腎機能評価の10の鉄則

薬剤師向け:バラシクロビルによる腎障害(難易度 難しい)

 身長150cm 、体重36kgの80歳女性。2か月以上寝たきりで栄養状態不良のため経管栄養をしている要介護度の高い症例が帯状疱疹に罹患したためバラシクロビル錠500mgを1回2錠、1日3回で1週間分が処方された。血清クレアチニン値は0.4mg/dLであった。バラシクロビルは通常、成人にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与することになっており、クレアチニンクリアランス(mL/min)≧50では1000mgを8時間毎投与するが、クレアチニンクリアランスが50mL/min未満では減量することになっている。投与開始1日目で尿量が減少し、2日目には無尿になり、次第に呂律が回らなくなって会話が成立しなくなった。推算クレアチニンクリアランスは63.8mL/minで腎機能はそれほど悪くなかったはずなのにこのような副作用が起こった。
以下の記述のうち間違っているものを1つ選びなさい。

1. バラシクロビルはアシクロビルよりも吸収率が高い。
2. 長期臥床患者では筋肉量が減少するため、血清クレアチニン値を基にした腎機能は過大評価されやすい。
3. バラシクロビルの結晶が尿細管で析出して無尿になったと考えられる。
4. 副作用を防ぐには胆汁排泄型のアメナメビルに変更を提案するとよい。
5. 副作用を防ぐには多めの水分を摂取するよう服薬指導する。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

『腎機能評価10の鉄則』のテキスト(PDF)ダウンロードができます。

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 14日目、いよいよ最終回です。実測CCrに0.715をかけるとGFRとして評価できます。Cockcroft-Gault式から算出された推算CCrに0.789をかけるとGFRとして評価できるとCKD診療ガイドライン2012に書かれています。でもちょっと待ってください・・・・・。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 13日目です。病態によってCrの尿細管分泌が増えることが報告されています。このような疾患では血清Cr値が低下し尿中Cr濃度が上昇するため、腎機能が高くなりますが、GFR(イヌリンクリアランス)には変化がありません。つまり実際には腎機能はよくないのによく見えてしまう現象(腎機能の過大評価)が起こります。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 12日目です。連載はまだまだ続きますが最後の鉄則となりました。腎機能評価は大切と言ってきましたが、安全域の広い薬物ではCCrを用いてもGFRを用いても大きな問題はありません。問題は抗がん薬や低血糖を起こしやすい薬物、抗凝固薬・抗血小板薬などの超ハイリスク薬、あるいは通常の薬物でも腎機能が低下するとハイリスク薬になってしまうような尿中排泄率の高い薬物(バンコマイシン、ピルシカイニドプレガバリン、H2遮断薬など)の投与設計時には腎機能の正確な見積もりが必要になります。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 11日目です。いよいよシスタチンCの登場です。腎機能を推算するために汎用される血清Cr値の測定費用は安価なものの、腎機能の影響だけでなく筋肉量の影響を受けるという致命的な欠点がありました。シスタチンCは小児から高齢者まで簡便にGFRを予測することができます。ただし3か月に1回の測定しか保険適応になっていないなど様々な問題点もありますが、筋肉量の少ない患者の腎機能予測をしたいが、蓄尿は大変という場合には一番頼りになる腎機能マーカーになると思われます。そして軽度~中等度腎障害では血清Cr値はすぐには上がってくれません。このような時にも頼りになる腎機能マーカーとも言えます。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 いよいよ10日目になりました。今回は偽性薬剤性腎障害の話です。つまり腎機能は全く悪くなっていないのに血清Cr値が20~30%上昇してしまったということがトリメトプリムやシメチジン投与後によく見られます。当然、CCrは低下しますが、GFRは変化しません。ということはCrの尿細管分泌をこれらの薬剤が阻害したということになります。この時に得られる実測CCrはGFRに近似するため、イヌリンを投与しないでGFRを測定する方法として使えるという報告もあります。ただしこれらの薬剤によってCrの尿細管分泌を100%抑えていないとGFRとして評価できませんが・・・・。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

  9日目です。これまで血清Crが低い痩せた高齢者では腎機能を過大評価してしまうという話をしてきましたが、今回は血清Crが低いけれども痩せていない若年者(論文では50歳以下と書かれていますが、実際には60歳以下でも十分にみられます)の話です。全身熱傷などでICUに入院した患者でよくみられることですが、大量輸液や血管作動薬の投与によって腎血流が増加しGFRが高くなっているためと考えられるため、この場合には血清Cr値が低いことは素直に腎機能がよいと考えていい場合が多いのです。

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 8日目です。推算CCrは肥満患者の腎機能を過大評価することを鉄則4で述べましたが、今回は逆に痩せた患者ではeGFRが過大評価してしまうということについてです。これは体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m2)でも未補正eGFR(mL/min)でも同様の傾向を示します。この場合も蓄尿して得られる実測CCrに0.715をかけてGFRとして評価することができる非常に正確に腎機能マーカーになりますが、そこまで出来ない場合、血清Cr値が0.6mg/mL未満の場合には0.6を代入すると予測性が高くなることがあり、ラウンドアップ法とよばれています。シスタチンCを測定してeGFR(mL/min)を算出するのもよい方法ですが、これについては後述します。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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