腎臓病教室 ~検査値と腎機能~
3日目 CKDの基準となる検査値は何? 薬の投与量を決めるための腎機能は何?
1.eGFRはなんでわざわざ1.73m2で除した体表面積補正値で表すのか?
体表面積補正(標準化)糸球体濾過量GFR(mL/min/1.73m2)はCKDの進行度合いを表す指標になる。GFRは90mL/min/1.73m2以上が正常で、60mL/min/1.73m2未満が3か月持続すればCKDだ。これは60点以下だと再試になる日本の大学での試験と似ているのでわかりやすい。30mL/min/1.73m2未満は高度(または重度)腎機能低下で、ここまでくると放っておくと透析導入になるのは必至の慢性腎不全といってよいだろう。そして15mL/min/1.73m2を切ると透析導入か腎移植の必要な末期腎不全と呼ばれる。じゃあなんでGFRはわざわざ1.73m2で除した体表面積補正値で表すのだろうか? この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
腎臓病教室 ~検査値と腎機能~
2日目 腎臓がやっている仕事の限界を知ろう
1日目で腎臓はすごいことができるスーパースターだと思っていないかい?腎臓はとても努力家であって天才ではないのだ。だから何でもできるわけではない。つまり水をいくら飲んでも処理できるわけではないし、塩を無制限に摂取したら、対処できないのだ。腎臓のできる仕事はすごいけれども限界がある。今回はしょっぱなから「腎臓の限界」について知ってもらうためのクイズに答えてもらおう。今日はすべて腎臓に関するクイズだ。
Quiz: 1. 健常者が1L/hrの水を飲み続ければ低Na血症になるか?
腎臓病教室 ~検査値と腎機能~
1日目 腎臓がやっている仕事
1.腎臓はどんな仕事をしているの?
時々、ラーメンが無性に食べたくなることがある。ほぼ毎日ラーメンを食べる人もいるかもしれないが、健康な人であれば、こんなにたくさんの塩の入ったスープを全部飲んでも高ナトリウム血症になったり、むくんだりしない。日本人のほぼ半分はお酒を飲むと赤くなり、血中アセトアルデヒド濃度が高くなって頭痛や吐き気がしてあまりたくさんのお酒を飲めない。平田もビールは大好きだが顔が赤くなる弱いタイプなので、たくさんは飲めないのだ。これはALDH2の働きが弱い、またはその酵素がないので、採血時のアルコール消毒でも皮膚が赤くなる人などはビールを小さなグラス1杯でも飲めない。小柄な女性でもALDH2の働きが十分あれば、大ジョッキのビール3倍飲んでも平気な人がいる。こんなに飲んでも健康であれば浮腫になることはない。また夏暑いときに大きな西瓜を半分食べたとしても、健康であれば高カリウム血症になることはない。塩の全く摂れない山中で遭難しても、水さえ飲むことができれば通常体型の健常成人は1~2か月は死ぬことはない。
ここで何度も「健康な人であれば」と念を押したのは腎機能が廃絶した人であれば、ラーメンスープを全部飲めば溢水、高ナトリウム血症になるし血圧も上がる。ビールをたくさん飲めば浮腫になり低ナトリウム血症になる。西瓜をたくさん食べれば高カリウム血症によって不整脈を起こして突然死してしまうであろうし、山中で遭難すれば、いくら水があっても尿毒症で死亡してしまう。では腎臓は具体的にどんな仕事をしているのだろう?

2.腎臓は“体液の恒常性(Homeostasis)維持”を司る臓器
水・塩分・電解質などの摂取量(in)は毎日、大きく変動しうるが、腎臓が尿の組成を変化させることによって(out)、体液量,体液の組成をほぼ一定で、狭い正常範囲に調節されている。
① 老廃物・薬物の排泄
② 体内水分を一定に保つ
③ 体液電解質濃度を正常に保つ
④ 血液のpHを7.4に保
これらに加えて以下の3つのホルモン作用も腎臓が関わっているので、覚えておこう。
⑤ 尿細管間質における造血ホルモン(エリスロポエチン)の産生
⑥ ビタミンDの活性化
⑦レニン分泌
ではどうやって①~④の「体液の恒常性を保つ」仕事をし、何のために一見、腎臓とは無関係な⑤~⑦の仕事をしているのであろうか?深掘りしてみよう!
3.糸球体のやっている仕事~腎機能は糸球体濾過量で表す~
左心室内腔から拍出される血液は1回に80mLで、心拍数は60回/分だとすると、80mL×60回で心拍出量はほぼ5L/minと考えられる。その心拍出量のなんと20%もの大量の血液である1.0L/分(60分で60Lだから24時間でほぼ1500L/日)が1個120~130g程度で2個併せても体重の0.5%に過ぎない「小さな腎臓」に流れている。いうまでもなく腎臓は、大量の血液をろ過する必要があるためなのだ。
腎動脈から分かれてきた輸入細動脈から入った血液1,500L/日は糸球体を通る間に50~60mmHgの高い糸球体内圧によって150L/日の原尿を産生し、ボウマン嚢から尿細管に原尿が流れてゆく。原尿産生速度は言い換えれば正常値が100mL/minの糸球体濾過速度(GFR: Glomerular Filtration Rate、つまり腎機能)を表す。イヌリンは100%糸球体濾過され、濾過された量が尿中排泄された量と等しい(つまり尿細管で再吸収も分泌されない)ため、GFRのゴールドスタンダードとされる。
そして薬剤師や医師は腎機能GFRが分からないと、腎排泄性薬物をどの程度減量すべきかが分からない、つまり腎機能低下患者や高齢者で容易に中毒性副作用が起こってしまうので、非常に重要で頼りになる検査値になる。
でも1.5Lの尿を作るのに150Lの原尿を濾過してからまた再吸収なんて無駄な仕事って思っていない?

「腎は尿を作る臓器」だろうか?間違ってはいないが不正確だ。「腎は老廃物や薬物などの不要なものを排泄し、身体にとって必要な栄養素はできる限り再吸収して、体液の恒常性を保つ臓器」が正解としたいと思う。「不要なもの、余剰なもののみの含まれた尿を作るという手段」によって「体液の恒常性を厳密に保つ」目的のために働いている臓器が腎臓といえる。150Lの原尿から1.5Lの尿を作るため、通常の水・Naの再吸収率は99%だけど濾過・再吸収という2段階の仕事をしているため再吸収率を1%から2%にするだけで1.5Lの尿を3Lにすることができるし、0.5%にすることで750mLにすることができる。だから腎機能の良い人はビールを大ジョッキ2杯(1.5L)飲んでも浮腫にならないし、水がなくても脱水で即死することはないが、これは健康な腎臓を持っているおかげなのだ。これは最初の原尿産生量が150Lという大量だから、余裕にできる芸当なのだ。もしも健康な人の原尿産生量、つまりGFRが150L/日から
ダメ薬剤師を続けていて40歳になった時、当時、国立療養所千石荘病院(2003年に国立病院大阪医療センターに統合)の薬剤師だった上野和行先生に出会うことができた。まさに僕にとっては人生を変える運命の出会いだった。ある日、上野先生は僕に「アミノフィリン250mgの中にテオフィリンは200mg相当分入っとるから、アミノフィリン1Aを50kgの人に点滴投与したら、血中濃度はなんぼになると思う、平田君?」と聞かれ、戸惑って何も答えられなかった。だって血中濃度が予測できるなんて知らなかったから。「テオフィリンのVdは0.45L/kgなんや。まぁ、0.5L/kgでもええわ。50kgの患者さんやったらVdは25Lになる。200mg/25Lで8µg/mLになるやろから、喘息発作の治療にはちょっと足らへん。2A投与したら、16µg/mLになるんや。これやったら、ほぼ確実に気管支拡張作用を示して、20以上になったら起こる怖い副作用もでてけーへん。こーゆーことを知っとくと、薬を自由に操れるようになるんや。ほんでもって医者も意のままに操れるようになるんや」。

これには本当にときめいた。そして上野先生を「師匠」と呼ばせていただくようになった。薬剤師って調剤や薬の管理ばっかりやっていて、病院に勤めていても何の存在感も示せない職業だと思っていたから。この時の経験から、薬物動態を本気で習おうと思った。僕はよく「努力はつらいからやめよう」とか、「好きになったら、それが趣味になって、夢中になれる。そうすればみんな一流になれる」なんてことをよく言うが、それは学ぶだけで身に着いて楽しい「薬物治療学」「薬理学」「病態生理」などの話だ。薬物動態だけはこれらと違って、僕にとってはあまり面白くはなかったが、薬剤師のマストアイテムだと思った。動態の教科書に書いてあること、特に数式は実に難解だったが、学ぶのが辛くても絶対にマスターしなきゃだめなんだ。最初は菅野彊先生やそのお弟子さんの書いた分かりやすいものからはじめて、大学での教科書など、少なくとも3冊は読んでほしい。結構、間違いが書かれていることに気づくようになるから。薬物動態の基本がわかっていない薬剤師を僕は「本当の薬剤師」とは呼びたくない、似非(エセ)薬剤師だ。薬物動態だけは努力してでも薬剤師が身に着ける価値のあるものだと今でも信じてる!だからみんな努力して、僕の師匠のように「ほんまもんの薬剤師」になってほしい。
『SGLT2阻害薬』のテキスト(PDF)ダウンロードができます。
2021年12月22日、20時より2時間、株式会社ネクスウェイの主催するアスヤクLIFE研修会に783名登録していただき、多くの参加者の方々から質問をいただきました。これらの質問及び回答を、司会進行していただいた株式会社バンブーの松村歩美様からご承諾いただき「平田の薬剤師塾」の画面上で回答させていただきます。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
SGLT2阻害薬による心腎保護作用と急性腎障害抑制作用~ケトン体って何よ?~
9日目(最終回)
SGLT2阻害薬の腎保護作用・心保護作用のまとめ
この辺でSGLT2阻害薬の心保護・腎保護作用における多面的な作用についてまとめてみましょう。これまでに解説しきれていなかった初見のものも含まれます。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
SGLT2阻害薬による心腎保護作用と急性腎障害抑制作用~ケトン体って何よ?~
8日目 再び食事について考えてみよう
~再びケトン体について~
(1)ケトン体は有益?有害?
ヒトは24時間エネルギーを消費しているため早朝、8時間もたつと前夜に蓄えた肝臓のグリコーゲンは枯渇してしまいます。このような空腹時でブドウ糖を最も多く消費しているのは脳で、肝臓が10g/hr産生して血中に放出したうち、1時間に5~6g(安静時に全身で使われる60%に相当)のブドウ糖を使います。赤血球には核がないので自分でエネルギーを産生できないからでしょうか、ブドウ糖しかエネルギーとして使えません。そのほかの細胞はブドウ糖を節約して脳に回すため、代謝エネルギーの50~60%を遊離脂肪酸で賄っています。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
SGLT2阻害薬による心腎保護作用と急性腎障害抑制作用~ケトン体って何よ?~
7日目 食事について考えてみよう ~糖質制限食の重要性~
(1)糖質制限食の重要性
日本糖尿病学会では国際的に認められ、エビデンスの高い糖質制限食ではなく、炭水化物を50~60%含むカロリー制限食を「糖尿病診療ガイドライン2019」以前はずっと推奨してきましたが、そろそろ見直す時期に来ていると思います。平田もこの説を長期間、信じていました。アメリカ人に肥満が多いのは脂っこいものばかり食べるから、カロリー摂取量が多いからだと思っていましたが、実は肥満の原因は糖質の摂りすぎと食べ過ぎだったのです。そういえばアメリカのケーキ、アップルパイなど日本人の僕には甘すぎて食べられないくらい甘かったし、マクドナルドのコークのLサイズは1300mLのようにバケツ並み、レストランで食べるパスタの量も食べきれないくらいの大盛でした。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます