多剤耐性菌では難儀な緑膿菌などのグラム陰性菌は脂質外膜(ヒトの細胞膜と同じ脂質二重相)をもっているため抗菌薬の透過性はよくないが、外膜にはポーリン孔があり、脂溶性薬剤は透過しにくい。そのためアミノ配糖体のような水溶性薬物の効果が高い。カルバペネムもポーリン孔を透過しやすいため陰性菌に効果が高い。さらにポーリン孔は分子量600以上のものが透過できない。これで分子量が1500Da足らずのバンコマイシンや1500~1900Daのテイコプラニンは分子量が大きいため、全くグラム陰性菌には全く効かなくて、巨大な環状構造を持ったマクロライド系抗菌薬(分子量約800Da)がグラム陰性菌には強くないってことが理解しやすくなる。この理論、合ってるかどうかは知らないけど、これで抗菌スペクトラムが理解しやすくなるのは確か。




薬剤師の皆さん、一般内科医の先生方、以下の質問に答えられますか?
①CKD患者の降圧薬の第1選択薬は何?
②糖尿病患者の降圧薬の第1選択薬は何?
③糖尿病患者の降圧目標は?
④CKD患者の降圧目標は?
⑤RAS阻害薬の投与開始時にはeGFRをモニターするが、投与3か月後までの時点で前後の30%未満の減少は、薬理効果としてそのまま投与を継続してもよい?
では回答は図をご覧ください。



これら①~⑤の回答の赤字部分はCKD診療ガイド2012(ガイドラインではないが、CKDを知っていただくために多くの製薬メーカーの協力を得て、日本全国の開業医に配布された)に記載されていた事項を正した回答だ。腎臓専門医であればその後のCKD診療ガイドラインの記載事項変更によってアップデートできているが、一般内科医には配布されて13年も経っているアップデートされていないCKD診療ガイド2012の情報を今でも信じている人が多いはずだ。だから薬剤師の皆さん、RAS阻害薬はトリプルワーミー処方の1つ、薬剤性腎障害の原因薬としてはトップクラスなんだ。腎機能が悪化すれば透析患者になってしまうことだってあるんだよ!

SGLT2阻害薬ほどは注目されてないけれど、「心不全のfantastic four」、「CKDの三種の神器」の両方に入っているのがMRAのフィネレノン(ケレンディアⓇ)。他のMRA と異なり、Ca拮抗薬と同じジヒドロピリジン骨格で、利尿作用が弱く、収縮期血圧は下げても2~3mmHgと弱いので、MRAの中で唯一、降圧薬としての適応はない。だけどアルブミン尿を30~40%も下げてくれ、心・腎の繊維化・炎症を抑えてくれるので糖尿病関連腎臓病DKDでの腎保護作用・心保護作用は強力だ。MRAはRAS阻害薬やARNIと併用されがちなため、腎機能低下患者での高カリウム血症が非常に怖い。しかしフィネレノンを用いて腎複合イベントを主要評価項目としたFIDERIO-DKD試験で血清カリウム値は0.25~0.3mEq/mLの上昇のみ、心血管複合イベントを主要評価項目としたFIGARO-DKD試験でもカリウム値の上昇は0.16mEq/Lの上昇のみだった。これで安心して心・腎保護作用が期待できるMRAとして認められた。
ところでFIDERIO 、FIGARO って聞いたことない?前者はベートーヴェン、後者はモーツァルトのオペラの題名だ。「フィガロの結婚」は僕も大好きな楽曲だけどベートーヴェンがオペラを作ったってことは知らなかった。RAS阻害薬+SGLT2阻害薬を使っても微量アルブミン尿が持続するなら血清K濃度<5mEq/LでeGFR≧25mL/min/1.73m2のDKDであればケレンディアⓇの追加を提案してみよう!





ミネラルコルチコイド拮抗薬MRAのスピロノラクトンが重症心不全の死亡率を30%も下げることを報告したRALES試験後に処方頻度が4.38倍に上昇し、それによる高カリウム血症による死亡者が6.7倍に増加したことが問題になった。腎機能低下患者ではすべてのMRAで重篤な副作用である高カリウム血症の懸念はあるし、心不全、CKDともにほぼRAS阻害薬と併用されるので、腎機能もわかっていない高齢者などに外来で投与するのは問題だ。MRAを使うのであれば、入院患者でしばらく観察して高カリウム血症になりにくい症例であることを確認してから退院させる、あるいはケイキサレートⓇやロケルマⓇなどのカリウム吸着薬を併用するなど万全な配慮が必要だろう。ところでST合剤(バクタⓇ)とスピロノラクトンの併用は高カリウム血症による入院リスクを12.4倍、突然死リスクを2.45倍上昇させるって知ってた?第3世代MRAのフィネレノン(ケレンディアⓇ)の構造はなんとCa拮抗薬と同じジヒドロピリジン骨格を持っていて、性ホルモン様作用が少なく、糖尿病性腎症のアルブミン尿を減少させるだけでなく、高カリウム血症も従来薬に比し軽い。



