『NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~』のテキスト(PDF)ダウンロードができます。
『NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~』の目次です。
2日目:NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その1)
3日目:NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その2)
4日目:NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その3)
5日目:NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その4)
6日目:NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その5)
7日目:Triple Whammy の片割れ、RAS阻害薬の利点・欠点
11日目:薬剤師の服薬指導でTriple whammyを防げれば
12日目:Triple whammyによる脱水を早期発見せよ
13日目:NSAIDsの腎障害は腎前性腎障害(腎虚血)だけじゃない
14日目:経口NSAIDsを使うとしたら腎障害の少ないエビデンスレベルの高いものは?
15日目:NSAIDsのパップ剤や全身作用する貼付薬は安全?
16日目:ワルファリンとNSAIDsを併用してはいけない本当の理由
17日目:米国で見た「Tylenol is not an NSAIDs」 というテレビCM
28日目:腎機能低下患者にはセレコキシブかアセトアミノフェンか?
29日目:(最終回)整形外科医のNSAIDs処方の実態と抗炎症作用
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
29日目 (最終回)
整形外科医のNSAIDs処方の実態と抗炎症作用
「NSAIDsはよく処方するんだけど、実は僕は腎障害を起こした経験が1度もないんだ」、「NSAIDsは確かによく処方するけど、これによる腎障害ってほとんど報告がないよね」って整形外科の先生方から、聞くことがあります。でも薬剤性腎障害原因薬物のどの調査でも腎障害原因薬物の薬効群では抗菌薬かNSAIDsが1位か2位で、3位は抗がん薬というのは変わりません(図1, 図2:13日目の図1と同じです)。整形外科の先生はNSAIDsを高頻度に処方する科だと思いますが、ほとんど採血をしない科でもありますので、腎機能検査のオーダーをあまり出さないのも原因と思われます。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
28日目 腎機能低下患者には
セレコキシブかアセトアミノフェンか?~UpToDateより~
14日目にセレコキシブは他のNSAIDsに比し腎機能が悪化しにくい報告が5報、800mg/日の高用量服用でも腎機能は悪化しなかったという報告が1報あることはすでに解説しましたが、2021年10月5日の第6回「基礎から学ぶ薬剤師塾」で「セレコキシブはNSAIDsの中でも腎障害が少ないといわれていますが,RAS阻害薬+利尿薬と同時に併用した場合は,やはり中止またはアセトアミノフェンに変更するべきでしょうか?」という質問をいただきました。その時、平田は腎障害になりにくい報告が6報あり、心毒性が低いことからもセレコキシブは捨てがたいと思いました。ただし、漫然投与は避けたいと思っていますので、可能であれば頓服でと思っていたら、セレコキシブのTmaxは2時間と頓服で使うには長いことが薬剤師塾の質問で判明しました。セレコキシブは効果発現時間が長いのが欠点かもしれません。ロキソニンⓇの活性体trans-OH体のTmaxは0.79hr, カロナールⓇ(空腹時服用)も同じく0.79時間と速やかに吸収されます。セレコシブは頓服ではやや使いにくいので、少し残念! この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
27日目 NSAIDsによる心不全などの心血管病変
米国のNSAIDsの添付文書には警告として以下のような「重篤な心血管病変」の記載があります。「NSAIDsは、心筋梗塞や脳卒中を含む重篤な心血管血栓症のリスクの増加を引き起こし、致命的な可能性がある。このリスクは、治療早期に発症する可能性があり、使用期間と共に増加する可能性がある。冠状動脈バイパス移植片(CABG)手術時には禁忌である。」 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
26日目 アセトアミノフェンについて深く知ろう
⑧アセトアミノフェンは効かない薬じゃない!~腰痛診療ガイドライン2019の深い謎~
「アセトアミノフェンは効かない」という声をよく効きます。ただし1回500mgという低用量で「効かない」って言っていないでしょうか?せっかく4000mg/日(この用量で連日投与すると欧米に比し小柄な日本人にとっては肝障害が心配ですが)という国際的用量を投与可能になったのに…。せめて600mg×4回/日または1000mgの頓服(2~3回/日まで)をしないのでしょうか。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
25日目 アセトアミノフェンについて深く知ろう
⑦アセトアミノフェンの肝障害~埼玉県保険金殺人事件の真相~
アセトアミノフェンは小児・妊婦・高齢者にまで広く使用される安全な薬物ではありますが、この辺で副作用のことに触れてみましょう。実はアセトアミノフェンはWHOの報告では重篤な薬剤性肝障害のトップとされています(図1)1)。ただしこれらの多くは自殺企図などの極めて不適切な使用によるものが大半を占めます。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
24日目 アセトアミノフェンについて深く知ろう
⑥アセトアミノフェンの添付文書は明らかに間違っている
◆クイズ
以下の添付文書の記載はロキソプロフェンのものでしょうか?
アセトアミノフェンによるものでしょうか? この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
23日目 アセトアミノフェンについて深く知ろう
⑤CKD患者へのNSAIDs、アセトアミノフェンの適正使用
(1)CKD患者にNSAIDs用量を減量ではなく、投与回数を減量
NSAIDsはすべて肝代謝により消失します。尿中排泄されると添付文書に記載されていても、活性を持たない代謝物となって腎排泄されるため、腎不全患者でそれらが蓄積しても何も起こりません。したがって、すべてのNSAIDsで腎機能低下患者に投与量を減量する必要はないのです。AKIの発症を気にして減量すると逆に確実な効果が得られなくなる可能性があります。ただし16日目に書いたように、ひょっとしたら末期腎不全患者ではCYP2C9の発現量が低下するため減量しなくてはならない可能性もありますが……。腎機能低下患者、高齢者、心不全患者、高血圧患者、糖尿病患者など腎虚血を来たしやすい疾患やレニン-アンジオテンシン系阻害薬や利尿薬、その他の腎毒性薬物と併用はNSAIDsによるAKI発症のリスクが高くなります。そのため腎機能低下患者ではNSAIDsの漫然投与は避けるべきです。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
22日目 アセトアミノフェンについて深く知ろう
④鎮痛薬腎症はAKIではなく慢性腎不全。
その真犯人はフェナセチンだけではないことを突き止めたベルギーの論文を抄読してみよう!(2)
アセトアミノフェンとアスピリンの複合剤で起こる鎮痛薬腎症のメカニズムは、これらを併用するとアスピリンがサリチル酸になり腎皮質および乳頭部に高濃度に濃縮されることが引き金となります。サリチル酸はグルタチオンを枯渇させることによって毒性代謝物NAPQIが生成され、腎乳頭タンパク質のアリル化および 酸化ストレスによって腎乳頭壊死を起こし、不可逆的な腎機能障害を起こす2)といわれています(図6)5)。また自殺企図や誤飲によるアセトアミノフェン超大量服用で起こる劇症肝炎と同時に、腎に存在するCYPによって毒性代謝物NAPQIが生成され、急性の鎮痛薬腎症をきたすことがあると言われていますが、頻度としては非常にまれと思われます。このような超大量服用した自殺企図や大量誤飲症例を除きAKIの発症はないと考えられ、アセトアミノフェンやアスピリンを含んだOTC鎮痛薬の長期大量連用による乳頭壊死または慢性間質性腎炎によって生じる透析導入に至る慢性腎不全が問題となります6)。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます