ダメ薬剤師を続けていて40歳になった時、当時、国立療養所千石荘病院(2003年に国立病院大阪医療センターに統合)の薬剤師だった上野和行先生に出会うことができた。まさに僕にとっては人生を変える運命の出会いだった。ある日、上野先生は僕に「アミノフィリン250mgの中にテオフィリンは200mg相当分入っとるから、アミノフィリン1Aを50kgの人に点滴投与したら、血中濃度はなんぼになると思う、平田君?」と聞かれ、戸惑って何も答えられなかった。だって血中濃度が予測できるなんて知らなかったから。「テオフィリンのVdは0.45L/kgなんや。まぁ、0.5L/kgでもええわ。50kgの患者さんやったらVdは25Lになる。200mg/25Lで8µg/mLになるやろから、喘息発作の治療にはちょっと足らへん。2A投与したら、16µg/mLになるんや。これやったら、ほぼ確実に気管支拡張作用を示して、20以上になったら起こる怖い副作用もでてけーへん。こーゆーことを知っとくと、薬を自由に操れるようになるんや。ほんでもって医者も意のままに操れるようになるんや」。
これには本当にときめいた。そして上野先生を「師匠」と呼ばせていただくようになった。薬剤師って調剤や薬の管理ばっかりやっていて、病院に勤めていても何の存在感も示せない職業だと思っていたから。この時の経験から、薬物動態を本気で習おうと思った。僕はよく「努力はつらいからやめよう」とか、「好きになったら、それが趣味になって、夢中になれる。そうすればみんな一流になれる」なんてことをよく言うが、それは学ぶだけで身に着いて楽しい「薬物治療学」「薬理学」「病態生理」などの話だ。薬物動態だけはこれらと違って、僕にとってはあまり面白くはなかったが、薬剤師のマストアイテムだと思った。動態の教科書に書いてあること、特に数式は実に難解だったが、学ぶのが辛くても絶対にマスターしなきゃだめなんだ。最初は菅野彊先生やそのお弟子さんの書いた分かりやすいものからはじめて、大学での教科書など、少なくとも3冊は読んでほしい。結構、間違いが書かれていることに気づくようになるから。薬物動態の基本がわかっていない薬剤師を僕は「本当の薬剤師」とは呼びたくない、似非(エセ)薬剤師だ。薬物動態だけは努力してでも薬剤師が身に着ける価値のあるものだと今でも信じてる!だからみんな努力して、僕の師匠のように「ほんまもんの薬剤師」になってほしい。
① 2004年4月~2017年1月までのthe Japanese Adverse Drug Event Report (JADER) databaseによると薬剤性腎障害の原因薬物として最多は?
A.ロキソプロフェン
B.バラシクロビル
C.シスプラチン
② グレープフルーツを食べても問題ないとされている薬は?
A.イブルチニブ
B.アムロジピン
C.シンバスタチン
③ 「イトラコナゾールは投与量を増やすとすごく効く」と言われるが、AUC依存的な抗真菌作用を示す以外で考えられる理由は?
A.フェニトイン型の非線形の薬物動態を示すから
B.バルプロ酸型の非線形薬物動態を示すから
C.カルバマゼピン型の非線形薬物動態を示すから
④ 腎機能低下患者では特に重篤な低血糖を起こしうる薬はどれか?
A.アマリールⓇ
B.グリミクロンⓇ
C.グルファストⓇ
⑤ 心移植患者があるサプリメント摂取開始3週間後に重篤な拒絶反応。原因のサプリは何か?
A.うつ症状に効くサプリ
B.認知機能を悪化させないサプリ
C.血液をサラサラにするサプ
⑥ ステロイド抵抗性膜性腎症患者にシクロスポリンを投与すると筋肉痛が起こった。禁忌になっている薬は薬剤師がすべてチェック済み。何が投与されていた患者?
A.リピトールⓇ
B.ベザトールⓇSR
C.ローコールⓇ
⑦ 日本のガイドラインで推奨されている75歳以上のCKDステージG4患者に最適な降圧薬は?
A.Ca拮抗薬
B.ACE阻害薬
C.ARB
⑧ コルヒチンを飲んでいる人がある種の抗菌薬を併用すると10%以上の人が死亡した。この原因抗菌薬は?
A.クロラムフェニコール
B.ST合剤
C.クラリスロマイシン
⑨ フェニトイン300mg/日を飲んでいる人にバルプロ酸1200mg/日を併用したらフェニトインの蛋白結合率が通常90%だったのが75%に低下した。臨床症状として何が起こるか?
A.フェニトインの効果が増大する
B.フェニトインの副作用が起こる
C.何も起こらない
⑩ バンコマイシン散を投与時に併用して効果があるプロバイオティクスは?
A.ビオフェルミンⓇR
B.ラックビーⓇR
C.ミヤⓇBM
⑪ ハルシオンⓇ錠2.5mgを1錠服用患者がリファンピシンが併用されてから不眠になった。ハルシオンⓇ錠2.5mgを何錠のませれば以前と同じように効くようになる?
A.2錠
B.8錠
C.20錠
⑫ サインバルタⓇが高度腎障害患者に禁忌である理由は?
A.腎排泄性薬物だから
B.腎排泄ではないが血中濃度が2倍になるから
C.活性代謝物が蓄積するから
⑬ エディロールⓇを服用して急性腎障害になった。その主原因は?
A.多尿による脱水から腎前性腎障害
B.尿細管の石灰化
C.リン酸Caの結晶形成による腎後性腎障害
⑭ メロペネムの感受性は高いのに1.0gを1日2回30分点滴投与しているのに効きにくい。どうすれば効くようになる?
A.1回0.5gを1日4回1時間点滴で投与する
B.1回2.0gを1日2回30分点滴投与に増量する
C.1回3.0gを1日1回30分点滴投与する
医師に出題してみたいファクトフルネス~思い込みはないですか?~
ファクトフルネスはハンス・ロスリング氏の著書である「ファクトフルネス」という本で、東南アジアやアフリカと聞くだけで貧困にあえいでいる国、人々ときめつける人が多い。しかも賢い人ほど思い込みに陥りやすいのですが、世の中は時代とともに良くなっているのです。ニュースや、マスコミは一部の悲惨な部分を映し出しているので、それに惑わされている方が多いらしいのです。「ファクトフル(FACTFULL)」というのは、「事実に満ちている」という意味ですが、実際には当たり前のことをまだまだ理解していない人が多いのです。
薬剤師だったら当たり前にわかることが、医師にはわかんないことっていうのも世の中にいっぱいあるってことを知っていきたいと思いますし、医師と薬剤師の違いを知っていただきたい。そして薬剤師がどんな分野に可能性を持っているかを理解していただきたいため、医師向けの14問のクイズを用意しました。薬剤師の専門分野を医師に問うのは場違いで、大変失礼ではありますが、薬剤師にはこんな特技、特殊能力があるということを知っていただければ、よりよい協力関係、チーム医療が成立するものと思います。ただし同じ薬剤師でも個人差はありますが、薬剤師だったら全問正解できますよね?
さて、医師の先生で全問正解できたとしたら本当にすごい先生だなと感心してしまいます。先生方は何問正解できますでしょうか?ではいきましょう。
※解答詳細は明日掲載させていただきます。
薬剤師っていらなくない?
初の薬剤師が主役のテレビドラマであるアレクサングシンデレラで「薬剤師っていらなくない?」ということばが話題になりました。「薬剤師なんていらない?なんでいらないの?薬剤師は絶対に必要なんだよ!だって処方箋を書く医師は薬物動態や相互作用、薬の化学構造や物性、製剤学などをほとんど習っていないんだよ。併用することによって血中濃度が1/20になって薬が効かなくなったり、20倍以上の血中濃度になったりするとき、それを防ぐ薬の組み合わせを提言できて、配合変化が起こるのを防ぎ、副作用の起こらないよう服薬指導するには薬剤師が絶対に必要なんだ。患者さんが使っている薬の有効性・安全性を担保するために薬剤師が監査し、疑義紹介しなければならないんだ。多くの患者さんが薬物療法によって病気を治療している。薬剤師は患者さんの薬の安全性を守る最後の砦なんだ。」これはこのドラマが始まる前から、僕が熊本大学薬学部で繰り返し学生たちに熱く語ってきたことです。でも「薬物動態学」の大好きな薬剤師や、それに関わる難解な計算式を得意とする薬剤師はあまり多くない(筆者も含めて)のが実態かもしれません。実際、処方箋監査をするのに「薬物動態学の知識って必要?」と思っている薬剤師も多いのではないでしょうか?