PPIは意外とアレルゲン性が高く、アレルギー性の急性間質性腎炎になりやすい(図1)。免疫チェックポイント阻害薬と併用すると、重症のアレルギー性の腎障害が起こりやすい(図2)が、これらは用量依存的ではない。長期投与で問題なのはPPIによる毒性ではなく、胃酸分泌抑制による諸問題なのだ。まず下記の4つの副作用に注意しよう。①胃酸分泌の抑制による腸内細菌叢の変化によってクロストリジオイデス・ディフィシル(CD)腸炎などの多剤耐性菌のコロニー形成のリスクになる(図3)、②Mgの吸収障害による重度の低マグネシウム血症により、QT延長、心停止を起こす可能性がある。TdP (Torsades de pointes)発症患者の半数以上が低マグネシウム血症でTdP発症群の血清Mg濃度は低く、PPI服用中にTdP発症群の血清Mg濃度はさらに低いことが報告されている(図4)③胃酸分泌抑制によって吸収されにくくなる薬物がある(アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール、HIV抗レトロウイルス薬のリルビビビン、アザタナビル、チロシンキナーゼ阻害薬のダサチニブなど)④PPI長期投与によってビタミンB12の吸収障害(PPIを常用している平田も欠乏レベルに近かった)。
そのほかにも様々な報告がある。Ca吸収障害による骨折のリスク増加、種々のがんリスク上昇、肺炎のリスク上昇、認知症悪化リスク上昇など様々だが、これらは矛盾するデータも多く、交絡因子の影響を受けているものが多いので確立されていない。本当にPPIの必要な患者さんに対して、再生回数を増やすために、明確になっていない副作用、薬の怖さだけ強調する医療系SNSには気を付けよう。





これから暑い夏、トリプルワーミー処方や活性型ビタミンDを服用している患者さんにはこまめな飲水よりもより積極的な飲水励行をしよう。そして保険薬局や在宅でも簡易に脱水を早期発見するには、「爪毛細血管再充満時間(CRT:Capillary refilling time)2~3秒以上」の特異度が高いことを知っておこう。もともとこれはトリアージ(災害時などで誰を優先的に治療するかの順位を決める)で循環機能を簡易的に判定する指標で,爪を5秒間加圧した後に解除し,爪の赤みが回復するまでの時間(Blanch test)。2秒以上なら、緊急治療群(Ⅰ:赤)とするトリアージに用いる手法である。2秒未満なら、循環に関しては問題ないと判断される(3秒とすることもある)。McGeeらは脱水症の判定に応用した循環血漿量が減少しているかどうかを簡易に見つける特異度の高い方法として報告した。右手で左人差し指のつま先をつまんでみよう。ピンク色の爪が一瞬、白くなるが、2秒以上白いままだと脱水(末梢循環の不良)が疑われる。これは特異度、つまり脱水がない患者で症状が現れない確率が95%と高い。口腔粘膜の乾燥は感度、つまり脱水が存在する時に出現する確率(脱水を見逃さない確率)が85%と高いことを覚えておき、どちらも高ければ脱水と簡易診断可能だ。そのほかにも体重減少・血圧低下もとても良い参考になる。輸液の専門家はなぜか、皮膚の張り(skin turgor)を参考にするという人が多いけど高齢者ではしわが多いのでもともと張りがないので平田は高齢者にはあまり使わない。


通常、腎排泄性の薬物ってリーマスⓇやゾビラックスⓇ、アミノグリコシド系やβラクタム系の抗菌薬のように水溶性で、蛋白結合率が低く、分布容積が小さい薬が多いイメージを持っているよね。これらは透析でよく抜けるから過量投与してもいざというときには透析で救命できるから怖くない。これは常識!だけど中に例外がある。ジゴシンⓇ、シベノールⓇ、シンメトレルⓇの3つの薬物だ。3つとも腎排泄性なので腎機能低下患者に減量せず投与すると当然、致死的な有害反応が起こる可能性が高いハイリスク薬だが、分子量も大きくないし蛋白結合率も高くないけど、分布容積が5.0L/kg以上あるため、透析で抜けない。透析だけじゃない、CHDFを含むあらゆる血液浄化法が無効だから救命できない。だから初回投与設計を間違えないことがとっても重要なんだけど、残念ながら医師にこの能力はない。動態をよく知っている薬剤師であれば初回投与設計を間違えないはず、薬剤師の力の見せ所なんだ。


