医師:大変だ!腎機能は透析間近の末期腎不全患者で小柄な高齢者なんだけど、心房細動のリズムコントロールでシベノールⓇを間違って常用量投与しちゃったんだ。低血糖は起こすし、過量投与によるQT延長は心配だし、どうしたらいい?
薬剤師:シベノールⓇの分布容積Vdは5~8L/kg程度と大きいから、どんな血液浄化法も無理です。Vdが2L/kg以上の薬はいかなる血液浄化法によっても除去できないんですよ(図1)1)。だって組織に分布しやすい薬の血中濃度は低いでしょ。低い血中濃度を血液浄化法で下げても体内には組織に移行した薬物が残っていますから。対症療法するしかないかもです。
医師:でも透析やCHDFで除去できた、「血液浄化法で救命できた」っている報告がいっぱいあるじゃないか?
薬剤師:医学論文って書いたのが医師で医師が査読しますよね。医師はたいてい薬物動態知らないですから、全部間違ってます。だからそんな論文が出るたび、僕は編集部あてにLetter to editorを書いてました2)3)。これが届くと著者が回答しなくちゃいけないんですよ。「救命できた」っていうのは血液浄化法をやらなくても放っておいても薬物が消失したために死ななかっただけのことです。あれだけ言っておいたでしょ、腎機能低下患者に薬を投与するときには日腎薬の「腎機能別薬剤投与量POCKET BOOK」を見てから投与してくださいって。
さて、このように血液浄化法では、どうしようもない薬物もたくさんあるが、一番問題なのが、腎排泄性なのに、なぜか、Vdがほぼ5.0L/kgと大きなシベンゾリン、ジゴキシン、アマンタジンなのだ。この3つだけは初回投与設計を間違えないようにしよう。





1)平田純生, 金 昌雄, 上野和行, 他: 薬物の透析性. TDM研究 14: 277-287, 1997
2)平田純生: Letter to Editor. 早川和良, 他: 透析患者のamantadine hydrochloride中毒における血液浄化療法の経験.に対して. 透析会誌36(5)363-364, 2003.
3)平田純生: Letter to Editor 黒川陽子,他: Cibenzoline中毒に対して血液吸着・血液濾過透析が有効であった1例』に対して. 透析会誌36(9):1457-1459,2003
フィネレノンはエサキセレノンとともに非ステロイドMRA(nsMRA)に分類されるが、果たしでどう違うのだろう?フィネレノンはまずステロイド骨格を持っていないので、構造はもちろん違うが、驚くことにニフェジピンと同じジヒドロピリジン骨格を有する(図1:さすがバイエル薬品!)。MRAのスピロノラクトンのアルブミン尿低下作用はRAS阻害薬よりも強力だが、高カリウム血症が怖い(図2)。おそらく糖尿病関連腎臓病DKDではアルドステロンがサンギウム細胞の増殖を促し足突起の剥離を促進してアルブミン尿を増やすからだと考えられている(図3)。だからMRAのアルブミン尿を下げる作用はSGLT2阻害薬に勝るかもしれないし、併用すると相乗作用を示す。



そしてnsMRAのフィネレノンの利尿降圧作用は非常に弱い。ステロイド骨格のスピロノラクトンには女性化乳房などの性ホルモン作用があり、エプレレノンは性ホルモン作用がないだけでなくこれらの利尿作用・降圧作用ともにフィネレノンよりも強力だから、フロセミドを使いたくないときやRAS阻害薬だけでは血圧が十分下がらないときにステロイド骨格を持ったMRAは頼りになるが、何といってもやばいのは高カリウム血症を起こしやすいってことだ(図4)。腎機能の低下したDKDにフィネレノンが優先されるのは細胞増殖・リモデリングを抑え、高カリウム血症を起こしにくいからだ。フィネレノンは心不全の適応がないから、使いたくても使えないので、ロケルマを併用しながらスピロノラクトンやエプレレノンを使う循環器医も多い。高カリウム血症の原因薬にはMRA以外にもST合剤、RAS阻害薬、ARNIがあるので併用時には高カリウム血症に気を付けよう(図5)。


「これを寝る前に飲むだけでクレアチニン1.5→0.8」とか「クレアチニン1.5→0.8にガンガン落ちる食べ物」「eGFRが50代から70台に上げる方法」なんてタイトルのYouTubeがあるけど、全部ウソだよ。中には医師がこんなウソを言っている。急性腎障害で一時的に悪化した腎機能は元に戻ることはよくあることだし、セマグルチドなどで激やせするとクレアチニンが下がることがあるけど、これは脂肪が主に少なくなるけど筋肉もやや少なくなるから、筋肉由来のクレアチニンが減少して腎機能がよくなったように見えるだけのこと。こんな時の腎機能はシスタチンCによるeGFRでないと判断できないんだ。慢性心不全は薬物療法の恩恵でリバースリモデリングが起こって駆出率やBNPやNYHA分類が改善することはよくことだけど、なんで腎機能はよくなることがないのか?
腎の糸球体はそれを取り巻く糸球体上皮細胞の足突起が脱落すると、足細胞は再生できないため、慢性腎臓病の腎機能がよくなることはありえない(図1)。足突起の脱落は高血糖や高血圧に起因する糸球体過剰ろ過で起こる(図2の下)。つまりタンパク尿やアルブミン尿が高いのを放っておくと、特に糖尿病関連腎臓病DKDでは腎機能は急激に悪化するので怖い(図3)。こうなる前に血圧・血糖管理を改善し、RAS阻害薬やSGLT2阻害薬を投与してもらうために受診していただこう。



