と方向転換させてくれた言葉です。


英語論文を読んでみよう
 自分らしいオリジナルの意見を持てない人に自分のアイデンティティを持つためのアドバイスですが、前述のように交友関係を広げることだけでなく広い範囲の読書をすることもとてもいいことです。でも薬剤師であれば、若い時にこそ、自分を高めるためのもう一度、薬物動態、薬理、病態について勉強してみませんか?26534867_s.jpg若いうちに英語論文を読んでみませんか?英会話を始めてみませんか?勉強会や講演会で気の利いた質問はその講演会のテーマに関する原著論文を読んでいると10個くらいの質問は出てくるはずです。決してメディカルトリビューン、日経メディカル、M3comやメーカーのWebサイトから専門家の意見を見ただけで受け売りするだけではいけません。これらの情報を得られることは非常に良いことですが、自分の専門分野に関しては自分なりの考えを持ちたいですね。そのためには自分で原著論文にあたってGoogle翻訳などを使わずに独力で訳してみましょう。
 自慢するわけではありませんが、僕は国際学会に行って自分の専門分野である腎臓病の薬物療法やTDMなどに関する英語の講演はほぼ100%理解できます。でも実際には僕は英字新聞も読めないし、CNNニュースも難しいし、英会話能力も深いディスカッションは苦手ですが、論文だけはたくさん読んできたから読めるし、講演もスライドや図表があれば日本語と変わらないくらいに理解できます。そして英語で質問も一応できるようになりました。そのようになったきっかけは僕が24歳のとき、初めて中分子尿毒素について学会発表するとき、ドクターたちから何を聞かれるかがとても怖くて、発表内容に関する英語論文20個くらいをすべて取り寄せて、毎日読み始めたことです。最初はほとんどの単語が分からなくて、そのたびに辞書を引いていましたので、仕事が終わって初めて23時になっても1つの論文すら訳し終わらなかったのが、2本目は半分の時間で済み、3本目は1/4の時間で済み、1週間たったころには辞書なしで楽に訳せるようになったのです。これって半減期の理論(半減期×4~5倍で薬物濃度はほぼゼロに近くなる=あきらめずにやり続ければ労力がゼロ近くになる)と同じで、この快感・達成感は今も忘れません。これ以降、僕はMedline検索、インターネットが発達してからは自分の体験した副作用や患者さんの薬物療法の最適化についてPubMed検索で解決することが多くなりました。そうすると何が新しくて、何が既にやられている仕事かが分かり、原著論文を書けるかの判断もでき、臨床で生かしたことを題材に次々と論文にすることができました。

夢を持とう、主体性をもって自分のゴールを目指そう
 20200623_1.png現在は病院薬剤師にも保険薬局薬剤師にも薬剤師としての活動の場が広がりつつあります。若い人たち、若くなくても活躍の場を経験したことのなかった人たちにも、主体的に動ける自己を作って高いゴールを目指してもらいたいです。小さな一歩からで構いません。勉強会で勇気を振り絞って質問してみよう。10分のプレゼンを頼まれたら、チャンスと思って全力を注いでみよう。それがユニークで好評であれば、30分の講演の依頼がいつかやって来ます。そして全国的な研究会や学会でプレゼンする機会ももらえます。当然この前後で原著論文を書けるようになっているはずです。夢は大きく持ちましょう。ゴールは高く掲げましょう。国際学会で発表し、英語論文を書けば、博士号も転がり込むように取れます。
 僕の場合、薬学・医学とは関係ない本を読む読書も好きでした。そしてその中に書かれてある自分を高めてくれる言葉、名言を自分ノートに書き綴る習慣をつけていました。自分自身の将来を俯瞰的に見ることのない不器用な僕にとって、そういった名言が、横道にそれることなく、自分を高め、自己を確立するに至ったような気がします。そして小さなことではつぶれない強い自分になれたような気がします。次回はさまざまな名言を心の糧にして自分を高めることについてブログに書きたいと思っています。