「薬剤師は薬の専門家」、幅広い薬の知識を持っているのは薬剤師自身も薬剤師以外も自覚していることでしょう。この薬の特性は何で表されるの?たとえば「どれくらいたてば効き始めて、どれくらい効果が持続するの?」「体の中に薬が溜まり続けて害になることはないの?」「いつ飲んだら一番効果的?」「同じ成分なのに飲み薬と注射薬と投与量が同じこともあるし、飲み薬の方が注射薬よりもうんと量が多いことがあるけど副作用は心配ないの?」「同じ量をのんでも人によって副作用が起きたり、効かなかったりすることがあるのはなぜ?」これらは動態を知っている薬剤師にとってはおそらく容易に答えられる質問内容ですが、医師には少し難しいかもしれません。
もしも現在の医薬分業が数十年以上前の院内処方に戻り、薬剤師不在のクリニックで建前上は医師(実際には事務員)が調剤して薬を渡すようになれば、訴訟沙汰になるような薬の有害反応が日常茶飯事のように起ってしまうかもしれません。おぉ~、怖い。
2021年 4月、これから実務実習に行こうとする薬学科5年生の薬物処方学試験 記述問題『あなたにとって薬剤師とはどのような役割を担った職種だと考えますか?また将来どのように変わっていくべきだと思いますか?』より。これは2015年のブログでも紹介しましたが、薬物処方学のこの試験問題は60点に満たなかった人を救済するために、10点の下駄をはかせる目的で毎年、出題しています。今年は非常勤講師としてですが、平田が感動し、なるほどと思った7名の、素晴らしい考えをご紹介いたします。みんな実務実習、頑張って!
A君:医師と対等に意見交換できる薬剤師
私の将来なりたい職である病院薬剤師を例に挙げるが、薬剤師は「薬物治療」に関しては全責任を負い、患者にとって最善で安全な治療を提供する役割を担う職種であると考える。
また、この役割を担う上で、薬剤師としてのあり方として変わらなくてはいけないと思う点が2点程ある。
自分は身近な所に現役の看護師として働いている人がいるのだが、よく話を聞くのが「薬剤師さんの回答が自信なさげであいまいだからいつも不安」という事についてであり、私はこの話を聞いて「薬剤師は他職種から薬に関しては信頼を置かれるべき存在なのだから、単に知識を蓄えるだけでなく、堂々とした態度でコミュニケーションをとる事も等しく重要なのだ」と感じた。
また、2点目に、現場の声を聞いていると、やはり薬物治療に関しても医師の方が立場が上、といった印象があるらしく、将来、薬の特性に関して医師以上に知識をもつ薬剤師が、医師と対等に意見交換できるような環境を作らなければいけないと強く感じた。
平田の感想:堂々とした態度でコミュニケーションをとれるようになる秘訣は、僕の場合は「なりたい薬剤師像」を心の中で作って、それを演じ切ることでした。僕の場合は「やさしくて物知りの薬剤師」が理想像でした。それとやっぱり医療人すべてに共通することですが、患者さんを好きになり、薬に興味を持つことだと思っています。夢中になって実習を乗り切っていけば、いい薬剤師さんになれると思います。頑張って!
Bさん:高齢者に寄り添える薬剤師
薬剤師は、これからの超高齢社会における人と医療をつなげる役割を担った職種だと考えます。高齢者の方は多くの方が薬をのみながら生活していらっしゃるので、そういった方ができるかぎり自立した、自分らしい生活を長く送れるように、また、体調が悪くてなかなか病院へ行けない方のサポートができるように働きかけることができればいいなと思います。また、高齢者が多く暮らしていらっしゃる地方においては、そういった方々のコミュニティーの場、薬剤師も交えた情報交換の場として薬局や薬局が主催するイベントが活用されればいいなと考えております。その中で、やはり、処方権が完全に委託されたままでは薬剤師の活動の場が広がらないので、薬剤師が可能な処方変更のラインを認定薬剤師制度などを活用して変えていければいいのかなと考えています。
平田の感想:コミュニティーの場で身近な存在の薬剤師ってすばらしい。相談しにくいことがこの人なら相談できる、という人になりたいですよね。でも話は聞くけど、何もできないのは寂しい。よりよい医療に貢献できるようになるには薬剤師1人1人が力を付けて責任ある仕事をこなしていくこと。そうすればこの仕事は薬剤師に任せようという機運が生まれるんじゃないかしら。
Cさん:安全性を守り、処方権を持てるように
薬は病気を治療できる便利なものである反面、使い方を少しでもあやまると患者さんの健康を害してしまうおそれのあるとても怖いものである。薬剤師は、患者さんの薬のリスクから守るセーフティーネットのような役割を担った職業であると考えた。
現在、薬剤師は医師や歯科医師の処方せんがないと患者さんに医療用薬品を渡すことができないが、将来的には、薬剤師も処方することができ、重症でない限りは薬局に直接来てもらって薬を渡せるようなことができるようになったら良いと思った。
Dさん:専門性から地域まで幅広い薬剤師の活躍に期待
薬剤師は薬の専門家であるのはもちろん、公衆衛生や地域の健康づくりをも支える一員である。医療機関ではチーム医療の一員として薬の適正使用に努めなければならない。平田先生の授業で学んだように、例えば抗菌薬適正使用も医療現場では課題となっている。そのようなケースで、薬学を学んできた私たちは抗菌薬適正使用のサポートチームに介入していくのはもちろん重要だ。さらに現在、がん治療が外来で行われることも多くなってきた。外来で治療を進めていく患者の薬の安全と、心の不安の解消のために薬剤師が寄り添っていくことも重要だ。このように、抗菌薬の適正使用や外来がん薬物療法など、様々な面での課題を知り、専門、認定薬剤師として、患者により安全な薬物療法を提供できるようにするのも必要ではないだろうか。また、今後も続いていく高齢社会で、病院完結型医療ではなく地域完結型医療が求められている。このような状況でもますます薬剤師が必要とされていくと考えられている。病院で処方せんをもらって来局した患者の薬歴だけでなく、地域住民のセルフメディケーションのサポート、健康情報の共有において役割を担える。さらにかかりつけ薬剤師の普及などから住民の安否確認にもつながる可能性はある。医療スタッフ、また地域住民のかかわりを築きながら薬剤師としての課題はますます見つかるだろうと考えている。
E君:AIにはできない薬のプロ
薬剤師は薬のプロフェッショナルとして、医療に携わり、患者に寄り添っていく役割があると思う。現在、AI化が進んでいく未来には多くの職業がAIによってまかなわれていくことが予想される。薬剤師の仕事もAIによって行われ、薬の調剤などを無人で行われるようになるかもしれないというものをTVの番組で拝見した。しかし、私は、薬剤師の仕事はAIに代わっていいものではないと考える。AIでは、患者の心情、背景、本音をすべて正確に感じとることは、不可能であると思う。薬のプロフェッショナルである薬剤師だからこそ、人間がやるからこそ、患者に寄り添い、ひとりひとりにあった医療を行うことができると思う。そのため薬剤師はAI化されるべきではないと考える。
最後に、薬剤師の給料は、もう少し高くても良いと思う。病院内での医師との差がより縮まればよいと思う。
Fさん:医療従事者とscientist の側面を持職業
私は薬剤師とは身近な医療の相談相手であると考える。もちろん患者やその家族の健康に関する相談や現在服用中の薬に関する情報を提供するという意味もあるが、最近流行する新型コロナウイルスについて正しい知識を提供するといった務めもあると考える。
また、薬剤師は医療従事者としての側面と、さらにscientistとしての側面、この2つをもつ職種であると考える。この強みを生かしながら、経験と知識を目の前の患者だけでなく、地域全体に活かせるような薬剤師になりたい。