バラシクロビルで無尿になって急性腎障害で緊急入院、たいていの患者は小柄な高齢女性へのバラシクロビルの過量投与だ。腎障害だけでなく、ろれつが回らないアシクロビル脳症を併発していることが多いので、血液透析を2日以上連続して施行すると、2回目の透析中に目を覚ましたように意識障害が消失することがよくある。透析でアシクロビルが抜けたからだ。じゃあどんな薬物中毒の時に血液透析が有効なの?
血液透析で除去されにくい薬物の共通点は蛋白結合率PBRの高い薬物、脂溶性の高い薬物、腎排泄性の低い薬物、分布容積Vdが大きい薬物、分子量の大きい薬物。もっと具体的には、①PBR>90%以上の薬物は血液透析によって除去されない(図1)、②分布容積Vd>2.0L/kgの薬物は除去されにくい(図2)、③PBR>80%かつVd>1.0L/kgの薬物も除去されにくい。たいていの肝代謝型薬物は上記の性質を持っているので透析では抜けないが、まとめるとこうなる(図3)。逆にアシクロビルの蛋白結合率は30%程度で低いし、分布容積Vdは0.7L/kgと体内水分量に近いくらい小さいし、分子量は225Daしかないから透析でよく抜けるんだよね。詳しくは薬物除去率予測式 を参照してね。



①ステージ4以降(eGFR<30mL/min/1.73m2)にまで腎機能が低下すると、②尿中へのリン排泄低下が起こり、FGF23というホルモンが骨から分泌されて、血液中のリンを減らそうとして、尿からのリンの排泄を促す。③ビタミンDの活性化がFGF23によって抑制される。④血清リン濃度の上昇、⑤ビタミンDの活性化障害によって腸管からのCa吸収能が低下して、低カルシウム血症になる。⑥血清Ca濃度が低下すると副甲状腺ホルモン(PTH: parathyroid hormone)が過剰に分泌されて骨吸収が増加(骨からCaを溶け出させる)ため、骨塩量が低下して骨がスカスカになって脆くなる。⑦これを線維性骨炎と言うが、同時に血中に溶出したCaとリン酸が血管に沈着して石灰化を起こす(図1)。この一連の流れを「慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD: mineral bone disease)」と言う。
その治療の基本は①リン、②Ca、③PTHの順にコントロールするのが鉄則。腎機能が低下して最初に上がるのが血清リン値、血清Ca値、血清intact PTHだからだ。PTHは骨の代謝回転を上げる悪玉のように言われるが、この中では3番目に重要。また図2には左からリン、Ca、PTHの折れ線グラフは全死亡ハザード比、棒グラフは透析患者の各濃度の人口分布を示すが、ハザード比の振れ幅が大きい、つまり血清濃度が高くなると全死亡ハザード比が高くなる順は明らかに①血清リン値、②血清Ca値、③血清intact PTH値の順だ。だからこの順に正すべきというのが鉄則なのだ。ではそれらの適正濃度は①血清リン値3.5~6.0mg/dL、②血清Ca値はアルブミン濃度で補正した補正Caとして8.4~10.0mg/dL、③血清intact PTH値60~240pg/mLに入るようにしよう(図3)。複雑だけど分かった?



カルタンⓇは唯一のCa含有リン吸着薬。2007年にCa含有リン吸着薬群はセベラマー(レナジェル)群に比し、有意に死亡率が高いといわれ(図1)、同様な報告が続いた。カルタンⓇは一番使い方が難しい、一番怖いリン吸着薬と思われている。だけどカルタンⓇは高リン血症かつ低カルシウム血症になりがちな保存期には一番使いやすい薬で価格も安く、上手な使い方をマスターしなければならない薬だ。でも使い方の基本をマスターしていない医療者が多すぎる!
食事をしないときにカルタンⓇを飲むとリンを下げず、血清Ca値が上昇することによって起こる高カルシウム血症は透析患者の血管の中膜の石灰化(血管が骨に変わる!: 図2)を助長するためとても危険なので、「食事をしないときには飲んじゃダメ!」の服薬指導はとっても重要なのだ。リンが高くなく、低カルシウム血症を是正する時には血清Ca濃度を上げるために透析医は意図的に空腹時に投与することもあることも知っておいてほしい。
「カルタンⓇは異所性石灰化の原因になり、Ca非含有リン吸着薬に比べて予後が有意に不良」という常識は、唯一、セベラマーと比較して有意差がついただけで、2015年以降のメタアナリシスでは「これらの報告は異質性が高く、Ca含有剤が本当に有害で、セベラマーが有益という結論には至っていない。ましてや非Ca含有が優れているとは言えない」とされている。「カルタンⓇの死亡率が高い」という研究が行われたときに薬剤師が、「ご飯を食べないときには飲んじゃダメですよ」と服薬指導していたら、カルタンⓇによって予後が悪化する結果にはならなかったかもと思うんだけどね。以上、私論(ぼやきかな?)でした。