高齢者のちょっとしたむくみの訴えに対して、開業医は何とかしなくちゃということで、ラシックスを使うけど、それによって高齢者が脱水や腎機能の一時悪化で食欲不振・倦怠感を訴えて入院ということがよくある。そのたびごとに僕は親友の医師から愚痴を聞く羽目になる。「開業医の連中、何とかならんかなぁ。高齢者のちょっとしたむくみにラシックスを使って、結局脱水になったら入院するんや。うちのような病院が面倒見なあかんのや。ほんま何とかしてほしいわ」と。
ある薬剤師からの訴え「循環器医がラシックスを投与すると、腎臓内科医が中止する。すると循環器医はラシックスをまた投与する。間に入った薬剤師の私はどうすればいいの?」と。循環器医は心不全によるうっ血を取って自覚症状を改善したいから利尿薬を使いドライにしたい。でも腎臓内科医は脱水による腎障害を起こしたくないから利尿薬で脱水にならないようウェットにしたい。いつまで続くのやら、この静かな戦い……。
そこでグッドニュース。ラシックスはほぼ強制的な利尿作用だけど(とはいえ脱水になるとレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は活性化されるけど)、SGLT2阻害薬は体液が過剰な時には利尿作用を発揮するが、脱水時には無理な利尿を起こさないのは多分、抗利尿ホルモンが体液量を精密に感知して尿量を制御してくれているからじゃないかといわれている(図1)。だからSGLT2阻害薬には利尿作用があって脱水を起こすのに急性腎作障害を起こさないのかも(図2)。そしてなんといっても慢性心不全にもCKDにも有効性が非常に高い。高カリウム血症も(低カリウム血症も)起こさない(図3、4)。SGLT2阻害薬は失われた腎機能を復活させる薬なのかもしれない。心腎連関によって心臓も守ってくれるのかも?




グラム陽性菌は脂質二重相の外膜を持たないので、グラム染色で濃紺に染まった後もアルコールで脱色されないので濃紺のままだが(バイキンマン)、グラム陰性菌は紺に染まった脂質二重相の外膜がアルコールで溶けちゃうので、その後の赤色色素で赤く染まるんだよね(ドキンちゃん)。グラム陽性菌のペプチドグリカン(細胞壁)が分厚いから細胞内圧が20気圧と高いので、増殖スピードは速いけど、細胞壁合成阻害薬によって溶菌しやすい。代表的なものには黄色ブドウ球菌(耐性化するとMRSA)、肺炎球菌、溶連菌などメジャーなものはすべて球菌だ。かたやグラム陰性菌の代表的な細菌は緑膿菌、大腸菌、インフルエンザ菌、肺炎桿菌などメジャーなものはすべて桿菌だ。だから臨床的に重要な細菌はグラム陽性球菌とグラム陰性桿菌なんだ!つまり青丸の菌と赤長の菌をマークしよう!



脂溶性の高い薬物でないと細胞膜の脂質二重相を通過できない。ということは極めて親水性の高いβラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬がクラミジアやレジオネラなどの細胞内に寄生して増殖する細胞内寄生菌を殺菌できるわけがない!脂溶性の高いマクロライド、テトラサイクリン、クロラムフェニコール(チフスには今でも使ってるらしい)が細胞内寄生菌に効果がある。キノロンはクラビットⓇが尿中排泄されるので親水性と思っている人は多いけど、モキシフロキサシンなど脂溶性が高く組織透過性も高い(Vdは2.0~3.0L/kg)ので細胞内寄生菌にも効く。結核菌にまで効いてくれるのは困ったものだけどね。だけどキノロンを除く脂溶性抗菌薬は殺菌性ではなく静菌性抗菌薬なので、重症感染症にはあまり頼りにならない。逆に殺菌力が強くてスペクトルが広すぎるキノロンは「原爆みたいな薬」なので、軽微な感染症に気やすく投与すべきじゃないと平田は思う!
細胞壁にペプチドグリカンがないため、細胞壁合成阻害によって殺菌するβラクタム系抗菌薬・グリコペプチド系は細胞壁のない細胞内寄生菌やマイコプラズマには無効であり、マクロライド系・テトラサイクリン系・キノロン系といった抗菌剤が治療には用いられるというのも理解しやすいね。