Gさん:病院薬剤師の給与は低すぎる
医者と同様に患者さんの治療法を考える大事な存在だと思います。特に救急では、原因がわからない方が多く、時間もないので、長年の経験や知識が必要になると感じました。しかしながら、そのような責任のある職種であるのにも関わらず、日本では薬剤師の給料は低く(とくに病院)、価値が認められていないように感じます。私たちのような新しい世代の薬剤師が病院内で価値を認めさせ、今後の医療界を支えていく必要があると強く感じています。
という言葉を知っていますか?」の意味は、「誰かひとり(この時はエースの前田健太氏)がコツコツ努力して光を放つようになれば、その姿を見てみんなが光りだす。さらに、みんなでそれを続けていると、何もかもが光りだす」と説明し、達川氏は「今の広島投手陣がまさにこの状態でしょう」と言ったそうです。いい職場や学会など様々な場面で、足を引っ張りあうのではなく、協力して頑張るとよりよい環境の社会が実現できるのではないでしょうか。
ブライアン・メイと言えば、映画ボヘミアン・ラプソディで再び脚光を浴びた英国のロックバンド・クイーンのギタリストです。国際社会の軋轢を言ったものでしょうが、国家間の問題だけではなく、保険薬局薬剤師と病院薬剤師、薬剤師会と病院薬剤師会、医師会と薬剤師会、薬剤師と医師、薬剤師と患者さん、薬剤師と看護師、基礎系と臨床系、教師と学生などいろんな軋轢があると思っています。壁を作っておけば楽かもしれませんが、これからは橋を作ってよりよい関係を築いていければなと思っています。もう少し話し合う時間が欲しいのですが、話し合えない人もいる。むつかしい問題ですが、アドラー心理学を分かりやすく解説した名著「嫌われる勇気―自己啓発の源流『アドラー」の教え』を読むと「人の悩みは100%、対人関係の悩み」という言葉には非常に共感しました。
これらの言葉は現・阪急阪神東宝グループの阪急電鉄の創業者の小林一三氏(松岡修造氏の祖父でもあります)の名言集です。僕も今は高齢者になってしまいました。若い人には頑張ってもらいたいので、学会や研究会では頑張っている若い人たちには小さなチャンスを与えたいと思っています。例えば10分間のミニレクチャー、そしてその中に光るものがあるなら30分の講演をしてもらいます。それが及第点なら全国区のシンポジウムで話してもらいます。それが素晴らしければ論文を書いてもらい、それらをことごとく素晴らしいパフォーマンスを見せれば、1人前と認めようと思っています。幸いにして、腎臓病薬物療法学会には一人前に育った薬剤師が多くいます。
~薬剤師として心に刻んだ名言~
僕は1995年ころ、病棟活動をしてようやく一人前の薬剤師として出発したとき、「自分の理想とする薬剤師像を築き、そしてその役を演じよう」を心に刻み、病棟では「優しい薬剤師・明るい薬剤師・何でも知っていて不安を取り除いてくれる薬剤師」を一生懸命演じていました。本当はそんなに明るくないけど患者さんを元気づけることができるような薬剤師になりたかったのです。 「薬物動態が苦手と言っている薬剤師は、診察が苦手と言っている医師と同じだ」は日本で初めてわかりやすい薬物動態の本を出版された岩手県のどんぐり工房の菅野彊先生だと思っていましたが、実はそうではなかったらしいです。「薬効・副作用=患者〔(薬力学)×(薬物動態)」が菅野彊先生の唱えた言葉だと思います。
最後まで気をゆるめずに努力をしなければならないという戒めです。フルマラソンも35kmからが辛い。今、君は若いが、後で後悔しないために、若いうちに苦労しろ。薬剤師として学会発表する人は多いが、論文を書いた人は少ない。さらに英語論文を書いた人はさらに少ない。僕もはじめて論文を書いたときはとても苦労したが、慣れれば何でもないことと今は思っています。テーマの選定方法が間違っていなければ続ける努力さえあればできるのに、あきらめるなんてもったいない。つらいからというだけで自分に負けるな。くじけるな。あきらめるな。頑張れ。ゴールはもう少しだ!と自分を励ましたものです。
これも励ましてくれる言葉でした。
これらの2つの名言、どちらも広島カープ時代の丸佳浩選手が言った言葉だと思いますが、丸選手が考えた言葉じゃないと思います。野村克也氏が「能力には限界があるが、思考力には限界はない」というよく似た名言を残しています。その当時、広島カープの不動の3番打者だった丸選手はプロに入ったころはフライもろくにとれないくらいに不器用だったし、送球もどこに行くかわからなかったらしいです。当時、コーチだった緒方興孝市氏が丸選手に言った言葉「お前は不器用だから、一つのことを覚えるのに時間がかかるだろう。だけど不器用な人間というものは、一度覚えたら忘れないものなのだ」と諭したそうです。丸選手はその後、メモ魔になり「野球ノート」を作って努力し、2013~19年まで7年連続ゴールデングラブ賞をとる「守備の名手」になり、打撃でも2年連続3割、2年連続MVPになる活躍をした。そしてフリーエージェントで巨人に行ってしまいましたが・・・・。
続いてプロ野球選手に関する名言です。おそらく島田紳助氏が掛布氏のことを称してテレビで言った言葉だと思います。すごく耳に響いたのでメモしました。学会で発表して僕も質問にうまく答えられないことがよくあった。30歳を過ぎても予期しない質問に頭が真っ白になった事もあった。僕はそのころマラソンをしてたけど、ウォークマンやiPodがない時代、何を考えながら3時間のLSD(long, slow, distance: 長時間かけてやるゆっくりとしたジョギング)をやっていたかというと「こう聞かれたらこう切り返そう」「この座長ならこんなことを聞いてくるはずだ」「ここが弱いからこの文献を探して読もう」だったら何を突っ込まれても「これはまだ誰も検討していませんよ」と言えるようになるくらい論文をチェックしたら世界中で負ける人なんていなくなる」と思った。3時間も走っていると、時にすごくいいフレーズがわくことがある。その時は立ち止まってメモをする。これは今も続行けていることです。 元広島カープの名捕手の達川光男氏が言っていました。
好きでもないけど重要なことに対して頑張り続けることはつらいので、挫折することもよくあります。こんな時に夢を持つことの大切さを心に刻んでくれ、好きになり興味を持ったことは一生懸命できるよと励ましてくれたのが宇宙飛行士の毛利衛氏の一言でした。このころから好きになる、面白くなるための努力も必要と感じるようになりました。
同じく宇宙飛行士で医師の向井千秋氏。日本人女性初の宇宙飛行士のこの言葉も勇気づけてくれました。宇宙飛行士になるという通常では実現しにくい夢を実現するためには、夢に見るだけではなく、行動することが大切なんだなと思い知らせてくれました。
この言葉は僕が若いころから心の中に刻んできた名言なのですが誰が言った言葉かよくわからなかったので、調べてみるとウォルト・ディズニーが言った名言でした。
人は一人では生きてゆけない。今のあなたはあなたの両親、学生時代の先生、幼なじみ、学生時代の親友の影響を受けて、今のあなたに至っている。今、優れている人は今まであなたが生きてきた人生の中で、すばらしい人々のよい影響を受け、そして自分自身が伸びようと努力したから今の優れたあなたがある。しかし伸びようとする努力をなくせばあなたの成長はそこで止まってしまう。あなたがこれからも伸びようと努力する限り、あなたは伸び続けられる。だから目標を高く持ちましょうと考えるようになりました。
知っている人も好きでやっている人には及ばない。好きでやってる人も楽しんでやっている人には及ばないということです。僕はこの言葉を励みに「凡人でも夢中になれば天才に勝てる。要するにオタクになれば天才に勝てるのだが、天才でオタクには勝てない。これは仕方ない。」と頑張ってきました。やっぱり「夜中まで夢中になって頑張って仕事している奴には勝てないや」ということは仕事でも勉強でも趣味でもよくあることです。努力はつらい、好きになればいいんだ。だけど少しだけ好きになる努力はしてみようと思っています。だけど努力する大切さを説いた人もいます。
課長になることを目標にすればあなたは課長になれます。しかし部長にはなれないでしょう。夢は大きく持ちましょう。博士号をとろうとすればとれます。こつは仕事を好きになる努力をすること。好きになれば天才にも勝てます。好きになり、楽しめるようになればあなたの夢はすべて叶うでしょう。逆に、夢を持たない限り夢は実現できないのです。
この名言は映画のワンシーンで先生が学生たちに向けて送ったことばです。
~努力することの大切さ~
今まで、自分自身の考え方、アイデンティティを見いだせないで苦しんでいた若いころ、どうやって生きてゆけばいいのだろうと思い悩んで、自分のノートに書きためておいた言葉があります。まずは努力することの重要性を唱える名言は勇気を与えてくれました。あきらめよう、楽をしようとする自分を叱咤激励し、頑張らせてくれました。
この名言は2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹先生の言葉をテレビで見て感動し、夢中で自分のノートにわかりやすく書き記したものです。白川先生の名言集では「若い人はもっと挑戦の精神を持つことが大切だ」に近いかなと思います。
プロレス好きだった僕はこんな言葉にも影響を受けました。
熊本赤十字病院の下石和樹先生がこの長州力氏の言葉を好きだとおっしゃっていましたが、偶然ですが僕も大好きな言葉で、名言だと思います。もう1つ、プロレスラーで今は政治家で文部大臣も務めた馳浩氏の言葉(僕のメモによれば馳浩氏だったと思いますが検索しても出てきません)も好きでした
~努力だけではつらいが好きなことだとつらくない~
努力するっていうことは本音からいうと、つらいことかもしれません。自分の好きなことを一生懸命やればいいんだといってくれたのが以下に示す本田宗一郎氏の名言です。本田氏は尋常小学校を出た後、自動車修理工場に丁稚奉公して戦後に本田技術研究所を設立しました。僕の考え方を「努力」から「夢を持って楽しいことに一生懸命やろう」、そして「嫌なことだったらやめてもいいんだ」と方向転換させてくれた言葉です。
英語論文を読んでみよう
自分らしいオリジナルの意見を持てない人に自分のアイデンティティを持つためのアドバイスですが、前述のように交友関係を広げることだけでなく広い範囲の読書をすることもとてもいいことです。でも薬剤師であれば、若い時にこそ、自分を高めるためのもう一度、薬物動態、薬理、病態について勉強してみませんか?若いうちに英語論文を読んでみませんか?英会話を始めてみませんか?勉強会や講演会で気の利いた質問はその講演会のテーマに関する原著論文を読んでいると10個くらいの質問は出てくるはずです。決してメディカルトリビューン、日経メディカル、M3comやメーカーのWebサイトから専門家の意見を見ただけで受け売りするだけではいけません。これらの情報を得られることは非常に良いことですが、自分の専門分野に関しては自分なりの考えを持ちたいですね。そのためには自分で原著論文にあたってGoogle翻訳などを使わずに独力で訳してみましょう。
自慢するわけではありませんが、僕は国際学会に行って自分の専門分野である腎臓病の薬物療法やTDMなどに関する英語の講演はほぼ100%理解できます。でも実際には僕は英字新聞も読めないし、CNNニュースも難しいし、英会話能力も深いディスカッションは苦手ですが、論文だけはたくさん読んできたから読めるし、講演もスライドや図表があれば日本語と変わらないくらいに理解できます。そして英語で質問も一応できるようになりました。そのようになったきっかけは僕が24歳のとき、初めて中分子尿毒素について学会発表するとき、ドクターたちから何を聞かれるかがとても怖くて、発表内容に関する英語論文20個くらいをすべて取り寄せて、毎日読み始めたことです。最初はほとんどの単語が分からなくて、そのたびに辞書を引いていましたので、仕事が終わって初めて23時になっても1つの論文すら訳し終わらなかったのが、2本目は半分の時間で済み、3本目は1/4の時間で済み、1週間たったころには辞書なしで楽に訳せるようになったのです。これって半減期の理論(半減期×4~5倍で薬物濃度はほぼゼロに近くなる=あきらめずにやり続ければ労力がゼロ近くになる)と同じで、この快感・達成感は今も忘れません。これ以降、僕はMedline検索、インターネットが発達してからは自分の体験した副作用や患者さんの薬物療法の最適化についてPubMed検索で解決することが多くなりました。そうすると何が新しくて、何が既にやられている仕事かが分かり、原著論文を書けるかの判断もでき、臨床で生かしたことを題材に次々と論文にすることができました。
夢を持とう、主体性をもって自分のゴールを目指そう
現在は病院薬剤師にも保険薬局薬剤師にも薬剤師としての活動の場が広がりつつあります。若い人たち、若くなくても活躍の場を経験したことのなかった人たちにも、主体的に動ける自己を作って高いゴールを目指してもらいたいです。小さな一歩からで構いません。勉強会で勇気を振り絞って質問してみよう。10分のプレゼンを頼まれたら、チャンスと思って全力を注いでみよう。それがユニークで好評であれば、30分の講演の依頼がいつかやって来ます。そして全国的な研究会や学会でプレゼンする機会ももらえます。当然この前後で原著論文を書けるようになっているはずです。夢は大きく持ちましょう。ゴールは高く掲げましょう。国際学会で発表し、英語論文を書けば、博士号も転がり込むように取れます。
僕の場合、薬学・医学とは関係ない本を読む読書も好きでした。そしてその中に書かれてある自分を高めてくれる言葉、名言を自分ノートに書き綴る習慣をつけていました。自分自身の将来を俯瞰的に見ることのない不器用な僕にとって、そういった名言が、横道にそれることなく、自分を高め、自己を確立するに至ったような気がします。そして小さなことではつぶれない強い自分になれたような気がします。次回はさまざまな名言を心の糧にして自分を高めることについてブログに書きたいと思っています。