ゴールを設定することができなかった僕の若いころ20200622_1.png
 皆さんはどんな薬剤師になりたいですか?目標はできるだけ高く持った方が高いゴールに近づけると思います。僕の場合、30歳まではつまらない調剤ばかり、服薬指導もできず悶々として薬剤師を本気でやめようと思ったこともありました。あまり夢中になることはできなかったけれど、仕事が終わってからの「血漿中の中分子尿毒素の測定、透析患者の血漿カテコラミン濃度の測定、透析患者の血漿セレンや亜鉛などの微量元素の測定」などの臨床研究で何とかプライドを保っていました。薬剤師としては調剤しかできないフラストレーションがたまっていた状況から解放され、100床以下の小病院でも薬剤管理指導業務が算定できるようになったのが39歳の時ですから、僕は40歳という遅咲きの病棟デビューから薬剤師としての臨床の本当の面白さを知りました。でもその当時の僕には将来の人生を俯瞰できるような高い能力はありませんでした。ただいい薬剤師、高い能力を持った薬剤師になりたかっただけです。だから本を書けたり、博士号を取ったり、教授になったり、学会の理事長や副理事長を務めるなんて目標は全く持っていなかったのです。人生を俯瞰する能力、そしてゴールを設定することができれば、これまでの道のりはもっと楽になっていたかもしれません。でも無我夢中でも前進することができれば、能力がアップすることは確かだし、途中で道に迷ったことも人を成長させてくれるかもしれません。

チャンスは誰にでもある
 薬剤師として全くと言っていいほど活躍できていなかった若いころの僕の前にもいろんなチャンスがありました。それはたまたま僕がラッキーだったからではなく、誰にもあるはずだと思います。院内勉強会やメーカーの方がやってくれる新薬説明会や適応拡大の説明会などもチャンスの1つだと思っています。そういった勉強会で他人が気付かないような意見を言う、説明会でメーカーの人に鋭い質問をする、自分を高めるために気の利いた質問をすることだけでも自分の能力を上げるチャンスだと思っています。そして気の利いた質問であれば院長だけでなく、他のドクターたちも自分の能力を認めてくれるチャンスに変わります。そういった積み重ねがいつか職場でプレゼンをさせてもらうチャンスになるかもしれません。
 11190496_s.jpg今僕はI&H株式会社で毎朝、朝礼に参加していますが、朝礼の担当者は毎日変わります。声が通って、はきはきと話せる人、テキストに書いてあるありきたりのこと以外の自分の感じた一言を聞くと「この人、優れているな」と名前と顔を覚えようと思います。ほんの短いプレゼンでも「できる人」「できない人」の評価(この評価が絶対的とは思いませんが、すぐれていると思われた方が得ですよね)が分かれてしまうのです。だから人前で話をする機会をもらったら、それは大きなチャンスをもらったと思い、どうしたらわかりやすく話させるか、うまく伝わるか、他人と違った独自の自分らしさをアピールするかを準備する必要があります。主体性があるかないかはこんな短いプレゼンだけでも感じ取ることができます。

交友関係も大切
 いつか職場で学会発表などの機会を与えてもらえるかもしれません。そして各地の腎と薬剤研究会や薬剤師会、病院薬剤師会などの講演会で気の利いた質問をしたりすると注目され、いずれ10分程度のプレゼンをさせてもらうチャンスもあると思います。そして院内の勉強会でも外部の勉強会でもなんらかの交友関係が生まれます。自分にとって指導者がいなければ、こんな交友関係からメンターを見つけるのもよい方法かもしれません(僕はドラッグフォーラムオーサカというコアな勉強会に参加することで、上野和行先生というメンターを見つけました。これについてはドラッグフォーラムオーサカの思い出を参照)。でもすべてをメンターにゆだねるのは大学の学生まで。卒業してからは1人の大人としてアイデンティティをもって自分らしさを発揮してもらいたい。これらの勉強会を通じて生まれた知識だけでなく、勉強会後の飲み会での優れた薬剤師と討論したシナジー効果によって、自分1人では解明できなかった部分が交友関係で聞くことのできた一言で一気に解明されることってよくありました。ジグソーパズルの端っこが埋まれば一気に作品完成に近づくのによく似ています。だから勉強会後の飲み会に参加してあこがれの薬剤師と同席してディスカッションできることは自分を高める良いチャンスと思っています。


プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)