多剤耐性菌では難儀な緑膿菌などのグラム陰性菌は脂質外膜(ヒトの細胞膜と同じ脂質二重相)をもっているため抗菌薬の透過性はよくないが、外膜にはポーリン孔があり、脂溶性薬剤は透過しにくい。そのためアミノ配糖体のような水溶性薬物の効果が高い。カルバペネムもポーリン孔を透過しやすいため陰性菌に効果が高い。さらにポーリン孔は分子量600以上のものが透過できない。これで分子量が1500Da足らずのバンコマイシンや1500~1900Daのテイコプラニンは分子量が大きいため、全くグラム陰性菌には全く効かなくて、巨大な環状構造を持ったマクロライド系抗菌薬(分子量約800Da)がグラム陰性菌には強くないってことが理解しやすくなる。この理論、合ってるかどうかは知らないけど、これで抗菌スペクトラムが理解しやすくなるのは確か。




薬剤師の皆さん、一般内科医の先生方、以下の質問に答えられますか?
①CKD患者の降圧薬の第1選択薬は何?
②糖尿病患者の降圧薬の第1選択薬は何?
③糖尿病患者の降圧目標は?
④CKD患者の降圧目標は?
⑤RAS阻害薬の投与開始時にはeGFRをモニターするが、投与3か月後までの時点で前後の30%未満の減少は、薬理効果としてそのまま投与を継続してもよい?
では回答は図をご覧ください。



これら①~⑤の回答の赤字部分はCKD診療ガイド2012(ガイドラインではないが、CKDを知っていただくために多くの製薬メーカーの協力を得て、日本全国の開業医に配布された)に記載されていた事項を正した回答だ。腎臓専門医であればその後のCKD診療ガイドラインの記載事項変更によってアップデートできているが、一般内科医には配布されて13年も経っているアップデートされていないCKD診療ガイド2012の情報を今でも信じている人が多いはずだ。だから薬剤師の皆さん、RAS阻害薬はトリプルワーミー処方の1つ、薬剤性腎障害の原因薬としてはトップクラスなんだ。腎機能が悪化すれば透析患者になってしまうことだってあるんだよ!

SGLT2阻害薬ほどは注目されてないけれど、「心不全のfantastic four」、「CKDの三種の神器」の両方に入っているのがMRAのフィネレノン(ケレンディアⓇ)。他のMRA と異なり、Ca拮抗薬と同じジヒドロピリジン骨格で、利尿作用が弱く、収縮期血圧は下げても2~3mmHgと弱いので、MRAの中で唯一、降圧薬としての適応はない。だけどアルブミン尿を30~40%も下げてくれ、心・腎の繊維化・炎症を抑えてくれるので糖尿病関連腎臓病DKDでの腎保護作用・心保護作用は強力だ。MRAはRAS阻害薬やARNIと併用されがちなため、腎機能低下患者での高カリウム血症が非常に怖い。しかしフィネレノンを用いて腎複合イベントを主要評価項目としたFIDERIO-DKD試験で血清カリウム値は0.25~0.3mEq/mLの上昇のみ、心血管複合イベントを主要評価項目としたFIGARO-DKD試験でもカリウム値の上昇は0.16mEq/Lの上昇のみだった。これで安心して心・腎保護作用が期待できるMRAとして認められた。
ところでFIDERIO 、FIGARO って聞いたことない?前者はベートーヴェン、後者はモーツァルトのオペラの題名だ。「フィガロの結婚」は僕も大好きな楽曲だけどベートーヴェンがオペラを作ったってことは知らなかった。RAS阻害薬+SGLT2阻害薬を使っても微量アルブミン尿が持続するなら血清K濃度<5mEq/LでeGFR≧25mL/min/1.73m2のDKDであればケレンディアⓇの追加を提案してみよう!





ミネラルコルチコイド拮抗薬MRAのスピロノラクトンが重症心不全の死亡率を30%も下げることを報告したRALES試験後に処方頻度が4.38倍に上昇し、それによる高カリウム血症による死亡者が6.7倍に増加したことが問題になった。腎機能低下患者ではすべてのMRAで重篤な副作用である高カリウム血症の懸念はあるし、心不全、CKDともにほぼRAS阻害薬と併用されるので、腎機能もわかっていない高齢者などに外来で投与するのは問題だ。MRAを使うのであれば、入院患者でしばらく観察して高カリウム血症になりにくい症例であることを確認してから退院させる、あるいはケイキサレートⓇやロケルマⓇなどのカリウム吸着薬を併用するなど万全な配慮が必要だろう。ところでST合剤(バクタⓇ)とスピロノラクトンの併用は高カリウム血症による入院リスクを12.4倍、突然死リスクを2.45倍上昇させるって知ってた?第3世代MRAのフィネレノン(ケレンディアⓇ)の構造はなんとCa拮抗薬と同じジヒドロピリジン骨格を持っていて、性ホルモン様作用が少なく、糖尿病性腎症のアルブミン尿を減少させるだけでなく、高カリウム血症も従来薬に比し軽い。


